著者
伊福部 達 橋場 参生 松島 純一
出版者
一般社団法人 日本音響学会
雑誌
日本音響学会誌 (ISSN:03694232)
巻号頁・発行日
vol.47, no.12, pp.903-910, 1991-12-01 (Released:2017-06-02)
被引用文献数
3

本論文では、人工喉頭音声や合成音声の音質改善を目的に、母音の自然性を決める要因を調べた。音声の中でも定常な母音は、ほの一様な波形がピッチ周期ごとに繰り返された時間構造を持っている。しかし、まったく同じ形の波形が繰り返されているわけではなく、その形は時間と共に微妙に変化している。ここでは、このような波形の時間変動を「波形ゆらぎ」と呼ぶことにし、繰り返し周期の変化である「ピッチゆらぎ」とは区別し、母音に含まれる波形ゆらぎと音声の自然性の関係を心理物理実験に基づいて調べた。加工音声資料内での自然性の比較実験から、母音の自然性には波形ゆらぎの時間的推移が極めて重要であり、正しい順序で並べられた32個程度のピッチ波形が高い自然性を得る上で必要であることが推論された。また、自然性を決める要因は広い周波数範囲にわたって存在しているが、その中でも、高調波成分の周りの∓18Hz程度の側波が重要であることが推論された。更に、試作したパイプ挿入式電気人工喉頭音声による評価実験でこれらの推論を裏付けるような結果が得られた。
著者
菅沼 俊哉 松島 純一 酒井 昇
出版者
耳鼻咽喉科臨床学会
雑誌
耳鼻咽喉科臨床 (ISSN:00326313)
巻号頁・発行日
vol.86, no.11, pp.1531-1536, 1993-11-01 (Released:2011-11-04)
参考文献数
25

A five-year-old boy received treatment for ALL (acute lymphoblastic leukemia) for six months in the Pediatric Department of Hokkaido University Hospital.Following mild upper respiratory infection, aphtous stomatitis and dizziness, horizontal nystagmus was noted in the primary eye position and he was sent to the ENT clinic for neurootological examination.The findings of nystagmus varied from day to day and it was suggested that the brainstem and cerebellar vermis were damaged, but CT scan and magnetic resonance imaging (MRI) did not reveal any significant lesion. The symptoms were considered most likely due to herpetic encephalitis, therefore, a ten-day course of acyclovir 180 mg/day was initiated.Shortly after administration was begun, herpes simplex virus genomes were detected in the patient's cerebrospinal fluid (CSF) by polymerase chain reaction (PCR). This case, therefore, was finally diagnosed as herpes simplex encephalitis.Three months later, neurological examination showed that the child had almost returned to normal, and he was discharged.
著者
平田 恵啓 伊福部 達 坂尻 正次 松島 純一
出版者
Japan Audiological Society
雑誌
AUDIOLOGY JAPAN (ISSN:03038106)
巻号頁・発行日
vol.35, no.6, pp.659-665, 1992-12-31 (Released:2010-04-30)
参考文献数
12
被引用文献数
1 1

我々は, 蝸牛外刺激型人工内耳の開発を行っており, 音声情報を時系列信号に変換して蝸牛を刺激する方法を提案している。 本論文は, このような時系列信号がどのような刺激として知覚されるかを, プロモントリーテストで調べたものである。 結果から, 刺激閾値の個人差は極めて大きく, 刺激電流を35μAで感じた患者もいたが, 8名の患者については400μAでも刺激を感じなかった。 生じた感覚を大別すると2種類あり, 第一は音のような感覚であり, 第二は振動のような感覚やチクチクする痛みのような感覚であった。 このことから, 我々のプロモントリーテストでは聴神経ばかりでなく迷走神経や顔面神経も刺激されている可能性がある。 ダブルパルス列からなる時系列信号の弁別テストの結果から, 3名の患者については, ダブルパルスの時間差を僅かに変えただけでも生じる感覚に差がでた。 従って, 音声情報を時系列信号にして伝達する方法は蝸牛外刺激型人工内耳における信号処理方法の一つのアプローチといえる。
著者
曽我 太三 櫻井 馨士 安岡 尭之 松島 純也 坪内 陽平 金指 秀明 山本 理絵 秋枝 一基
出版者
日本救急医学会関東地方会
雑誌
日本救急医学会関東地方会雑誌 (ISSN:0287301X)
巻号頁・発行日
vol.41, no.4, pp.458-461, 2020-12-28 (Released:2020-12-28)
参考文献数
5

