著者
森岡 克司 延近 愛子 亀井 美希 川越 雄介 伊藤 慶明 久保田 賢 深見 公雄
出版者
社団法人日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.52, no.9, pp.420-423, 2005
被引用文献数
2

うどんの物性に及ぼす海洋深層水の影響 (DSW) を検討した.<br>(1) DSW及びDSWの代わりに2.5%食塩水を小麦粉 (麺用中力粉) 1kgに対し, 390ml添加して2種類のうどんを調製し, 物性測定とN-SEM観察を行ったところ, 物性では, DSW添加うどんの方が, 食塩水添加うどんに比べ強度, 伸び共に高い値を示した. N-SEM観察では, 食塩水添加うどんに比べ, DSW添加うどんの組織構が密であった.<br>(2) 2.5%食塩水にDSWに含まれる主要陽イオン (Mg<sup>2+</sup>, Ca<sup>2+</sup>, K<sup>+</sup>) を加えてうどんを調製したところ, Ca<sup>2+</sup>とK<sup>+</sup>をともに加えたうどんで, 強度及び伸びともにDSW添加うどんに匹敵した.<br>以上の結果より, DSWはうどんの微細構造を密にすることにより, 物性の向上に寄与し, その効果は, 海水中に含まれる主要な元素, 特にCa<sup>2+</sup>とK<sup>+</sup>に由来するもの推察した.
著者
松田 篤志 西島 敏隆 深見 公雄
出版者
公益社団法人日本水産学会
雑誌
日本水産学会誌 (ISSN:00215392)
巻号頁・発行日
vol.65, no.5, pp.847-855, 1999-09-15
被引用文献数
3 32

A. catenellaの増殖に及ぼす窒素・リン源の影響を調べた。増殖のK_Sは, NO_3-Nで7.7μM, NH_4-Nで3.3μM, PO_4-Pで0.72μMと, 他の赤潮植物プランクトンと比較して高い値であった。μ_<max>は0.47&acd;0.55day^<-1>であった。本藻は, 有機態窒素(尿素およびアミノ酸態窒素のほとんど)を窒素源として増殖に利用できなかった。一方, リン源については有機態リンをはじめ, 種々の形態のリンを利用可能であった。以上から, 本藻は有機態リン濃度の高い富栄養型沿岸域に適応しており, 低無機態窒素・リン濃度下では代表的な赤潮プランクトンよりも優位に増殖する可能性は低いと推察された。
著者
深見 公雄 湯澤 篤 西島 敏隆 畑 幸彦
出版者
日本水産學會
雑誌
日本水産学会誌 (ISSN:00215392)
巻号頁・発行日
vol.58, no.6, pp.1073-1077, 1992
被引用文献数
28 83

A bacterium 5N-3 possessing a remarkable inhibitory effect on the growth of <i>Gymnodinium nagasakiense</i> was isolated from Uranouchi Inlet, Kochi. This bacterium was tentatively identified as <i>Flavobacterium</i> sp. The growth inhibiting effect of 5N-3 on <i>G. nagasakiense</i> was drastic in particular when the alga was in the logarithmic growth phase, and cell density decreased to less than 1% of the initial concentration within 4 days after inoculating 5N-3, indicating that the effect was algicidal. The effect was obtained when the density of the bacterium was more than 10<sup>6</sup> cells/m<i>l</i>. However, they grew very rapidly up to 10<sup>8</sup> cells/m<i>l</i> by using extracellular released organic carbon from various phytoplankton species. On the other hand, the algicidal effect of 5N-3 was only observed on <i>G. nagasakiense</i> but not on <i>Chattonella antiqua</i>, <i>Heterosigma akashiwo</i>, or <i>Skeletonema costatum</i>. These results indicate that the effect of 5N-3 was <i>G. nagasakiense</i>-specific and suggest that it grows to a level of cell density effective in inhibiting the alga in the field by using naturally oc-curring organic carbon from phytoplankton.
著者
新保 輝幸 三浦 大介 交告 尚史 深見 公雄 山岡 耕作 友野 哲彦 婁 小波 新保 輝幸
出版者
高知大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2000

