著者
中條 清美 松下 達彦 小林 雄一郎 Anthony Laurence 濱田 彰 西垣 知佳子 水本 篤
出版者
日本大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2017-04-01

本研究は,いつでもどこでもだれでも,教育用例文コーパスを使って,DDL(Data-Driven Learning,データ駆動型学習)が実施可能なように,教育用コーパス・検索ツール・教材を搭載したDDLオープンプラットフォームを開発し,その活用と普及を図ることを目的とする。具体的には,平成25‐28年度科研において開発した第Ⅰ期開発版のデータ駆動型英語学習支援サイトSCoRE(Sentence Corpus of Remedial English)に基づき,1)教育用例文コーパスの増強,2)検索ツールの高度化・軽量化,3)DDL実践・効果検証・DDL普及活動の3項目の研究を行い,成果を逐次,国内外に発信することである。平成29年度の研究実績について述べる。1) 教育用例文パラレルコーパスの増強:第Ⅰ期開発版の英語例文・日本語訳データの見直しを行い,例文の増補・改訂,および,インターフェースの改良を加えた第4次開発版SCoREを公開した。2) 検索ツールの高度化・軽量化:SCoREツールのひとつ,「適語補充問題」ツールのログ機能を強化し,教育利用の促進を図った。さらに,ユーザの利便性を考慮し,新たに携帯端末用検索ツール「m-SCoRE」を開発・公開した。3) DDL教材の開発・実践・効果検証:上記1),2)の教育現場への応用研究として,外国語学習者がDDLに取り組むための教材や効果検証テストを開発し,データ駆動型英語学習支援サイトSCoRE(http://www.score-corpus.org/)に収録した。当該サイトは,オープンプラットフォームであり,教師・研究者が自由に収録データをダウンロードできる。大学生および高専生を対象としたDDL指導実践授業の評価と教育効果の検証を行った。研究成果として,雑誌論文を5件公刊し,6件の学会発表を行った。
著者
小林 雄一
出版者
中央図書出版社
雑誌
国語国文 (ISSN:09107509)
巻号頁・発行日
vol.83, no.6, pp.1-19, 2014-06
著者
小林 雄一郎 小木曽 智信
出版者
国立国語研究所
雑誌
国立国語研究所論集 (ISSN:2186134X)
巻号頁・発行日
vol.6, pp.29-43, 2013-11

本研究の目的は,中古和文コーパスを分析対象とし,個人文体とジャンル文体の関係を明らかにすることである。具体的には,紫式部の『源氏物語』と『紫式部日記』,そして『更級日記』における助詞・助動詞の使用傾向を調査し,テクスト間の相互関係,言語項目間の相互関係,テクストと言語項目の結びつきのパターンを定量的に分析する。そして,多変量解析の手法を援用し,中古和文のテクストにおいて,書き手による文体差よりもジャンルによる文体差の影響が大きいことを示す。さらに,個々のテクストにおける語彙使用を詳細に分析するために,対数尤度比による特徴語抽出を行い,多変量解析の結果を補完する。
著者
小林 雄一郎 阿部 真理子 成田 真澄
雑誌
じんもんこん2013論文集
巻号頁・発行日
vol.2013, no.4, pp.89-96, 2013-12-05

本研究の目的は,英語学習者のライティングにおける書き手の習熟度と母語が第2 言語ライティングに与える影響を調査することである。具体的には,東アジア圏(香港,韓国,台湾,日本)の大学生によって書かれた英作文コーパスにおける58 種類の言語項目(語彙,品詞,統語,談話など)を分析対象とした。その結果,香港人学習者と日本人学習者に関しては,習熟度による影響よりも母語による影響の方が大きいことが示唆された。また,韓国人学習者と台湾人学習者に関しては,母語による影響よりも習熟度による影響の方が大きいことが分かった。
著者
小林 雄一郎
出版者
立命館大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2012-04-01

