著者
西村 多久磨 村上 達也 櫻井 茂男
出版者
公益社団法人 日本心理学会
雑誌
心理学研究 (ISSN:00215236)
巻号頁・発行日
pp.89.16077, (Released:2018-09-20)
参考文献数
43
被引用文献数
2

Development of prosociality and a trajectory in prosocial behaviors have been a major interest among developmental psychologists. The present study investigates age-related changes in prosocial behaviors from middle childhood to early adolescence based on the relational approach, emphasizing relations with the recipients of the prosocial behaviors (i.e., prosocial behavior toward family, strangers, and friends). A total of 1,829 Japanese students (944 boys and 885 girls) from mid-elementary and junior high schools (ages 9―14 at the time of the first measurement) participated in a one-year longitudinal study. This sample consisted of five cohorts: the 4th, 5th, 6th, 7th, and 8th grade samples. The results of the latent difference score model showed a decrease in prosocial behaviors once, as mean level of individual changes; while at the same time, the model indicated a bounce-back in prosociality after the middle of the junior high school period. Additionally, we found unique changes in prosocial behaviors toward family in the form not following the overall developmental trajectory.
著者
萩原 俊彦 櫻井 茂男
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.56, no.1, pp.1-13, 2008-03-30 (Released:2013-02-19)
参考文献数
62
被引用文献数
1 2

本研究の目的は, 大学生の職業選択に関連すると考えられる“やりたいこと探し”の動機を明らかにし, その動機の自己決定性と進路不決断との関連を検討することであった。まず, どの程度自己決定的な動機で職業選択に関わる“やりたいこと探し”をしているかを測定する尺度を作成し, 信頼性と妥当性を検討した。尺度項目の因子分析の結果から, やりたいことを探す動機として, 非自己決定的な「他者追随」, 自己決定性においては中間的な「社会的安定希求」, 自己決定的な「自己充足志向」の3因子が抽出され, 尺度の信頼性と妥当性が確認された。作成された“やりたいこと探し”の動機尺度を用いて, “やりたいこと探し”の動機の個人差と進路不決断との関連を検討したところ, “やりたいこと探し” の動機のうち, 非自己決定的な動機である「他者追随」が相対的に高い非自己決定的動機群は, 進路不決断の面で問題を抱えている可能性が示唆された。本研究で得られた結果は, 現代青年のキャリア意識として広く支持されている“やりたいこと”志向と職業選択との関連を検討する上で意義があると考えられる。
著者
海沼 亮 櫻井 茂男
出版者
日本パーソナリティ心理学会
雑誌
パーソナリティ研究 (ISSN:13488406)
巻号頁・発行日
pp.27.1.13, (Released:2018-05-18)
参考文献数
9
被引用文献数
1

Friendship Contingent Self-esteem as a Predictor of Satisfaction in Junior High School Students: Focusing on Social Achievement Goals and Friendship.The purpose of this paper was to examine a process model in which friendship contingent self-esteem was related to satisfaction through social achievement goals and friendship in junior high school students. Junior high school students (n=772) completed the questionnaire. A path analysis revealed that friendship contingent self-esteem was related to satisfaction through social achievement goals and friendship. The results suggest that friendship contingent self-esteem had positive and negative effects on the satisfaction process.
著者
村上 達也 西村 多久磨 櫻井 茂男
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.64, no.2, pp.156-169, 2016
被引用文献数
10

本研究の目的は, 小学生および中学生を対象とした対象別向社会的行動尺度を作成し, その信頼性と妥当性を検討することであった。小学4年生から中学3年生までの1,093名を対象とし質問紙調査を実施した。探索的因子分析の結果, 家族に対する向社会的行動, 友だちに対する向社会的行動, 見知らぬ人に対する向社会的行動の3因子を抽出した。加えて, 確認的因子分析により, 向社会性という高次因子を仮定したモデルが最終的に採択された。対象別向社会的行動尺度の内的一貫性および再検査信頼性係数は十分に高いことが確認された。中高生版向社会的行動尺度, 共感性尺度, 自己意識尺度, 学級生活満足度尺度といった同時に測定した外的基準との関連が概ね確かめられた。また, 尺度の内容的妥当性についても確認された。尺度得点に関しては, 男女差がみられ, 女子の得点の方が男子の得点よりも高いことが確認された。また, 学年差に関して, 概ね, 小学生の得点の方が中学生の得点よりも高いことが確認された。最後に, 本尺度の利用可能性について考察されるとともに, 今後の向社会的行動研究に関して議論された。
著者
西村 多久磨 村上 達也 櫻井 茂男
出版者
日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.63, no.4, pp.453-466, 2015
被引用文献数
3

