著者
渕 祐一 帆足 喜久雄 赤枝 宏 牧野 芳大 野口 玉雄
出版者
[日本食品衛生学会]
雑誌
食品衛生学雑誌 (ISSN:00156426)
巻号頁・発行日
vol.40, no.1, pp.80-89, 1999-02-05
参考文献数
16
被引用文献数
7

筋肉摂食による死者1名を含む食中毒事例が過去にある大分県国東沿岸産ヒガンフグ及びコモンフグについて, 部位別及び季節別の毒性を検討した. 1983~96年に漁獲されたヒガンフグ46個体とコモンフグ34個体中, 筋肉の有毒率及び最高毒力はヒガンフグが6.5%及び55MU/g, コモンフグが41.2%及び84MU/gであった. 食用不可とされる三陸沿岸産の両種より筋肉の毒性は低いものの, ヒガンフグは毒力の個体差が著しく, コモンフグは活魚でも有毒率が高いことから, 食用に供するには検討を要する魚種と考えられた. また, 両種とも皮膚, 肝臓及び卵巣の毒力相互間に相関関係が認められた.
著者
林 薫 三舟 求真人 七条 明久 鈴木 博 松尾 幸子 牧野 芳大 明石 光伸 和田 義人 小田 力 茂木 幹義 森 章夫
出版者
長崎大学熱帯医学研究所
雑誌
熱帯医学 (ISSN:03855643)
巻号頁・発行日
vol.17, no.3, pp.p129-142, 1975-12

1973年2月3日から18日の間,新生成虫が検出されない時期に野外で捕集した冬期のコガタアカイエカ1083個体,8プールから4株のウイルスを分離し,日本脳炎(日脳)ウイルスと同定された.この事実は,越年蚊体内でウイルスが持ち越されたものと考えられる.そして1973年には年間を通じて,蚊一豚の感染環が証明され,奄美大島,瀬戸内地域における日脳ウイルスの特異な撒布状況が観察された.この所見は我国で初めてのことである.しかしながら,1974年では,コガタアカイエカから7月上旬にはじめてウイルスが分離されると共に,これと平行して豚の新感染も同時に証明された.この事は蚊一豚の感染環,特に蚊によるウイルスの越年が中絶したことを意味すると共に,奄美大島の調査地域へのウイルスの持込みがあったに違いないことを物語るものであろう.換言すれば,奄美大島の調査地域では環境条件さえよければウイルスの土着が可能であるが,条件が悪いと蚊によるウイルスの越年は中絶し,流行期に再びウイルスの持込みが行われるであろうことを推定してよいと思われる.1973年7月24日夜半から25日未明にかけて奄美大島名瀬港及び鹿児島港の中間の海上で,船のマスト上にとりつけられたライトトラップ採集でコガタアカイエカ数個体を捕集した.この事実はコガタアカイエカが洋上を移動していることを意味しているものと考えられる.1975年7月下旬,奄美大島から鹿児島(九州南域)に向け,標色コガタアカイエカの分散実験を試みたが,遇然に実験地域を通過した台風2号で阻止され不成功に終った.しかし,分散実験日の約10日前にフイリッピンからの迷蝶が鹿児島南端に到達していることから気流によるコガタアカイエカの移動は決して否定出来ない.
著者
林 薫 三舟 求真人 七条 明久 鈴木 博 松尾 幸子 牧野 芳大 明石 光伸 和田 義人 小田 力 茂木 幹義 森 章夫
出版者
長崎大学熱帯医学研究所
雑誌
熱帯医学 (ISSN:03855643)
巻号頁・発行日
vol.17, no.3, pp.p129-142, 1975-12

