著者
長濱 澄 森田 裕介
出版者
一般社団法人 日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
vol.40, no.4, pp.291-300, 2017-02-20 (Released:2017-03-23)
参考文献数
16
被引用文献数
4

本研究では,オンライン学習環境を想定した映像コンテンツの高速提示と学習効果の関連性を明らかにすることを目的とした.1倍速,1.5倍速,2倍速の提示速度の異なる映像コンテンツを3種類作成し,大学生75名に提示した.作成した映像コンテンツは高等学校における情報科の宣言的知識を扱ったものであった.学習の前後に実施した理解度テストの得点から,学習効果を検証した.また,3種類の提示速度に対する主観評価を,質問紙を用いて調査した.理解度テストの分析結果から,提示速度の相違は,学習効果に影響を与えないということが明らかになった.一方,質問紙調査の結果から,映像コンテンツを利用した学習に適した提示速度として,1.5倍速が最も支持されているのに対し,2倍速に対する主観評価は肯定的ではないことが明らかになった.これらのことから,ある条件によっては,一定時間に,これまでの1.5倍から2倍の学習ができる可能性が示唆された.
著者
杉森 健 三武 裕玄 佐藤 裕仁 小栗 賢章 長谷川 晶一
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.61, no.11, pp.1697-1707, 2020-11-15

VRメタバースやVTuberなどのように,モーションキャプチャデバイスを用いてリアルタイムにアバターを操作する機会が増えるにつれて,アバター同士接触することでコミュニケーションをとったり,アバターと物体が衝突する機会が増えている.しかし,現状ではアバター同士やアバターと物体が接触しても貫通してしまうか,不自然な動作になってしまう.そこで本研究では物理シミュレーションを用いて自然な接触動作を自動生成する.その際に問題となる追従遅れをフィードフォワード制御により解決する.提案手法により,これまでできなかったアバター同士やアバターと物体の自然な接触が可能であることを示す.さらに,提案手法ではこれまで一般的であった接触している振りの演技が不要になることで,演者の負担が軽減されることを示す.
著者
中山 千尋 岩佐 一 森山 信彰 高橋 秀人 安村 誠司
出版者
日本公衆衛生学会
雑誌
日本公衆衛生雑誌 (ISSN:05461766)
巻号頁・発行日
vol.68, no.11, pp.753-764, 2021-11-15 (Released:2021-12-04)
参考文献数
18

目的 2011年3月の東京電力福島第一原子力発電所の事故から9年経った現在でも,「放射線の影響が子どもや孫など次の世代に遺伝するのではないか」という「次世代影響不安」が根強く残っている。マスメディア報道やインターネットによる情報等が,この不安に影響していると考え,その関連を明らかにして,今後の施策に繋げることを目的とした。方法 2016年8月に,20~79歳の福島県民2,000人を対象に,無記名自記式質問紙による郵送調査を実施した。福島県の会津地方,中通り地方,浜通り地方,避難地域から500人ずつ無作為抽出し,原発に近い沿岸部の浜通りと避難地域のデータを分析対象とした。目的変数は「次世代影響不安」で,その程度を4件法で尋ねた。説明変数は,放射線について信用する情報源と,利用するメディアを尋ねた。この他に属性,健康状態,放射線の知識等を尋ねた。2つの地域を合わせた全体データで,「次世代影響不安」と質問項目との間で単変量解析を行った。次に「次世代影響不安」を目的変数,単変量解析で有意差があった項目を説明変数として重回帰分析を行った。さらに,このモデルに項目「避難地域」と,「避難地域」と全説明変数との交互作用項を加えて,重回帰分析を行った。結果 有効回答は浜通り201人(40.2%),避難地域192人(38.4%)であった。重回帰分析の結果,次世代影響について,2つの地域全体では,政府省庁を信用する人,健康状態がよい人,遺伝的影響の質問に正答した人の不安が有意に低かった。また,がんの死亡確率の問題に正答した人は,不安が有意に高かった。さらに浜通りを基準にして交互作用項を投入したモデルでは,浜通り地方で,全国民放テレビを利用する人の不安が有意に高く,遺伝的影響の質問に正答した人の不安は有意に低かった。避難地域を基準にしてこのモデルを分析すると,避難地域は全体と同じ結果であった。結論 二つの地域で,情報源とメディアが次世代影響に有意に関連していた。報道者が自らセンセーショナリズムに走らないような意識が必要である。受け手は正しい情報を発信している情報源やメディアの選択が必要であり,メディアリテラシー教育の必要性が示唆された。また,健康状態の向上は,不安を下げる方策であることが示唆された。一方がんの死亡確率の知識は,伝え方に誤解を招かないような工夫を要することが示唆された。さらに,遺伝的影響の知識の普及は不安を下げる方策であることが示唆された。
著者
伊藤 直子 山崎 貴子 岩森 大 堀田 康雄 村山 篤子
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集 創立40周年日本調理科学会平成19年度大会
巻号頁・発行日
pp.106, 2007 (Released:2007-08-30)

