著者
澤木 啓祐 鯉川 なつえ
出版者
順天堂大学
雑誌
萌芽研究
巻号頁・発行日
2005

低酸素環境下におけるトレーニングは、現在心肺機能や造血機能などの効果を期待し、マラソンをはじめ水泳、スキーやスケート等様々なスポーツで取り入れられている。しかし、高地の環境は低圧。低酸素・低温および低湿度であるため、冷たい空気は水分を多量に含むことができない。平成17年度に本研究グループは、高地での運動中は、平地に比べ、呼吸や発汗の促進に伴い身体から大量の水分が失われ、水分の喪失が多く、血液量が減少する原因になる可能性について報告した。そこで本研究では、長距離ランナーの高地滞在中に、水を2リットル/日の適正なウォーターローディングブログラム群(以下Water群)と水を自由に摂取する群(Control群)で、血液データおよび血液レオロジーがどのように変化するかを検討することとした。研究方法は、長距離走を専門とする男子学生ランナー5名を対象に、標高2300mの高地で5泊6日の高地トレーニングを2回実施した。被験者はWater群とContro1群にわけ、1ヶ月以上あけて再度実施する、オーバークロス方式とした。そして、高地トレーニング前後に血液検査と、(株)エムシー研究所製MC-FAN HR300 Bloody7にて血液レオロジー測定を実施した。なお、両群に差がでないよう研究期間中の食事、練習量を統制し、健康調査を実施した。その結果、以下の知見が得られた。1.Water群、Control群ともに高地トレーニング後において、RBC、Hgb、Hctおよび血小板が有意に増加した。2.Control群は、高地トレーニング後において、Na、C1が有意に低下した。またKは有意に高まり、Water群との間に有意な差がみられた。3.高地トレーニング後の血液通過時間は、両群の間に有意な差は認められなかったが、Water群(52.1秒/100μl)に比べControl群(67.1秒/100μl)の方が延長する傾向がみられた。これらの結果から、両群とも高地トレーニング後に血液通過時間が延長したのは、血放生化学的酸素運搬能の向上と、軽い脱水症状によるものと考えられる。しかし、高地滞在中にウォーターローディングを実践することで、血液流動性を改善させ、高地トレーニング効果を高める可能性が示唆された。
著者
利光 孝之 牧野 聖也 北條 研一 鈴木 良雄 仲村 明 高梨 雄太 鯉川 なつえ 長門 俊介 櫻庭 景植 竹田 和由 奥村 康 澤木 啓祐
出版者
一般社団法人日本体力医学会
雑誌
体力科学 (ISSN:0039906X)
巻号頁・発行日
vol.72, no.2, pp.161-172, 2023-04-01 (Released:2023-03-13)
参考文献数
30

This study aimed to evaluate the effects of ingesting yogurt fermented with Lactobacillus delbrueckii subsp. bulgaricus (OLL1073R-1) on the immune function of healthy university men track and field athletes. Study design Randomized, double-blind, placebo-controlled, parallel-group study. A total of 37 track and field athletes aged ≥18 years were randomly assigned into two groups. For 2 weeks, two bottles of yogurt fermented with OLL1073R-1 and Streptococcus thermophilus OLS3059 or placebo sour milk were ingested daily to the participants. During the intake period, a 1-week training camp was held and participants were subjected to strenuous exercise. Natural killer (NK) cell activity, which is the primary endpoint, was significantly lower in the placebo group after ingestion than that at baseline; however, it remained unchanged during the pre-exercise level of the yogurt group. The two-way repeated measures analysis of variance showed an interaction effect in the NK cell activity change (P=0.018) and a significant difference between the groups after the 2-week ingestion (P=0.015). Among the secondary endpoints, cytokines and chemokines levels involved in activating innate immunity maintained or enhanced only in the yogurt group. ALT, LDH, and CK significantly elevated only in the placebo group. Furthermore, amino acid levels were significantly lower in the placebo group after ingestion than that at baseline; however, it remained unchanged during the pre-exercise level in the yogurt group. Consuming yogurt fermented with OLL1073R-1 prevents the decline in immune function associated with strenuous exercise. Additionally, the yogurt may contribute to stable physical condition.
著者
澤木 啓祐
出版者
日経BP社
雑誌
日経ビジネス (ISSN:00290491)
巻号頁・発行日
no.1459, pp.166-169, 2008-09-29

まず初めに、今回の北京五輪のマラソンで、国民の皆様から多くのご声援を頂いたことに感謝いたします。期待されるということは、選手冥利、コーチ冥利に尽きます。皆さまの後押しを受けて頑張りましたが、男子、女子共にメダルはおろか、入賞も逃すという大失態を犯してしまいました。 この結果については、日本陸上競技連盟として真摯に受け止めています。
著者
澤木 啓祐
出版者
順天堂大学
雑誌
順天堂医学 (ISSN:00226769)
巻号頁・発行日
vol.49, no.3, pp.312-316, 2003-09-30

東京箱根間往復大学駅伝競走は1920年(大正9年)に始まり,本年2003年に79回の歴史を刻んでいる.わが順天堂大学は1958年,初出場より本年まで46回連続出場を達成している.この間10回の優勝,18回の2位・3位を数え,参加全大学中,抜群の勝率を残している.この好成績の要因としては種々の医科学的アプローチの賜である.1966年,初優勝よりスポーツ生理学的指標である最大酸素摂取量を基盤としたトレーニング,1979年より血液性状によるコンディションチェック,脚筋力と競技記録の関連,1990年代より血中乳酸を指標としたトレーニング強度の改善など,生化学的検査を駆使し,出場選手のコンディションチェックの手法を確立し,持久性能力の改善手段として関連諸学科との協力体制を構築することにより『順天堂大学方式』としての評価を得ることができた.医科学的データに基づく<客観的指標>,現場のコーチングスタッフの眼力による<主観>との融合,学生選手と現場指導者であるコーチングスタッフとの信頼関係により大きな成果を得たものと確信している.今後,私どもは関連諸学科との連携により更なる改善を重ね競技力向上に邁進したいと考える.