著者
辻川 剛範 杉山 昭彦 花沢 健 梶川 嘉延
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
電子情報通信学会論文誌 A (ISSN:09135707)
巻号頁・発行日
vol.J106-A, no.2, pp.21-39, 2023-02-01

前後方向マイクロホン配置を用いた車載用高性能マイクロホンアレーシステムを提案する.車室内でマイクロホン配置に課せられる制約を利用して,業界標準の左右方向マイクロホンアレー軸を90度回転して前後方向とすることにより,雑音源方向に投影されたアレー軸に関する話者方向指向性の虚像を,雑音源と異なる方向に向ける.話者方向指向性の虚像が雑音方向と重なることがないので,音声と雑音を方向で区別することが可能となり,少ない音声歪で高い雑音抑圧度を達成できる.最初に,左右方向のアレー軸を有する2マイクロホンアレーで,アレー軸に関して投影された話者方向指向性の虚像に重なる方向の車室内雑音が抑圧できないことを,マイクロホン信号間相対位相の解析を通じて示す.続いて,車室内で録音した信号によるシミュレーション結果を用いて,提案するマイクロホンアレーシステムが従来のマイクロホンアレーシステムより雑音抑圧量を最大7dB,単語正解精度を最大13%改善することを示す.
著者
池添 剛 梶川 嘉延 野村 康雄
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.42, no.12, pp.3201-3212, 2001-12-15
参考文献数
24
被引用文献数
30

本論文では,感性語により音楽を検索するシステムを提案する.提案システムでは,データベース中の曲をマッピングするための検索空間をSD法ならびに因子分析により生成する.また,データベースに新たな曲を登録する際には,GAとニューラルネットワークにより構成された自動インデクシングシステムにより検索空間へのマッピングを行う.検索の際には,8つの感性語対の度合い(1?7)をニューラルネットワークに入力することにより,ニューラルネットワークはそれらの入力に対応する感性空間中の座標を出力するので,検索システムはその出力座標値からユークリッド距離の最も近い曲から順番に検索候補としてユーザに提示を行う.提案システムに対して主観評価実験を行ったところ,検索システムに関しては95%の被験者が満足しており,自動インデクシングシステムに関しては59%の被験者が満足するという良好な結果が得られた.In this paper, we propose a music retrieval system with KANSEI words.In the proposed system,retrieval space in which tunes are mapped is generated by semantic differential methods and factor analyses.When a new tune is registered,the tune is mapped in the retrieval space by an automatic indexing system using genetic algorithms and neural networks.In case of retrieval,arbitrary levels of 8 pairs of KANSEI words are input into a neural network,the neural network outputs the corresponding coordinate value in the retrieval space.Then the proposed retrieval systems show a user some candidate tunes in near order of distance from the output value.The subjectivity evaluation experiments to the proposed system demonstrate the good result that 95% of subject was satisfied about the retrieval system and 59% of subject was satisfied about the automatic indexing system.
著者
梶川 嘉延
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. DSP, ディジタル信号処理 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.103, no.55, pp.39-44, 2003-05-09
被引用文献数
1

近年,非線形システムの同定,非線形ひずみの除去などにVolterra級数展開に基づいたディジタルフィルタ(Volterraフィルタ)を利用する方法が提案されている.Volterraフィルタは従来の線形ディジタルフィルタを非線形に拡張したものであり,その構造や性質は線形ディジタルフィルタを包含している.よって,線形ディジタルフィルタで培われてきた技術を容易に導入することが可能である.本稿ではVolterraフィルタのうち,特にそのフィルタ係数を自動修正する適応Volterraフィルタに焦点を当て,その更新アルゴリズムを紹介するとともに,その一応例として非線形音響エコーキャンセラについても論じる.
著者
坂本 崇 梶川 嘉延 野村 康雄
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.40, no.4, pp.1901-1909, 1999-04-15

