著者
小林 静香 黒澤 友美
出版者
一般社団法人 日本農村医学会
雑誌
日本農村医学会雑誌 (ISSN:04682513)
巻号頁・発行日
vol.63, no.1, pp.61-69, 2014 (Released:2014-07-24)
参考文献数
2

2011年3月11日の東日本大震災時, A病院の手術室は4件の手術中で, 一時中断はしたがその後予定通り終了することができた。今回, 地震を体験した手術室看護師が実際どのような行動をしたのか, またその時の心情の実態を明らかにし, 今後の災害時の行動指針作成の参考にする。 〔方法〕手術室看護師に対し, 地震発生時・発生後の行動や心情, 手術室防災マニュアルの理解度と行動, 今後の対策について質問紙法で調査した。 〔結果・考察〕地震発生時は, 多くの看護師が不安や恐怖を感じていたが, その状況下でも患者の安全確保, 不安の軽減を図る行動を優先して行っていた。一方, 術野の清潔保持に対する注意などマニュアル記載事項の実施が不充分な事も明らかになった。災害時は速やかに, 患者の安全確保・不安を軽減させる対応が重要である。今後, フローチャートの掲示, 定期的な訓練の実施など災害対策を検討する必要がある。
著者
北澤 友美
出版者
日本運動器看護学会
雑誌
日本運動器看護学会誌 (ISSN:2186635X)
巻号頁・発行日
vol.14, pp.45-51, 2019 (Released:2020-05-14)
被引用文献数
1

本研究は我が国におけるアスリートに関する研究の中から,大学生アスリートのスポーツ外傷・障害後の心 理面に焦点を当てた研究に着目し,大学生アスリートがスポーツ外傷・障害をどのように捉え,どのような心理 的特徴があるのかを明らかにすることで,看護としての援助を検討することを目的とした.文献検索を行い,16 件を分析対象とした.分析の結果,スポーツ外傷・障害を受けた大学生アスリートの心理的特徴には,不安 や競技意欲の低下などがみられた.しかし,それらは複雑で定型化できるものではなく,個人差を考慮する必 要のある事象であった.またスポーツ外傷・障害時のアスリートへの看護としての援助は,傍にいることや傾 聴を強化していく必要がある.さらに医療従事者との双方向のコミュニケーションがとれるよう支援が必要であ り,必要に応じて大学生アスリートを構成する人的因子となり得る人にも情報提供を行い,サポートを行ってい くことの必要性が示唆された.
著者
橋本 健一 澤 友美
出版者
一般社団法人 日本生物教育学会
雑誌
生物教育 (ISSN:0287119X)
巻号頁・発行日
vol.61, no.1, pp.10-16, 2019 (Released:2020-04-13)
参考文献数
19

小学校3学年理科B生命・地球(1)身の回りの生物の単元では,昆虫の体は頭・胸・腹からできていることについて学習する.手軽に得られ,簡単に観察できる材料として,アブラゼミ(Graptopsaltria nigrofuscata)などのセミの抜け殻を教材とした授業実践を行い,その有効性について検討した.授業に先立つ事前アンケートで,「セミの抜け殻を見たことがあるか」に対しては,東京都渋谷区立笹塚小学校(以下笹小)3年生児童120名(男子55名女子65名)の95%,私立津田学園小学校(以下津小)(三重県桑名市)4年生児童45名(男子21名女子24名)の87%,津小1年児童35名(男子17名女子18名)の94%が「ある」と回答した.また,「セミの抜け殻を拾ったり触ったりしたことがあるか」に対しては,笹小3年児童の71%,津小4年児童の67%,津小1年児童の65%が「ある」と回答した.セミの抜け殻は児童にとって身近な存在であり,比較的多くの児童が興味を持つ存在である思われる.2015年9月4日に笹小3年児童26名(男子13名女子13名)を対象に,アブラゼミの抜け殻を用いて,昆虫の体のつくりを調べる授業実践を,連続した2単位時間の授業として行った.抜け殻は児童1人に1個体配布し,先ず,自由に観察・スケッチした後,図中に頭・胸・腹を境目がわかるように示すよう指示した.次いで,頭は触角や眼のあるところ,胸は翅や肢がついているところなどの観察の視点を与えた上で2回目のスケッチを行わせ,再度,図中に頭・胸・腹を境目がわかるよう示すことを指示した.その結果,視点を与えていない1回目のスケッチでは,頭・胸・腹の区別をほぼ正確に捉えていたと思われる児童は19%であったのに対し,視点を与えた後の2回目のスケッチでは58%に増加した.また,2016年10月12日に,笹小3年児童64名(男子27名女子37名)を対象に,授業時間は1単位時間とし,最初から観察の視点を与えた上でスケッチさせた.その結果,児童の61%が頭・胸・腹の区別をほぼ正確に捉えていた.この結果から,多くの児童がセミの抜け殻の体のつくり,特に,頭・胸・腹の区別を観察により捉えることができ,特に,予め,観察の視点を与えることにより,効果的な授業展開が可能と思われた.セミの抜け殻は終齢幼虫の脱皮殻であるが,セミ類は不完全変態の昆虫であるため,その体のつくりの成虫との差は完全変態の昆虫ほど大きくはなく,昆虫の体のつくりの基本を確認することができる.都市部でも容易に見つかり,均一な材料を多数,簡単に集められ,長期間の保存にも耐えうるので,昆虫の体のつくりを調べる教材の一つとして有効に活用できるものと考えられる.
著者
井澤 友美
出版者
観光学術学会
雑誌
観光学評論 (ISSN:21876649)
巻号頁・発行日
vol.2, no.2, pp.143-154, 2014 (Released:2020-01-13)

