著者
石川 裕 奥村 俊彦 藤川 智 宮腰 淳一 藤原 広行 森川 信之 能島 暢呂
出版者
公益社団法人 日本地震工学会
雑誌
日本地震工学会論文集 (ISSN:18846246)
巻号頁・発行日
vol.11, no.4, pp.4_68-4_87, 2011 (Released:2012-01-31)
参考文献数
17
被引用文献数
1 2

本論文では、時間軸の起点を1890 年から30 年ごとに変化させた確率論的地震動予測地図を作成し、同じ期間に実際に発生した地震によるハザードマップと対照させることで確率論的地震動予測地図の確からしさの検証を試みた。その結果、全国の地震ハザードの総量として確率論的地震動予測地図はおおむね実績と調和的であると評価された。また、最大影響カテゴリーがIとIIの地域では、事前の超過確率が高い地点ほど震度6 弱以上を経験した割合が多く、確率論手法の有用性を支持する結果を得た。一方、最大影響カテゴリーがIIIの地域はそもそも事前の超過確率が低い地点が多く、震度6 弱以上を受ける具体的な地域を事前の超過確率の高低から予測することは難しいことが明らかとなった。これらより、地域の地震環境に応じてリスクマネジメントの考え方を使い分ける必要性を指摘した。
著者
野田 茂 能島 暢呂 細井 由彦 上月 康則
出版者
Japan Society of Civil Engineers
雑誌
土木学会論文集 (ISSN:02897806)
巻号頁・発行日
vol.1997, no.556, pp.209-225, 1997-01-21 (Released:2010-08-24)
参考文献数
25
被引用文献数
1

1995年兵庫県南部地震は都市機能を支えるライフラインに多大な被害を与えた. ライフライン被害の相互連鎖は, 既往の震災事例をはるかに超え, 明らかに質の異なるものとなった. 本報告では, 断水が他のライフライン (電気, ガス, 下水道) や医療機関の機能および消火活動や廃棄物焼却施設などに及ぼした影響について述べる. 差し水によるガスの復旧の遅れ, 冷却水や工業用水道の供給停止による発電などへの影響や消火用水の多様な確保策がわかった. さらに, 意外に少なかった通電火災, 復電による通水の状況, 水道の回復が下水道の機能に与えた影響や医療に不可欠な水道の役割などが定量的に明らかになった.
著者
加藤 宏紀 能島 暢呂 焦 禹禹
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集A1(構造・地震工学)
巻号頁・発行日
vol.77, no.4, pp.I_467-I_478, 2021

<p> 大規模災害発生後には網羅的な情報収集が困難となる事態も予想されるため,限られた情報に基づいてライフラインの復旧見込みを示す手段も必要である.本研究では復旧予測の逐次更新による復旧見込みの提示に向けて停電を対象として基礎的検討を行った.まず災害時における停電の解消過程のペースの変化を検証するため,停電の解消過程を短期・長期に分けて混合指数分布でモデル化した.次に復旧ペースの変化をより詳細に分析するため,任意の時点までの停電の解消過程の傾向変動に対し区分的・連続的に指数関数を適用した.これに基づき停電が80,90,95%解消されるまでの所要時間を求め予測値と実測値を比較した.以上の結果から復旧予測の逐次更新を迅速かつ安定的に行うためには傾向変動の分析対象区間を適切に設定する必要があることを明らかにした.</p>
著者
能島 暢呂 加藤 宏紀
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集A1(構造・地震工学) (ISSN:21854653)
巻号頁・発行日
vol.69, no.4, pp.I_121-I_133, 2013 (Released:2013-06-19)
参考文献数
15
被引用文献数
1 3

東日本大震災により影響を受けた高速道路網の日交通量のデータを入手し,時空間的な変動を可視化するとともに,災害対応オペレーションと関連付けて高速道路機能の分析を行った.地震直後,約2,300kmにわたって通行止めの措置がとられ,緊急交通路指定による交通規制が続いたが,それらの解除とともに交通量は迅速に回復し,約2週間で震災前の水準に戻った.長期的にみるとその後も主要路線で交通量は漸増し,2011年7月~10月の間に1.6~2倍に達した.阪神・淡路大震災で大被害を受けた高速道路網の月平均日交通量のデータについても,同様の観点から時空間的分析を行った.また高速道路網の施設水準と機能水準を表す3種類の指標を算出し,両震災で比較を行った.
著者
能島 暢呂
出版者
安全工学会
雑誌
安全工学 (ISSN:05704480)
巻号頁・発行日
vol.35, no.1, pp.50-56, 1996-02-15 (Released:2017-06-30)

本稿は,兵庫県南部地震(1995年1月17日,マグニチュード7.2)による電力施設とガス施設の被害概要と緊急対応および復旧過程についてまとめたものである.ライフライン系の壊滅は,多数の死傷者と建物被害とともに阪神・淡路大震災の様相を特徴づける被害の一つであった.中でも,都市のエネルギー供給を担う電力施設およびガス施設の被害は都市活動に短期的・長期的に多大な影響を与え,緊急対応や復旧過程において多くの問題を残し,地震防災対策の再検討を促すものであった,
著者
宮島 昌克 清野 純史 能島 暢呂 鶴来 雅人 吉田 雅穂 池本 良子
出版者
金沢大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2008