【目的】 食肉を軟化させるためには、熱帯植物であるパイナップルやパパイヤ、キウイフルーツなどを利用することが知られている。これらの植物の持つプロテアーゼは比較的熱安定性が高く、調理中に食肉のタンパク質に作用するため、食肉が軟らかくなる。しかし、これらの食材は独特の香りがあり、メニューが限定される。一方、プロテアーゼ活性が高いものの中にはキノコがある。キノコは食肉とも相性の良い食材であり、食物繊維などが豊富で旨味成分も多く含まれ、健康志向の高い食品である。そこで、まず我々は、様々なキノコを用いてプロテアーゼの検索を行い、さらに高いプロテアーゼ活性を有するキノコのプロテアーゼの特徴について基礎的な検討を行った。 【方法】 キノコは市販のエノキタケ、ヒラタケ、エリンギ、シイタケ、ナメコ、ブナシメジ、マイタケを用いた。キノコの重量の2倍量の水を加え、ホモジェネート後、ろ過して得られた抽出液を試料とした。この抽出液のカゼイン分解活性及び牛肉抽出液分解活性を調べた。これらの中より分解活性の高かったものを選び、最適温度、最適pH、熱安定性などを検討した。さらにプロテアーゼの性質を調べるため、部分精製を試みた。 【結果および考察】 35℃でプロテアーゼ活性を測定すると、最も活性が高かったのは、ヒラタケであった。しかしながら、50-60℃ではマイタケのほうが活性が高くなった。さらに、熱安定性をみると、最も安定であったものはマイタケであり、ヒラタケのプロテアーゼ活性が70℃1時間の保温で失活するのに対し、マイタケは70℃8時間でも活性が残存していた。また、最適pHは6-7であった。このことより、マイタケは肉軟化のために有効な食材であると推察された。
著者
中山 千尋 岩佐 一 森山 信彰 高橋 秀人 安村 誠司
出版者
日本公衆衛生学会
雑誌
日本公衆衛生雑誌 (ISSN:05461766)
巻号頁・発行日
pp.20-140, (Released:2021-08-25)
参考文献数
18
被引用文献数
1

