著者
河野 一郎 秋本 崇之 赤間 高雄 河野 一郎 福林 徹
出版者
筑波大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2001

簡易型SIgA測定キットの開発本年度はまず市販のSIgA特異的なモノクローナル抗体を用いて,比濁法による測定を行ったが,おそらく抗体自体の力価のあるいは抗体のエピトープの問題により良好な測定系を構築できなかった.そこで,比濁法に適応可能なモノクローナル抗体の作製を試みた.現在,クローンを選別しているところであり,本補助期間にはキットの開発までにはいたらなかった.しかし,キットの開発に必要となる基礎的なデータは得ることができ,今後の展開に利するところは大と考えられた.SIgAレベルと感染症の関係昨年度,2ヶ月に渡って30名の被験者から唾液を採取し,SIgAと上気道感染症の関係を調査し,SIgAの低下と,上気道感染症の発現に一定の関係があることを見出した.本研究成果は臨床スポーツ医学に掲載された.また,高強度トレーニング(試合期)のSIgAの変化と,心理的・肉体的ストレスに関する成果についてまとめ,論文としてアメリカスポーツ医学会の機関紙(Med Sci Sports Exerci)に掲載された.本研究の結果,SIgAと上気道感染症罹患リスクには一定の関係があることが明らかとなり,今後SIgAを上気道感染症リスク把握の手段として応用することが可能であることが本研究の結果により示されたと考える.また,SIgAの測定は非侵襲的であり,その応用範囲は大と考えられた.本研究の成果により論文発表5件(国内誌3件,国際誌2件),学会発表7件を公表することができ,基礎研究としては十分な研究成果が得られたと考える.
著者
河野 一郎 清水 和弘 清水 和弘 赤間 高雄 秋本 崇之 渡部 厚一
出版者
筑波大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2010-04-01

本研究では,唾液中のヒートショックプロテイン70(HSP70)が競技選手および高齢者のコンディション評価指標としての有用性について検討した.一過性高強度運動で唾液HSP70が増加することを示した.また継続的な高強度運動で安静時のHSP70は顕著な変動はしないが,その原因として高強度運動に対するHSP70応答の個人差が考えられた.さらに継続的な運動で高齢者の安静時HSP70が高まり,さらにHSP70がT細胞活性経路の亢進メカニズムに関わる可能性が示された.以上より,唾液HSP70によるコンディション評価は,競技選手では個々の変動が異なるため検討が必要であり,高齢者では有用である可能性が示された.
著者
近藤 良享 野津 有司 真田 久 河野 一郎
出版者
筑波大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2002

この研究は、国内外のスポーツ界における薬物等ドーピングを防止するために,教育プログラムや啓蒙を行うための基礎的資料を得ることを目的とした。本研究では,まずアンチ・ドーピング対する実態を把握するために,世界アンチ・ドーピング機構(WADA)と日本アンチ・ドーピング機構(JADA)との共同プロジェクトと絡めて、ドーピングに対する意識調査項目(60項目)を作成し、日本の体育系大学のトップレベルの選手、288名に対する予備調査を実施した。この調査結果をふまえ、JOC五輪強化指定選手およびJADA加盟団体選手に対する意識調査(調査項目を10項目に精選)を2,800名に行った。さらに,JADA加盟団体所属選手らと同じドーピングに対する意識調査を体育・スポーツ系のT大学の学生(744名)に実施した。その結果,T大学生とJADA調査との比較検討から,今後の日本におけるアンチ・ドーピング教育の多くの課題が引き出された。具体的には、アンチ・ドーピング意識が,JADA調査の選手らよりもかなり低く,アンチ・ドーピング意識が不完全であること、また,ドーピングに関する知識・情報が,大学生も日本代表選手らへの提供も全く不十分な状況が示された。アンチ・ドーピングの教育・啓蒙のための教材づくりや支援システムを構築する必要性が浮き彫りにされた。世界アンチ・ドーピング規程へのWADAとIFsの締結期限が2004年8月のアテネ開会式前日であり、これより国際レベルでのアンチ・ドーピング活動が開始された。さらにユネスコ国際条約として,2006年2月の政府関係機関の締結が終われば、アンチ・ドーピング運動が国際スポーツ団体・国家レベルで一体となって展開されることになり、ハード面のドーピング撲滅への足がかりが整うが、未だに不十分な健全なアンチ・ドーピング観の形成を行うためのソフト開発が求められる。