著者
井上 (吉川) 久幸 石井 雅男 河野 健 村田 晶彦
出版者
国際環境研究協会
雑誌
地球環境 (ISSN:1342226X)
巻号頁・発行日
vol.9, no.2, pp.153-160, 2004

中部及び西部赤道太平洋において、大気及び表面海水の二酸化炭素分圧の観測を1999年から2003年にかけて実施した。これらの観測は「炭素循環に関するグローバルマッピングとその高度化に関する国際共同研究 海洋表層における炭素フラックスと一次生産に関する研究」(科学技術振興調整費)の一環として海洋地球研究船「みらい」で行った。観測の結果、中部及び西部赤道太平洋の表層は、大きくふたつの海域に分けることが出来た。すなわち西太平洋暖水塊と、その東にある赤道湧昇域である。西太平洋暖水塊では、表面海水の二酸化炭素分圧(pCO2sw)が大気の分圧(pCO2air)に等しいか僅かに高く、栄養塩が枯渇し、低塩分(<34.5)・高温(>28.5℃)である。赤道湧昇域では西から東に向かってpCO2swが溶存無機炭素及び栄養塩濃度と共に増加し、表面水温は減少している。ふたつの海域の境界は、エル・ニーニョやラ・ニーニャ発生により東西に大きく移動する。エル・ニーニョ期に西太平洋暖水塊は東進し、中部及び西部赤道太平洋のpCO2swは減少する。このため2002~2003年のエル・ニーニョ期間中、同海域の大気へのCO2フラックスは大きく減少したことが示された。本研究では更に「みらい」等のデータと米国海洋大気庁太平洋海洋環境研究所(NOAA/PMEL)と大西洋海洋気象研究所(NOAA/AOML)が取得したデータを組み合わせ、赤道太平洋全域における大気へのCO_2フラックスを評価した。赤道太平洋から大気へのCO2フラックスは、1997/98エル・ニーニョ期間中の1998年1~2月に0.1±0.1 PgC/yr、逆にラ・ニーニャ的状況にあった2001年1~2月には0.9±0.4PgC/yrと見積もられた。これは大気中のCO2濃度増加率にしておよそ0.4ppm/yr程度の変動に相当している。
著者
村田 晶子
出版者
法政大学
雑誌
多文化社会と言語教育 (ISSN:24362239)
巻号頁・発行日
vol.1, pp.14-29, 2021 (Released:2021-05-10)

新型コロナウイルス感染症の拡大により、2020 年度の授業が対面からオンラインに移行し、人との接触機会が減少したことから、多くの学生が孤独やストレスを抱えた。とりわけ留学生の場合、日本でのネットワークが限られ、孤独や不安を感じていた人々が多く、人とつながり、日常の問題を相談できるようなサポートが必要とされた。 本稿で分析するコロナ禍で孤立する留学生たちの学習支援とオンラインサポートは、こうした状況を踏まえて始まったボランティア学生達の活動である。本稿ではコロナ禍におけるボランティア学生による留学生のソーシャルサポートを分析し、①やさしい日本語や英語を用いた来日の見守りと情報提供、②留学生の母語でのメンタルサポート、③留学生と日本社会とをつなぐ交流サポート、④進学サポート、⑤就活サポートなどの実態を明らかにし、また、支援活動を通じた参加者(ボランティア学生、留学生)の様々な学び合いを分析した。 最後に、こうしたボランティアのオンラインのソーシャルサポートの取り組みは、非常時のボランティア活動の新しい可能性を示すものであり、さらには、非常時のボランティアから、平時にも可能なソーシャルサポートにつながる可能性をもった取り組みであることを指摘し、ボランティア活動を深めるための教育プログラムとの連携の重要性についても指摘した。 本稿で分析するボランティア活動は、所属大学の 2020 年度の『自由を生き抜く実践知大賞』の大賞を受賞した、多文化教育科目の履修生たちの 1 年間の取り組みである。
著者
河内 彩香 村田 晶子 長谷川 由香 竹山 直子 池田 幸弘
出版者
法政大学
雑誌
多文化社会と言語教育 (ISSN:24362239)
巻号頁・発行日
vol.1, pp.30-45, 2021 (Released:2021-05-10)