目的 2011年3月の東京電力福島第一原子力発電所の事故から9年経った現在でも,「放射線の影響が子どもや孫など次の世代に遺伝するのではないか」という「次世代影響不安」が根強く残っている。マスメディア報道やインターネットによる情報等が,この不安に影響していると考え,その関連を明らかにして,今後の施策に繋げることを目的とした。方法 2016年8月に,20~79歳の福島県民2,000人を対象に,無記名自記式質問紙による郵送調査を実施した。福島県の会津地方,中通り地方,浜通り地方,避難地域から500人ずつ無作為抽出し,原発に近い沿岸部の浜通りと避難地域のデータを分析対象とした。目的変数は「次世代影響不安」で,その程度を4件法で尋ねた。説明変数は,放射線について信用する情報源と,利用するメディアを尋ねた。この他に属性,健康状態,放射線の知識等を尋ねた。2つの地域を合わせた全体データで,「次世代影響不安」と質問項目との間で単変量解析を行った。次に「次世代影響不安」を目的変数,単変量解析で有意差があった項目を説明変数として重回帰分析を行った。さらに,このモデルに項目「避難地域」と,「避難地域」と全説明変数との交互作用項を加えて,重回帰分析を行った。結果 有効回答は浜通り201人(40.2%),避難地域192人(38.4%)であった。重回帰分析の結果,次世代影響について,2つの地域全体では,政府省庁を信用する人,健康状態がよい人,遺伝的影響の質問に正答した人の不安が有意に低かった。また,がんの死亡確率の問題に正答した人は,不安が有意に高かった。さらに浜通りを基準にして交互作用項を投入したモデルでは,浜通り地方で,全国民放テレビを利用する人の不安が有意に高く,遺伝的影響の質問に正答した人の不安は有意に低かった。避難地域を基準にしてこのモデルを分析すると,避難地域は全体と同じ結果であった。結論 二つの地域で,情報源とメディアが次世代影響に有意に関連していた。報道者が自らセンセーショナリズムに走らないような意識が必要である。受け手は正しい情報を発信している情報源やメディアの選択が必要であり,メディアリテラシー教育の必要性が示唆された。また,健康状態の向上は,不安を下げる方策であることが示唆された。一方がんの死亡確率の知識は,伝え方に誤解を招かないような工夫を要することが示唆された。さらに,遺伝的影響の知識の普及は不安を下げる方策であることが示唆された。
著者
川田 伸一郎 小森日 菜子 郡司 芽久
出版者
独立行政法人 国立科学博物館
雑誌
国立科学博物館研究報告A類(動物学) (ISSN:18819052)
巻号頁・発行日
vol.49, no.2, pp.81-95, 2023-05-22 (Released:2023-05-22)
参考文献数
32

Information on specimens of the giraffe, Giraffa camelopardalis, dating from the Meiji era in Japan, is reviewed based on a literature survey. The first giraffe specimen was a mounted skin imported by Yoshio Tanaka, obtained at the Centennial World Exposition in Philadelphia, USA. This specimen was exhibited at the Imperial Museum in Tokyo until 1910. It was subsequently moved to the Tokyo Women’s Higher Normal School (presently Ochanomizu University), and then lost. We found several photographs and drawings estimated to be of this specimen in popular magazines and digital archives of the museums. The first live giraffes in Japan were a pair provided by German animal dealer, Carl Hagenbeck, to Ueno Zoo in 1907. This female and male pair of giraffes died the following year, and their skins and skeletons were preserved and mounted. Our survey also found several reports about these two individuals after their deaths in several popular magazines, books, and newspapers. This paper presents a summary of the events clarified to date, including these specimens’ condition, and discusses them in the context of the history of Japanese museums.
著者
森永 康子 坂田 桐子 古川 善也 福留 広大
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.65, no.3, pp.375-387, 2017 (Released:2018-02-21)
参考文献数
44
被引用文献数
11

「女子は数学ができない」というステレオタイプに基づきながら, 好意的に聞こえる好意的性差別発言「女の子なのにすごいね(BS条件)」(vs.「すごいね(統制条件)」)が女子生徒の数学に対する意欲を低下させることを実証的に検討した。中学2, 3年生(研究1), 高校1年生(研究2)の女子生徒を対象に, シナリオ法を用いて, 数学で良い成績あるいは悪い成績をとった時に, 教師の好意的性差別発言を聞く場面を設定し, 感情や意欲, 差別の知覚を尋ねた。高成績のシナリオの場合, BS条件は統制条件に比べて数学に対する意欲が低かったが, 低成績のシナリオでは意欲の差異は見られなかった。数学に対する意欲の低下プロセスについて, 感情と差別の知覚を用いて検討したところ, 高成績の場合, 低いポジティブ感情と「恥ずかしい」といった自己に向けられたネガティブ感情の喚起が意欲を低めていること, 怒りなどの外に向けられたネガティブ感情はBS条件の発言を差別と知覚することで喚起されるが, 数学に対する意欲には関連しないことが示された。
著者
野口 陽来 松井 利樹 小森 成貴 橋本 隼一 橋本 剛
雑誌
ゲームプログラミングワークショップ2007論文集
巻号頁・発行日
vol.2007, no.12, pp.144-147, 2007-11-09

