著者
柴田 彰
雑誌
情報処理
巻号頁・発行日
vol.63, no.8, pp.d96-d129, 2022-07-15

本稿は,QRコードの事業戦略(研究開発,知財,標準化)と当時の社会的背景(環境)を明らかにし,それらとの関連について考察したものである.特に,事業戦略の内,標準化戦略を詳細に述べ,日本発国際提案が成立した状況を明らかにする.また,競合他社の2次元シンボルに対して,どのようにして優位性を確保するための標準化を行ったかを明らかにし,今後の日本発国際提案に指針を与えるとともに,国際提案成功の要件について述べる.
著者
宮崎 由樹 伊藤 資浩 神山 龍一 柴田 彰 若杉 慶 河原 純一郎
出版者
一般社団法人 日本人間工学会
雑誌
人間工学 (ISSN:05494974)
巻号頁・発行日
vol.56, no.6, pp.222-230, 2020-12-15 (Released:2021-12-11)
参考文献数
17

顔を細く・小さく見せることに対する日本人の関心は高いが,どのような要因が顔の見かけの大きさを左右するかについては未検討な点が多い.本研究は,顔全体のサイズ知覚に,どの顔部位のサイズ情報が関与するか検証することを目的とした.そのためにまず,女性・男性顔132画像において,20箇所の顔部位の縦幅や横幅を計測した.また,その計測サイズとそれらの画像毎に評定された見かけの顔サイズ評定値との相関を算出した(研究1).その結果,顔全体のサイズ知覚には,顔画像の性別に関係なく,顔面上部(額の長さ等)にくらべて顔面下部のサイズ(頬の広さや顎の長さ等)が強く正相関していた.この結果に基づき,顔面下部を衛生マスクで遮蔽し,顔面下部のサイズ情報を観察できなくすることで,顔のサイズ知覚が変わることも実証した(研究2).これらの結果は,顔全体のサイズを判断する際,顔面下部のサイズ情報が重要な手がかりとして用いられていることを示している.
著者
宮崎 由樹 伊藤 資浩 神山 龍一 柴田 彰 河原 純一郎
出版者
日本認知心理学会
雑誌
日本認知心理学会発表論文集 日本認知心理学会第14回大会
巻号頁・発行日
pp.43, 2016 (Released:2016-10-17)

近年,衛生マスク (以下,マスク) は,風邪や花粉対策等の衛生用途以外にも使われる。例えば,若年女性の一部は,小顔に見せる為にマスクを利用することがある。本研究では,見た目の顔の大きさにマスクの着用が及ぼす効果を検証した。実験はマスク着用 (着用,非着用) と元々の見た目の顔の大きさ (小顔,中顔,大顔群) の2要因被験者内計画で実施した。被験者は,LCDに呈示された顔画像の見た目の顔の大きさを1 (小さい) から100 (大きい) の範囲で評定した。その結果,元々の見た目の顔の大きさに関わらず,マスク非着用画像に比べ,マスク着用画像の方が顔が小さく知覚されることが示された (マスク着用の効果量は小顔群に比べ,中顔・大顔群の方が大きかった)。この効果は,マスク着用で,顔の大きさ判断に用いられる視覚手がかり (咬筋部や下顎周りの皮膚厚等) が利用できなくなること,顔が遮蔽されたことによる錯視効果に基づくと考えられる。
著者
前澤 知輝 宮崎 由樹 松長 芳織 若杉 慶 柴田 彰 河原 純一郎
出版者
一般社団法人 日本人間工学会
雑誌
人間工学 (ISSN:05494974)
巻号頁・発行日
vol.56, no.1, pp.29-33, 2020-02-15 (Released:2021-02-18)
参考文献数
7