1973年2月3日から18日の間,新生成虫が検出されない時期に野外で捕集した冬期のコガタアカイエカ1083個体,8プールから4株のウイルスを分離し,日本脳炎(日脳)ウイルスと同定された.この事実は,越年蚊体内でウイルスが持ち越されたものと考えられる.そして1973年には年間を通じて,蚊一豚の感染環が証明され,奄美大島,瀬戸内地域における日脳ウイルスの特異な撒布状況が観察された.この所見は我国で初めてのことである.しかしながら,1974年では,コガタアカイエカから7月上旬にはじめてウイルスが分離されると共に,これと平行して豚の新感染も同時に証明された.この事は蚊一豚の感染環,特に蚊によるウイルスの越年が中絶したことを意味すると共に,奄美大島の調査地域へのウイルスの持込みがあったに違いないことを物語るものであろう.換言すれば,奄美大島の調査地域では環境条件さえよければウイルスの土着が可能であるが,条件が悪いと蚊によるウイルスの越年は中絶し,流行期に再びウイルスの持込みが行われるであろうことを推定してよいと思われる.1973年7月24日夜半から25日未明にかけて奄美大島名瀬港及び鹿児島港の中間の海上で,船のマスト上にとりつけられたライトトラップ採集でコガタアカイエカ数個体を捕集した.この事実はコガタアカイエカが洋上を移動していることを意味しているものと考えられる.1975年7月下旬,奄美大島から鹿児島(九州南域)に向け,標色コガタアカイエカの分散実験を試みたが,遇然に実験地域を通過した台風2号で阻止され不成功に終った.しかし,分散実験日の約10日前にフイリッピンからの迷蝶が鹿児島南端に到達していることから気流によるコガタアカイエカの移動は決して否定出来ない.Characteristics of the ecology of Japanese encephalitis (JE) virus dissemination were investigated in Amami island located between the southern part of Kyushu and the main island of Okinawa. Four strains identified as JE virus were isolated from 8 pools of 1083 hibernated female mosquitoes of Culex tritaeniorhynchus caught in the field from 3rd to 18th February, 1973, before the appearance of newly emerged vector mosquitoes. This finding suggested the overwintering of the virus in the vector mosquitoes in survey areas. The virus dissemination in the survey area in 1973 was observed through the year in connection with the cycle of vector mosquitoes and pigs infection. In 1974, however, the virus isolation from vector mosquitoes was performed in July. This evidence indicated the interruption of the persistence of the virus in vector mosquitoes and the virus might be carried into the survey area in Amami island. These findings were of great significance in connection with the problems on the overwintering of JE virus in Japan. In the midnight on 24th to the very early morning on 25th July, 1973, mosquitoes of Culex tritaeniorhynchus were captured with the light traps set up on the ship sailing between the south part of Kyushu (Kagoshima) and Amami island. This finding suggest that vector mosquitoes might be transported with the wind over the ocean. In accordance with these evidence, the attempt to disperse mosquitoes of Culex tritaeniorhynchus experimentally labeled with dyes from Amami island to the southern part of Kyushu (Kagoshima) was made under the selected condition of the weather in the end part of July, 1975. It was, however, unsuccessful with hindering of occassionally happened typhoon.
著者
牧野 芳大 馬 紹平
出版者
大分大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2004

日本脳炎ウイルス(JEV)は、そのC-prM遺伝子領域(240塩基)による分子系統樹解析およびそのウイルスの分離地をもとに4つの遺伝子型(G1〜4)に分類される。日本国内のJEVの遺伝子型は従来G3型に属するとされていた。しかし、1994年頃を境にG3型からタイ北部の株に属するG1型と交代していることが明らかになり、JEVが海外から持込まれた可能性が示唆された。大分、長崎、沖縄、大阪、石川、東京で1965-2001年に分離された23株について、JEV遺伝子のC-prM遺伝子領域の塩基配列をもとに分子系統樹解析を行ったところ、従来のG3型は時間的経過と共にA, B, C, D, E1, E2のクラスターに分類された。次に、これらのクラスター間の抗原性の差異について検討するため、大分県で1981〜2003年に分離された、異なるクラスターのJEV6株と大分県内で飼育され、JEVに自然感染したブタ血清検体(20検体)を用い、ベロ細胞を用いた50%プラーク減少法による中和試験を行った。各ウイルスによる20検体の血清抗体価の幾何平均値間の多重比較による有意差検定を行った。その結果1981年の株は1989年の株との間に有意の差が見られた。また、1989年の株は1995年の株および2003年の株との間に有意の差が見られた。尚、1995年の2株の間にも有意の差がみられた。しかし2003年の株は1995年の株および1981年の株との間に有意の差は認められなかった。C-PrMによる系統樹分類は中和試験に関与するエンベロープによる系統樹と類似することが報告されている。本研究では、中和試験による各系統間の差は明確ではない。しかし、1980年代前半、後半および1990年代以後のJEVで中和反応に関与するウイルスの抗原性にわずかな差が見られる。異なる抗原性をもつJEVの国内持込に対し継続した監視が必要である。
著者
今西 康次 緒方 健志 松塚 敦子 田崎 貴子 藤岡 利生 明石 光伸 牧野 芳大 西園 晃
出版者
社団法人 日本感染症学会
雑誌
感染症学雑誌 (ISSN:03875911)
巻号頁・発行日
vol.77, no.1, pp.18-23, 2003-01-20 (Released:2011-02-07)
参考文献数
10
被引用文献数
2 4