本研究では, 共感性を高めるプログラムを開発し, そのプログラムの効果を検討した。また, プログラムを通して, 社会的スキル, 自尊感情, 向社会的行動が高まるかについても検討した。介護福祉系専門学校に通う学生を対象に実験群17名(男性6名, 女性11名 ; 平均年齢20.71歳), 統制群33名(男性15名, 女性18名 ; 平均年齢19.58歳)を設けた。プログラムを実施した結果, 共感性の構成要素とされる視点取得, ポジティブな感情への好感・共有, ネガティブな感情の共有については, プログラムの効果が確認された。具体的には, 事前よりも事後とフォローアップで得点が高いことが示された。さらに, これらの共感性の構成要素については, フォローアップにおいて, 実験群の方が統制群よりも得点が高いことが明らかにされた。しかしながら, 他者の感情に対する敏感性については期待される変化が確認されず, さらには, 社会的スキル, 自尊感情, 向社会的行動への効果も確認されなかった。以上の結果を踏まえ, 今後のプログラムの改善に向けて議論がなされた。
著者
西村 多久磨 村上 達也 櫻井 茂男
出版者
公益社団法人 日本心理学会
雑誌
心理学研究 (ISSN:00215236)
巻号頁・発行日
vol.86, no.4, pp.368-373, 2015
被引用文献数
8

The purpose of the present study was to develop a simplified scale to assess loneliness in children. Participants were 646 elementary school students (335 boys and 311 girls) from 4th to 6th grade and 24 homeroom teachers who identified lonely children within the participants of their classes. The student participants completed the Five-item Loneliness Scale for Children (Five-LSC) and other scales measuring social skills, social competence, and withdrawal to confirm the validity of the Five-LSC. The results showed that the Five-LSC was both reliable and valid. In addition, there were no grade or sex differences in loneliness. Future research using the Five-LSC was discussed.
著者
西村 多久磨 村上 達也 櫻井 茂男
出版者
公益社団法人 日本心理学会
雑誌
心理学研究 (ISSN:00215236)
巻号頁・発行日
pp.86.14326, (Released:2015-07-10)
参考文献数
21
被引用文献数
8

The purpose of the present study was to develop a simplified scale to assess loneliness in children. Participants were 646 elementary school students (335 boys and 311 girls) from 4th to 6th grade and 24 homeroom teachers who identified lonely children within the participants of their classes. The student participants completed the Five-item Loneliness Scale for Children (Five-LSC) and other scales measuring social skills, social competence, and withdrawal to confirm the validity of the Five-LSC. The results showed that the Five-LSC was both reliable and valid. In addition, there were no grade or sex differences in loneliness. Future research using the Five-LSC was discussed.
著者
村上 達也 西村 多久磨 櫻井 茂男
出版者
一般社団法人 日本発達心理学会
雑誌
発達心理学研究 (ISSN:09159029)
巻号頁・発行日
vol.25, no.4, pp.399-411, 2014

本研究の目的は他者のネガティブな感情とポジティブな感情の双方に着目した"子ども用認知・感情共感性尺度"の信頼性と妥当性を検討すること,共感性の性差および学年差を検討すること,そして,共感性と向社会的行動および攻撃行動の関連を検討することであった。小学4年生から6年生546名,中学生1年生から3年生646名に対して調査を行った。因子分析の結果,子ども用認知・感情共感性尺度は6因子構造であった。それらの因子は,共感性の認知的側面である,"他者感情への敏感性(敏感性)"と"視点取得"の2因子と,共感性の感情的側面である,"他者のポジティブな感情の共有(ポジ共有)","他者のポジティブな感情への好感(ポジ好感)","他者のネガティブな感情の共有(ネガ共有)","他者のネガティブな感情への同情(ネガ同情)"の4因子であった。重回帰分析の結果,小中学生で敏感性とネガ同情が向社会的行動を促進していることが明らかになった。また,小学生高学年ではポジ好感が身体的攻撃と関係性攻撃を抑制することが明らかになった一方で,中学生では視点取得が身体的攻撃と関係性攻撃を抑制することが明らかになった。
著者
藤原 健志 村上 達也 西村 多久磨 濱口 佳和 櫻井 茂男
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.62, no.3, pp.187-196, 2014
被引用文献数
4

本研究の目的は, 小学生を対象とした対人的感謝尺度を開発し, その信頼性と妥当性を検討することであった。小学4年生から6年生までの1,068名を対象とし, 対人的感謝, ポジティブ感情, ネガティブ感情, 共感性, 自己価値, 友人関係認知, 攻撃性を含む質問紙調査を実施した。主成分分析と確認的因子分析の結果, 1因子8項目から成る対人的感謝尺度が構成された。対人的感謝尺度は高いα係数を示し, 十分な内的一貫性が認められた。また, 対人的感謝尺度は当初の想定通り, ポジティブ感情や共感性, 友人関係の良好さと正の関連を, 攻撃性と負の関連を有していた。以上より, 対人的感謝尺度の併存的妥当性が確認された。さらに, 尺度得点については, 男女差が認められ, 女子の得点が男子の得点よりも有意に高かった。最後に, 本尺度の利用可能性について考察されるとともに, 今後の感謝研究に関して議論された。
著者
葉山 大地 櫻井 茂男
出版者
日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.56, no.4, pp.523-533, 2008-12

