著者
川村 清志 葉山 茂 青木 隆浩 渡部 鮎美 兼城 糸絵 柴崎 茂光
出版者
国立歴史民俗博物館
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2014-04-01

本研究は,被災地域における文化的支援が地域の生活文化の復旧に貢献しうるのかについての可能性を検討し,文化的支援の新たな可能性を、フィールドワークを通して検証することができた。東北地方太平洋沖地震後,有形・無形の文化財を救援してきた文化財レスキューは,改めて活動の意味・意義・活用が問われ,被災地の生活を再創造するための手法の確立が求められている。この要請から本研究は,レスキューした被災物についての知識の共有、活用を通じて,文化的支援のモデルを確立する。具体的には民俗学・文化人類学が被災地で果たす文化的支援モデルを構築し,地域文化へのアプローチの手段を深化させるものとする。
著者
皆上 伸 柴崎 茂光 愛甲 哲也 柘植 隆宏 庄子 康 八巻 一成 山本 清龍
出版者
林業経済学会
雑誌
林業経済研究 (ISSN:02851598)
巻号頁・発行日
vol.59, no.3, pp.10-20, 2013 (Released:2017-08-28)
被引用文献数
2

本論文では,十和田八幡平国立公園の奥入瀬渓流を対象として,リスクマネジメントの現状と問題点を明らかにした。2009年10月にアンケート調査を行い,渓流内の事故について,責任の所在に対する利用者の意向や個人属性を明らかにした上で,利用者を4群に分類した。9割弱の利用者が,歩道の安全性向上を目途とした整備を望んでいる一方で,渓流内の事故を自己責任と考える利用者も少数存在した。次に公的機関に聞き取り調査を実施し,リスクマネジメントの現状を整理した。歩道については,2003年の渓流落枝事故以降,倒木や落枝などのリスクを把握するための点検の強化や,施設賠償責任保険への加入などの改善策が実施されていた。しかし,歩道の未設置区間の存在や,曖昧な管理域などのリスクが依然残っている。組織横断的な機関を設置し,協働型の解決策をはかることも考慮する時期にきている。
著者
柴崎 茂光
出版者
国立歴史民俗博物館
雑誌
国立歴史民俗博物館研究報告 = Bulletin of the National Museum of Japanese History (ISSN:02867400)
巻号頁・発行日
vol.193, pp.49-73, 2015-02

本報告では,鹿児島県屋久島で行われているエコツーリズム業が地域社会に及ぼす経済的影響を,西暦2000年前後に焦点を絞って,需要側(観光客側)・供給側(エコツーリズム業従業者側)双方の視点から明らかにした。屋久島を訪問する年間約20万人程度の観光客のうち,19-21%に当たる約34,000-38,000人が,屋久島滞在中にエコツアーを利用していた(2001-2002年)。またエコツアーを利用した観光客の過半数(57-60%)が,パッケージツアー(以下,パック旅行)を利用しており,エコツーリズム業とパック旅行の関係が密接であることが判明した。エコツーリズム業の経営構造を分析した所,費用の約50%は労務費が占めていた。その一方,減価償却費は旅館業やボーリング場経営に比べ小さい金額・比率にとどまっており,開業に必要な投資額が莫大でないことが示唆された。損益分岐点分析を行ったところ,売上高は損益分岐点売上高を上回り,また損益分岐点比率もホテル業などよりも小さい値であるため,経営環境は良好であると推測された。屋久島のエコツーリズム業の売上高は,年間5億1,000万-5億7,000万円と推定された。エコツアー業の経営環境は良好である一方で,山岳地域への環境負荷も増大させてきた。こうした状況に対して公的機関を中心に,荒川登山バス(シャトルバス制度),様々な対策を導入してきたものの,抜本的な解決には至っていない。