著者
柳澤 幸夫 松尾 善美 春藤 久人 直江 貢 中村 武司 堀内 宣昭
出版者
一般社団法人 日本摂食嚥下リハビリテーション学会
雑誌
日本摂食嚥下リハビリテーション学会雑誌 (ISSN:13438441)
巻号頁・発行日
vol.16, no.1, pp.75-80, 2012-04-30 (Released:2020-05-28)
参考文献数
20

近年,誤嚥性肺炎を予防するトレーニングとして,呼気筋トレーニング(expiratory muscle training:以下,EMT)が注目されている.EMT の効果としては,呼吸筋力や咳嗽能力の改善,ならびに嚥下機能への影響を示唆する報告が散見される.しかし,これらに関する報告はまだ少ない.今回われわれは,在宅療養中のパーキンソン病患者に対して,EMT を実施し,呼吸機能,咳嗽能力,呼吸筋力に加えて,口腔筋機能や質問紙を用いて摂食嚥下機能に関連する周辺症状に与える効果を明らかにすることを目的とした症例研究を実施した. 症例は64 歳の男性.診断名はパーキンソン病である.現在,病院神経内科に通院し,介護保険サービスを利用し,在宅療養中である.Hoehn & Yahr 分類はstage Ⅲで,Barthel index は65 点である.研究計画はA-B-A デザインとした.EMT はThreshold IMT(RESPIRONICS 社製)を用いて,トレーニング期間を4 週間とした.EMT の負荷設定は最大呼気筋力の30% とし,頻度は1 日15 分間2 回とした.評価項目は,呼吸機能,咳嗽能力,呼吸筋力の測定である.また,口腔筋機能,摂食嚥下機能についての評価も実施した. その結果,EMT 後に,呼吸機能では最大呼気流速と咳嗽時最大呼気流速が増加した.呼吸筋力では,最大呼気筋力,最大吸気筋力が増加した.口腔筋機能では,RSST はEMT 前後とも正常であった. 口唇閉鎖力は,平均4.82 N から5.61 N に上昇した.摂食嚥下質問紙では,体重減少,嚥下困難感,むせ,口腔外流出の各項目に変化が認められた. 本研究の結果,EMT は単に呼吸筋力増強のみではなく,咳嗽能力を向上させ,摂食嚥下機能また口腔筋機能にも影響を与え,患者の致死的原因となる誤嚥性肺炎の予防につながる可能性が示唆された.今後,データを蓄積し,EMT が嚥下機能へ及ぼす影響について,さらなる検討をする必要があると考えられる.
著者
山下 司 石堂 一巳 柳澤 幸夫
出版者
徳島文理大学
雑誌
徳島文理大学研究紀要 (ISSN:02869829)
巻号頁・発行日
vol.103, pp.1-12, 2022-03-31 (Released:2022-10-21)
参考文献数
71

本研究は,表面筋電図(EMG)を用い,分枝アミノ酸(BCAA)摂取の有無が持続的運動負荷中の筋疲労に及ぼす影響を検証した。健常成人10名に対し,BCAA摂取時と非摂取時の2回,50%MVC等尺性膝伸展運動を120秒間行ったときの,測定開始時から95秒後までにおける大腿直筋(RF)・外側広筋(VL)・内側広筋(VM)の積分筋電図(iEMG),平均周波数(MPF)をそれぞれ解析・算出した。結果,iEMGでは,2群間の運動負荷中の各筋活動は有意差を認めなかった。測定開始時〜5秒のMPFでは,RF,VLと比較しVMは有意に低値であり,BCAA摂取の有無による比較では,RFは測定開始時〜5秒,VLは測定開始時から65秒後までで有意差を認めた。VMはすべてにおいて有意差を認めなかった。本結果より,TypeⅡ線維割合が多い筋の場合,BCAAの摂取は測定開始時の筋疲労抑制効果があることが明らかになった。
著者
柳澤 幸夫 竹田 絵理 松尾 善美 山村 篤司郎 堀内 宣昭
出版者
一般社団法人 日本呼吸ケア・リハビリテーション学会
雑誌
日本呼吸ケア・リハビリテーション学会誌 (ISSN:18817319)
巻号頁・発行日
vol.25, no.2, pp.276-278, 2015-08-31 (Released:2015-10-06)
参考文献数
8

