著者
鈴木 仁
出版者
北海道大学文学研究科
雑誌
研究論集 (ISSN:13470132)
巻号頁・発行日
vol.16, pp.1-21, 2016-12-15

本論は、樺太における地名選定と、その後の地名研究の活動から、日本領に再構築される樺太での日本人の領土意識を考 察したものである。 第一節では、幕府や開拓使における樺太の地名の取り扱いをまとめた。アイヌ語地名を漢字表記した行政地名化は北海道 で実施され、開拓使・北海道庁や各支庁による選定がなされており、樺太では明治六年(一八七三)に「樺太州各所地名」 が定められる。だが、各地の表記が整理される前に、明治八年のサンクトペテルブルク条約(樺太千島交換条約)により島 の全域はロシア帝国領となった。 第二節では、日露戦争中に樺太を占領した現地の部隊による地名改称と、これに対する地理・歴史学者たちの反応をまと めた。明治三十八年(一九〇五)七月に占領が進められたロシア領サハリン(樺太)には、勝利を記念して地名が付けられ たが、北海道にもあるアイヌ語地名が樺太で消されていることに反対する意見が出されている。 第三節では、明治四十年(一九〇七)四月に開設された樺太庁による地名選定事業についてまとめた。一部に意訳や日本 語地名の新たな設置もあるが、選定の基本方針はロシア語地名を排除し、原名となるアイヌ語地名を調べ、その語音の漢字 表記としている。大正四年(一九一五)八月に、樺太で郡町村が編制されると、広域地名にも採用されている。 第四節は地名研究史とした。樺太の地名には多様な民族と歴史変遷により、アイヌ語以外の言語も影響しているため、島 内では歴史研究の資料として調査されている。本論では、その調査活動のなかから、昭和期には広まった郷土研究により、 異文化であったアイヌ語が郷土の文化として研究される過程をまとめ、昭和五年(一九三〇)に樺太郷土会から発行された 『樺太の地名』を日本人住民による一つの成果として取り上げた。加えて戦後の出身者によるアイヌ語地名研究の見直しや、 郷土の記憶として資料化されたことも補足した。
著者
千葉 隆司 貞升 健志 長島 真美 熊谷 遼太 河上 麻美代 浅倉 弘幸 内田 悠太 加來 英美子 糟谷 文 北村 有里恵 小杉 知宏 鈴木 愛 永野 美由紀 長谷川 道弥 林 真輝 林 志直 原田 幸子 藤原 卓士 森 功次 矢尾板 優 山崎 貴子 有吉 司 安中 めぐみ 内谷 友美 神門 幸大 小林 甲斐 長谷川 乃映瑠 水戸部 森歌 三宅 啓文 横山 敬子 吉田 勲 浅山 睦子 井田 美樹 上原 さとみ 小野 明日香 河村 真保 小西 典子 小林 真紀子 齊木 大 下島 優香子 鈴木 淳 西野 由香里 村上 昴 森田 加奈 吉丸 祥平 木本 佳那 新藤 哲也 堀田 彩乃 小林 千種 大塚 健治 吉川 聡一 笹本 剛生 稲葉 涼太 小峯 宏之 佐伯 祐樹 坂本 美穂 塩田 寛子 鈴木 淳子 鈴木 俊也 高久 靖弘 寺岡 大輔 中村 絢 成瀬 敦子 西山 麗 吉田 正雄 茂木 友里 飯田 春香 伊賀 千紘 大久保 智子 木下 輝昭 小杉 有希 斎藤 育江 高橋 久美子 立石 恭也 田中 優 田部井 由紀子 角田 徳子 三関 詞久 渡邊 喜美代 生嶋 清美 雑賀 絢 鈴木 仁 田中 豊人 長澤 明道 中村 麻里 平松 恭子 北條 幹 守安 貴子 石川 貴敏 石川 智子 江田 稔 岡田 麻友 草深 明子 篠原 由起子 新開 敬行 宗村 佳子 中坪 直樹 浜島 知子 野口 俊久 新井 英人 後藤 克己 吉原 俊文 廣瀬 豊 吉村 和久
出版者
東京都健康安全研究センター
雑誌
東京都健康安全研究センター研究年報 (ISSN:13489046)
巻号頁・発行日
no.71, pp.39-46, 2020
著者
土屋 公幸 若菜 茂晴 鈴木 仁 服部 正策 林 良博
出版者
国立科学博物館
雑誌
国立科学博物館専報 (ISSN:00824755)
巻号頁・発行日
vol.22, pp.227-234, 1989
被引用文献数
5