朝日放送が製作しているテレビ番組に「パネルクイズアタック 25」がある. このクイズ番組を見る限り, 解答者は全ての問題に答えようとしている. しかし, クイズの正解が分かっても解答しないほうが有利な状況があるのではないかと考えた. そこで局面の解析にはモンテカルロ法を用いて, どのパネルを獲得しても不利になる状況を見つけ出した. その結果不利になる局面は全体の 3.8%に上ることが判明した. また不利になる局面の代表的な例として一問目を答えた人は二問目を答えない方がよいという例を示した.さらにパネルを選択する戦略についても提案した.
著者
森栗 茂一
出版者
国立歴史民俗博物館
雑誌
国立歴史民俗博物館研究報告 = Bulletin of the National Museum of Japanese History (ISSN:02867400)
巻号頁・発行日
vol.57, pp.95-127, 1994-03-31

仏教には,水子を祀るという教義はないし,水子を各家で祀るという祖先祭祀も,前近代の日本にはまったくなかった。にもかかわらず,今日,「水子の霊が崇るので水子供養をしなければならない」と,人々に噂されるのはなにゆえであろうか。いわゆる1970年代におこり,80年代にブームを迎えた水子供養が,すでに20年を経過した今日,これを一つの民俗として研究してみる必要があろう。前近代の日本では生存可能数以上の子供が生まれた場合,これをどのように処理してきたか。一つには,予め拾われることを予期して,捨て子にする風があった。捨て子は,強く育つと信じられ,わざわざ捨吉などの名前をつけたこともあった。しかし,社会が育ててくれる余裕がないと思えるとき,間引きや堕胎がおこなわれた。暮らしていけないがゆえの間引きや堕胎を,人々は「モドス」「カエル」と言って,合理化してきた。実際,当時の新生児の生存率は低く,自然死・人為死に関わらず,その魂が直ちに再生すると信じて,特別簡略な葬法をした。それでも,姙娠した女が子供を亡くすということは,女の心身にとっては痛みであり,悩みがないわけではない。しかも,明治時代以降の近代家族が誕生するにあたって,女は「良妻賢母」「産めよ増やせよ」「子なきは去れ」と,仕事を持たない「産の性」に限定された。そのため,女は身体の痛みの上に,社会的育徳という痛みを積み上げられた。そんな悲痛な叫びが,水子供養の習俗に表れている。ところが,この女の叫びは,宗教活動の方向と経営を見失った寺院のマーケットにされてしまう。寺院や新宗教の販売戦略,心霊学と称するライターによって演出され,読み捨て週刊誌に取り上げられてひろまった。明治時代以降の近代家族は,男の論理による産業システムのためのものであった。その最高潮である60年代の高度経済成長が終わった70年代に入って,水子供養が出てきていることは興味深い。産業社会の幻影が,女を水子供養に走らせた。その女を,寺院は顧客として受け入れた。こうして,女は金に囲いこまれて,水子という不安に追い込まれ,水子供養という安心に追い込まれていったのである。そこで,彼女らの残した絵馬を分析することで,女の追い詰められた心理の一端を,分析してみたいと思う。
著者
森口 尚史
出版者
東京大学先端科学技術研究センター
巻号頁・発行日
2007-09-13

報告番号: 乙16833 ; 学位授与年月日: 2007-09-13 ; 学位の種別: 論文博士 ; 学位の種類: 博士(学術) ; 学位記番号: 第16833号 ; 研究科・専攻: 工学系研究科先端学際工学専攻
著者
廣田 照幸 森 直人 寺脇 研 二宮 祐 丸山 和昭 冨士原 雅弘 小野 方資 末冨 芳 佐久間 亜紀 徳久 恭子 荒井 英治郎 布村 育子 植上 一希 筒井 美紀
出版者
日本大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2016-04-01

