著者
KNELLER Robert 玉井 克哉 森口 尚史 隅蔵 康一
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2001

産学連携の改善が日本の経済回復にとって極めて重要であることは、日本のトップ官僚やビジネスリーダーたちはよく理解しているし、その課題の1つとして、知的財産管理の問題が重要であることにも気付いているようである。しかしながら、日本の大学および政府系研究機関で行われた発明の帰属のあり方、またそれが産学問の研究協力と産業におけるイノベーションにどのように影響を与えてきたかに関しては、体系的な分析はほとんど行われてきていない。本章では、日米の産学連携のシステムの比較分析を通じて、この問題に取り組む。技術移転システムに関する民間企業の新しいアイディア、新しい製品、新しい発明はどこから来ているか?少なくとも欧米に関しては、バイオ分野に関する主な発明の源は大学とバイオベンチャーにある。欧米の経済において産学連携システムは重要である。日本の製薬産業では、大部分の新薬は社内の研究所で発生しており、他の産業でも同じことが言える。日本の大企業が自前主義的イノベーションにより世界競争力を維持できるのであれば、アメリカ的産学連携システムはいらないであろう。1998年以前の曖昧な産学連携システムで十分かもしれない。しかし、この曖昧な産学連携システムが日本の産業上の需要を満たしていないのであれば、精力的なベンチャー企業、または積極的に技術経営を行う大学が必要であろう。日本におけるイノベーションシステムと産学連携システムはお互いに関連しあっているため、この関連性について、アメリカにおけるイノベーションシステムと産学連携システムを比較しながら、この2つのシステムが日本経済に将来的にどのような影響を与えるかを分析する。
著者
鈴木 雄一 玉井 克哉
雑誌
研究報告電子化知的財産・社会基盤(EIP)
巻号頁・発行日
vol.2011, no.5, pp.1-8, 2011-11-04

デジタル化とネットワーク化の恩恵を市民が均しく享受できる社会を実現するためには、著作権法上の権利を円滑に処理することが欠かせない。特にいわゆる孤児著作物については、権利処理を複雑化させ膨大な取引費用を発生させる可能性があるため、著作物の二次利用についても電子図書館構想の実現についても、大きな障害となる可能性がある。本稿は、歌手、俳優など実演家の権利に焦点を当てつつ、それによって生じる法的課題に対処するため米国や欧州で進んでいる動きを紹介し、基本的な国際的枠組みについて検討し、わが国の取り組みと比較するとともに、さらに、近い将来に向けての政策提言を行うものである。As smooth digital rights management is a key to realize the New Digital Age where everybody can enjoy works created by other people together with the new information technology, legal matters in the copyright law are emphasized in many developed countries such as Japan, U.S. and European Union. Especially so called orphan works would make obstacles in the way of creating secondary works and accumulating legacy of human beings in digital libraries. This article provides a comparative legal study of the solution models developed in Japan, the U.S. and the European Union in light of the international framework, focusing on the neighboring rights of the singers, actors and other artists. It also provides a policy proposal which should be taken into account by the Japanese Legislature in the near future.
著者
鈴木 雄一 玉井 克哉 村上 愛
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
研究報告電子化知的財産・社会基盤(EIP) (ISSN:09196072)
巻号頁・発行日
vol.2013, no.3, pp.1-8, 2013-11-14

近年、欧州において、その豊かな歴史に育まれた文化的資産を保存するだけでなく経済発展に結び付けようとする試みがなされている。こうした試みは、電子図書館構想として、文化的資産を次世代に引き継ぎ、かつ、かかる資産の欧州全域からの一元的な利用を促進することを念頭に進められてきた。電子図書館という新しい形態の図書館を創設するにあたり、新たな課題として浮き彫りにされつつある法的問題も存在する。本稿では、こうした法的問題のうち、特に孤児著作物 (orphan works) に関する問題にふれながら、EU での審議過程を振り返ることによって、電子図書館構想における EU の著作権政策を概観する。This paper analyzes arguments on the establishment of the digital library in EU, called Europeana, in the context of copyright, especially orphan works.
著者
福井 秀夫 畠中 薫里 久米 良昭 玉井 克哉
出版者
政策研究大学院大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2002