2020 年度、新型コロナウイルス感染症拡大の影響で多くの大学がオンライン授業に移行し、所属大学の日本語教育プログラムにおいても春学期と秋学期の授業が全面的にオンラインで行われ、LMS(Learning Management System)とオンライン会議システム(Zoom)による双方向授業を組み合わせて教育活動を行った。これまで、日本語教育におけるこれら二つを組み合わせた授業の詳細の分析はまだ十分にはなされていない。地理的な境界線を越えて実施することができるオンライン教育はコロナ収束後も発展していくことが予想されており、この実践を一過性のものとしてとらえるのではなく、実践を記録し、その効果や問題点を発信していくことが今後の言語教育の発展のために重要である。こうした点を踏まえて、本稿では、日本語教育プログラムにおいて実施した Zoom による双方向授業と LMS(Google Classroom)を組み合わせたオンライン教育の実施状況を記述し、レベル別、技能別の教育におけるオンライン教育のメリットと課題を分析した。
著者
村田 公一 村田 晶子 兵藤 博行 中山 広之 岩澤 淳 水谷内 香里 高橋 哲也
出版者
一般社団法人 日本生物教育学会
雑誌
生物教育 (ISSN:0287119X)
巻号頁・発行日
vol.51, no.3, pp.2-11, 2011 (Released:2019-09-28)
参考文献数
24

ヒトの聴覚器において鼓膜と卵円窓の面積比によって音が増幅される機構を説明するためのモデルを作成して,これを医療系学校(高等学校卒業者の1年生)の講義で演示した場合の学生の理解に及ぼす効果を調査した.モデルは,スチロールの円板を取り付けたばね式上皿はかりと市販の空気弾発射装置を組み合わせて作成し,スチロール円板の大きさ,スチロール円板と空気弾発射装置との距離(空気弾射出距離)および空気弾発射装置の口径を検討し,さらに空気弾発射装置は市販品と自作品との比較を行った.その結果から,スチロール円板は直径20㎝と5㎝,空気弾射出距離は40㎝,口径は12㎝とし,市販の空気弾発射装置を使用して講義で演示を行うこととした.講義を行った後では,「ヒトの聴覚器のどの部分で音は増幅されるか」についての質問に対して,「耳小骨」と答えた者の割合は講義の前よりも有意に増加したが,モデルを使わなかった場合と使った場合との間に差はなかった.また,「音をどのように増幅するか」についての質問に対しては,「てこの作用」と答えた者の割合は,モデルを使った場合のみ講義前より増加した.「鼓膜と卵円窓の面積比」と答えた者は,モデルを使わなかった場合は全くいなかったが,モデルを使った場合は講義前よりも有意に増加した.したがって,本研究において作成した演示モデルを使用することにより,本研究が目的とした「鼓膜と卵円窓の面積比」による音の増幅機構のみならず,「てこの作用」による増幅機構の理解度も高める効果があるものと思われる.
著者
村田 晶子
出版者
法政大学
雑誌
多文化社会と言語教育 (ISSN:24362239)
巻号頁・発行日
vol.2, pp.1-15, 2022 (Released:2022-02-17)

留学の魅力とは、現地の学校に通い、人と出会い、生活体験をすることにより、様々な社会経験をすることにある。しかし、コロナ禍によって、国境を越えた移動、キャンパスでの対面での学びや交流が難しくなり、留学の意味は大きく変わった。本稿はコロナ禍になってから2年が過ぎようとする 2021 年 12 月の時点で、日本の大学の授業を履修している留学生たち(国内に居住する留学生、海外からオンラインで受講している留学生)にアンケート調査を実施した。結果の分析では、留学生たちのコロナ禍での活動状況、ストレスや不安などについて明らかにするとともに、彼らが国際移動や人との対面接触が困難な時期の留学を通じてどのようなことを学び、変化したと感じたのかをレジリエンスの概念を援用して明らかにした。本稿はコロナ禍の留学生の経験を分析した3つのプロジェクトの1つで、本稿のアンケート調査結果、留学生の経験の言語化とソーシャルネットワークの分析(村田 2022a)、留学生による探索的なフィールドワークを通じた学び(村田 2022b)の3つの論考を通じて、留学生のコロナ禍での多様な経験と学びを明らかにした。
著者
河内 彩香 村田 晶子 長谷川 由香 竹山 直子 池田 幸弘
出版者
法政大学
雑誌
多文化社会と言語教育 (ISSN:24362239)
巻号頁・発行日
vol.1, pp.30-45, 2021