本論文では 非線形判別分析を用いて 計算機に与えた楽譜情報からその曲の特徴や印象を自動的に抽出し 任意のグループに分割する手法を提案する. 特定の演奏者による演奏の個性や芸術性を抽出する際 情報処理的な観点からのアプローチを行うとして 演奏者がどのように楽譜を解釈し 演奏に至るかという命題の解決策は (1)楽譜に記述されている情報や音楽理論を考慮したプロダクションシステムによるルール生成法 (2)ニューラルネットワークを用いた解法 (3)重回帰分析を用いた解法などが報告されている. これらの一問題点として 演奏者は楽曲の特徴や印象に応じて奏法を変える事実が存在するにもかかわらず 処理を行ううえで明示的に考慮されたものが存在しないことがあげられる. 本論文ではその問題点を解決すべく まず 因子分析やSD法を用い 実際のリスナーの立場に立った心理聴取実験を行う. そして ニューラルネットワークによる非線形判別分析を用い その楽曲はどのような印象を持つかをコンピュータが自動的に判別し その印象にふさわしいグループに振り分ける手法を提案する. なお このシステムでは未知の楽曲においても88%の精度でその曲印象を判別させることに成功した.
著者
山本 修央 梶川 嘉延 野村 康雄
出版者
一般社団法人 日本音響学会
雑誌
日本音響学会誌 (ISSN:03694232)
巻号頁・発行日
vol.60, no.2, pp.61-65, 2004-02-01 (Released:2017-06-02)
参考文献数
7

本稿では,イントラコンカ型ヘッドホンを周波数特性からランク付けする手法を提案し,聴取実験によりイントラコンカ型ヘッドホンの周波数特性とその音質との関連性を検討する。これまで我々は,設計目標が未知であるイントラコンカ型ヘッドホンの設計目標として,自由空間における線形歪のないスピーカ正面1[m]位置における頭部伝達関数を提案し,聴取実験によりその有効性を検証してきた。その結果かなりの有効性が示された。そこで本稿では,頭部伝達関数はイントラコンカ型ヘッドホンの設計目標として有効であるという立場から,既存のイントラコンカ型ヘッドホンの周波数特性がどの程度頭部伝達関数の周波数特性に一致しているかを検証することで,イントラコンカ型ヘッドホンのランク付けができるかどうかを検討する。また,イントラコンカ型ヘッドホンの周波数特性とその音質との関連性を聴取実験により検討する。
著者
池添 剛 梶川 嘉延 野村 康雄
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.42, no.12, pp.3201-3212, 2001-12-15

本論文では,感性語により音楽を検索するシステムを提案する.提案システムでは,データベース中の曲をマッピングするための検索空間をSD法ならびに因子分析により生成する.また,データベースに新たな曲を登録する際には,GAとニューラルネットワークにより構成された自動インデクシングシステムにより検索空間へのマッピングを行う.検索の際には,8つの感性語対の度合い(1?7)をニューラルネットワークに入力することにより,ニューラルネットワークはそれらの入力に対応する感性空間中の座標を出力するので,検索システムはその出力座標値からユークリッド距離の最も近い曲から順番に検索候補としてユーザに提示を行う.提案システムに対して主観評価実験を行ったところ,検索システムに関しては95%の被験者が満足しており,自動インデクシングシステムに関しては59%の被験者が満足するという良好な結果が得られた.
著者
三好 誠司 梶川 嘉延
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. EA, 応用音響 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.112, no.47, pp.53-58, 2012-05-17

FXLMSアルゴリズムを用いるアクティブノイズコントロールのふるまいを統計力学的手法を用いて理論的に明らかにする.適応フィルタと未知システムの相互相関,適応フィルタの自己相関を巨視的変数とし,それらの動的ふるまいを記述する連立微分方程式を,参照信号が白色であり,フィルタのタップ長が十分長いという条件の下で決定論的な形で導き,解析的に解く.解析においては独立仮定,周期的入力,小ステップサイズ,少タップ数という仮定はおかない.導出された理論を用いて学習曲線の系統的ふるまいや適応速度について議論する.また,実験室で測定された一次経路のインパルス応答を用いた計算機実験の結果と比較する.
著者
矢吹 淳哉 梶川 嘉延 野村 康雄
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. A, 基礎・境界 (ISSN:09135707)
巻号頁・発行日
vol.80, no.11, pp.1868-1876, 1997-11-25
被引用文献数
36

