著者
松原 光也
出版者
千里地理学会
雑誌
ジオグラフィカ千里 = Geographica Senri
巻号頁・発行日
no.1, pp.183-198, 2019-03-30

本稿では市民と行政が連携して存続した万葉線が,その後の高岡のまちづくりや沿線地域にどのような変化を及ぼしたかについて述べる。高岡市は公共交通の結節点となっているものの,都市形態が分散的で,人口密度も低い都市である。このような都市では,公共交通の利用促進は困難であると考えられるが,万葉線存続後の利用者が増加に転じた。万葉線廃止の危機を乗り越え,鉄道会社が利用者の視点に立った鉄道運営を実施したこと,市内で開催される祭りやイベントの際に行政や商店街,市民団体が万葉線の利用を促進し,まちづくりに貢献していることが一因としてあげられ,そのことが,中心市街地の衰退に歯止めをかけていると考えられる。存続後15年を経過した万葉線と高岡沿線地域の変化を通して,地域住民の活動と交流が活発であれば,公共交通にとって有利に作用し,社会的共通資本を支える仕組みの構築が可能であることを示す。伊東理教授退職記念号特集 : 都市空間の地理学
著者
松原 光也
出版者
人文地理学会
雑誌
人文地理学会大会 研究発表要旨
巻号頁・発行日
vol.2003, pp.47, 2003

LRT(Light Rail Transit)は歩行者や公共交通を中心とした都市計画(パーク&ライド等のTDM施策やトランジットモール)に基づいて設置された軌道系中容量交通機関である。これを導入することにより、中心市街地活性化や環境対策、福祉対策に役立った。本論はヨーロッパで導入されているLRTの特徴と、実際に日本で走っている路面電車との相違点を明確にすることにより、これから日本でLRTを導入する上での問題点を提示した。 福井市で2001年秋に行われたトランジットモール社会実験の結果及び、著者が独自に行ったアンケート結果を踏まえて、都市交通に対する住民の意識を調査した。福井市役所の調査では商店街に来る人は増加し、約12%の人が自家用車から路面電車利用に転換した。商店街店主は車が通らないと売上が少ないと考えているのに対し、市民はトランジットモールに対して好意的であった。筆者のアンケート結果で、福井鉄道に乗ったことがない人が約3分の1おり、あまり利用されていないことがわかった。ところが、その印象については好意的な意見が多く、市民の愛着が感じられた。利便性については、運転本数についての不満が一番多かった。その機能を生かすため、増便や発着時間の調整、共通乗車券の発行、低床式車両の運行などの改善策が望まれる。 利便性が向上すれば自家用車から公共交通利用に転換する可能性がある。LRTの整備費用を負担する住民が計画に参加する方がよい。行政側は情報開示や社会実験を通じて、市民が活動できる場を提供する。各段階で他都市の例を参考にしながら問題点を明確にし、協議を重ねていく必要がある。
著者
藤井 正 伊東 理 伊藤 悟 谷 謙二 堤 純 富田 和昭 豊田 哲也 松原 光也 山下 博樹 山下 宗利 浅川 達人 高木 恒一 谷口 守 山下 潤
出版者
鳥取大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2009

まず、多核的都市圏構造の研究を整理・展望し、空間的構造の変化に関して社会的メカニズムを含め、地理学と社会学からの分析を行い、同心円的なパターンから地区の社会的特性によるモザイク化、生活空間の縮小の傾向を明らかにした。これは都市整備面では、多核の個性を生かし、公共交通で結合する多核的コンパクトシティ整備を指向するものとなる。こうした整備についても、中心地群の再編等の動向について国際比較研究を展開した。