We studied twelve individuals of Ryukyu spiny rats, Tokudaia from Amamioshima Is.(T.o.osimensis). and Tokunoshima Is.(T.sp.). Each individual was examined for chromosome, serum protein, mitochondrial DNA and ribosoma1 DNA polymorphism. The karyotypes were analyzed by the G-banding staining method. The diploid chromosome number of Tokudaia obtained from Amamioshima and Tokunoshima were 25 and 45 respectively in lung tissue culture preparation. Agarose-gel electrophoretic analysis of the serum protein was used to document relationship between two species. Totally three bands of transferrin (Tf) protein were observed on agarose ge1. Tf^a and Tf^b type were seen in T.o.osimensis and Tf^t and Tf^b type in T.sp. The serum albumin patterns of these rats were not identical. The cleavage patterns of mitocondoria1 DNA (mtDNA) from two Tokudaia species were investigated using several restriction enzymes. The sequence divergence between T.o.osimensis and T.sp. about 16.2% was estimated. Genetic differentiation of ribosomal DNA (rDNA) non-transcribed-spacer sequences was analyzed in the two species. Southern blot analysis with a mouse rDNA probe and some restriction enzymes revealed that the major restriction fragments of these Tokudaia species had a unique pattern in the spacer region. The divergence time between T.o.osimensis and T.sp. was calculated about 2∿4 million years. Based on the significant genetic divergence shown we conclude that T.sp. is a taxonomically from T.o.osimensis.
著者
川崎 幸彦 細矢 光亮 片寄 雅彦 鈴木 仁
出版者
社団法人 日本感染症学会
雑誌
感染症学雑誌 (ISSN:03875911)
巻号頁・発行日
vol.73, no.2, pp.104-109, 1999-02-20 (Released:2011-02-07)
参考文献数
19
被引用文献数
4 12

近年, 麻疹やRSウイルス (RSV) 感染症に対するビタミンA補充療法 (本療法) の有効性が報告されているが, 本邦のようにビタミンA欠乏が問題にならない国における本療法の治療効果に関する報告は少ない.今回, 私達は, 基礎疾患を有さず栄養状態の良好な麻疹患児108例とRSV感染症患児95例を臨床症状の重症度により中等症と重症の2群に分類し, 各群についてビタミンA投与群と非投与群で, その主要臨床症状の持続期間, 入院期間, 合併症の有無を比較検討した.ビタミンAは入院第1, 第2の両病日に各々10万単位を経口投与した.麻疹患児群ではビタミンA投与群において重症度にかかわらず咳噺の持続期間が有意に短縮したが, 発熱期問や入院期問および合併症の出現率に有意差はみられなかった.RSV患児では重症度においてビタミンA投与により陥没呼吸や瑞鳴の出現期間が短縮した.すなわち, ビタミンA補充療法は本邦における麻疹やRSV感染症において, 特に重症例ではその臨床症状を改善するものと考えられた.
著者
鈴木 仁一
出版者
一般社団法人 日本心身医学会
雑誌
心身医学 (ISSN:03850307)
巻号頁・発行日
vol.22, no.5, pp.451-458, 1982-10-01 (Released:2017-08-01)
被引用文献数
1

From time immemorial, it has been well known that fasting has an excellent effect on various diseases and has been practiced in world-wide areas as a religious asceticism. However, nowadays, it has being practiced as a proper medical therapy for psychosomatic disorders. Our scientific study of fasting started from 1967,and has been carried out in 576 cases with an efficacy rate of 87%.The following diseases were considered as suitable indications for the therapy; irritable colon, abnormal eating behavior, functional disorders of the digestive organ, neurocirculatory asthenia, borderline hypertension, variable psychosomatic symptoms of puberty, hyperventilation syndrome, bronchial asthma, various kinds of neurosis especially conversion hysteria, reactive depression and many others of psychosomatic diseases.The patient is put on 10-day fasting allowing to have only drinking water and 5% pentose solution by I.V., after that a 5-day recovery dieting period with settled menu is programed. During the fasting period, NAIKAN therapy is performed which is a special self-examination that method based on Buddhism. With regard to the mechanism of effectiveness, our conclusion is the regulating of the peripheral and central autonomic nervous system and of the endocrine system may change psychophysiological functions. At the result, a spontaneous deconditioning of maladaptive bodily and mental behavior might be induced and led to a homeostatic adjustment of the human body.
著者
斎藤 成也 藤尾 慎一郎 木部 暢子 篠田 謙一 遠藤 光暁 鈴木 仁 長田 直樹
出版者
国立遺伝学研究所
雑誌
新学術領域研究(研究領域提案型)
巻号頁・発行日
2018-06-29

