著者
柴田 里程 清水 邦夫 神保 雅一 加藤 剛
出版者
慶應義塾大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2003

神経細胞網の発火,心拍,降雨,地震,金融商品の取引発生,店への客の来店など,さまざまな点過程データに共通に適用可能なデータオリエンテッドなモデル構築手法を開発するとともに,ひとつのモデルライブラリーとして蓄積した.また,適切なデータ取得に必要な実験計画,データ解析をトータルにサポートするソフトウエア環境の構築,時系列モデルとの関連性の研究も並行して進めた.本研究は,現象と数理モデルを結びつける道筋を明らかにし,その道筋つまりメタデータを蓄積し,支援環境として実現する一般的な研究計画の一環であり,特に点過程データに焦点を絞ったものである.ライブラリーは,クラスタリングのある点過程に対する汎用なモデル,隠れマルコフ点過程モデル,隠れ準マルコフ点過程モデル,混合点過程モデル,多変量点過程モデル,ゼロにリセットされたのち単調に増加する強度関数モデル,モデルそれぞれに関する最尤解探索離散化アルゴリズムなどからなり,その適用事例は,神経細胞の膜電位,心拍,降雨,地震発生,美容院来店,金融商品取引発生など多岐に渡る.また,モデル構築を容易にするための統合環境も構築した。本環境はDandDに基づくものであり,Textile Plotをはじめとするさまざまなデータヴィジュアリゼーション手法の充実が一つの特徴である.
著者
柴田 里程
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. A, 基礎・境界 (ISSN:09135707)
巻号頁・発行日
vol.83, no.6, pp.605-611, 2000-06-25
被引用文献数
4

Kullback-Leibler情報量に基づく様々な統計的モデル選択基準についてその特徴を比較するとともに, 目的によって使い分けることの重要さを指摘する.また, 漸近近似に依存する基準に関しては, その近似の有効性が重要であることを例示し, 特に離散値に対するモデルに関しては, 漸近近似に頼らない方法, 例えばブートストラップ法を用いてKullback-Leibler情報量を推定する必要があることを示す.
著者
柴田 里程
出版者
慶応義塾大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1997

本研究は,従来のモデル選択理論をより体系化するとともにニューロネットワーク,ウエーブレットなどこれまでの伝統的な推測法と異なった側面をもつ計算機依存型の推測法に対しても適用可能な形に拡張し,十分実用に耐える根拠と効力を持つ汎用なモデル選択法を確立することを目的として開始した研究である.まず最初の目的は,Springer-Verlag社から依頼されていたモノグラフ"Statistical Model Selection"の執筆を通じて1つの体系的なアプローチを探索することによりかなり達成できた.特に,BICやABICさらにはMDLに代表されるモデル選択法をベイジアンの立場から統一的に扱うことが判明したことは,今後のこの分野のさらなる発展につながるばかりでなく,ニューロネットワークのノード数の選択などに無反省にこれらの方法が適用されている現状に対する警鐘としても重要な意味を持つ結果である.二番目の目的に対しては,主に離散データに対する統計モデルの選択を中心に研究を進めた.多くの計算機依存型の推測法がこのような離散的な値をとるデータを対象としているからである.その結果,連続的な値をとる場合によく用いられるAICに代表されるモデル選択法をそのまま用いるのは必ずしも適切でないことが明らかになった.その主な理由は,離散分布の場合には推定量の分布の漸近分布への収束が極めて遅く,また一様ではないためである.そこでどんな修正が適当かを探索するとともにそれぞれについて検証を重ねた.その結果いわゆるブートストラップ法による修正項の推定がかなり広範囲に有効であることが判明し,そのために必要なアルゴリズムも開発した.さらに,実際問題への適用例として従来から研究対象としてきた7種類の金利時系列を取り上げ,多変量ARモデルのモデル選択の実証研究を行った.そのためには,変量とラグの自由な組合せでのモデル選択を行えるソフトウエアが存在しなかったためその開発から始める必要があった.このソフトウエアを用いて様々な期間についてモデル選択を行ったところ,バブルの時期も含め様々な期間について共通がモデルを選択できることが判明した.これは実際問題での統計的モデル選択の重要性とその有効性を示す結果である.
著者
尾形 良彦 種村 正美 遠田 晋次 庄 建倉 鶴岡 弘 田村 義保 佐藤 整尚 川崎 能典 島崎 邦彦 間瀬 茂 柴田 里程 ANDREA Llenos SEBASTIAN Hainzl JEFFREY J. DAVID Vere-Jones
出版者
統計数理研究所
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2008

ETAS(epidemic type aftershock sequence)などの統計的点過程モデルで各地の地震活動の確率的予測を行う同時に,モデルを物差しにして静穏化・活発化などの地震活動異常を検出できる解析手法を確立した.地震活動予測からの逸脱による地震活動異常の空間パタンから,断層内の非地震性すべりによる地殻のストレス変化との因果関係を実証研究した.このような地震活動の異常性が殻歪変化のセンサーとして有用である.さらに地震活動異常とGPSによる地殻変動データとの整合性を確かめ,大地震の前駆的なすべり現象の解明に迫った.