自然科学的アプローチ深見は、柏島周辺に設けた測点において、周年に渡って水質や微生物群集に関する調査を行った。その結果、同海域では基本的に貧栄養な環境であるものの、冬季には栄養塩濃度が、また夏季の底層付近では有機物濃度がそれぞれ増加する傾向が見られた。水質の変動は月齢や潮汐でも観察され、小潮の下げ潮時に栄養塩濃度や微生物の生物量が上昇することがわかった。以上の結果から、柏島周辺海域では基本的には貧栄養な黒潮の影響を受けているものの、短期的には貧栄養な内湾水が流入することもあり、これらが同海域の豊かな生物群集を支えている可能性があることが示唆された。山岡らは、後浜西部にラインセンサス区を設定し、底質によってゴロタ区、サンゴ区、死サンゴ区の3区に分け、2002年9月と3月に魚類生態について調査を行った。その結果、9月の調査では137種2,266個体が観察された。この種数は、以布利の同時期の出現数約70種のおよそ2倍に達し、柏島の魚類相の豊かさを証明する結果になった。3区の内では、サンゴ区で最多の種数が観察された。また以上のような調査を通じて調査海域の生物多様性に関する基礎データを蓄積中である。社会科学的アプローチ現地において、地域住民、漁協、ダイビング業者・ダイビング組合、町役場などの地域の利害プレイヤーに対するヒアリング調査と、関係諸機関からのデータ収集を行い、地域の実態の把握を行った上で、次のような研究を行った。交告らは、漁業とダイビング等の海洋レクリエーションの間でどのような利用秩序を構築するのが望ましいかを分析し、主体間で海面の利用調整を行うルールについて検討した。そして、そのルールにどのように法的な効力を持たせるかという点を追究した。新保らは、アンケートを用いた仮想状況評価法(CVM)および仮想旅行費用法によって、それらの自然資源の経済価値を評価するとともに、付け根方程式を推定してデータの信頼性を検証した。アンケートは、近隣で柏島への訪問客が多い岡山市、高松市、高知市の住民に対する郵送調査で行った。また友野は、オンサイトのアンケート調査を行い、これらの自然資源をダイビング等の海洋性レクリエーションで利用する場合の利用価値について、ゾーン・トラベルコスト法により評価した。婁は、柏島にとどまらず、沖縄や三浦半島など漁業とダイビング業の関係が問題となっているその他の地域についても調査を重ね、地域の自然資源を地域住民が多面的かつ持続的に利用して暮らしを立てていく「海業」という概念を提示し、従来の漁業・ダイビングサービス業の枠組みを超えた新たな形に産業構造を転換し、地域振興をはかっていくべきであるとして、その具体案を検討した。
著者
深見 公雄 山岡 耕作 西島 敏隆
出版者
高知大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1992

魚類の種苗生産における初期餌料として現在多用されているS型ワムシは、魚種によっては孵化後の摂餌開始時期の口径に比較して大きすぎるため仔魚は効率よく摂食することができず、その初期減耗の大きな原因になっている。このため本研究では、S型ワムシに代わるより小型でかつ安定大量培養が可能な餌料の開発を目的とし、原生動物(鞭毛虫・繊毛虫)の仔魚初期餌料としての可能性について検討した。また、天然海域に生息する仔魚の消化管内容物を調べ、原生動物プランクトンの消費者としての仔魚の役割について調べた。まず稚魚ネットにより土佐湾や伊予灘で採取された全長数mm程度の仔魚の消化管内容物を、微生物学的な手法を用いて詳細に観察した。その結果、大きさが10〜40μm程度の原生動物が仔魚によって捕食されているのが確認された。約47属319個体の仔魚について、その消化管内部を観察した結果、魚種によって、(1)観察した個体のほとんどすべてで原生動物が多量に観察されたもの、(2)観察されないかされても比較的少量であったもの、および(3)全く原生動物の捕食がみられなかったものの3群に分かれることが明らかとなった。(1)のグループにはカワハギ・アミメハギ・ヒメダラ等が、また(2)のグループにはシロギスやタチウオ等が、(3)のグループにはカタクチイワシ・マイワシ・クロサギ等が該当した。天然仔魚が原生動物を摂餌していることが明らかとなったため、種苗生産により得られた孵化後2〜3日の摂餌開始期にあたる仔魚を約24時間飢餓させたのち、海水中より分離した鞭毛虫および繊毛虫を与えた。その結果、孵化後3日齢のアユ仔魚や孵化後4日齢のヒラメ仔魚ではまったく繊毛虫を摂食していないことを示す結果しか得られなかった。またマダイにおいては、孵化後3日齢の仔魚はほとんど摂食しなかったものの6日齢仔魚ではわずかながら仔魚添加実験区での繊毛虫の密度が無添加対照区に比較して減少しており、マダイ仔魚による繊毛虫の摂餌が示唆された。また前記の魚種に比較してより口径の小さい2日齢のキジハタ仔魚では、繊毛虫を捕食していることを示唆する結果が得られた。以上の観察・実験結果から、魚種によっては孵化直後の初期餌料として繊毛虫等の原生動物プランクトンが有効であることが示唆された。
著者
石田 祐三郎 田中 克 坂口 守彦 吉永 郁生 左子 芳彦 内田 有恒 深見 公雄
出版者
京都大学
雑誌
一般研究(A)
巻号頁・発行日
1988

