著者
前田 智子 浅川 具美 森田 尚文
出版者
The Japan Society of Home Economics
雑誌
日本家政学会誌 (ISSN:09135227)
巻号頁・発行日
vol.50, no.6, pp.571-579, 1999-06-15 (Released:2010-03-10)
参考文献数
15
被引用文献数
2

スポンジケーキの品質を客観的に評価するため, 小麦粉およびバターの混合過程に一定条件での手作業を確立し, バター添加温度の違いが生地と焼成後のケーキの性状におよぼす影響を明らかにした.スポンジケーキの材料配合は小麦粉 100g, 鶏卵 200g (卵黄 80g, 卵白 120g), 砂糖 100g とし, バターの添加量は30g とした.また添加温度はバター添加なしの対照, 40℃, 75℃, 98℃ の 4 試料とした.(1) バターの添加温度が高くなると, 生地の比重は小さくなり, 気泡の消失を抑制したと推察された.(2) バターの添加温度が高くなると, 生地中のバター粒子の分散性は良くなり気泡界面との付着も増加した.その結果気泡膜が強化され気泡の安定化にもつながったと考えられる.(3) バターの添加温度が高くなると, ケーキの膨化率と比容積は大きくなった.(4) バターの添加温度が高くなるとケーキはやわらかくなり, 弾力性に乏しく, 凝集性に富むようになった.(5) 官能評価では, 物性値の結果で特に弾力性に乏しく凝集性に富んだ 75℃ の試料が, 口ざわりと口どけの良さで良い評価を得た.以上の結果から, 高温のバターを添加することで生地に若干の熱が加わり, 卵中タンパク質の加熱変性とデンプン糊化が生じ, 焼成中気泡に十分な熱膨張をもたらしたと推察される.また生地中の水分含量は37.6~38.2% と試料間で有意差は認められなかったが, 添加されたバター中約 16% の水分はその温度が高温の場合には主にデンプンの糊化に使われ, グルテン形成を抑制し, ケーキの物性や官能評価に良い影響をおよぼしたと考えられた.
著者
森川 直
出版者
教育哲学会
雑誌
教育哲学研究 (ISSN:03873153)
巻号頁・発行日
vol.2004, no.89, pp.145-151, 2004-05-10 (Released:2010-01-22)

わが国のペスタロッチ研究史に新たな一ページが加えられた。本書は、学位論文「ペスタロッチ教育思想における宗教的基礎-その形成と展開」 (一九九九年十一月筑波大学) をもとに編まれたもので、著者の積年の研究の集大成とみなされるものである。「まえがき」で、著者は本書について次のように述べている。「本書は、従来もっぱら教育の近代化の先駆者として位置づけられてきたペスタロッチの教育思想と実践を改めて問い直し、ペスタロッチの教育思想と実践の根底には、一般的には『非合理的』、『非近代的』であると批判されがちであった宗教観が、それもきわめて根源的 (ラジカル) な、敬虔主義的で実践的な深い宗教観が、厳然と存在していることをまず論じている。そして、この宗教的基盤こそが、かれの人間観とそれにもとづく人間性尊重に徹する実践的教育思想を支えているということ、また、それゆえにこそ、かれの教育思想は、近代がもたらしたさまざまな負の遺産を克服し、あらたに人類に希望と勇気を与えうる教育を創造する基礎力をもつという意味での現代的意義をもつこと、などをさまざまな角度から論じている。」