- 著者
-
鈴木 高志
櫻井 茂男
- 出版者
- 一般社団法人 日本教育心理学会
- 雑誌
- 教育心理学研究 (ISSN:00215015)
- 巻号頁・発行日
- vol.59, no.1, pp.51-63, 2011-03-30 (Released:2011-09-07)
- 参考文献数
- 42
- 被引用文献数
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現在の学習が将来のために役立つと位置づける認知, すなわち「利用価値」は学習動機づけに適応的・不適応的両面の影響を与えるといわれてきた。本研究では, Kasser & Ryan(1993, 1996)の将来目標の内発—外発の2分に従って, 利用価値を, 展望する将来目標により2分し (1) 現在の学習が将来の自己成長や社会貢献といった内発的将来目標のために役立つと考える「内発的利用価値」と, (2) 現在の学習が将来の金銭的成功や名声の獲得といった外発的将来目標のために役立つと考える「外発的利用価値」とを下位尺度とする「内発的-外発的利用価値尺度」を作成した。その上で, 高校1年生(N=318)に対する調査で学習動機づけへの影響を検討した。その結果, (1) 内発的利用価値は, 主にマスタリー目標志向性を媒介に内発的動機づけなど適応的な学習動機づけを促進するのに対して, (2)外発的利用価値は, 主に遂行回避目標志向性を媒介に勉強不安など不適応的な学習動機づけに影響を及ぼす可能性のあることが分かった。さらに, 内発的-外発的利用価値がもつ達成目標志向性の先行要因として意義, 介入への示唆および今後の展開について議論する。