リースしているサーバー(すさのを)および国立遺伝学研究所のスーパーコンピュータを用いて、現代人ゲノムの解析環境をととのえた。2018年度に購入したサーバー2台(うみさちとやまさち)を用いて、古代人や公開されている現代人ゲノムや動植物ゲノムデータの格納をおこない、それらデータの解析環境を整えた。季刊誌Yaponesianの2020年はる号、なつ号、あき号、2021年ふゆ号を編集刊行した。新学術領域研究ヤポネシアゲノムのウェブサイトを運営した。特に今年度は英語版を充実させた。2020年6月27-28日に、立川市の国立国語研究所にて総括班会議と全体会議をハイブリッド方式で開催した。2021年2月15-17日に、国立遺伝学研究所と共催で「ゲノム概念誕生百周年記念シンポジウム」をオンラインで開催した。2021年3月2-3日に、 「第2回くにうみミーティング」(若手研究者育成の一環)を開催し、公開講演会もオンラインで実施した。2021年3月19-21日に、佐倉市の国立歴史民俗博物館にて全体会議と総括班会議をハイブリッド方式で開催した。
著者
鈴木 仁 佐藤 淳
出版者
北海道大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2012-04-01

私たちはハツカネズミ(Mus musculus)の進化史理解のため、第8染色体上の毛色関連遺伝子Mc1rを含む近隣7遺伝子のハプロタイプ構造の解析を行った。その結果、3亜種グループの中東・インドにおける自然分布域を特定するとともに、インド亜大陸内の亜種castaneusが空間的に2系統存在することを明らかにした。また、歴史的放散前に亜種内、亜種間の遺伝的交流が存在したことも判明した。さらに。この遺伝子領域のうち、Mc1rにおいて塩基多様性のレベルの著しい低下があり、選択的スイープ現象の存在が示唆され、Mc1r遺伝子への自然淘汰の関与があったと考えられた。
著者
鈴木 仁之 田中 啓三 金光 真治 徳井 俊也
出版者
特定非営利活動法人 日本呼吸器外科学会
雑誌
日本呼吸器外科学会雑誌 (ISSN:09190945)
巻号頁・発行日
vol.20, no.5, pp.764-767, 2006-07-15 (Released:2008-03-11)
参考文献数
7
被引用文献数
1 1 2

Basedow病に胸腺過形成が合併する原因については,いまだ明らかにはされていないが,甲状腺機能亢進症により二次的に胸腺過形成が生じるという説や,ある種の免疫機構の関与を示唆する説がある.今回我々は,Basedow病に合併した胸腺過形成の2例を経験したので報告する.1例は甲状腺機能亢進症の遷延と,胸腺については腫瘍性病変の存在が否定できなかったために,甲状腺亜全摘と胸腺摘出術が施行された.もう1例では甲状腺機能は徐々に正常化したが,腫瘍の縮小を認めないため,生検が施行された.2例とも腫瘍性病変は認めず,胸腺過形成と診断された.しかし組織学的にはリンパ様過形成と真性過形成との違いが確認され,両者における胸腺過形成の背景因子ないし発生メカニズムの違いが示唆された.
著者
鈴木 仁
出版者
北海道大学大学院文学研究科北方研究教育センター
雑誌
北方人文研究 (ISSN:1882773X)
巻号頁・発行日
vol.12, pp.19-47, 2019-03-25

