著者
辻内 琢也 扇原 淳 桂川 泰典 小島 隆矢 金 智慧 平田 修三 多賀 努 増田 和高 岩垣 穂大 日高 友郎 明戸 隆浩 根ケ山 光一
出版者
早稲田大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2020-04-01

本研究は、「帰還か移住か避難継続か」の選択を迫られる原発事故被災者が、今後数年間で安心して生活できる新たな居住環境をどのように構築していくのか、現状と問題点を明らかにし、「居住福祉」に資する心理社会的ケアの戦略を人間科学的学融合研究にて提言していくことにある。「居住は基本的人権である」と言われるように、被災者が安心・安全に生活できる基盤を構築するためには、内科学・心身医学・公衆衛生学・臨床心理学・発達行動学・社会学・社会福祉学・平和学・建築学・環境科学といった学融合的な調査研究が欠かせない。応募者らは2011年発災当時から被災者支援を目指した研究を継続させており、本課題にてさらに発展を目指す。
著者
根ケ山 光一 篠原 一之
出版者
早稲田大学
雑誌
萌芽研究
巻号頁・発行日
2002

思春期の親子関係と匂いの関係を直接的に調べるため,質問紙を用いて,小学生から大学生までの男女(1047名)と高校までの子の父母(162名)に対し,相互の体臭をどの程度快・不快に感じているか尋ねた。その結果,親の様々な身体部位の中で特に口・脇の下・足の裏・頭の臭いが嫌悪され,その傾向は男子に強く,かつ父親がより嫌悪された。しかしながら,子どもの年齢によって親の体臭への嫌悪が顕著に増減する傾向は認められなかった。一方,親から子の体臭に関しては,足の裏や口,頭,脇の下の匂いが嫌悪され,父親からの不快感情が母親よりも有意に強かったが,ここでもやはり予想に反して子の年齢と体臭への嫌悪の対応は明瞭ではなかった。このように子の年齢よりは親・子の性が体臭への嫌悪のより大きな要因であることがわかった。20代、30代、40〜50代の男性の匂いの思春期前・後の女性の情動に及ぼす影響を調べた。思春期前は時期を選ばず一回、思春期後は卵胞期と排卵期に,男性の匂い(腋下、乳首周囲、会陰部、背中)を嗅いでもらい、その匂いに対する印象をSexy、男性的、快、強い、Happyの項目について評価してもらった。その結果、排卵期思春期後女性は思春期前女性と卵胞期思春期後女性に比べ男性の匂いに対しよりSexyに感じることが分かった。そこで、年齢別にSexyさを調べたところ、思春期前女性と卵胞期思春期後女性ではどの年代の男性の匂いにもSexyさは感ぜず、排卵期思春期後女性は20代の男性の匂いにSexyさを感じることが分かった。以上のことから、女性は、生殖可能な年齢しかも生殖可能な時期でのみ、男性の匂いにSexyさを感じることが分かった。さらに、生殖可能な年齢・時期であっても、自分の父親に相当する年齢にはSexyさを感じないことから、匂いによる近親相姦回避の可能性も考えられた。
著者
根ケ山 光一
巻号頁・発行日
pp.1-82, 2000-03

(課題番号:09610144) 平成9年度~11年度科学研究費補助金(基盤研究(C))研究成果報告書 研究代表者根ヶ山光一(早稲田大学人間科学部教授)
著者
根ケ山 光一
出版者
日本動物心理学会
雑誌
動物心理学研究 (ISSN:09168419)
巻号頁・発行日
pp.66.1.6, (Released:2016-06-09)
参考文献数
18

Both positivity and negativity are important components for the development of mother-offspring relationship. The "inter-body antagonism" is an important biological framework to promote offspring's independence from mothers. Weaning, an achievement of nutritional independence in offspring, is a typical situation in which mother-child negativity plays an important role. Human mother-child separation is also actualized by complex sociocultural allomothering systems consisting of objects, persons and institutes. Human triadic relationship in joint attention by mother and infant to object is a basic element of the systems. The relationship is preceded by "Proto-triadic relationship" in which particular body parts are used as targets in human inter-body interactions as in a case of tickling play.Not only object but also person could be a target of attention in triadic relation, and exchange of perspectives with the person is essential in the human infant's cultural learning and establishment of social network. A special allomothering by a girl called Moriane in an island of Okinawa is an example of such allomothering.
著者
川田 学 白石 優子 根ケ山 光一
出版者
一般社団法人 日本発達心理学会
雑誌
発達心理学研究 (ISSN:09159029)
巻号頁・発行日
vol.27, no.4, pp.276-287, 2016

