著者
山田 文雄 石井 信夫 池田 透 常田 邦彦 深澤 圭太 橋本 琢磨 諸澤 崇裕 阿部 愼太郎 石川 拓哉 阿部 豪 村上 興正
出版者
日本哺乳類学会
雑誌
哺乳類科学 (ISSN:0385437X)
巻号頁・発行日
vol.52, no.2, pp.265-287, 2012 (Released:2013-02-06)
被引用文献数
2

政府の府省が進める各種事業の透明化と無駄遣いの防止をねらいとする「行政事業レビュー」において,2012年度に環境省の「特定外来生物防除等推進事業」が「抜本的改善」という厳しい評価を受けた.この事業レビューでは,おもにフイリマングースHerpestes auropunctatus(特定外来生物法ではジャワマングースH. javanicusの和名と学名を使用)やアライグマProcyon lotorの防除事業が取り上げられた.日本哺乳類学会はこの評価結果について,外来生物対策の基本的考え方や事業の成果についての誤解も含まれているとし,この判定の再考と外来生物対策の一層の推進を求める要望書を提出した.本稿では,環境省行政事業レビューの仕組みと今回の結果について報告し,根絶を目標とするマングース防除事業の考え方と実施状況,また,広域分布外来生物の代表としてアライグマを例に対策のあるべき姿を紹介した.さらに,学会が提出した要望書の作成経過と要点について説明し,最後に,行政事業レビューでの指摘事項に対して,効果的かつ効率的な外来哺乳類対策に関する7つの論点整理を行った.これらの要望書や日本哺乳類学会2012年度大会の自由集会における議論及び本報告によって,われわれの意見を表明し,今後の動向を注視するとともに,今後の外来種対策事業や研究のより一層の充実を期待したい.
著者
竹森 康弘 澤武 紀雄 里村 吉威 太田 英樹 渡辺 弘之 河上 浩康 岡井 高 高橋 豊 磨伊 正義 服部 信 秋山 高儀 永川 宅和 橋本 琢磨
出版者
一般財団法人 日本消化器病学会
雑誌
日本消化器病学会雑誌 (ISSN:04466586)
巻号頁・発行日
vol.84, no.10, pp.2386-2392, 1987 (Released:2007-12-26)
参考文献数
24
被引用文献数
6

各種消化器系疾患 (悪性疾患455例, 良性疾患303例) の血清CA 125値を測定し, 臨床的意義を検討した. 膵癌(66%), 肝細胞癌(51%), 胆道癌(47%)の順で高い陽性率がみられた. CA 19-9, DU-PAN-2, CEA陰性の膵癌でCA 125陽性例がかなりみられた. 胃, 大腸癌での陽性例はほとんど stage IV以上または非切除例で, 特に腹膜転移群では他のマーカーに比して明らかに陽性率が高かつた. 一方, 良性疾患での偽陽性率は一般に低かつたが, 腹水を有する肝硬変, 劇症肝炎, 重症の膵炎では本抗原の上昇がみられ, その増減は腹水の消長に一致していた. 以上より, 血清CA 125は膵, 胆道癌の診断のみならず, 腹水や腹膜転移の有無を把握するのに有用と考えられた.
著者
神戸 嘉一 武田 美加子 土屋 公幸 吉松 組子 鈴木 仁 鈴木 莊介 矢部 辰男 中田 勝士 前園 泰徳 阿部 愼太郎 石田 健 谷川 力 橋本 琢磨
出版者
日本哺乳類学会
雑誌
哺乳類科学 (ISSN:0385437X)
巻号頁・発行日
vol.53, no.2, pp.289-299, 2013

