著者
金 和子 小林 彰夫 河村 フジ子 松本 睦子
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
日本家政学会誌 (ISSN:09135227)
巻号頁・発行日
vol.40, no.7, pp.603-608, 1989-07-05 (Released:2010-03-10)
参考文献数
8

辛味大根と青首大根の辛味臭成分をエーテル振とう抽出により分離し, GCおよびGC-MSにより分析し, 比較した.辛味大根の香気成分は99.5%以上が含硫化合物であり, 5種のメチルチオイソチオシアネートが主要成分として同定された.なかでも, (E) -4-メチルチオ-3-ブテニルイソチオシアネートは香気中96.5% (62.7mg%) を占め, かつこの化合物は1.3ppm以上あると単独でも生大根辛味臭を呈し, 濃度の増加につれ香辛性が強化される.実際の辛味大根中における存在量は627ppmであることから, 辛味大根の辛味臭は主としてこの物質であることが明らかとなった.
著者
渡邊 悟 深井 克明 長岡 俊治 羽柴 基之 高林 彰 森 滋夫 YAMAZAKI Yoshihisa 山崎 由久 和田 佳郎
出版者
藤田保健衛生大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
1995

コンピューターグラフィクス(CG)により立体視可能なバーチャルリアリティ画像を作成し、ゴ-グル上に投影し、動的視覚刺激を行った際の立位姿勢の変化に関するを行った。体動揺の発生と前庭機能との関連を調べるため直線加速度負荷装置を用い、負荷加速度と視覚刺激CGの動きを解析することを目論んだ。平成7年度、8年度の2年間でCG作成が完成させ、更にこの間平成7年度は視覚刺激を用いない正弦波様の直線加速度負荷中の立位姿勢の変化について検討し、比較的低い負荷加速度(0.02-0.04G)では加速度に応じて体の揺れを生じるが、高い負荷加速度(0.06-0.06G)では頭の位置が安定しほぼ垂直位に固定され、前庭-頚反射の関与の大きい事が明らかにされた。解析には身体各部の動揺をビデオトラッカーにより記録し、頚部、躯幹、下肢の筋電図の記録により行った。平成8年度、9年度は専らバーチャルリアリティ画像による視覚刺激を立位姿勢の被験者にゴ-グルを介して与えた。ゴ-グルのスクリーン上に投影された運動画像の提示は姿勢動揺を誘発する。この姿勢動揺と運動画像によって生じる自己運動感覚(vection)との関係を解析した。その結果、視覚刺激の速度成分とvectionの大きさ及び体動揺の大きさにほぼ比例関係を認めた。しかし、周波数のみの変化には殆ど依存しない。正弦波刺激は予測反応がかなり早く現れる。体動揺は暗算負荷により大きな影響を受ける。この際、vectionもはっきりと減少することが明らかとなった。この様なvectionの成因には周辺視野における広い視野の運動感覚が必要であり、視野の運動が自分自身の運動と間違えるという、心理的な現象であり、引き起こされる体動揺が高次な神経活動による結果とみなすことができる。今後、更に視覚系と体動揺によって生じる前庭系との関連に関して解析を行う予定である。
著者
時友 裕紀子 小林 彰夫
出版者
Japan Society for Bioscience, Biotechnology, and Agrochemistry
雑誌
日本農芸化学会誌 (ISSN:00021407)
巻号頁・発行日
vol.62, no.1, pp.17-22, 1988
被引用文献数
1 3

(1) アズキを煮熟した際感じられる独特の甘く香ばしいにおいについて検討する目的で,北海道十勝産のアズキのにおい濃縮物を連続水蒸気蒸留抽出法にて得,シリカゲルカラムクロマトグラフィー, GLCおよびGC-MS分析により,各種におい成分を検討した.<br> (2) におい濃縮物は甘く香ばしいアズキらしいにおいを有しており, 0.8~0.9mg%の収率であった.音更シュウズ,ハヤテショウズの2品種のにおい成分を比較したが,においの構成成分およびその量比に顕著な違いは認められなかった. 2品種のにおい濃縮物,および音更ショウズのにおい濃縮物のシリカゲルカラムクロマトグラフィーによって得られた各画分を分析した結果,あわせて70化合物を同定および推定した.それらは,炭化水素14種,アルコール22種,カルボニル化合物15種,カルボン酸2種,フェノール7種,フラン5種,ラクトン2種,含窒素化合物3種であった.<br> (3) 上記のにおい物質のうち,豆臭を有する1-hexanol, 3-methyl-1-butanolなどのアルカノール,甘いにおいに寄与すると考えられる芳香族アルコール,フラン,ラクトン,甘い香気を増強すると考えられるフェノール化合物,および,含有量が多くカラメル様芳香を有するmaltolが,アズキの煮熟臭成分として重要であると考えられた.とくに,アズキの特徴的な甘いにおいには,maltolが大きく関与していることが明らかとなった.
著者
久保田 紀久 小林 彰夫
出版者
お茶の水女子大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1986

甲殻類の代表としてエビ類を選び、試料として南極産及び太平洋産オキアミ、小エビ類を用いて煮熟および焙焼法により生成される香気特性を比較検討し、さらに加熱香気形成に影響を及ぼす生体成分として遊離アミノ酸組成について分析した。焙焼処理は煮熟と異なり加熱処理法により風味の異なるものが出来るためまず条件の検討を行った。エビ類は一般に漁獲後凍結保存してあるため焙焼に際し(1)凍結乾燥(2)解凍の前処理を行ったのち、適当な温度と時間を施し、各々において最も風味のよい焙焼物を得、官能評価を行った。その結果、凍結乾燥したものは多孔質となり砕けやすく解凍後焙焼した方が歯ざわり、風味ともよいことが判った。呈味性に関与する遊離アミノ酸組成についてHPLCで分析した結果、エビの甘味に関与するといわれているグリシンに差はなかったが、アミノ酸総量は解凍試料に多く官能評価を支持した。次に加熱香気特性を調べるため煮熟香気はSDE法で、焙焼香気は全ガラス製の特製装置により減圧下、140〜160℃で焙焼後、【cH_2】【cl_2】で浸漬抽出し、減圧炭酸ガス蒸留を行い分離し、GCおよびGC-MSで分析した。その結果、南極産オキアミ、サクラエビ、小エビ類の煮熟香気は、ピラジン類や含硫アミノ酸の分解により生成されることが知られるチアルジンやトリチオラン類、さらに今回あらたに同定された二環性チアルジン類縁物が主で共通していたが太平洋産オキアミは全く異なった香気成分組成を示した。一方焙焼香気ではチアルジン類が認められずピラジン類やピリドン,アミドが多くなることはエビ類に共通しているが、オキアミ類は【(CH-3)-2】SOが多く、小エビ類はイソバレルアミドが多いなど煮熟とは異なったエビの種類による差異を示し、もう少しデータを追加すれば多変量解析によりこれら傾向を数値的に出すことが可能であることが示唆された。生体成分についていくつか検討したが今年度は上記の傾向を示唆するデータは得られなかった。