著者
住田 裕子 森 敏昭
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.67, no.1, pp.40-53, 2019-03-30 (Released:2019-12-14)
参考文献数
24
被引用文献数
3 3

本研究では,小学校の算数科授業において個々の児童の深い概念理解を促すペア学習中の相互作用プロセスについて検討した。まず,小学4, 5年生の児童を算数問題解決のペア学習中になされた発話の種類に基づいて「自己中心性タイプ」「他者視点取得タイプ」「協調タイプ」の3タイプに分類した上で,ルール評価アプローチを援用したプレテストとポストテスト課題における平均得点を比較した。その結果,発話のタイプによって解決方略変容の生起に有意な差が見られ,調節的発話の発現を特徴とする協調タイプ群の児童が課題に対してより適応的な方略をとるようになり,調節的発話の生起が相互作用の効果を促進させることが示唆された。次に,それぞれのタイプ群の発話の推移を分析し,共同注意の観点に基づいて分類した3種類の発話(誘導的・未追跡的・追跡的)から次の3種類の発話(誘導的・未追跡的・追跡的)への推移確率を比較した。その結果,協調タイプ群は追跡的発話から追跡的発話への推移が他の2群に比べて有意に多く,相互作用プロセスにおいて追跡的発話の循環が概念理解を促すことが示唆された。
著者
森 敏昭
出版者
日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.28, no.1, pp.57-61, 1980
被引用文献数
3

文章を黙読した場合と音読した場合とでは, 文章の記憶及び読解の成績にどのような違いが生じるかという問題を, 大学生を被験者として検討した。その結果, 音読することは, 文章を逐語的に記憶する場合には有効であるが, その効果は一時的であることがわかった。これに対し, 黙読することは, 文章を逐語的に記憶するというよりも, 文章の内容を体制化して記憶する場合に有効であり, その効果は音読の場合よりも永続的であることがわかった。<BR>一方, 黙読するか音読するかということによって, 読解の成績には顕著な差はみられなかった。このことは, 黙読するか音読するかという事が読解と無関係であるというより, 読解テストのやり方自体に方法上の改善をほどこす必要があるということを示唆するものと考えられる。
著者
森 敏昭
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.28, no.1, pp.57-61, 1980-03-30 (Released:2013-02-19)
参考文献数
9
被引用文献数
4 3

文章を黙読した場合と音読した場合とでは, 文章の記憶及び読解の成績にどのような違いが生じるかという問題を, 大学生を被験者として検討した。その結果, 音読することは, 文章を逐語的に記憶する場合には有効であるが, その効果は一時的であることがわかった。これに対し, 黙読することは, 文章を逐語的に記憶するというよりも, 文章の内容を体制化して記憶する場合に有効であり, その効果は音読の場合よりも永続的であることがわかった。一方, 黙読するか音読するかということによって, 読解の成績には顕著な差はみられなかった。このことは, 黙読するか音読するかという事が読解と無関係であるというより, 読解テストのやり方自体に方法上の改善をほどこす必要があるということを示唆するものと考えられる。
著者
沖林 洋平 神山 貴弥 西井 章司 森保 尚美 川本 憲明 鹿江 宏明 森 敏昭
出版者
一般社団法人 日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
vol.31, no.Suppl., pp.149-152, 2008-02-10 (Released:2016-08-04)
参考文献数
7
被引用文献数
1

本研究では,児童生徒の情報活用の実践力と情報モラルの関係について調査を行った.情報活用能力実践尺度得点と情報モラル課題について学年間比較を行った結果,次の2点が明らかとなった.まず,全般的な情報活用の実践力は,中学生の方が小学生よりも高かった.つぎに,情報モラルについては,小学生と中学生ともに情報モラル意識と情報活用の実践力に関連が見られた.また,全般的な情報活用の実践力については,中学生の方が小学生よりも有意に高く,とりわけ,情報活用の実践力の中でも「収集力」「判断力」「処理力」について,中学生の方が小学生よりも有意に高かった.また,情報モラルの高さと家庭における教育に関連があること,初等中教育課程での学校教育における総合学習等の授業における授業実践の効果が示唆された.
著者
森 敏昭
出版者
日本教科教育学会
雑誌
日本教科教育学会誌 (ISSN:02880334)
巻号頁・発行日
vol.38, no.4, pp.89-95, 2016 (Released:2020-01-26)
参考文献数
3
被引用文献数
1

学習科学は学習と教育について科学的に研究する新しい学問分野であり,認知心理学,発達心理学,教育心理学,脳科学,教育学,社会学,文化人類学,教育工学などの多様な学問分野を総合することによって急速に発展しつつある学際的科学である。すなわち学習科学が目指しているのは,学習を促進する認知的・社会的条件を明らかにし,研究で得られた知見を人々がより深く,より効果的に学ぶことができるように学校の教室や他の学習環境を再デザインすることである。本稿では,学習科学の最近の幅広い研究成果を精査し,教科教育の改革に向けて提言を行う。
著者
三島 知剛 安立 大輔 森 敏昭
出版者
日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
vol.33, pp.69-72, 2009
被引用文献数
2

本研究の主目的は,教育実習生が必要と感じている学習内容を実習前後の変容の可能性と合わせて検討することであった.そのため,学習を大学講義で扱われることが多い理論的内容と,大学講義では扱われにくい実践的内容に大別し,実習生135名を対象に調査を行った.その結果,(1)教科の指導法や心理学的な背景を必要とする理論的学習や,学習指導や授業作りに直結した学習内容を必要と感じていること,(2)実習経験により,実践的な学習内容より理論的な学習内容を必要と感じるようになること,の2点が主に示唆され,実習経験による実習生の求める学習内容への意識の比重の変化の可能性や大学カリキュラム構築に関する示唆と合わせて検討された.