Filtered-x LMS法を用いてANCシステムを動作させる場合, ステップゲインと呼ばれる定数を決定しなくてはならない. ところが, これは小さ過ぎるとフィルタ係数の収束が遅くなり, それを速くするために大きくし過ぎるとシステムが安定に動作しなくなる. そこで, システムの安定性を満たし, かつ収束が速い値を選ぶために, 安定に動作する上限値を知る必要があるが, 従来はその値が不明であったため, ステップゲインは試行錯誤して決定されていた. またFiltered-x LMS法には, ANCシステムにおける2次音源スピーカと誤差検出マイクロホンの間の経路(Error Path) Cを同定したフィルタC^^^が必要であり, 当然これにはモデル化誤差が含まれている. 本論文では, このような場合に, 許容されるCとC^^^の位相誤差から安定に動作するステップゲイン値の上限を求める理論式を導出する. また, 同理論式を実際のシステム稼慟時に入手可能な情報で表現することを試みる. 更に, 理論式によって得られたステップゲイン値を使用した場合とその他の値を使用した場合における収束特性の比較を行い, 提案する理論式の有効性を示す.
著者
森 敬 梶川 嘉延 野村 康雄
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. A, 基礎・境界 (ISSN:09135707)
巻号頁・発行日
vol.86, no.2, pp.101-110, 2003-02-01
被引用文献数
15

本論文では,摂動の大きさを自動制御する新たな周波数領域同時摂動法(FDSP法)を用いたアクティブノイズコントロール(ANC)システムを提案する.提案法は摂動の大きさを自動制御させることにより,従来の摂動の大きさを固定した場合より収束速度を大幅に改善できる.具体的には,誤差信号が大きいときは摂動の大きさを大きくし,誤差信号が小さくなるに従い摂動の大きさを小さくするという制御を行うことで達成される.その結果,本システムはブロック処理に起因する不安定性の問題を解決するとともにステップサイズを大きな値に設定できる.本制御は摂動の大きさを小さく設定する必要がある場合に効果的であり,特に摂動の大きさを0.08としたときには収束速度は50倍以上高速化される.また本制御は,摂勘付加に起因して発生する雑音の抑制にも有効である.
著者
梶川 嘉延 野村 康雄
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. SIS, スマートインフォメディアシステム (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.104, no.511, pp.21-25, 2004-12-09

本稿では,ヘッドフォン感覚で装着し,常に耳元での消音を実現する新しいマルチチャネルアクティブノイズコントロールシステムを提案する.本システムでは,騒音制御フィルタの更新アルゴリズムに摂動法を用いているため,二次経路の変動に追従して騒音制御フィルタの更新を行えるという利点を有する.つまり,環境変化に対して安定な制御が可能となる.そこで,quiet zone(消音領域)が耳元にくるように誤差マイクロホンを固定し,これをヘッドフォンのように頭部に装着することで,ユーザが移動しても常に消音が可能となる.本稿では,このヘッドフォン型誤差マイクロホンを用いたマルチチャネルアクティブノイズコントロールシステムの有効性を実システムにより検証する.
著者
梶川 嘉延 野村 康雄
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. A, 基礎・境界 (ISSN:09135707)
巻号頁・発行日
vol.79, no.11, pp.1808-1816, 1996-11-25
参考文献数
18
被引用文献数
51

本論文では線形ひずみおよび非線形ひずみを同時に除去する非線形逆システムの適応Volterraフィルタを用いた時間領域でのオフライン設計法を提案する.従来の線形フィルタによる線形ひずみの除去法では,線形ひずみの除去は行えるが,それに伴い非線形ひずみが増大するという欠点を有していた.本論文では,まず線形ひずみの除去によって非線形ひずみが増大するメカニズムをVolterra理論を用いて理論的に明らかにする.また,非線形システムの縦列接続によって生じる信号成分をVolterra理論を用いて導出することにより,非線形ひずみを除去する非線形逆システムの設計法を与える.提案法では非線形ひずみを最大70dB低減でき,更に設計時間の短縮化も実現している.
著者
佐用 敦 梶川 嘉延 棟安 実治
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. ICD, 集積回路 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.110, no.216, pp.7-12, 2010-09-28