最終年度では、これまでの研究を総括し、今後の研究方向に繋がる分析を行った。まず、異なるトピックで書かれたライティングを対象として、語彙、品詞、統語、談話などに関する言語使用の差を調査した。そして、t検定、決定木、ランダムフォレストなどの結果から、異なるトピックで書かれたライティングでは、言語使用が大きく異なることが明らかにされた。このことは、習熟度の自動判定をする場合に、タスクの影響の有無に注意しなければならないということを示している。また、これまでは「学習者が何をできるか」という点に注目してきたが、今年度はそれに加えて、「学習者が何をできないか」というエラーの情報を分析に加えた。その結果、冠詞、前置詞、動詞の時制などに関するエラーが習熟度と高い相関関係にあることが明らかにされた。
著者
小林 雄一郎
出版者
大阪大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2010

近年,英語教育の現場では実践的コミュニケーション能力の育成を図ることが求められており,中学校や高校の学習指導要領にも同様の記述が見られる。しかし,円滑で効果的なコミュニケーションをするためには,「何を」伝えるかよりも,「いかに」伝えるかが必要不可欠となる。具体的に効果的なコミュニケーションを達成する1つの方法は,対比,理由,結果,列挙,例示といった接続語や(メタ)談話標識によって,談話のユニット間の論理関係や意味関係を表すことである。従って,実践的コミュニケーション能力の育成を図る上で,学習者による(メタ)談話標識の使用傾向を調査し,彼らの談話構造における特徴や誤用を究明することは極めて重要である。しかしながら,これまでの研究では,手作業による談話分析のコストが高いこともあって,限られた数の学習者データしか扱うことができず,そこから得られた結果がどこまで普遍的なものかを検証することが難しかった。さらに,大規模な調査を行う場合は,多くの分析者が必要となり,どうしても結果が個々の分析者による主観に影響されてしまうという欠点があった。本研究では,日本人中学生,高校生,大学生の英作文を集めた学習者コーパスをテキストマイニングの手法を用いて客観的に解析し,そこから得られた結果を様々な角度から比較検討した。まず,相関分析,対応分析,クラスター分析などを用いて,分析データの全体像を把握し,データの構造を視覚的に提示した。また,メタ談話標識の意味カテゴリー別に詳細な量的分析と質的分析を行い,母語話者と日本人学習者の英作文を識別する特徴を抽出した。そして,日本語を含む17種類の異なる言語を背景とする書き手の英作文データを統計的に比較した。さらに,日本の中学校・高校の英語検定教科書におけるメタ談話標識の提示のされ方を調査し,日本人学習者によるメタ談話標識の使用傾向との関係を明らかにした。
著者
小林 雄一郎
出版者
関東甲信越英語教育学会
雑誌
関東甲信越英語教育学会研究紀要 (ISSN:09112502)
巻号頁・発行日
vol.23, pp.11-21, 2009

The purpose of this paper is a corpus-based error analysis of a subordinator "because," using two kinds of electronic learner corpora: The Japanese EFL Learner (JEFLL) Corpus and the Japanese component of the International Corpus of Learner English (ICLE-JP). The former is a collection of argumentative and narrative essays by Japanese junior high school and senior high school students, and the latter is a collection of argumentative essays by Japanese college students. The analyses were made exploring the following three questions: (1) How is "because" distributed according to academic years? (2) How are sentence-fragments with "because" distributed according to academic years? (3) What are causes of learners' misuse of "because"? The following results were obtained: (1) Frequency of "because" was in inverse proportion to academic years. (2) Most of "because" in the sentence-initial position brought sentence-fragments which lack its principal clauses. (3) The misuse of "because" may be caused by L1 transfer, the confusion of spoken and written English, and the influence of junior high school textbooks.
著者
大井 恭子 田中 真理 成田 真澄 阿部 真理子 保田 幸子 板津 木綿子 ホーン ベバリー 小林 雄一郎
出版者
清泉女子大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2012-04-01

本研究は日本、韓国、台湾、香港という東アジアに位置する4か国がする英語ライティング教育に関して、アンケート調査によって実態を浮き彫りにし、そして互いが一堂に会することで実態を比較しあい、問題点などを共有し、今後の展望などに関して国際シンポジウムとして意見交換ができたことが一番の成果と言える。さらに、学習者コーパスを精査することにより、4か国・地域の学生の書く英語の諸相が明らかにされた。最終成果物として『EFL Writing in East Asia: Practice, Perception and Perspectives』を刊行し、多くの方と共有できたことで、この分野の進展につながった。