有用魚類の稚仔魚の成育、変態、着定などの生理およびそれらを促進する細菌および微細藻の生理活性物質を究明し、さらにそれら有用因子の遺伝子導入技術を応用し、魚類生産に貢献するとともに、魚類生理態学や水産微生物学の発展に資することを目的とした。得られた成果は下記の通り。1.ヒラメの変態期には、胃や幽門垂の分化・甲状腺の顕著な増加・胸腺組織の成熟など消化系・内分泌系・リンパ系諸器官に顕著な変化が観察された。変態後期コルチゾルの濃度上昇に続いて甲状腺ホルモン(T_4)濃度が著しく上昇した。これらの器官の発達やホルモンレベルには顕著な水温依存性が確認された。以上の知見より、ヒラメの変態期には多くの器官の分化や体の仕組みの変化とホルモンレベルの一過性の急上昇が集中して生じることが明らかとなった。2.ヒラメ稚仔魚の着定を促進する微生物をPVAに固定して探索し、微細藻としてChattonella antiquaを、細菌としてAcinetobacter sp.SS6ー2株を得た。それぞれを分画し、着定促進が認められたのは、C.antiquaのエタノ-ル不溶画分とSS6ー2株のアセトン不溶性画分であった。3.稚魚の摂餌誘引や成長促進をする微細藻の探索を行い、渦鞭毛藻類、とりわけCrypthecodinium cohniiが有効であり、その成分がジメチル・スルフォプロピオン酸(DMSP)であることを見出した。DMSPはメチオニンから脱炭酸酵素によりメチルチオプロピオン酸(MTP)を経て生合成されることを明らかにし、現在本酵素の精製を行っている。4.C.cohniiに、PEG法によってカナマイシンの耐性遺伝子とGUS遺伝子をもつプラスミドpUC19の導入を試み、耐性株にGUS活性の上昇がみられた。5.緑藻アナアオサのプロトプラストを調整し、それを再生し、葉状体形成型と仮根葉状体形成型の2タイプを得た。それらプロトプラストに遺伝子導入を試みているがまだ成功していない。
著者
松田 篤志 西島 敏隆 深見 公雄 足立 真佐雄 Atsushi Matsuda Toshitaka Nishijima Kimio Fukami Masao Adachi 高知大学農学部栽培漁業学科:(現)熊本市役所 高知大学農学部栽培漁業学科 高知大学農学部栽培漁業学科 高知大学農学部栽培漁業学科 Department of Aquaculture Faculty of Agriculture Kochi University:(Present address)Kumamoto City Office Department of Aquaculture Faculty of Agriculture Kochi University Department of Aquaculture Faculty of Agriculture Kochi University Department of Aquaculture Faculty of Agriculture Kochi University
出版者
The Japanese Society of Fisheries Science
雑誌
日本水産学会誌 = Bulletin of the Japanese Society of Scientific Fisheries (ISSN:00215392)
巻号頁・発行日
vol.67, no.4, pp.658-663, 2001-07-15
参考文献数
32
被引用文献数
2

A. catenellaの増殖に及ぼすB群ビタミンの影響をバッチ培養系において調べた。本藻はB群ビタミンのうちビタミンB_<12>を増殖に必須に要求し, 増殖のB_<12>半飽和定数(Kμ)は0.22ng/L, 最大比増殖速度(μ'm)は0.55 day^<-1>, 最小細胞内B_<12>含量(q_0)は0.65fg/cell, 単位細胞体積当たりのB_<12>含量は27分子/μm^3と算出された。本藻は, 他の栄養物質が充足されている場合, 富栄養化の進んだ沿岸・内湾域のようにB_<12>供給量が多い海域では最大に近い比増殖速度で増殖できると考えられた。また, Kμ, μ'mを他の赤潮プランクトンと比較した結果, 本藻は低B_<12>濃度下で一部の赤潮プランクトンよりも優位に増殖できると推察された。Physiological growth characteristics of Alexandrium catenella (Whedon et Kofoid) Balech, toxic dinoflagellate, were examined in axenic, batch cultures with specific reference to B group vitamin requirements. A. catenella required essentially vitamin B_<12> among the B group vitamins for their growth. It was found that growth rates and final cell yields were dependent on the vitamin B_<12> concentrations in the media. Under the conditions of our batch culture experiments, the half-saturation constant for growth of vitamin B_<12>(Kμ) and maximum growth rate (μ'm) were 0.22ng/L and 0.55 day^<-1>, respectively. The minimum cell quota of vitamin B_<12> was estimated at 0.65 fg/cell or 27 molecules/(μm)^3 of the cell volume. In this experiment, A. catenella could grow at almost a maximum growth rate at high vitamin B_<12> levels of eutrophied coastal waters. The comparison of Kμ and μ'm between A. catenella and other red-tide species suggests that this organism can win competition with some red-tide species under low B_<12> concentrations.