- 著者
-
澤田 匡人
新井 邦二郎
- 出版者
- 一般社団法人 日本教育心理学会
- 雑誌
- 教育心理学研究 (ISSN:00215015)
- 巻号頁・発行日
- vol.50, no.2, pp.246-256, 2002-06-30 (Released:2013-02-19)
- 参考文献数
- 31
- 被引用文献数
-
7
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本研究は, 小学3年から中学3年までの児童・生徒を対象に, 妬み傾向, 領域重要度, および獲得可能性が, 妬み感情の喚起と, その対処方略選択に及ぼす影響を検討することを目的とした。研究1では, 妬みの個人差を測定する単因子構造の児童・生徒用妬み傾向尺度 (Dispositional Envy Scale for Children; DESC) が作成され, 十分な信頼性, 妥当性が認められた。研究2では, 予備調査において, 妬みが喚起される8つの領域と, 16種類の対処方略が見出された。この結果を受けて, 研究2の本調査では, 仮想場面を用いた対処方略の分析が行われた。その結果,「建設的解決」,「破壊的関与」,「意図的回避」の3因子が抽出された。次に, これら3種類の対処方略の選択に関わる要因として, 妬み傾向, 領域重要度, および獲得可能性を取り上げ, 領域別・年齢帯別に因果関係の検討を行った。パス解析の結果, 成績領域を除き, 中学生では領域重要度が妬みの喚起に影響を及ぼしているのに対し, 小学生ではそうした傾向は認められなかった。また, 小学3・4年では, 妬み感情の対処として主に破壊的関与が選択される傾向にあった。さらに, 全ての領域を通じて小学5・6年以降では獲得可能性が高いと妬みを感じやすく, 意図的回避と建設的解決方略を選択しやすいことが明らかにされ, 妬みの対処方略選択に発達差のあることが確認された。