著者
伊藤 大幸 中島 俊思 望月 直人 高柳 伸哉 田中 善大 松本 かおり 大嶽 さと子 原田 新 野田 航 辻井 正次
出版者
一般社団法人 日本発達心理学会
雑誌
発達心理学研究 (ISSN:09159029)
巻号頁・発行日
vol.25, no.3, pp.221-231, 2014 (Released:2016-09-20)
参考文献数
26
被引用文献数
3

本研究では,既存の尺度の因子構造やメタ分析の知見に基づき,養育行動を構成する7因子(関与,肯定的応答性,見守り,意思の尊重,過干渉,非一貫性,厳しい叱責・体罰)を同定し,これらを包括的に評価しうる尺度の開発を試みた。小学1年生から中学3年生までの7,208名の大規模データに基づく確認的因子分析の結果,7因子のうち「関与」と「見守り」の2因子を統合した6因子構造が支持され,当初想定された養育行動の下位概念をおおむね独立に評価しうることが示唆された。また,これらの6因子が,子ども中心の養育行動である「肯定的養育」と親中心の養育行動である「否定的養育」の2つの二次因子によって規定されるという二次因子モデルは,専門家の分類に基づくモデルや二次因子を想定しない一次因子モデルに比べ,適合度と倹約性の観点で優れていることが示された。子どもの向社会的行動や内在化・外在化問題との関連を検討した結果,「肯定的養育」やその下位尺度は向社会的行動や外在化問題と,「否定的養育」やその下位尺度は内在化問題や外在化問題と相対的に強い相関を示すという,先行研究の知見と一致する結果が得られ,各上位尺度・下位尺度の構成概念妥当性が確認された。
著者
伊藤 大幸 松本 かおり 髙柳 伸哉 原田 新 大嶽 さと子 望月 直人 中島 俊思 野田 航 田中 善大 辻井 正次
出版者
The Japanese Psychological Association
雑誌
心理学研究 (ISSN:00215236)
巻号頁・発行日
vol.85, no.3, pp.304-312, 2014
被引用文献数
13

We examined the psychometric properties of the Japanese version of the Autism Spectrum Screening Questionnaire (ASSQ) and developed a short-form. This study included 157 children with autism spectrum disorders (ASD, ages 7–18, 128 boys) and 4,101 healthy controls (ages 7–15, 3,344 boys) from a general population with a controlled male-female ratio. Four factors (Unusual Interests, Sociality, Peer Relations, and Repetitive Behaviors) were extracted by exploratory factor analysis of control group data. Confirmatory factor analysis revealed that the 4-factor model fit well with data for another sample of the control and ASD groups. Logistic analysis showed that the former 3 factors could significantly predict ASD diagnosis. Thus, a short form of the ASSQ was developed, consisting of 11 items for these 3 factors. This short form showed sufficient internal consistency and high discrimination power for ASD diagnosis that was comparable to that of the 22-item version. Receiver operating characteristic analysis indicated an optimal cut-off of 7 for the 22-item version (sensitivity .949, specificity .801) and 5 for the short-form (sensitivity .936, specificity .818).
著者
田中 善大 伊藤 大幸 高柳 伸哉 原田 新 染木 史緒 野田 航 大嶽 さと子 中島 俊思 望月 直人 辻井 正次
出版者
一般社団法人 日本発達心理学会
雑誌
発達心理学研究 (ISSN:09159029)
巻号頁・発行日
vol.25, no.1, pp.58-66, 2014

本研究では,保育所の年長児に対する縦断調査によって,保育士が日常業務で作成する「保育記録」を心理学的・精神医学的観点から体系化した「保育記録による発達尺度(Nursery Teachers Rating Development Scale for Children: NDSC)」と学校適応との関連及びNDSCを用いた小学校での適応の予測について検討した。単一市内全保育所調査によって386名の園児に対して保育所年長時にNDSCを実施した後,小学校1年時に教師評定による小学生用学校適応尺度(Teachers Rating Scale for School Adaptation of Elementary School Students [All student version]: TSSA-EA)を実施した。相関係数の分析の結果,NDSCと学校適応との関連が示された。重回帰分析の結果,学校適応の下位尺度である学業面,心身面,対人面,情緒面のそれぞれの不適応を予測するNDSCの下位尺度が明らかになった。重回帰分析の結果に基づくリスクの分析の結果,重回帰分析によって明らかになった下位尺度が,学校適応のそれぞれの側面を一定の精度で予測することが示された。
著者
伊藤 大幸 辻井 正次 望月 直人 中島 俊思 瀬野 由衣 藤田 知加子 高柳 伸哉 大西 将史 大嶽 さと子 岡田 涼
出版者
一般社団法人 日本発達心理学会
雑誌
発達心理学研究 (ISSN:09159029)
巻号頁・発行日
vol.24, no.2, pp.211-220, 2013

本研究では.保育士が日常の保育業務の中で作成する「保育の記録」を心理学的・精神医学的観点から体系化した「保育記録による発達尺度(NDSC)」(中島ほか,2010)の構成概念妥当性について検証を行った。4年間にわたる単一市内全園調査によって,年少から年長まで,延べ9,074名の園児についてのデータを得た。主成分分析を行ったところ,9つの下位尺度が見出され,いずれも十分な内的整合性を持つことが示された。9尺度のうち,「落ち着き」,「注意力」,「社会性」,「順応性」の4尺度は月齢との関連が弱く,子どもの行動的・情緒的問題のスクリーニングツールであるStrengths and Difficulties Questionnaire(SDQ)との関連が強いことから,生来の発達障害様特性や不適切な養育環境による不適応問題を反映する尺度であることが示唆された。逆に,「好奇心」,「身辺自立」,「微細運動」,「粗大運動」の4尺度は,月齢との関連が強く,SDQとの関連が弱いことから,子どもの適応行動の発達状況を反映する尺度であることが示唆された。このようなバランスのとれた下位尺度構成によって,NDSCは,配慮が必要な子どもの検出と早期対処を実現するとともに,現在の子どもの発達状況に適合した保育計画の策定に貢献するツールとして有効性を発揮することが期待される。