本研究では,花粉症対策に衛生マスクを持続的に着用する日常生活場面において,鼻の不快感に対するマスクへの着香効果を経時的に測定した.花粉症をもつ40名の被験者が2種の衛生マスク(ミント着香,または統制として無香マスク)をそれぞれ6時間着用し,携帯機器を通じて鼻の不快感について定期的に回答した.実験の結果,着香マスクは無香マスクに比べて装着直後に鼻の不快感の低減が強く生じた.しかし,香りの有無にかかわらず,マスク着用後,30分程度で不快感の低減効果は飽和状態となった.このことは,着香マスクの着用が鼻の不快感を低減させる効果は,着用を始めてから30分までの香りの印象が大きく影響することを示している.
著者
廣畑 富雄 富田 純史 柴田 彰
出版者
公益社団法人 日本栄養・食糧学会
雑誌
栄養と食糧 (ISSN:18838863)
巻号頁・発行日
vol.33, no.1, pp.1-7, 1980-12-10 (Released:2010-02-22)
参考文献数
41
被引用文献数
1 1
著者
青梨 和正 柴田 彰 劉 国勝
出版者
社団法人日本気象学会
雑誌
Journal of the Meteorological Society of Japan. Ser. II (ISSN:00261165)
巻号頁・発行日
vol.74, no.5, pp.617-637, 1996-10-25
被引用文献数
7

本研究はSpecial Sensor Microwave Imager (SSM/I)の多波長輝度温度データを用いた海上での降水強度リトリーバルアルゴリズムを開発した。このアルゴリズムの考え方の特長は、多波長の輝度温度の観測値との差が最小になる輝度温度の計算値を与える、降水強度の水平方向の分布の"最適値"を求めることである。このためLiu and Curry(1993)の放射伝達モデルを用い、25km毎の格子点での降水強度からSSM/IのFOV(field of view)の19.35、37、85.5GHzの垂直偏波の輝度温度の計算値を求めた。垂直偏波の輝度温度を選んだのは海上風速の影響を最小限にするためである。この計算の際に、降水雲のモデルとしてGARP Tropical Experiment(GATE)のデータから得られた、降水の非一様性と鉛直プロファイルの統計的特性を利用した。多波長の輝度温度の計算値の観測値に対するfitnessを表すのに各波長の観測値と計算値の差を統計的に求めた標準偏差で規格化した値の2乗の和で表されるcost functionが用いられた。このcost functionのgradient equationを解くことで25kmの水平解像度を持つ降水分布の最適値が求められた。このアルゴリズムを用いた降水のリトリーバルを2つの事例(1990年9月17日21UTCの台風9019号、1988年4月28日21UTCの温暖前線の降雨)について行った。リトリーバルされた降水量は気象庁の現業レーダ網で観測された降水量と比較された。その結果、本研究のアルゴリズムは大規模な降水域内のメソスケールの降水のパターンを増幅している、またこの増幅がリトリーバルされた降水量をレーダで観測された降水量とより線形に対応させている事が分かった。この改善は本研究のアルゴリズムが高周波のチャンネルのデータの有効な利用によるものである。高周波のチャンネルのデータは大規模な降水域内の降水域の再分配に役立っている。またTOGA-COARE(Tropical Ocean-Global Atmosphere Coupled Ocean-Atmosphere Respose Experiment)期間中の船舶レーダデータとこのアルゴリズムの降水リトリーバル値の統計的比較も行われた。この期間平均の(降水リトリーバル/レーダ降水強度)の比は0.944であった。この比は降水の非一様性と鉛直プロファイルに大きく依存するので、上記の比の統計値は本研究のこれらのパラメータの値が妥当なものであることを示すと考えられる。
著者
斉藤 貞夫 柴田 彰
出版者
社団法人日本気象学会
雑誌
天気 (ISSN:05460921)
巻号頁・発行日
vol.57, no.1, pp.5-17, 2010-01-31

マイクロ波放射計による海上風速算出には,降水下での風速推定が困難であるという問題があったが,地球観測衛星Aquaに搭載されているマイクロ波放射計AMSR-Eの6.925GHz帯と10.65GHz帯水平偏波輝度温度から算出する「全天候型海上風速」は雨天でも海上風速の算出が可能である.調査の結果,全天候型海上風速は台風の強風に対しても精度よく風速が算出できていることが明らかとなり,現業的な利用が期待できることが分かった.