バリは、インドネシアを代表する国際観光地に発展した。しかし、その開発は、長年バリ島外部勢力が主導するものであり、地域住人の意向は反映されてこなかった。特にスハルト権威主義体制時代(1966-1998)における国際観光開発は、観光収益の島外への流出、地方行政府間における観光収入の格差、治安の悪化、環境の劣化などの弊害を伴った。1998年にスハルト政権が崩壊すると、インドネシアでは権威主義体制から民主化へ、中央集権から地方分権への移行が急速に進められた。では、民主化・地方分権化を経て、バリの観光開発はどのように変化したのか。また、観光による弊害の現状はどのようなものか。本稿では、これまで問題の原因の多くを外部の責任とみなしつつ議論されてきた観光開発とそれに伴う社会問題に対して、ポスト・スハルト時代に発言権を増した地元アクターに焦点を当てつつその実態を明らかにする。すなわち、体制移行を経てバリ社会は、地元アクター間における観光利潤の獲得競争という新時代に入ったのであり、それに伴ってスハルト時代に顕著となった社会問題がますます悪化せざるを得ないという皮肉な現状を議論する。
著者
小野原 健一 吉多 仁子 田澤 友美 松下 茜 河原 邦光 橋本 章司
出版者
一般社団法人 日本臨床衛生検査技師会
雑誌
医学検査 (ISSN:09158669)
巻号頁・発行日
vol.64, no.4, pp.483-488, 2015-07-25 (Released:2015-09-10)
参考文献数
9
被引用文献数
2

【目的】TRCReady MTB/MAC(TRC法)は転写-逆転写協奏反応(transcription reserve transcription concerted reaction; TRC反応)を原理とし,自動で核酸の精製,増幅,検出を行う新しい抗酸菌検出法である。結核菌およびMAC検出におけるTRC法と,当院で実施しているコバスTaqMan MTB/MAI(PCR法)を比較検討した。【期間・対象・方法】2012年11月から2013年7月までにPCR法による結核菌同定依頼があった135検体(培養陽性49,陰性86),MAC同定依頼があった107検体(培養陽性64,陰性43)を対象としてTRC法とPCR法を施行し,培養結果との相関および測定時間を比較した。【結果】結核菌検出で培養との一致率は,TRC法95%(感度90%,特異度98%),PCR法94%(感度88%,特異度98%),MAC検出での一致率は,TRC法96%(感度97%,特異度95%),PCR法97%(感度98%,特異度95%)であった。NALC-NaOH処理後の検体から測定結果が出るまでに要した時間は,TRC法約50分,PCR法約210分であった。【まとめ】自動化されたTRC法はPCR法と同等の検出性能を有し,簡便に短時間で結果が得られる結核および肺MAC症の迅速診断に有用な検査法であると考えられた。