著者
野田 航 岡田 涼 谷 伊織 大西 将史 望月 直人 中島 俊思 辻井 正次
出版者
公益社団法人 日本心理学会
雑誌
心理学研究 (ISSN:00215236)
巻号頁・発行日
vol.84, no.2, pp.169-175, 2013-06-25 (Released:2013-09-01)
参考文献数
29
被引用文献数
9 3

The present study examines the relationship among inattentive, and hyperactive-impulsive behavior, aggression, and depression in elementary school and junior high school students. The participants were 3,885 children and their teachers and caregivers. Children’s inattentive and hyperactive-impulsive behavior was rated by their teachers and caregivers (ADHD-RS). Children rated aggression (HAQ-C) and depression (DSRS-C) themselves. Inattentive and hyperactive-impulsive behavior rated by teachers and caregivers were positively related to aggression and depression. Inattention predicted higher levels of aggression and depression. Inattentive and hyperactive-impulsive behavior as rated by teachers was more highly related to depression than those behaviors as rated by caregivers. The relationships among inattentive, and hyperactive-impulsive behavior, aggression, and depression were almost the same for both elementary school and junior high school students. This study suggests the importance of assessing inattentive and hyperactive-impulsive behavior from multiple views to examine the relationship between inattentive and hyperactive-impulsive behavior and mental health problems.
著者
大西 将史
出版者
公益社団法人 日本心理学会
雑誌
心理学研究 (ISSN:00215236)
巻号頁・発行日
vol.79, no.4, pp.351-358, 2008 (Released:2011-08-26)
参考文献数
44
被引用文献数
7 3

This study examined the role of trait guilt in discriminating between anthropophobic tendency and social anxiety. 212 University and technical college students (103 males and 109 females) were administered a questionnaire with a trait guilt scale, an anthropophobic tendency scale, and a social anxiety scale. Trait guilt showed a positive correlation with anthropophobic tendency when the influence of social anxiety was controlled. When the influence of Anthoropophobic tendency was controlled, trait guilt did not correlate as highly with social anxiety. These results were discussed related to cultural views of the self. Japanese culture is a “shame culture” because interdependent view of the self (seeing themselves as essentially connected with others) is dominant. People worry about appearances and how others see them, and are ashamed of their own deficiency or negative side, which leads to a sense of betrayal of others and thus guilt becomes a prominent trait.
著者
松岡 弥玲 岡田 涼 谷 伊織 大西 将史 中島 俊思 辻井 正次
出版者
一般社団法人日本発達心理学会
雑誌
発達心理学研究 (ISSN:09159029)
巻号頁・発行日
vol.22, no.2, pp.179-188, 2011-06-20
被引用文献数
1 1

本研究では,発達臨床場面における介入や支援における養育スタイルの変化を捉えるための尺度を作成し,養育スタイルの発達的変化とADHD傾向との関連について検討した。ペアレント・トレーニングや発達障害児の親支援の経験をもつ複数の臨床心理士と小児科医師によって,養育スタイルを測定する項目が作成された。単一市内の公立保育園,小学校,中学校に通う子どもの保護者に対する全数調査を行い,7,000名以上の保護者からデータを得た。因子分析の結果,「肯定的働きかけ」「相談・つきそい」「叱責」「育てにくさ」「対応の難しさ」の5下位尺度からなる養育スタイル尺度が作成された。ADHD傾向との関連を検討したところ,肯定的働きかけと相談・つきそいは負の関連,叱責,育てにくさ,対応の難しさは正の関連を示した。また,子どもの年齢による養育スタイルの変化を検討したところ,肯定的働きかけ以外は年齢にともなって非線形に減少していく傾向がみられた。本研究で作成された尺度の発達臨床場面における使用について論じた。
著者
大西 将史
出版者
日本パーソナリティ心理学会
雑誌
パーソナリティ研究 (ISSN:13488406)
巻号頁・発行日
vol.16, no.2, pp.171-184, 2008-01-01 (Released:2008-03-30)
参考文献数
46
被引用文献数
13 8