2020 年度、新型コロナウイルス感染症拡大の影響で多くの大学がオンライン授業に移行し、所属大学の日本語教育プログラムにおいても春学期と秋学期の授業が全面的にオンラインで行われ、LMS(Learning Management System)とオンライン会議システム(Zoom)による双方向授業を組み合わせて教育活動を行った。これまで、日本語教育におけるこれら二つを組み合わせた授業の詳細の分析はまだ十分にはなされていない。地理的な境界線を越えて実施することができるオンライン教育はコロナ収束後も発展していくことが予想されており、この実践を一過性のものとしてとらえるのではなく、実践を記録し、その効果や問題点を発信していくことが今後の言語教育の発展のために重要である。こうした点を踏まえて、本稿では、日本語教育プログラムにおいて実施した Zoom による双方向授業と LMS(Google Classroom)を組み合わせたオンライン教育の実施状況を記述し、レベル別、技能別の教育におけるオンライン教育のメリットと課題を分析した。
著者
村田 晶子 池田 幸弘 長谷川 由香
出版者
法政大学
雑誌
多文化社会と言語教育 (ISSN:24362239)
巻号頁・発行日
vol.1, pp.1-13, 2021 (Released:2021-05-10)

日本語を学ぶ人々のライフストーリーの調査をすることは、彼らの生き方、日本語を学ぶ動機、そして、日本語を用いてどのように社会と関わっているのかを理解する上で役立つ。本稿では母国で社会経験を積んでから来日し、日本語を学んだ人々にライフストーリーインタビューを行い、日本留学が彼らの人生にとってどのような意味があったのかを明らかにした。分析では、Knowles の成人学習像、Mezirow の変容的学習論を援用し、社会経験のある人々が職業経験を踏まえた自律的な学習の方向付けを行っていく過程を明らかにするとともに、留学における葛藤や悩み、留学を通じた変容を明らかにし、それぞれが相互作用していることを分析した。加えて、本稿の最後にインタビュー協力者のライフストーリーに対する感想、そして、調査者らによるライフストーリーインタビューの実施及びライフストーリー作成に対する省察を示し、ライフストーリーが教員とプログラム修了者の双方にとって継続的な対話の機会になり、教育の改善につながりうるものであることを示した。
著者
長谷川 由香 村田 晶子 池田 幸弘 竹山 直子
出版者
法政大学
雑誌
多文化社会と言語教育 (ISSN:24362239)
巻号頁・発行日
vol.1, pp.46-58, 2021 (Released:2021-05-10)

高等教育のグローバル化が進み、留学の形も多様化する中で、近年注目されているのが、1か月未満の短期留学プログラムである。短期の留学プログラムは経済的、時間的な負担が少ないために参加しやすく、その重要性は増している。短期プログラムは、学生の休みの期間に実施されることが多く、教室での勉強だけでなく、体験学習を組み込んだプログラムが実施されており、これまでプログラムレベルでの実践報告を通じて、具体的な実施例、効果や課題が明らかにされているが、その一方で文化体験の「テキスト」の開発に焦点を当てた報告は非常に少ない。そこで本稿では、こうした文化体験プログラムのテキスト開発について分析し、大学の短期プログラムを想定したテキスト開発がどのように変容していったのかを検討し、今後に向けたオンラインでの文化体験のアレンジ例の提案も行った。
著者
秦 吉弥 村田 晶 野津 厚 宮島 昌克
出版者
公益社団法人 日本地震工学会
雑誌
日本地震工学会論文集 (ISSN:18846246)
巻号頁・発行日
vol.12, no.2, pp.2_60-2_77, 2012 (Released:2012-05-25)
参考文献数
27
被引用文献数
2 3

2011年東北地方太平洋沖地震の翌日に発生した2011年長野・新潟県境地震では、震源域を中心に強い地震動が数多く観測された。震源近傍の長野県栄村などでは、住家被害などが多発しており、被災地点の地震動を推定することは非常に重要である。そこで本研究では、栄村横倉集落での余震観測結果などに基づいて、当該地点におけるサイト特性を評価した。そして、サイト特性置換手法を用いて、栄村横倉集落での地震動を推定した。さらに、既往の大規模地震による強震観測記録との比較検討を行い、栄村横倉集落における推定地震動の特徴についても言及した。
著者
藤木 昂 秦 吉弥 村田 晶 古川 愛子 一井 康二 常田 賢一 湊 文博 吉川 登代子
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集A1(構造・地震工学) (ISSN:21854653)
巻号頁・発行日
vol.72, no.4, pp.I_984-I_992, 2016 (Released:2016-05-20)
参考文献数
35