クマネズミはthe <i>Rattus rattus</i> species complexとも称され,複数の種からなる種複合体である.日本には古くに移入した東アジア地域起源の<i>Rattus tanezumi</i>(2n=42)に加え,新規に移入したインド地域が起源の<i>R. rattus</i>(2n=38)の2系統が存在する.本研究ではこれらクマネズミ系統の日本列島における分布および移入の歴史を把握することを試みた.毛色関連遺伝子<i>Mc1r</i>(954 bp)をマーカーとし,奄美大島産を含む36個体の塩基配列データを新規に収集し,既存の配列データと合わせ,日本列島の17地点,さらに比較対象として用いたパキスタン産を含め,総計133個体のデータを基に系統学的解析を行った.その結果,小樽,小笠原諸島および東京の3地域で<i>R. rattus</i>型が認められ,これらの地点では<i>R. tanezumi</i>型とのヘテロ接合体も存在した.これらの結果から,既存系統への浸透交雑が一部の市街部,港湾部および離島で進行している実態が明示された.一方,琉球列島の自然林では,<i>R. rattus</i>型の<i>Mc1r</i>ハプロタイプは認められなかった.これは,新たな外来系統<i>R. rattus</i>の定着や浸透交雑を起こさない何らかの要因が存在する可能性を示唆する.琉球列島には独自の<i>Mc1r</i>配列の存在も認められ,他地域とは遺伝的に分化した集団として位置づけられる可能性も示唆された.<br>
著者
三谷 奈保 諸澤 崇裕 山下 亮 喜岡 正吏 後藤 義仁 橋本 琢磨 北浦 賢次 山田 文雄 阿部 愼太郎 石川 拓哉
出版者
「野生生物と社会」学会
雑誌
野生生物と社会 (ISSN:24240877)
巻号頁・発行日
vol.2, no.1, pp.11-22, 2014-12-01 (Released:2017-06-16)

The density of invasive alien mongooses on Amami-oshima Island has recently been controlled to a low level by trapping. Aiming for eradication, three dogs were specially trained to detect the location of the animals to improve the efficiency of trapping. The detection efficiency of the dogs was higher than the efficiency of sensor cameras and pipe-type kill traps in each area, which had different mongoose densities. It was also significantly higher in high density areas (p<0.05) and higher than those methods plus hair traps in lower density areas. Dogs could also contribute to capture by handlers. The capture rates of the dog handlers were lower than those of the pipe traps in higher densities areas. However, a mongoose was caught by a dog handler in an area where none had been caught in the past five years. It was revealed that detection dogs are a sensitive means that have the potential for capture by the handler. While it takes a few years to train a detection dog. The area that one pair of a detection dog and a handler could scan thoroughly in a year was estimated at 16-28 km^2. The utilization of detection dogs preferentially in extremely low density areas is considered to be efficient.
著者
神戸 嘉一 鈴木 莊介 矢部 辰男 中田 勝士 前園 泰徳 阿部 愼太郎 石田 健 谷川 力 橋本 琢磨 武田 美加子 土屋 公幸 吉松 組子 鈴木 仁
出版者
日本哺乳類学会
雑誌
哺乳類科学 (ISSN:0385437X)
巻号頁・発行日
vol.53, no.2, pp.289-299, 2013 (Released:2014-01-31)
参考文献数
44

クマネズミはthe Rattus rattus species complexとも称され,複数の種からなる種複合体である.日本には古くに移入した東アジア地域起源のRattus tanezumi(2n=42)に加え,新規に移入したインド地域が起源のR. rattus(2n=38)の2系統が存在する.本研究ではこれらクマネズミ系統の日本列島における分布および移入の歴史を把握することを試みた.毛色関連遺伝子Mc1r(954 bp)をマーカーとし,奄美大島産を含む36個体の塩基配列データを新規に収集し,既存の配列データと合わせ,日本列島の17地点,さらに比較対象として用いたパキスタン産を含め,総計133個体のデータを基に系統学的解析を行った.その結果,小樽,小笠原諸島および東京の3地域でR. rattus型が認められ,これらの地点ではR. tanezumi型とのヘテロ接合体も存在した.これらの結果から,既存系統への浸透交雑が一部の市街部,港湾部および離島で進行している実態が明示された.一方,琉球列島の自然林では,R. rattus型のMc1rハプロタイプは認められなかった.これは,新たな外来系統R. rattusの定着や浸透交雑を起こさない何らかの要因が存在する可能性を示唆する.琉球列島には独自のMc1r配列の存在も認められ,他地域とは遺伝的に分化した集団として位置づけられる可能性も示唆された.