本研究の目的は,第1に従来の罪悪感尺度を取り上げ,それらの測定している概念を整理することである。その上で第2に,特性罪悪感を測定する多次元からなる尺度 (TGS) を作成し,その信頼性および妥当性を確認することである。精神分析理論に依拠し,特性罪悪感の下位概念として「精神内的罪悪感」,「利得過剰の罪悪感」,「屈折的甘えによる罪悪感」,「関係維持のための罪悪感」の4つを設定し項目を収集した。合計793名の大学生に質問紙調査を行った。探索的因子分析および確認的因子分析の結果から,仮定した4因子モデルの妥当性が確認された。α係数,再検査信頼性係数は十分な値を示し,信頼性が確認された。また,PFQ-2-guilt scaleとの関連から併存的妥当性が確認され,PFQ-2-shame scale,心理的負債感尺度,自己評価式抑うつ性尺度との関連から収束的妥当性が,罪悪感喚起状況尺度との関連から弁別的妥当性が確認された。
著者
中島 俊思 岡田 涼 松岡 弥玲 谷 伊織 大西 将史 辻井 正次
出版者
一般社団法人 日本発達心理学会
雑誌
発達心理学研究 (ISSN:09159029)
巻号頁・発行日
vol.23, no.3, pp.264-275, 2012-09-20 (Released:2017-07-28)
被引用文献数
1

本研究では,発達障害児の保護者における養育スタイルの特徴を明らかにすることを目的とし,定型発達児の保護者との比較および子どもの問題行動,保護者の精神的健康との関連について検討した。対象者は発達障害児の保護者139名であり,質問紙調査によって,養育スタイル,子どもの問題行動(SDQ),子どものADHD傾向(ADHD-RS),保護者の抑うつ(BDI-II),睡眠障害(PSQI-J)を測定した。その結果,養育スタイルについては,発達障害児の保護者と定型発達児の保護者とで差がみられ,発達障害児の保護者においては,肯定的関わりや相談・つきそいの得点が低く,叱責,育てにくさ,対応の難しさが高い傾向がみられた。また,子どもの問題行動やADHD傾向が高いほど,肯定的関わりや相談・つきそいが低く,叱責,育てにくさ,対応の難しさが高い傾向がみられた。精神的健康については,肯定的関わりや相談・つきそいは抑うつ,睡眠障害と負の関連を示し,叱責,育てにくさ,対応の難しさは正の関連を示した。以上の結果から,発達障害児の保護者における養育スタイルの特徴が明らかにされた。最後に,養育スタイルに対する発達臨床的な介入の必要性について論じた。
著者
大西 将史
出版者
公益社団法人 日本心理学会
雑誌
心理学研究 (ISSN:00215236)
巻号頁・発行日
vol.79, no.4, pp.351-358, 2008
被引用文献数
3

This study examined the role of trait guilt in discriminating between anthropophobic tendency and social anxiety. 212 University and technical college students (103 males and 109 females) were administered a questionnaire with a trait guilt scale, an anthropophobic tendency scale, and a social anxiety scale. Trait guilt showed a positive correlation with anthropophobic tendency when the influence of social anxiety was controlled. When the influence of Anthoropophobic tendency was controlled, trait guilt did not correlate as highly with social anxiety. These results were discussed related to cultural views of the self. Japanese culture is a “shame culture” because interdependent view of the self (seeing themselves as essentially connected with others) is dominant. People worry about appearances and how others see them, and are ashamed of their own deficiency or negative side, which leads to a sense of betrayal of others and thus guilt becomes a prominent trait.
著者
廣澤愛子 大西将史 岸俊行
出版者
日本教育心理学会
雑誌
日本教育心理学会第57回総会
巻号頁・発行日
2015-08-07