本稿では,2014年長野県神城断層地震による強震動の作用によって深刻な住家被害等が発生した白馬村神城地区を対象に,高密度常時微動計測を実施した結果について報告する.具体的には,同地区内において232地点に及ぶ常時微動計測を行い,H/Vスペクトルのピーク周波数などに着目することで,神城地区における地盤震動特性を明らかにした.さらに,常時微動H/Vスペクトルとサイト増幅特性の経験的関係に基づき,微動計測地点(232地点)でのサイト増幅特性をそれぞれ評価し,サイト増幅特性の値に対する住家被害の関係について基礎的検討を行った.
著者
村田 晶 小野 寺大 宮島 昌克 池本 敏和
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集A1(構造・地震工学) (ISSN:21854653)
巻号頁・発行日
vol.65, no.1, pp.52-58, 2009 (Released:2011-04-30)
参考文献数
8

建物の地震被害に大きな影響を与える要素として,地震動特性については,近年飛躍的に発展を遂げた国内各種の強震観測網により,多くの情報が得られるようになった.しかし,能登半島地震のように地方では震度情報しか得られない事例も見られ,被害を推定するためにはより正確な地震動の推定が求められる.そこで本研究では,このように情報の少ない地区で地震動を推定するために,周辺の地震記録と常時微動観測を用いた地震動波形の推定を行うことで,建物被害との関係について検討を行う.その結果,推定した地震動と建物被害との関係を地震動の強さだけでなく地震動と建物の共振による被害について考察した.
著者
宮島 昌克 北浦 勝 池本 敏和 村田 晶 清野 純史 能島 暢呂
出版者
金沢大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2005

現在,被害地震の直後には被災建築物応急危険度判定士によって建物の健全度が判定されているが,医療機関の機能の健全度を評価するものではないので,医療機関においては効果を発揮し得ない。このような観点から本研究では,医療機関における建物の健全度のみならず,救命ライフラインや医療機器の耐震機能評価法を考究することを目的とする。まず,過去の地震における医療機関の被災資料を収集した。近年わが国で発生した地震のみならず,アルジェリア・ブーメルデス地震やイラン・バム地震などの被害についても調査し,世界共通の視点から分析した。その結果,地震後の医療機能損失の要因としては建物そのものの損壊,ライフラインの機能喪失,医療機器の転倒,落下に大きく分ける必要があることが明らかとなった。つぎに,2007年3月に発生した能登半島地震と7月に発生した新潟県中越地震の際に被災地の医療施設に対して地震被害が医療機能に与えた影響に関するアンケート調査を実施した。ここでは,上記のように,建物そのものの損壊,ライフラインの機能喪失,医療機器の転倒,落下に分けて,それぞれの被害が医療機能にどのような影響を及ぼしたかについて整理,分析した。その結果,能登半島地震および新潟県中越沖地震では,医療施設において生活機能,医療機能の両面に対して断水被害の影響が目立ったことが明らかとなった。さらに,長周期地震動に対して敏感であると考えられ,しかも医療機器類に多い,キャスター付き機器の振動特性を明らかにするために,正弦波を用いた振動台実験を行い,医療機器類のフラジリティ曲線を求めた。さらに,病院内のライフラインの損傷や薬品棚の転倒が医療機能に及ぼす影響を検討し,それぞれのフラジリティ曲線を提示するとともに,地震時の医療機関の機能損曲線を提案した。
著者
宮島 昌克 池本 敏和 幸左 賢二 清野 純史 吉田 雅穂 山口 謙太郎 鶴来 雅人 村田 晶
出版者
金沢大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2009

イラン・タブリーズ市において世界遺産の登録を目指しているバザール(市場)を対象として、北タブリーズ断層を想定地震断層とした強震動予測を行った。その際、各種地盤調査を行って、建設地点の地盤動特性を明らかにした。強震動予測結果を用いて耐震診断を行うとともに、耐震補強法について具体的に提案した。また、2010年10月10日~11日にイラン・タブリーズ市において歴史的組積増構造物の地震および地震工学に関するイラン・日本二国間セミナーを開催した。