本論は、日本領時代の樺太における郷土研究について、島内で発行された新聞・雑誌から、その形成と展開を考察したものである。 日本領樺太には大正期にパルプ・製紙工業が進出し、水産業に代わる基幹産業へと成長する。工場を中心とした市街地が拡大し、また、原材料を供給する林業により冬期間の労働が生まれたことで、移住民の定住を促進させた。 昭和期に入ると、内地での郷土研究・郷土教育の影響を受け、移住地であるこの地域を「郷土」として研究する取り組みが現れる。1930年に結成された樺太郷土会には、教職員、樺太庁の役人、新聞記者など、幅広い人脈が広がっている。その研究分野も、歴史、民族学、自然科学など樺太における様々な事象を対象にしており、研究成果は新聞や出版物で発表された。また、史跡保存、博物館の資料収集、図書館設立も企画し、樺太庁への運動も行っている。 樺太郷土会結成の契機には、樺太の有力紙『樺太日日新聞』の主筆菱沼右一による主導的役割があり、同紙は活動の広報媒体にもなっている。また樺太郷土会が活動した時期に、政府や樺太庁では、樺太を内地に編入し、自立した地方行政への転換が計画されたことも、住民の郷土意識が求められた背景に影響していると思われる。 会の活動は1932年にはなくなるが、参加した研究者は、個人や別の団体を結成し、研究活動を続ける。1930年に樺太郷土会により始められた様々な活動は、その後も公的な文化事業や個人の研究活動に影響している。
著者
木原 正夫 鈴木 仁 鈴木 祐介
出版者
順天堂大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2017-04-01

IgA腎症は原発性糸球体腎炎のなかで最も頻度が高いが、有効な治療法が確立されておらず予後不良である。IgA腎症の病態には糖鎖異常IgA1 と糖鎖異常IgA1 免疫複合体が深く関与しており、その産生にはToll like receptor(TLR)などのPattern recognition receptors(PRRs)を起点とした粘膜免疫応答異常が考えられる。本邦においては扁摘パルス療法が一定の効果を示している一方で、北欧においては腸管選択的ステロイド薬の効果が示されており、その議論が分かれている。本研究では、腸管におけるPRRsを介した糖鎖異常IgA1 免疫複合体形成機序を検証することを目標としている。ヒトIgA腎症の自然発症モデルであるddYマウスを用いて、血中・消化管関連リンパ組織におけるIgA、糖鎖異常IgA、IgG-IgA免疫複合体を測定したところ、IgA腎症発症マウスの方が未発症マウスに比較して、血中・脾臓の細胞培養液中のGd-IgA, IgG-IgA免疫複合体が有意に高かったが、腸間膜リンパ節においては両者に有意差はなかった。今後は、腸管におけるPRRsがIgA腎症発症・増悪に寄与しているか調べるため、IgA腎症発症/非発症ddYマウスを用いて、TLR4/9やその下流のサイトカインの発現を検証し、さらにはTLR4/9のリガンドを投与することで、IgA腎症を惹起できるか検証する。また、グルテンフリー食、腸管選択性ステロイド薬、中和抗体・siRNA を用いて、Gd-IgAおよびIgG-IgA免疫複合体産生の抑制効果を検証する。
著者
浜口 哲一 青木 雄司 石崎 晶子 小口 岳史 梶井 公美子 小池 文人 鈴木 仁 樋口 公平 丸山 一子 三輪 徳子 森上 義孝
出版者
一般社団法人 日本生態学会
雑誌
保全生態学研究 (ISSN:13424327)
巻号頁・発行日
vol.15, no.2, pp.297-307, 2010-11-30 (Released:2018-02-01)
参考文献数
16
被引用文献数
2

神奈川県茅ヶ崎市において、指標種を用いた環境評価調査を行った。この調査は、望ましい自然環境を想定しそれを指標する動植物種の分布調査に基づいて評価を行ったこと、調査区域の区分や指標種の選定などの計画立案から現地調査にいたるまで市民の参画があったことに特徴がある。まず市民による議論をもとに里山(森林、草地、水辺)や海岸など、住民の心情や生物多様性保全の観点から望ましい自然環境を決め、それらに対応する合計163種の指標種(高等植物、昆虫、脊椎動物)を決めた。集水域に対応し、また人間が徒歩で歩き回る範囲程度の空間スケールである76の小区域(平均0.47km^2)において、一定の努力量の上限のもとで最も発見できそうな地点を優先して探索する方法で指標種のマッピングを行った。小区域ごとの出現種数をもとに小区域単位の評価マップを作成したほか、詳細な地点情報を用いて保全上最も重要なコア地域を明らかにすることを試みた。
著者
森脇 和郎 鈴木 仁 酒泉 満 松井 正文 米川 博通 土屋 公幸 原田 正史 若菜 茂晴 小原 良孝
出版者
国立遺伝学研究所
雑誌
総合研究(A)
巻号頁・発行日
1989