目 的 解離とは,苦痛をもたらすものを自己から切り離す心的作用であり(Putnum,1997),解離性同一性障害に代表されるような病的解離もあれば,単に苦痛な事柄をなかったことにしようとする非病理的な解離もある。Putnum(1997)によると,病的解離は正常な人が稀にしか体験しないものであり,病的解離と非病理的解離は異なる認知構造を有すると言う。そして両者の大きな違いは,非病理的解離が苦痛な状況を切り離したことを覚えている点である。近年,非病理的解離の増加が指摘されているが(岩宮, 2009),その研究は,病的解離と比べて極めて少ない。そこで本研究では,病的解離とは異なる認知構造を有する非病理的解離の尺度を作成する。なお,非病理的解離は自分にとって苦痛なものを意識的に切り離す行為であるため,ストレスへの対処行動と考えることができる。そこでこの尺度を解離的対処行動尺度と呼ぶ。方 法 調査協力者 大学生154名(男80名,女74名,平均年齢20.51,標準偏差1.35)を対象に質問紙調査を実施した。 調査内容 (1) 解離的対処行動尺度 いじめ体験に関する記述回答(廣澤,2008),及び回避的なストレス対処行動に関する既存の尺度を参照し,苦痛な体験を「切り捨てる」14項目,苦痛な体験と「距離を置く」12項目,辛い気持ちを「割り切る」10項目,計36項目の尺度を作成した。評定は全く当てはまらない~非常に当てはまるまでの6段階である。 (2) 解離性体験尺度 病的解離との弁別的妥当性を確認するために,Bernstein&Putnam(1986)による解離性体験尺度の日本語版28項目(田辺・小川,1992)を用いた。「0%:そういうことはない」から「100%:いつもそうだ」の11件法で回答を求めた。 (3) 対人ストレスコーピング尺度 加藤(2001)による本尺度は,ポジティブ関係コーピング16項目,ネガティブ関係コーピング10項目,解決先送りコーピング8項目から成る。評定は,当てはまらない~よくあてはまるまでの4段階である。結果と考察 解離的対処行動尺度の因子分析 尺度の候補項目について3因子を指定し,因子分析(主因子法,Promax回転)を行った。そして因子負荷量が.35未満の項目,当該因子以外への負荷量が.20以上の項目,計21項目を削除し,再度因子分析(主因子法,Promax回転)を行ったところ,想定した3因子構造(切り捨て6項目,距離を置く5項目,割り切り4項目)が得られた。3因子の累積寄与率は47.7%であった。因子負荷及び因子間相関をTable1に示す。 解離的対処行動尺度の信頼性の検討 3因子ごとのα係数は,切り捨て(α=.77),距離を置く(α=.75),割り切り(α=.68)であった。「割り切り」のα係数がやや低いが,項目数が4項目であることを考えると,許容範囲と考えられる。 解離的対処行動尺度の妥当性の検討 解離性体験尺度との相関では,「切り捨て」「距離を置く」「割り切り」のいずれも相関が見られず,病的解離との弁別的妥当性が確認された。次に対人ストレスコーピング尺度との相関では,「切り捨て」及び「距離を置く」はネガティブコーピングと(r= .31,r= .26),「割り切り」は先送りコーピングと(r= .36),弱い正の相関が見られた。対人ストレスコーピングとの関連が見られたことから,本尺度の構成概念妥当性が示された。また,抑鬱や友人関係における否定的影響との関連が指摘されているネガティブコーピングと相関が見られた「切り捨て」及び「距離を置く」は,望ましくない結果をもたらす対処行動と言える。一方,「割り切り」と相関が見られた先送りコーピングは,ストレス緩和や友人関係における満足感の向上との関連が指摘されており(今田, 2000など),肯定的結果をもたらす対処攻略と言える。このように,解離的対処行動は肯定的・否定的両面の結果をもたらす心性であることが示唆された。
著者
伊藤 大幸 辻井 正次 望月 直人 中島 俊思 瀬野 由衣 藤田 知加子 高柳 伸哉 大西 将史 大嶽 さと子 岡田 涼
出版者
一般社団法人 日本発達心理学会
雑誌
発達心理学研究 (ISSN:09159029)
巻号頁・発行日
vol.24, no.2, pp.211-220, 2013