本稿では発話に伴う口唇変化を利用した生体認証システムにおける識別器生成手法について述べる.口唇変化を利用した生体認証は口唇形状(身体的特徴)と発話に伴う口唇変化(行動的特徴)を用いて個人認証を行い,また他の生体認証のように特殊な機器を必要とせず,口唇領域を抽出するカメラのみで構築が可能である.これまで,口唇領域の小領域(セル)内から抽出した特徴量を用いて生成される識別器を用いた認証システムを提案してきた.従来システムにおける識別器は微小な口唇変化に対して頑健である.しかし,従来の識別器生成手法では認証に用いる複数の特徴量が一律に取り扱われているため,認証に有効でない特徴量が認証に悪影響を及ぼす可能性があると考えられる.そこで本稿では,AdaBoost学習から得られた信頼度によって各特徴量に重み付けを行う識別器生成手法を提案する.各特徴量に対して重み付けを行うことにより,認証に有効な特徴量ほど認証に影響を与えることができると考えられる.そして認証実験を通して,提案手法の有効性を示す.
著者
釜口 久史 梶川 嘉延
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. PRMU, パターン認識・メディア理解 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.108, no.484, pp.263-266, 2009-03-06

本稿では,フォトアルバムのための人物仕分けシステムを提案する.従来の画像管理ソフトでは,サムネイルを閲覧しながらユーザが仕分けを行う,時系列やファイル名順に並び替えるのみであったため,ユーザの負担が大きい,画像の内容が反映されないなどの問題があった.そこで,本システムでは画像の内容に基づき自動的に画像を仕分けするシステムの構築を行う.また,入力した画像に近いものは抽出を行うことができたが,データベース中に抽出できなかったものが残るという問題点に対して,フィードバックシステムによって,抽出困難であった画像と入力画像を強制的に関連付け抽出を行う.そしてシステムの有効性を検証するため主観評価実験を行った.
著者
梶川 嘉延 野村 康雄
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. A, 基礎・境界 (ISSN:09135707)
巻号頁・発行日
vol.82, no.1, pp.1-10, 1999-01-25
被引用文献数
5

本論文では非線形システムの線形ひずみ及び非線形ひずみを同時に除去する非線形逆システムのオンライン設計法を提案する. ここでは, 適応Volterraフィルタを用いて非線形逆システムをオンライン設計する方法を議論する. これまで, 我々は非線形逆システムをオフラインで設計する方法を提案してきたが, これらの 手法では対象としている非線形システムの特性が変化した場合, 非線形ひずみ除去効果が低減するという問題点を有していた. 本論文ではまず, 非線形システムの特性変化が非線形ひずみ除去効果にどのような影響を与えるかについて検討する. 続いて, 提案するオンライン設計システムを示し, その設計原理を3段階に分けて説明する. すなわち, オンライン設計の第1段階として未知非線形システムの線形項(1次Volterra核)を, 第2段階として線形逆フィルタを, 第3段階として未知非線形システムの2次非線形項(2次Volterra核)をそれぞれオンラインで同定及び設計する方法について説明する, 最後にコンピュータシミュレーションにより提案法の有効性を示す.
著者
西尾 達也 梶川 嘉延 野村 康雄
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. EA, 応用音響 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.99, no.590, pp.41-48, 2000-01-27
被引用文献数
2

本稿では, 我々が提案した周波数領域適応Volterraフィルタの実機における検証を行う.これまで我々は, スピーカーシステムをVolterra級数展開でモデリングする方法として, 適応Volterraフィルタによる同定方法について研究を行ってきた.しかし, これはシステム長が大きい場合に演算量が膨大になるという問題点がある.そこで, 演算量の削減を可能にするOverlap-save法を利用した周波数領域適応Volterraフィルタについて述べる.更に, Volterra標本化定理を導入した同定法について述べ, その演算量について述べる.次に, 実際のスピーカシステムにおける周波数領域適応Volterraフィルタの同定精度の検証を行う.最後に, 同定したVolterra核を用いて2次非線形歪みの除去をオフラインで行い, その除去結果を検証する.