地震発生直後に管路に直接的な被害が無くとも急激な流量の増加と水圧の低下といった配水システムにおける異常事態に着目し,被害地震が発生した際にアンケート調査を大規模水道事業体に行った。さらに,この現象が貯水槽の水のスロッシングによる水位センサーの誤作動によるものであることを明らかにし,今後発生する巨大地震による長周期・長継続時間地震動が配水システムの異常挙動に与える影響を明らかにした。
著者
宮島 昌克 北浦 勝 池本 敏和 村田 晶 清野 純史 能島 暢呂
出版者
金沢大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2005

現在,被害地震の直後には被災建築物応急危険度判定士によって建物の健全度が判定されているが,医療機関の機能の健全度を評価するものではないので,医療機関においては効果を発揮し得ない。このような観点から本研究では,医療機関における建物の健全度のみならず,救命ライフラインや医療機器の耐震機能評価法を考究することを目的とする。まず,過去の地震における医療機関の被災資料を収集した。近年わが国で発生した地震のみならず,アルジェリア・ブーメルデス地震やイラン・バム地震などの被害についても調査し,世界共通の視点から分析した。その結果,地震後の医療機能損失の要因としては建物そのものの損壊,ライフラインの機能喪失,医療機器の転倒,落下に大きく分ける必要があることが明らかとなった。つぎに,2007年3月に発生した能登半島地震と7月に発生した新潟県中越地震の際に被災地の医療施設に対して地震被害が医療機能に与えた影響に関するアンケート調査を実施した。ここでは,上記のように,建物そのものの損壊,ライフラインの機能喪失,医療機器の転倒,落下に分けて,それぞれの被害が医療機能にどのような影響を及ぼしたかについて整理,分析した。その結果,能登半島地震および新潟県中越沖地震では,医療施設において生活機能,医療機能の両面に対して断水被害の影響が目立ったことが明らかとなった。さらに,長周期地震動に対して敏感であると考えられ,しかも医療機器類に多い,キャスター付き機器の振動特性を明らかにするために,正弦波を用いた振動台実験を行い,医療機器類のフラジリティ曲線を求めた。さらに,病院内のライフラインの損傷や薬品棚の転倒が医療機能に及ぼす影響を検討し,それぞれのフラジリティ曲線を提示するとともに,地震時の医療機関の機能損曲線を提案した。
著者
清野 純史 宮島 昌克 堀 宗朗 能島 暢呂 五十嵐 晃 小野 祐輔 豊岡 亮洋 古川 愛子
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2007

鉄道ネットワークを対象として,センシング技術を利用した災害発生時の迅速な機器制御により,被害を最小限に留めるような理論的な枠組みの構築と技術開発を行った.小型マイコンに加速度センサとワイヤレス伝送技術を実装し,これをセンサネットワークとして利用するためのハードおよびソフトの環境整備を行い,プロトタイプを作成した.さらにセンシングデータの大容量送受信が可能であるか等の検証を行うとともに,損傷判断や被害検知手法の開発を行った.
著者
林 春男 山下 裕介 田中 重好 能島 暢呂 亀田 弘行 河田 恵昭
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
1995

災害復旧に従事する防災機関のロジスティクス・マネージメントにおいて,災害対応を緊急対策,応急対策,復旧・復興対策という相互に独立し,異なる目標を持つ3種類の対策の組み合わせとして考えることが可能である.しかも,この3種類の対策はすべて災害発生直後から同時に,別々の担当グループによって実施される必要性が明らかになった.その間でのニーズと資源の相互調整過程にロジスティクス・マネージメントの本質があると考え,それを可能にする情報システムの構築を行った.1)防災CALSの構想 災害対策をおこなう関連部局間での状況認識の共有と資源調整を可能にするための情報処理標準の必要性を明らかにし,そのプロトタイプを検討した.2)被害状況の把握,対応状況の整理,資源動員計画の立案,周知広報による情報共有の確立を統一的に推進するシステムの構築を目的として,カリフォルニア州が開発した“OASIS" (OPERATIONAL AREA SATELLITE INFORMATION SYSTEM)と,わが国の災害情報処理報告形式とを比較検討し,わが国における合理的な災害情報処理様式の検討を行った.3)合理的な意思決定を支援するためには,災害対応の各局面における制約条件,過去の教訓棟を的確に参照しうるシステムが必要となるという認識のもとに,SGML (Standard General Markup Language)による災害情報管理システムのプロトタイプを構築した.各種防災計画の改訂や検索に強力な武器になることが明らかになった.4)阪神淡路大震災で初めて注目され,今後の利用法の検討が考えられるべきボランティア問題に関して,実態調査を重ねその問題点を明らかにした.
著者
杉戸 真太 能島 暢呂 久世 益充 古本 吉倫 岩本 政巳 八嶋 厚
出版者
岐阜大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2008

わが国の太平洋沖において頻繁に発生する海溝型巨大地震では、地震動の強度が非常に大きいことに加えて、その強震継続時間が極めて長くなることが知られている。構造物の地震動によるダメージが、その強度のみならず強い揺れの継続時間に大きく依存し、その影響の度合いが構造形式に依っても大きく異なることから、これらの影響を詳細に検討し、耐震設計に合理的に取り入れることを検討した。