本研究では.保育士が日常の保育業務の中で作成する「保育の記録」を心理学的・精神医学的観点から体系化した「保育記録による発達尺度(NDSC)」(中島ほか,2010)の構成概念妥当性について検証を行った。4年間にわたる単一市内全園調査によって,年少から年長まで,延べ9,074名の園児についてのデータを得た。主成分分析を行ったところ,9つの下位尺度が見出され,いずれも十分な内的整合性を持つことが示された。9尺度のうち,「落ち着き」,「注意力」,「社会性」,「順応性」の4尺度は月齢との関連が弱く,子どもの行動的・情緒的問題のスクリーニングツールであるStrengths and Difficulties Questionnaire(SDQ)との関連が強いことから,生来の発達障害様特性や不適切な養育環境による不適応問題を反映する尺度であることが示唆された。逆に,「好奇心」,「身辺自立」,「微細運動」,「粗大運動」の4尺度は,月齢との関連が強く,SDQとの関連が弱いことから,子どもの適応行動の発達状況を反映する尺度であることが示唆された。このようなバランスのとれた下位尺度構成によって,NDSCは,配慮が必要な子どもの検出と早期対処を実現するとともに,現在の子どもの発達状況に適合した保育計画の策定に貢献するツールとして有効性を発揮することが期待される。
著者
中島 俊思 岡田 涼 松岡 弥玲 谷 伊織 大西 将史 辻井 正次
出版者
一般社団法人 日本発達心理学会
雑誌
発達心理学研究 (ISSN:09159029)
巻号頁・発行日
vol.23, no.3, pp.264-275, 2012

本研究では,発達障害児の保護者における養育スタイルの特徴を明らかにすることを目的とし,定型発達児の保護者との比較および子どもの問題行動,保護者の精神的健康との関連について検討した。対象者は発達障害児の保護者139名であり,質問紙調査によって,養育スタイル,子どもの問題行動(SDQ),子どものADHD傾向(ADHD-RS),保護者の抑うつ(BDI-II),睡眠障害(PSQI-J)を測定した。その結果,養育スタイルについては,発達障害児の保護者と定型発達児の保護者とで差がみられ,発達障害児の保護者においては,肯定的関わりや相談・つきそいの得点が低く,叱責,育てにくさ,対応の難しさが高い傾向がみられた。また,子どもの問題行動やADHD傾向が高いほど,肯定的関わりや相談・つきそいが低く,叱責,育てにくさ,対応の難しさが高い傾向がみられた。精神的健康については,肯定的関わりや相談・つきそいは抑うつ,睡眠障害と負の関連を示し,叱責,育てにくさ,対応の難しさは正の関連を示した。以上の結果から,発達障害児の保護者における養育スタイルの特徴が明らかにされた。最後に,養育スタイルに対する発達臨床的な介入の必要性について論じた。
著者
岡田 涼 谷 伊織 大西 将史 中島 俊思 辻井 正次
出版者
The Japanese Psychological Association
雑誌
心理学研究 (ISSN:00215236)
巻号頁・発行日
vol.83, no.1, pp.44-50, 2012
被引用文献数
5

This study developed a Japanese version of the Child Social Preference Scale, which measures children's social withdrawal. In addition, we examined developmental changes of children's withdrawal and the relationships between withdrawal and problematic behaviors. The participants were 7 012 mothers of preschool, elementary school, and middle school children. A factor analysis revealed a two-factor solution of shyness and social disinterest, which is consistent with previous studies. Shyness decreased as children's grade level increased. Social disinterest changed in a quadratic manner. The shyness score was lowest in the lower grades of elementary school. Shyness was related to more emotional symptoms, more peer relationship problems, and less prosocial behavior. Social disinterest was related to peer relationship problems. The importance of the distinction between shyness and social disinterest is discussed.