【はじめに】携帯型酸素ボンベからの酸素投与は呼吸同調器を使用することが一般的である。今回,呼吸同調器の使用有無により酸素化が異なった症例を経験したので,若干の考察を加え報告する.【対象と方法】対象は85歳,女性で6ヶ月前より,間質性肺炎にてHOT施行中であった.本症例の安静時および運動時の呼吸による圧変動から呼気,吸気時間,IE比および呼吸数を算出し,酸素投与の連続式,同調式による各項目の比較を実施した.【結果】安静時,運動負荷時ともに連続式と比べ,同調式ではIE比で呼気比率が短縮し,呼吸数が増加した.また,呼気・吸気時間において吸気時間には有意差を認めなかったが,呼気時間には有意差を認めた.運動負荷では同調式でSpO2 の顕著な低下を認めた.【結語】本症例と同様のケースでは,同調器の使用有無での酸素化変動を確認し,呼吸法の指導や酸素の投与方法の検討などが必要である.また,精神的要因による影響も今後,検討すべき課題と考えられた.
著者
川東 美菜 藍場 元弘 戎谷 友希 河野 友晴 柳澤 幸夫 橋田 誠一
出版者
徳島文理大学
雑誌
徳島文理大学研究紀要 (ISSN:02869829)
巻号頁・発行日
vol.96, pp.23-33, 2018-09-09 (Released:2019-02-20)
参考文献数
31
被引用文献数
1

【背景】食後高血糖改善を目的に,食後の運動が推奨されている。しかし,高齢や運動機能に問題があり積極的に運動を行えない人が多く存在する。そこで我々は,電気刺激療法による筋肉運動に着目し,食後の血糖値およびインス リン分泌の抑制効果について検討を行った。【方法】対象者は健常な女子学生9 名(年齢:20.8±1.3 歳,BMI:22.5 ± 3.2 kg / m 2)。それぞれ,安静,20 分間電気刺激(EMS)および20 分間トレッドミルによる歩行運動(TM)を行い,75 g経口ブドウ糖負荷試験(OGTT)後の血糖値とインスリン分泌を検討した。【結果】血糖値は,安静時と比較し,EMSおよびTMで同程度の低下傾向がみられた。インスリン分泌量も同様に,EMSはTMと同程度またはそれ以上の低下傾向を示した。【結論】EMSはTMと同じような食後血糖値およびインスリン分泌の抑制効果が確認できた。 EMSはTMよりも簡便かつ低い運動強度で実施できるため,十分な運動が行えない対象者への適用が期待される。
著者
平島 賢一 樋口 由美 柳澤 幸夫 鶯 春夫 澁谷 光敬
出版者
日本公衆衛生学会
雑誌
日本公衆衛生雑誌 (ISSN:05461766)
巻号頁・発行日
vol.69, no.1, pp.59-66, 2022-01-15 (Released:2022-01-28)
参考文献数
34

目的 近年,高齢ドライバーの免許証自主返納者は増加しているが,自動車は地方都市における住民の主な移動手段としての役割を担っており,免許証返納後の身体機能や生活に対する影響は大きいと考える。そこで本研究では,徳島県内の高齢ドライバーを対象に,免許証自主返納が活動性低下を招き,運動機能および認知・精神機能の低下を惹起するという仮説を予備的検証することとした。方法 対象者は,免許証の返納日まで日常的に週2回以上の運転を継続していた高齢者17人(平均年齢80.2歳,返納群)と,運転を継続している高齢者23人(76.9歳,運転継続群)とした。調査測定はベースラインと3か月後に実施し,活動性の評価は活動量計による3か月間の実測とLife Space Assessment(LSA)を用いた。運動機能と認知・精神機能の評価は,握力,Timed Up and Go testおよびMini-Mental State Examination(MMSE),Geriatric Depression Scale(GDS)を用いた。返納群には免許証返納に関するアンケート調査も実施した。統計解析は評価時期と2群に対して二元配置分散分析を実施した。結果 活動性の指標としたLSAの合計得点は有意な交互作用(P<0.01)を認め,返納群では3か月後に有意に低下した。一方,活動量計による歩数は有意な変化を示さなかった。運動機能および認知・精神機能のいずれの指標にも有意な交互作用を認めなかったが,MMSEとGDSで群の有意な主効果を認め,返納群が運転継続群に比して不良な成績であった。結論 徳島県在住の高齢ドライバーにおける免許証返納3か月後の変化は,日常生活における行動範囲の狭小化を認めた。運動機能および認知・精神機能の低下は観察されなかった。免許証を返納した高齢者は,自動車に代わる移動手段の速やかな確保が必要であると思われた。
著者
平島 賢一 樋口 由美 柳澤 幸夫 鶯 春夫 澁谷 光敬
出版者
日本公衆衛生学会
雑誌
日本公衆衛生雑誌 (ISSN:05461766)
巻号頁・発行日
pp.21-030, (Released:2021-11-10)
参考文献数
34