1.土地利用及び環境の融合領域に係る法改正スキームの構築都市計画・建築規制、借家法制、不動産競売法制、景観法制、都市環境法制等に関する法律を対象に、現行制度の問題点を摘出したうえで、これを解決するための具体的法改正スキームを構築した。そのうえで、コースの定理等法と経済学のツールを適用した分析を行い、その妥当性を検証した。2.土地利用・交通需要予測総合モデルによる法改正影響の分析東京大都市圏(一都三県+茨城南部)を対象とする土地利用・交通需要予測総合モデルを利用し、ロードプライシングを始め、都市計画・建築規制、環境・景観法制に係る法改正を実施した場合に、交通流動、環境負荷及び都市構造に与える影響を推計した。具体的には、東京23区業務地区で20%増の容積率緩和を行った場合、域外からの流入等により就業人口が23区合計で約140万人増大する。これに伴い自動車交通量は、環6〜環2間で2.1%、環2内で5.5%増大する。これに対して環状8号線内側地域を課金エリアとし、この中に19ゾーンを設定したうえで、(a)エリア外から(環8を超えて)流入する車両及び(b)エリア内でゾーン境界を都心方向又は環状方向に通過する車両に課金する(課金額は一律200円)道路課金を導入するとともに、三環状道路が整備されれば、環6〜環2間自動車交通量は3%減少し、環2内でも1.2%の増大に留まる。3.法改正による総合的な費用・便益分析の実施20%増の容積率緩和により、オフィス賃料収入は年間4917億円増大する。これに対する道路混雑による社会的損失は、道路課金導入及び三環状道路整備が行われれば、年間713億円に留まる。このほか、容積率緩和による環境・景観悪化による社会的費用計測手法を開発し、法改正が社会にもたらす影響のバランスシートを作成する方法論を構築した。4.立法に係る学術的方法論の普遍化以上の成果を踏まえ、より普遍的な「仮説-検証」型立法の方法論を構築した。
著者
玉井 克哉
出版者
日本弁理士会
雑誌
パテント (ISSN:02874954)
巻号頁・発行日
vol.62, no.5, pp.73-95, 2009-04
著者
玉井 克哉 川村 一郎
出版者
東京大学
雑誌
萌芽的研究
巻号頁・発行日
1996

従来のマスメディアは、不特定多数に対する一方的な情報提供であり、かつ、運営のために莫大な資金を必要とするため、国民の意見を政府にフィードバックする点で一定の限界があったが、インターネットをはじめとするコンピュータ・ネットワークは双方向性を有するなどこれらの限界を克服する可能性を有している。また、電話など従来の通信手段に比べても様々な点で独自の優位性を持っている。このため、コンピュータ・ネットワークを政治的な活動に利用することは集団の意思形成に要する取引費用を削減し、国民の政治参加への道が大きく拓かれることが期待される。さらに、国民の政治的な意思決定の手段である選挙にもコンピュータ・ネットワークを活用した電子投票システムの導入が考えられる。電子投票システムは、(1)投票所を設けて投票及び開票手続を電子化する方式と、(2)投票所を設けずにネットワークの上で投票を行う方式とに大きく分けられる。(2)ネットワーク上で行う方式には、投票者及び開票者以外の第三者が投票者の本人確認を行うとともに投票の秘密を担保する方式と、当該第三者が本人確認を行い、投票者自身が投票の秘密を担保する方式が考えられる。これらの電子投票システムを実現するためには、投票の秘密を確保することと、選挙が公正に行われたことを担保することが重要な課題である。近年、欧米諸国のみならず日本においても、国や地方の重要な政策の決定に際し国民投票や住民投票を行うケースが増えている。電子投票システムの実現は投票や開票に要する経費や時間を大幅に削減することが期待できるため、国民投票や住民投票を行うことを極めて容易にするものである。しかしながら、このような直接投票の結果は世論操作の影響を受けやすいなどの問題点がかねてから指摘されており、電子投票の場合その傾向がさらに加速されるおそれがあると考えられる。