<p>本稿では,沖縄の離島である多良間島の子守風習と保育所の歴史的関係を,アロマザリング・システム(社会化された子育てシステム)のダイナミックな変容過程においてとらえる作業を通して,人間発達研究に時代性と地域性を含むための方途を探った。第一に,沖縄地方に独特な子守である「守姉」の経験の時代推移と,村立保育所の開設契機およびその後の展開に関して,聞き取り調査に基づいて分析した。その結果,守姉は1950年前後生の世代で経験者がピークで,その後段階的に減少し,近年になってやや増加の傾向にあった。保育所の開設(1979年)は,当時の母親たちによる「教育」への期待が背景にあった可能性が示唆された。第二に,守姉と保育所を含む島の子育てのあり方に大きな影響を与えたと考えられる,ライフラインと保育・教育施設の整備,また,人口動態について,資料をもとに分析した。その結果,守姉経験のピーク時期の人口構成は,大人に対して子ども(とくに3歳未満児)が極めて多く,その後は大人増加のトレンドに転じたこと,沖縄返還(1972年)をはさんだ時代に島のライフラインと保育・教育制度が急速に整備されたこと,とくに利水環境の整備が島の子育ての変化とも関わっている可能性があることなどが推察された。最後に,多良間島という固有の地域性と時代性をもつ位置から,現在の発達心理学に内在するいくつかの前提について議論した。</p>
著者
根ケ山 光一
出版者
日本動物心理学会
雑誌
動物心理学研究 (ISSN:09168419)
巻号頁・発行日
vol.66, no.1, pp.47-51, 2016 (Released:2016-06-27)
参考文献数
18

Both positivity and negativity are important components for the development of mother-offspring relationship. The "inter-body antagonism" is an important biological framework to promote offspring's independence from mothers. Weaning, an achievement of nutritional independence in offspring, is a typical situation in which mother-child negativity plays an important role. Human mother-child separation is also actualized by complex sociocultural allomothering systems consisting of objects, persons and institutes. Human triadic relationship in joint attention by mother and infant to object is a basic element of the systems. The relationship is preceded by "Proto-triadic relationship" in which particular body parts are used as targets in human inter-body interactions as in a case of tickling play.Not only object but also person could be a target of attention in triadic relation, and exchange of perspectives with the person is essential in the human infant's cultural learning and establishment of social network. A special allomothering by a girl called Moriane in an island of Okinawa is an example of such allomothering.
著者
根ケ山 光一 河原 紀子 大藪 泰 山口 創 岡本 依子 菅野 純 川野 健治
出版者
早稲田大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2004

本研究は、人間の対人関係において基本的に重要な役割を果たしている身体接触に関して、その正負両面にまたがる意味を、ライフサイクルのさまざまな時期にわたって注目し、生涯発達的に検討したものである。まず、胎児期においては接触が胎動という形で採り上げられ、母親が胎内の子どもの身体と接触的にコミュニケーションする様が、「オノマトペ」を通じて明らかにされた。乳幼児の研究としては、抱き(および抱きにくさ)・身体接触遊び・ベビーマッサージといった異なるアプローチを通じて、身体接触が母子間での重要なコミュニケーションチャンネルであることが示され、またそこに子どもも主体的にかかわっていることが明らかにされた。また、母子関係を離れても、子ども同士や保育士との身体接触には、子どもの対人関係構築上の大きな機能が示唆された。さらに、寝かしつけという睡眠・分離導入場面においては身体接触の様態に大きな文化差がみられ、接触・分離が文化規定性の強い側面であることも示された。青年期になると、親子の反発性、友人関係における性や攻撃性に伴う反発性など、身体接触の負の側面が強く前面に出てくることがある。親子関係でいえば、インセストなど身体的反発性が接触への嫌悪として強くみられることが明らかにされた。また、老化とともに、身体が相手に触れることの意味がさらに変化する。介護と身体接触につながるようなテーマが介護ロボットを用いて明らかにされた。以上のような研究の成果をもちよって報告会を行い、関係構築の確固たる土台としての身体と、それを触れあわせることの発達に伴う意味の推移とが議論された。そして、それをふまえて最後に報告書を作成した。