慢性活動性胃炎, 消化性潰瘍の原因のみならず, その長期にわたる感染が胃MALTリンパ腫や胃癌の発生にも関係すると考えられているHelicobacter pyloriの感染経路については口-口, 糞-口感染, 特に飲料水がその主なものと考えられているが不明な点も多い. 今回, 大分県内で飲用に供されている井戸水中のH. pylori混入の可能性を探るために, 同県内39箇所43検体の井戸水 (開放式, 閉鎖式, 湧き水式) について, H. pylori特異的PCR法と培養による検討を行った. その結果, ureA遺伝子領域で4カ所, 16SrRNA領域で1カ所, H. pylori遺伝子が検出されたが, 培養ではいずれも陰性であった. これよりH. pyloriの飲料水, 特に井戸水を介した感染の可能性が改めて示唆された.
著者
青木 一雄 牧野 芳大 鄭 奎城 勝亦 百合子
出版者
琉球大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

ド国サントドミンゴ市の小児(15歳未満)1,031人(男性505人、女性526人)に対し、上部消化管に関する健康調査を実施し、以下の(1)~(5)の結果を得た。(1)ド国小児のH.pylori感染率は、6-10歳において男女間で有意差(p<0.01)が認められたが、他の年齢階級においては、男女間で有意な差は認められなかった。また、慢性萎縮性胃炎(CAG)有病率は、どの年齢階級においても有意な差は認められなかった。小児の男性、女性ともに、加齢とともにH.pylori感染率は増加していたが、CAG有病率は、男性、女性ともに加齢変化は認められなかった。(2)ド国小児のH.pylori菌の病原性の指標になるCagA抗体の陽性率は、男性、女性とも加齢とともに増加していた。また、全体(男性、女性合計)で陽性者、強陽性者の合計は、0-2歳;0.143,3-5歳;0.210,6-10歳;0.356,11-15歳;0.480と加齢とともに有意(p<0.01)に増加していた。(3)H.pylori感染リスクをロジスティック回帰分析で検討した結果、自覚症状として下痢を有していた小児は、同症状を有していない小児に比し、1.6倍高く、男児は女児に比し1.5倍高かった。また、小児の年齢、同居している小児の人数、及び血清ガストリン値は、それぞれ、年齢が1歳高くなるとH.pylori感染のリスクは1.3倍、同居している小児の人数がひとり増えるとそのリスクは1.2倍、さらに血清ガストリン値が1pg/ml増加するとリスクは1.008倍になっていた。(4)CAGのリスクをロジスティック回帰分析で検討した結果、H.pylori感染者では、非感染者に比し2.7倍高かった。また、H.pylori菌の病原性と関与するCagA抗体の多寡もCAGのリスクを2.1倍高め、血清ガストリン値の上昇(1pg/ml)は、CAGのリスクを1.006倍高めていた。(5)H.pylori感染とCagA抗体陽性率の関連性の検討において、男性においては、H.pylori感染者のCagA抗体陽性率は、陽性者、強陽性者を併せて0.883であり、女性においてのそれは0.901であった。また、H.pylori感染の有無別のCagA抗体陽性率は、男女間で有意な差は認められなかった。