- 著者
-
伊藤 忠弘
- 出版者
- 一般社団法人 日本教育心理学会
- 雑誌
- 教育心理学年報 (ISSN:04529650)
- 巻号頁・発行日
- vol.51, pp.42-52, 2012 (Released:2013-01-16)
- 参考文献数
- 50
- 被引用文献数
-
4
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本稿はまず日本教育心理学会第53回総会での研究発表570件のうち社会領域に関連する245件の動向を確認した。本年度は学校組織や教師, 教師集団についての研究が増加した。子どもの対人関係や学級適応といったテーマも相変わらず関心が高かった。次に最近1年間に発表された本邦における対人関係と関係性を扱った社会心理学的研究の動向を概観した。これらの研究のテーマは, (1) クラスの中での逸脱行動への同調および社会的比較, (2) 青年期の対人関係の親密性と排他性, および希薄化, (3) 親密な関係が個人にもたらす機能(関係効力性, 社会的動機づけ), (4) 対人関係の否定的側面(関係性攻撃, 引きこもり), (5) 対人関係を支える対処行動や感情(罪悪感, 感謝, 共感性), ソーシャル・スキル, を含んでいた。関係性を間主観的な概念として捉えようとする試みや相互作用過程を解明しようとする試みが行われていることが明らかになった。