日本産野生動物種には、日本列島の生物地理学的な位置づけを反映して独自の分化を遂げたものが少なくない。これらの起源を解明することは、日本の研究者が日本に生息する種を対象にするという「自国に目を向ける立場」を別にしても興味深い。従来、日本産野生物動種については形態的分析に基づく分類学的および生態学的な研究がおもに行われてきたが、この方法論だけではこれら野生種の起源を解明することは難しい。近年著しい進歩を遂げた分子遺伝学的解析法は、集団遺伝学的な種の捉え型と相まってこの問題の解決に大きな力を発揮することが期待される。一方、わが国における人口の増加、経済活動の増大に伴う国土の開発、自然環境の汚染などによって、自然界における野生動物種の分布が改変され、時にはそれらの生存する脅かされるに至った現状を注視すれば、日本産野生種の分布や起源を検討するタイミングは今をおいてない。本研究は、日本産野生動物種の中から各分類群に属する代表的な動物種を選び出し、種内変異や近緑グループとの関係を明らかにして従来の分類体系を再検討するとともに、系統分類学および生態的に異なる動物種の起源について総合的に比較検討することを目的としている。ハツカネズミ・イモリ・メダカ・ウニ・ホヤなど日本に古くから生息する動物種は生物実験材料としての実用性と将来性に富む素材であり、実験動物の開発・利用という観点からもその重要性は見過ごすことはできない。野生種の起源を遺伝学的な観点から解明する研究は、必然的に種分化の遺伝機構にも踏み込むことになろう。この機構の基盤にはHybrid dysgenesisという現象にみられるように、その根底には発生機構、生殖機構の遺伝的制御という問題も包含しており、今後の生物学の新しい展開への有効な基盤となる可能性を秘めている。
著者
鈴木 祐介 二瓶 義人 鈴木 仁
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.110, no.10, pp.2286-2292, 2021-10-10 (Released:2022-10-10)
参考文献数
17

IgA(immunoglobulin A)腎症は,世界で最も頻度の高い原発糸球体腎炎で,特に日本を含む東アジアで頻度が高い.未治療の場合,約4割が末期腎不全に至る予後不良の疾患であり,国内外を問わず本症に起因し若くして維持透析となる患者は多く,医療経済上も深刻な問題となっている.近年,糖鎖異常IgAと関連免疫複合体が本症の発症・進展のカギを握ることが証明され,その産生抑制と糸球体沈着後の炎症制御を目的とした治療薬の開発が進んでいる.なかでも,粘膜面で感作を受けた成熟IgA産生B細胞を標的とした薬剤や,糖鎖異常IgAの糸球体沈着に伴い活性化される補体古典経路及びレクチン経路を標的とした薬剤の国際治験が進行中で,その結果が期待されている.こういった複数の有望な根治治療薬の開発が進み,治療選択肢が増えれば病期・病態に応じた治療が可能となり,本症による透析移行の阻止は実現可能と考える.本稿では,これら薬剤に関する病態の背景や,現状を概説する.
著者
角井 建 原田 正史 野津 大 三橋 れい子 鈴木 仁
出版者
日本哺乳類学会
雑誌
哺乳類科学 (ISSN:0385437X)
巻号頁・発行日
vol.63, no.1, pp.63-68, 2023 (Released:2023-02-09)
参考文献数
27

隠岐諸島島後で2021年11月におこなわれたモグラ類の採集調査によって,アズマモグラMogera imaizumiiの雄と雌が1個体ずつ捕獲された.隠岐諸島で本種が確認されたのは本報告が初めてであり,西日本における新たなアズマモグラの遺存個体群の存在が明らかとなった.
著者
小澤 迪喜 窪木 祐弥 末永 信太 石井 達矢 鈴木 仁 土谷 順彦
出版者
一般社団法人 日本泌尿器科学会
雑誌
日本泌尿器科学会雑誌 (ISSN:00215287)
巻号頁・発行日
vol.108, no.2, pp.114-117, 2017-04-20 (Released:2018-04-19)
参考文献数
11

61歳男性,維持透析中.PSA高値のため経直腸的前立腺生検を施行.生検1時間後から肛門部重苦感が出現,7時間後から強い下腹部痛と胆汁様嘔吐が出現.貧血の進行と単純CTで一部腹腔内に達する巨大な後腹膜腔内出血を認め,前立腺生検時の動脈性出血が原因と考えられた.全身状態安定しており輸血と保存的加療にて症状は改善した.
著者
鈴木 仁
出版者
北海道大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2002