本研究は,冗談に対して親和的意図を知覚せずに,聞き手に怒りを感じさせる冗談を過激な冗談として取り上げ,こうした過激な冗談の話し手が,親和的意図が聞き手に伝わるという期待を形成する過程を関係スキーマの観点から検討した。大学生159名を対象とした予備調査から,過激な冗談として,"倫理的・性的タブーに関する冗談","聞き手の悩みに関する冗談","聞き手の外見や行動に関する冗談","聞き手の好きな人や物に関する冗談"が同定された。次に大学生 251名を対象とした本調査を行い,これらの過激な冗談の親和的な意図が聞き手に伝わるという期待は,冗談関係の認知("冗談に対する肯定的反応に基づく他者理解感"と"冗談に対する被受容感")に基づいていることが明らかとなった。特に,"冗談に対する被受容感"は全ての冗談において親和的意図が伝わるという期待に正のパスが見られた。"冗談に対する肯定的反応に基づく他者理解感"は性的タブーに関する冗談と聞き手の友人や恋人に関する冗談にのみ正のパスが見られた。また,本研究から,冗談関係の認知は,冗談行動に相手が笑った頻度を背景として形成されることが示唆された。The purpose of the present study was to examine the process that speakers follow when forming expectations of communicating to listeners that an extreme joke has benign intentions. "Extreme jokes" are defined as jokes that make a listener angry. A pilot study with university students (87 men, 72 women) indicated that extreme jokes could be classified into 4 categories: jokes about ethical or sexual taboos, jokes about the listener's distress, jokes about the listener's appearance or behavior, and jokes about people or objects that the listener likes. University students (106 men, 145 women) were asked to imagine an actual friend when completing a questionnaire about that friend. In relation to the formation process of the speaker's expectations, structural equation modeling (SEM) revealed that the "sense of being accepted by one's friend about the joke" positively influenced the speaker's expectations of communicating the benign intentions of all extreme jokes. The "sense of understanding one's friend's preference for jokes based on positive reactions" only influenced "jokes about sexual taboos" and "jokes about one's friend's friends or lover." Structural equation modeling also indicated that the cognitions of joking relationships were formed through experience with the listener's laughter following joking behavior.
著者
櫻井 茂男
巻号頁・発行日
2013

科学研究費助成事業(科学研究費補助金)研究成果報告書:基盤研究(C)2009-2012
著者
葉山 大地 櫻井 茂男
出版者
日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.58, no.4, pp.393-403, 2010-12

本研究の目的は,友人から冗談を言われて怒りを感じる場面での聞き手の反応を規定する要因を,パーソナリティ要因(拒否に対する感受性)と状況要因(話し手との親密さ,冗談に対する周囲の友人の反応)の観点から検討することである。聞き手の反応には「迎合的反応」,「回避的反応」,「感情表出反応」が含まれる。本研究では場面想定法を使用し,大学生417名(男性169名,女性247名,性別不明1名)を4つの状況(たとえば,「親友が話し手であり,周囲の友人は冗談に対して笑っている」)のうちのひとつに割り当て,その状況において冗談に対してどのように反応するかを回答するよう求めた。分散分析の結果,拒否に対する感受性が高い回答者は,親友が話し手で,かつ周囲の友人が笑っていない状況において,迎合的な反応を行わないと評定することが示された。しかしながら,拒否に対する感受性が高い回答者は,周囲の友人が笑っている場合は,迎合的反応をする頻度を高く見積もっている。この結果は,拒否に対する感受性が高い回答者は,状況によって拒否される可能性を考慮し,自己防衛的な反応を選択していることを示唆している。The purpose of the present study was to examine a personality factor (Rejection Sensitivity: RS) and situational factors (e.g., the relation between the speaker and the listener, and reactions of surrounding friends) as determinants of listeners' reactions to aversive jokes. In the present study, listeners' reactions included compliant reactions, avoidant reactions, and emotionally expressive reactions. University students (169 men, 247 women, 1 person gender not reported) were randomly assigned to 1 of 4 specific situations, such as one in which the listener's best friend is the speaker, and surrounding friends laugh at the joke. The participants were then asked to estimate the frequency of their reactions to aversive jokes in the situation to which they had been assigned. A 3-factor ANOVA mainly showed that participants who were high on rejection sensitivity estimated a low frequency of complaint reactions in situations in which their best friend was the speaker and surrounding friends did not laugh at the joke, whereas those participants estimated a high frequency of compliant reactions in situations in which their best friend was the speaker and surrounding friends did laugh. These results indicate that the participants high on rejection sensitivity assessed the possibility of rejection in each situation and selected their reaction in relation to self-protection.