著者
三角 順一 青木 一雄 海老根 直之
出版者
大分大学
雑誌
萌芽研究
巻号頁・発行日
2004

本研究は牛乳中の女性ホルモンが人体に影響を及ぼすか否かについて検討しようとしたものである。市販の牛乳の75%は妊娠中の乳牛から搾乳されている。しかし、牛乳中の種類別β-エストラジオールの濃度に関する報告はこれまで行われていない。今回、牛乳を18,000rpm60分間超遠心し、乳清を蒸発乾固の後、0.1M酢酸ナトリウム緩衝液に溶解、β-グルクロニダーゼを加えて加水分解し、希釈エタノールに溶解した後、3,300rpm30分間遠心分離してその上清を再び蒸発乾燥固し、10%メタノールに溶解、ELISAキットを用いて吸光度からホルモン濃度を測定した。その結果、種類別牛乳、低脂肪乳、特濃、ナイトミルク各4サンプルの平均値と標準偏差はそれぞれ50.0±11.3、64.7±7.8、64.4±4.8、66.3±11.2ng/ml乳清であった。20-35歳の成人男性11名に対して牛乳1lを飲用してもらった。飲用前30分、1時間、および90分後に血清中のエストステロン(E1)、エストラジオール(E2)、テストステロン(Tステロン)の濃度変化について検討した結果、男性9名の血中E1、E2濃度は飲用後60分で最高値に達し、平均値で65.2pg/mlおよび47.2pg/mlとなった。これは前値と比較して、E1で57.2%、E2で46.3%増加していた。一方、血中Tステロン値は前値5.14、30分値3.46、1時間後3.25ng/mlと低下が見られた。体脂肪率とTステロン値(前値)との間には負の相関(r=0.87)があった。また、別の調査においては、男性12名のE2値は17.6〜56.8pg/mlに分布していた。Tステロン値は2.07〜6.76ng/ml、平均値と標準偏差は4.2±1.37ng/mlであった。女性6名のTステロン値は0,21〜0.77ng/ml、平均値と標準偏差は0.41±0.22ng/mlであった。Tステロン/E2比の値は女性では0.15〜0.35、男性では6.7〜29.5であった。47〜60歳の月経のなくなった女性28名を2群に分け、3ヶ月間1日に2本(400ml)の牛乳を飲用してもらい、飲用前と3ヵ月後のE2、Tステロン濃度を測定した結果、飲用前のE2は未飲用群の11.6±9.1に対し、飲用群では9.6±4.2ng/ml、3ヶ月後未飲用群12.2±4.3に対し、飲用群では13.6±6.5ng/mlと著しい上昇がみられた。E2/Tes比も未飲用群は0.5→0.5と変化がみられなかったが、飲用群では0.4→0.6と50%の増加がみられ有意差があった。(P<0.05)。
著者
海老根 直之 北條 達也 中江 悟司 田中 宏暁 檜垣 靖樹 田中 歌 荒井 翔子 濱田 安重 石川 昂志 森川 綾子 鈴木 睦子 渡口 槙子
出版者
同志社大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2014-04-01

本研究では,共に摂取した飲料と食物が互いの水分の吸収速度に与える影響と,体位の変換が水分の吸収速度に与える影響を検討することを目的とした.その結果,水分を速やかに補給するためには,飲料を固形食と同時に摂取するよりも10分先行して摂る方が有効であること,飲料の量と温度は飲料水分だけでなく共に摂取した固形食の水分の吸収にも影響しうること,加えて,体位を工夫することで水分の吸収を促進できる可能性が示された.これらの知見は,効果的な水分の補給法の確立には,従来行われてきた飲料単体に焦点を当てた検討だけでなく,食事や体位といった実用時に生じる要因も含めた検討の必要性を示唆するものである.
著者
齊藤 愼一 海老根 直之 島田 美恵子 吉武 裕 田中 宏暁
出版者
The Japanese Society of Nutrition and Dietetics
雑誌
栄養学雑誌 (ISSN:00215147)
巻号頁・発行日
vol.57, no.6, pp.317-332, 1999-12-01 (Released:2010-02-09)
参考文献数
54
被引用文献数
2 2

エネルギー所要量は栄養所要量の基礎とされている。幼児期から高齢期まで生涯にわたり健康で活力のある生活を送るには, どれだけ食べればよいかを考えることに加えて適切な運動を生活に取り入れることが重要である。一方, 激しいトレーニングを行うスポーツ選手では, 不適切なエネルギー摂取は競技成績の低下につながりやすい。このような点から, 我が国に限らず世界各国で1日のエネルギー消費量の適正な測定法に関心が集まっている。二重標識水 (Doubly Labeled Water; DLW) 法は, エネルギー消費量測定法の比較的新しい方法であり, 実験室内でも実験室外でも幅広く使用できる。日常生活状態のエネルギー消費量を測定できるゴールドスタンダードであり, 得られた値はより実際に近い状況でのエネルギー消費量の基準となると考えられている。しかし, 使用する安定同位体の酸素-18 (18O) の価格及び分析機器が高額なので, 多数の被験者を用いる実験や疫学的調査あるいは教育プログラムへの応用には制限がある。ここでは, この原理と実際の測定について解説し, 加えて健康づくりの運動やスポーツへの応用についても述べた。