著者
浜田 明範
出版者
関西大学社会学部
雑誌
関西大学社会学部紀要 (ISSN:02876817)
巻号頁・発行日
vol.53, no.2, pp.65-90, 2022-03-31

本論では J. S. ファーニバル、J. C. ミッチェル、M. G. スミス、F. バルト、C. レスリー、H. ベア、M.ストラザーンの議論の検討を通して、人類学において多元という概念がどのように使われてきたのか、その論理的な更新の展開を追跡していく。この作業を通じて、多元社会という概念が、多元主義、複数民族社会システムを経て、ポスト多元的な世界という発想へと結実した流れを描き出すことが本論の目的である。
著者
浜田 明範
出版者
くにたち人類学会
雑誌
くにたち人類学研究 (ISSN:18809375)
巻号頁・発行日
vol.9, pp.1-9, 2014

本書は、ケニア海岸地方のドゥルマ社会を30 年に亘って調査してきた著者による妖術についての民族誌である。著者によるドゥルマ社会についての単著としては、2001 年に出版された『秩序の方法:ケニア海岸地方の日常生活における儀礼的実践と語り』[浜本 2001]があり、本書は二冊目に当たる。『秩序の方法』の出版後、著者はジェームズ・クリフォードの『文化の窮状』[クリフォード 2003]を太田好信らと共訳し、その延長線上に編まれた教科書的な論文集『メイキング文化人類学』[太田・浜本 2005]に収められた論文で独自の民族誌論を展開している。本書には、新たに書き下ろされた多くの章が含まれるが、直接的には、2007 年以降に著者が精力的に発表してきた理論的・民族誌的論考の延長線上に位置づけることができる。そのうちのいくつかは加筆修正した上で本書にも採録されており、新たに書き下ろされた章と合わせて一貫性が持たされている。しかし、本書の内容は、2005 年以前の著作とも密接に関連しており、それらとの関連を射程に入れた上で理解されるべきである。
著者
浜田 明範
出版者
くにたち人類学会
雑誌
くにたち人類学研究 (ISSN:18809375)
巻号頁・発行日
vol.5, pp.89-90, 2010-05-01
著者
浜田 明範
出版者
日本文化人類学会
雑誌
文化人類学 (ISSN:13490648)
巻号頁・発行日
vol.81, no.4, pp.632-650, 2017 (Released:2018-02-23)
参考文献数
37

2015年のノーベル医学生理学賞はアルテミシニンとイベルメクチンの開発に授与された。ノーベル財団がグローバルヘルスへの貢献を表彰したことは評価すべきことであるが、同時に、この受賞は、魔法の弾丸という薬剤観を強化する可能性も持っている。しかし、薬剤を開発すれば自動的に感染症が根絶されるわけではない。そこで本論では、イベルメクチンの集団投与と乳幼児に対するワクチン接種に焦点を当てながら、グローバルヘルスにおいて薬剤がどのように時空間に配置されているのかを化学的環境という概念を用いながら明らかにしていく。 薬剤の配置について分析する際には、空間的な広がりだけでなく、時間的な位置づけに着目する必要がある。ガーナ南部のカカオ農村地帯で活動している地域保健看護師たちは、イベルメクチンの集団投与の際には、科学研究に基づく薬剤と病原体の関係についての時間性と民族誌的知識に基づく人々の生活の時間性という2つの時間性を調整することによって化学的環境を改編している。彼女たちはまた、ワクチン接種の際に、自らを一定のリズムを刻む存在、つまり、化学的環境の一部として提示することにも成功している。このように地域保健看護師たちは、当該地域の環境に適応することと、自らを化学的環境の一部とすることという2つの方法を用いながら、化学的環境のリズムを作り出している。このようにして達成される環境への薬剤の配置は、環境についての認識に依拠しているだけでなく、環境を露わにするものでもあり、それを改編していくものでもある。 これらの議論を通じて、魔法の弾丸という薬剤観からの脱却を推し進めるとともに、時間性に注目することでこれまで空間的な配置にのみ焦点を当ててきた薬剤の人類学をアップデートし、薬剤について検討する際に化学的環境という概念が拓く可能性の所在を示すことが本論の目的である。
著者
浜田 明範
出版者
日本文化人類学会
雑誌
日本文化人類学会研究大会発表要旨集 日本文化人類学会第51回研究大会 (ISSN:21897964)
巻号頁・発行日
pp.C20, 2017 (Released:2017-05-26)

ガーナ南部の仕立屋は2年強の修行の後に、卒業パーティーを経て一人前と認められる。この卒業パーティーは結婚式などの他のパーティーと部分的につながれているのだが、新たに承認される仕立屋は、このパーティーの特徴を巧みに利用する。仕立屋は、未来の花嫁の姿を先取りし、未来の顧客の衣装を先取りした衣装を身に着けることで、自らとその衣装をポスト多元的なものとして提示し、自らの技術を示すのである。