われわれは, 致死的多発外傷に対しハイブリッド手術室を用いて治療し救命し得た1例を経験したので報告する。症例は54歳の男性。自転車走行中に2tトラックと衝突し受傷した。当院搬送時は血圧低下, 意識障害を呈しており, 大動脈内バルーン遮断後に全身CTで外傷性胸部大動脈損傷, 外傷性血気胸, 腹腔内出血を伴う脾損傷, 不安定型骨盤骨折などの損傷を認めた。ハイブリッド⼿術室で緊急開腹を行った後, 脾損傷に対する塞栓術で止血を得た。術後は合併症なく経過し第52病日に独歩での自宅退院となった。出血性ショック症例に対する脾温存に関しては慎重に適応を判断する必要があるが, ハイブリッド手術室での開腹術と血管内治療への迅速な移行により救命できたと考えられた。
著者
飯塚 俊明 西尾 勘汰 阿部 圭典 川村 壮司 加藤 岳仁 賀来 将大 伴野 眞優 松島 純 小林 悠也 中村 健二郎 佐原 宏典
出版者
独立行政法人 国立高等専門学校機構 小山工業高等専門学校
雑誌
小山工業高等専門学校研究紀要 (ISSN:02882825)
巻号頁・発行日
vol.50, pp.63-68, 2017-12-25 (Released:2019-01-28)

This paper reports fundamental study on performance degradation, caused by solid catalyst, of 60wt% hydrogen peroxide thruster for small satellites. The chemical in-space propulsion system, with 60wt% hydrogen peroxide, has been proposed and developed based on three policies, safety first, border free, and effective COTS. Platinum based metal honeycomb solid catalyst has been installed to BBM of thruster, and the solid catalyst is one of cause to limit lifetime of the thruster. In this study, to understand degradation, comparison between observation results of solid catalyst surface by FE-SEM/EDS and thruster performance has been conducted. Small cracks have been observed on upstream surface. The evident growth of cracks has not been found; however, instability of response time has been confirmed.
著者
矢嶋 尚生 鮫島 雄祐 松島 純也 坪内 陽平 金指 秀明 櫻井 馨士 長島 義宣 秋枝 一基
出版者
一般社団法人 日本集中治療医学会
雑誌
日本集中治療医学会雑誌 (ISSN:13407988)
巻号頁・発行日
vol.30, no.2, pp.121-125, 2023-03-01 (Released:2023-03-01)
参考文献数
16

甲状腺クリーゼの誘引として感染や虚血性心疾患などが知られている。甲状腺クリーゼの背景にある甲状腺中毒症の原因にはバセドウ病が多いが,無自覚・未診断のバセドウ病も存在する。近年,コロナワクチン接種後にバセドウ病を発症したという報告が増えている。今回我々は,新型コロナワクチン初回接種後に甲状腺クリーゼを発症した患者がその後バセドウ病と診断された症例を経験した。症例は既往のない67歳男性で,新型コロナワクチン接種後の翌朝に発症した倦怠感と呼吸困難により救急要請した。心電図検査,心臓カテーテル検査で虚血による急性心不全と診断され,治療後にICUへ入室した。来院時より頻脈が継続し,入院後に発熱も認めたため,甲状腺ホルモンなどを調べたところ,甲状腺クリーゼおよびバセドウ病と診断された。甲状腺クリーゼは,急病や外傷だけによらず,ワクチン接種後にも発症することがある。
著者
伊福部 達 橋場 参生 松島 純一
出版者
一般社団法人日本音響学会
雑誌
日本音響学会誌 (ISSN:03694232)
巻号頁・発行日
vol.47, no.12, pp.903-910, 1991-12-01
被引用文献数
41

本論文では、人工喉頭音声や合成音声の音質改善を目的に、母音の自然性を決める要因を調べた。音声の中でも定常な母音は、ほの一様な波形がピッチ周期ごとに繰り返された時間構造を持っている。しかし、まったく同じ形の波形が繰り返されているわけではなく、その形は時間と共に微妙に変化している。ここでは、このような波形の時間変動を「波形ゆらぎ」と呼ぶことにし、繰り返し周期の変化である「ピッチゆらぎ」とは区別し、母音に含まれる波形ゆらぎと音声の自然性の関係を心理物理実験に基づいて調べた。加工音声資料内での自然性の比較実験から、母音の自然性には波形ゆらぎの時間的推移が極めて重要であり、正しい順序で並べられた32個程度のピッチ波形が高い自然性を得る上で必要であることが推論された。また、自然性を決める要因は広い周波数範囲にわたって存在しているが、その中でも、高調波成分の周りの∓18Hz程度の側波が重要であることが推論された。更に、試作したパイプ挿入式電気人工喉頭音声による評価実験でこれらの推論を裏付けるような結果が得られた。