- 著者
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根ケ山 光一
河原 紀子
大藪 泰
山口 創
岡本 依子
菅野 純
川野 健治
- 出版者
- 早稲田大学
- 雑誌
- 基盤研究(A)
- 巻号頁・発行日
- 2004
本研究は、人間の対人関係において基本的に重要な役割を果たしている身体接触に関して、その正負両面にまたがる意味を、ライフサイクルのさまざまな時期にわたって注目し、生涯発達的に検討したものである。まず、胎児期においては接触が胎動という形で採り上げられ、母親が胎内の子どもの身体と接触的にコミュニケーションする様が、「オノマトペ」を通じて明らかにされた。乳幼児の研究としては、抱き(および抱きにくさ)・身体接触遊び・ベビーマッサージといった異なるアプローチを通じて、身体接触が母子間での重要なコミュニケーションチャンネルであることが示され、またそこに子どもも主体的にかかわっていることが明らかにされた。また、母子関係を離れても、子ども同士や保育士との身体接触には、子どもの対人関係構築上の大きな機能が示唆された。さらに、寝かしつけという睡眠・分離導入場面においては身体接触の様態に大きな文化差がみられ、接触・分離が文化規定性の強い側面であることも示された。青年期になると、親子の反発性、友人関係における性や攻撃性に伴う反発性など、身体接触の負の側面が強く前面に出てくることがある。親子関係でいえば、インセストなど身体的反発性が接触への嫌悪として強くみられることが明らかにされた。また、老化とともに、身体が相手に触れることの意味がさらに変化する。介護と身体接触につながるようなテーマが介護ロボットを用いて明らかにされた。以上のような研究の成果をもちよって報告会を行い、関係構築の確固たる土台としての身体と、それを触れあわせることの発達に伴う意味の推移とが議論された。そして、それをふまえて最後に報告書を作成した。