ネズミ亜科の進化的動態をハツカネズミ属、アカネズミ属、クマネズミ属、ヤネズミ属において分子系統学的手法を用いて解析した。これら属間の分岐は、核の遺伝子の変異(IRBP遺伝子1152bp、RAG1遺伝子1002bp)およびミトコンドリアDNA(cytochrome b遺伝子1140bp)の変異に基づく系統解析から、ほぼ同時期に分化したことが示唆された。さらに、ユーラシアに分布する種を中心にハツカネズミ属4亜属12種の分子系統学的解析を3つの遺伝子領域について行った。その結果、4つの亜属の分岐は、進化的に短い時間の中で生じ、さらにハツカネズミ亜属において3つの単4系統グループが短期間にそれぞれ異なる地域において分化したことが示唆された。つまり、ハツカネズミ属の種分化は2段階の放散で説明できることが明らかとなったが、興味深いことに、このパターンがアカネズミ属においても認められた。したがって、第三紀後期の地球環境の変動がユーラシアの亜熱帯域および温帯域の異なる地域に生息するネズミ類の系統分化の重要な原動力となったものと思われた。さらに、ネズミ類における系統分化の要素として、1)ユーラシア大陸の構造と地理的隔離、2)異なるニッチへのシフト、そして、3)同一のニッチを持つ姉妹種との共存(ニッチの分化)を挙げられ、これらの要素が種の多様性を理解する上での基礎的要素であると考えられた。クマネズミ類については現在解析を進めているところであるが、上述の傾向を示すことが確認されている。一属一種のカヤネズミは、例外的に種の多様性のレベルが極端に低く、これは第四紀の中盤以降の絶滅が原因であることが分子系統学的解析と化石データの照合から明らかにすることができた。以上のように、ネズミ類の系統解析は地球環境の変動の様相を知る上で重要な知見をもたらすものであることも認識することができた。
著者
鈴木 仁
出版者
北海道大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1996

この数百万年間度重なる大陸からの渡来の波が3方向からあり、しかも列島は南北に長くいくつかの地理的障壁が存在するため、日本の小型哺乳類相は相当複雑な構成になっていると考えられている。この小型哺乳類の歴史的構成を理解するために、種間、種内の遺伝的交流について解析した。主として対象としたのはヤマネ類およびネズミ類で、北海道、本州・四国・九州、琉球の3つの地理的ドメインよりサンプルを採集した。用いたDNAマーカーとしてはミトコンドリアDNA上の遺伝子(cyt b)や、核の遺伝子(IRBP)の塩基配列の変異を用いた。大陸の近縁種と遺伝的変異の度合いを調べたところ、日本産の小型哺乳類は比較的高い遺伝的固有性を保持していることが明らかとなった。特に、本州、琉球ドメインに生息する種は高いレベルを示した。しかし、このレベルは同じ地域に生息している種間で異なっていた。高いレベルの同種内の遺伝的多様性の度合いはヤマネ、トウホクヤチネズミ、アカネズミ、トゲネズミで観察され、また大陸の集団との比較でタイリクヤチネズミ、タイリクヒメヤチネズミにおいて観察された。これらの結果は日本列島は種の多様度や遺伝的多様度を高める上で重要な役割を担っていることを示唆している。さらに、これらの分子系統、および生息分布を考慮すると、度重なる種間、地理的集団間の遺伝的交流が小型哺乳類の多くの種においてその種分化の過程の中で存在したものと推察された。
著者
武藤 正浩 鈴木 祐介 鈴木 仁
出版者
順天堂大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2019-04-01

IgA腎症は世界で最も多い原発性糸球体腎炎であり、20年で約40%が末期腎不全に至る予後不良の疾患であるが、未だ病因の全容は不明であり確立された治療は存在しない。本研究は、IgA腎症患者由来の糖鎖異常IgA1ヒンジ部のO-結合型糖鎖の糖鎖構造や、糖鎖異常IgA1およびSecretory componentの由来臓器を解明し、口蓋扁桃摘出術およびステロイドパルス療法が治療効果をもたらすメカニズムの一部を明らかにし、分子標的治療の礎とすることを目的とする。