1、関連文献・史資料の収集・吟味:日教組の運動の範囲が多岐にわたるため、大学院生や学部生にアルバイトとして利用しながら、7つの作業グループのそれぞれの主題に沿った関連文献・史資料の収集・吟味を体系的に行った。2、日教組所蔵史料の検討と整理:研究の基礎史料を利用可能な状態にしていくため、平成29年度は過去のプロジェクトにおいてデジタル化した資料を再整理しつつ、新たに当面の研究に必要な史料を選定してデジタル化作業を行った。教育制度検討委員会(第一次・第二次)関係及び1950年代後半期の中央執行委員会プリントなどを対象にした。単組史料も部分的に行った。3、1954年の中央執行委員会の議事録に綴じ込まれた中根式速記の史料を発掘してデジタル化を行うとともに、速記解読者に依頼して、解読可能性について検討をしてもらった。4、聞き取り調査:日教組OB及び文部省OBに対し手の聞き取り調査をおこなった。記録はテープ起こしと編集作業を行い、ご本人の確認を経て、聞き取り資料として確定させた。5、全体会合:全員が集まる研究会を定期的に開催し、本研究課題に関連する分野の専門家をゲスト・スピーカーとして招聘してレクチャーを受けながら、7つの作業グループから、順次、研究報告をしてもらった。また、全体会では、研究全体の進め方について協議を行った。6、チーム会合・グループ会合:2つのチーム、7つのグループごとに、定期的な会合をもち、具体的な課題に向けた研究を進めた。7、学会発表:日本教育学会、教育史学会などにおいて研究成果の報告を行った。学会発表をふまえて、論文化に向けた打ち合わせも行っている。また、学会誌等に載りにくい主題の論考等を集めて、第一次報告書を編集・印刷した。
著者
森 修一 石井 則久
出版者
日本ハンセン病学会
雑誌
日本ハンセン病学会雑誌 (ISSN:13423681)
巻号頁・発行日
vol.76, no.1, pp.29-65, 2007-02-01 (Released:2010-03-12)
参考文献数
135
被引用文献数
1

ハンセン病政策と医学の関わりに焦点を当て、特に隔離政策について、日本の隔離政策の独自性と世界の政策との共通性を考察した。世界のハンセン病史、欧州の隔離の歴史を考証し、近代医学が隔離を提唱する背景と日本の隔離に与えた影響を歴史的、医学史的に検討した。また、絶対隔離政策進展の経過とその背景、プロミン以降の世界の隔離、日本に於ける隔離継続の要因を考察した。
著者
小森 昌史 小豆川 勝見 野川 憲夫 松尾 基之
出版者
公益社団法人 日本分析化学会
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.62, no.6, pp.475-483, 2013-06-05 (Released:2013-06-27)
参考文献数
31
被引用文献数
18 57

福島第一原子力発電所事故によって環境中に降り積もった放射性核種が,地点ごとに原子炉1~3号機の中でどの放出源の寄与によるものであるかを134Cs/137Cs放射能比(以下放射能比)を指標として調べた.事故によって放出された134Csと137Csの放射能比はおよそ1 : 1であるが,細かく見ると原子炉ごとに比が異なるために環境試料中で放射能比のばらつきが生じており,その比が汚染源ごとの寄与の大きさを表す指標になると考えられる.そこで本研究では東日本の広域で土壌・植物片を採取してγ線測定を行い,各地点における放射能比を算出した.また東京電力が公開している原子炉建屋やタービン建屋の汚染水の放射能から,各原子炉における134Cs/137Cs放出放射能比を算出し,環境試料中の放射能比と比較した.その結果,最初に放射性核種を放出した1号機の放射能比と,最初に汚染が起こったとされる宮城県牡鹿半島の試料における放射能比がともに0.91程度と他原子炉・他地点と比較して低い値であることがわかり,同地点の汚染は1号機由来が強いことが実試料からも示唆された.また他地点でも放射能比を算出し,原子炉各号機由来の汚染の程度を見積もった.