目的 近年,高齢ドライバーの免許証自主返納者は増加しているが,自動車は地方都市における住民の主な移動手段としての役割を担っており,免許証返納後の身体機能や生活に対する影響は大きいと考える。そこで本研究では,徳島県内の高齢ドライバーを対象に,免許証自主返納が活動性低下を招き,運動機能および認知・精神機能の低下を惹起するという仮説を予備的検証することとした。方法 対象者は,免許証の返納日まで日常的に週2回以上の運転を継続していた高齢者17人(平均年齢80.2歳,返納群)と,運転を継続している高齢者23人(76.9歳,運転継続群)とした。調査測定はベースラインと3か月後に実施し,活動性の評価は活動量計による3か月間の実測とLife Space Assessment(LSA)を用いた。運動機能と認知・精神機能の評価は,握力,Timed Up and Go testおよびMini-Mental State Examination(MMSE),Geriatric Depression Scale(GDS)を用いた。返納群には免許証返納に関するアンケート調査も実施した。統計解析は評価時期と2群に対して二元配置分散分析を実施した。結果 活動性の指標としたLSAの合計得点は有意な交互作用(P<0.01)を認め,返納群では3か月後に有意に低下した。一方,活動量計による歩数は有意な変化を示さなかった。運動機能および認知・精神機能のいずれの指標にも有意な交互作用を認めなかったが,MMSEとGDSで群の有意な主効果を認め,返納群が運転継続群に比して不良な成績であった。結論 徳島県在住の高齢ドライバーにおける免許証返納3か月後の変化は,日常生活における行動範囲の狭小化を認めた。運動機能および認知・精神機能の低下は観察されなかった。免許証を返納した高齢者は,自動車に代わる移動手段の速やかな確保が必要であると思われた。
著者
伊勢 高也 柳澤 幸夫 福池 映二
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement Vol.44 Suppl. No.2 (第52回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.1313, 2017 (Released:2017-04-24)

【はじめに】近年,在宅医療の推進とともに訪問リハビリテーションの需要も大きく増加してきている。しかし,課題として訪問リハビリテーション(以下:訪問リハ)ではその効果を可視化することや,より有効なアプローチの実施に向けた取り組みが重要となっている。今回,訪問リハビリテーション患者に対し,歩行時に電気刺激(以下:EMS)を併用した歩行トレーニングを試みた。その結果,筋肉量,筋力,生活の広がりに改善を認めた症例を経験したことから,若干の考察を含め報告する。【方法】症例は70歳代,女性,身長153.1cm,体重63.7kg,BMI27.2。現病歴,6年前に胸椎圧迫骨折後に胸腰椎後側方固定術を施行し退院。その後,疼痛の増悪により活動性が制限され,5年前より訪問リハビリテーション開始。現在,要介護度2であり,歩行はT字杖歩行レベル。週3回の訪問リハビリーションを利用し,在宅療養中である。週3回のうち,2回にEMS機器であるひざトレーナー(Panasonic社製)を歩行トレーニング時に併用した。EMSを併用した歩行トレーニングは15分とした。EMS併用は6ヶ月間実施した。測定はEMS介入前,3か月後,6か月後の計3回とした。測定項目はIn BodyS10を用いて筋肉量及び四肢骨格筋指標(以下:ASMI),等尺性筋力計ミュータスを用いて下肢筋力,その他に握力,FRT,生活の広がりの指標(以下:LSA),TUGを測定した。なお,結果は各測定値を前後比較し,検討を行った。【結果】EMS介入前では,全身筋肉量33.7kg,両下肢筋肉量10.9kg,ASMI6.08kg/m2,下肢筋力18.2kgf,握力12.8kg,FRT34.5cm,LSA42,TUG19.6秒であった。3ヶ月後,全身筋肉量33.6kg,両下肢筋肉量10.8kg,ASMI6.07kg/m2,下肢筋力18.4kgf,握力12.5kg,FRT34.5cm,LSA51,TUG18.8秒であった。6ヶ月後では全身筋肉量35.6kg,両下肢筋肉量12.0kg,ASMI6.55kg/m2,下肢筋力19.8kgf,握力14.8kg,FRT34.0cm,LSA51,TUG19.2秒であった。【結論】今回の介入結果から,全身筋肉量,両下肢筋肉量,ASMI,握力,下肢筋力,LSAに改善が認められた。FRTとTUGは著名な変化は認めなかった。これらの改善効果については,歩行トレーニング負荷にEMSの負荷が付加されたことで,通常の歩行トレーニングよりも運動単位の増加,筋出力の増加につながり,生活の広がりにも影響を及ぼしたと考えられた。また,FRTおよびTUGの結果はバランス機能への効果が少なかったことが影響していると考えられた。今回,1症例であるが従来の歩行トレーニングにEMSを併用することにより,下肢筋肉量増加,筋出力増加を得ることができた。今後さらに症例数を増やし,詳細に検討することが必要である。