著者
市橋 則明 池添 冬芽 羽崎 完 白井 由美 浅川 康吉 森永 敏博 濱 弘道
出版者
The Society of Physical Therapy Science
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.13, no.2, pp.79-83, 1998 (Released:2007-03-29)
参考文献数
6
被引用文献数
5 5

本研究の目的は,健常男性12名を対象に,各種ブリッジ動作中の股関節周囲筋の筋活動量を明確にし,さらに各筋のMMT3の筋活動と比較することである。測定筋は,大殿筋,中殿筋,大腿筋膜張筋,大内転筋とし,各筋の整流平滑化筋電図を求めた。その結果,両脚ブリッジの筋活動量は20%以下の低い筋活動であった。一方,片脚ブリッジの筋活動量は,股伸展・外転筋で高い値を示し,両脚ブリッジと比較し,すべての筋において有意に増加した。MMT3の筋活動とブリッジ動作を比較すると,大内転筋を除いて片脚ブリッジの方が大きい筋活動を示した。本研究結果より,片脚ブリッジは大殿筋だけでなく中殿筋や大腿筋膜張筋の筋力トレーニングとして有効であることが示唆された。また,片脚ブリッジをするためには,MMT3以上の筋活動が必要であり,訓練処方の1つの基準となると考えられる。
著者
池添 冬芽 小林 拓也 中村 雅俊 西下 智 荒木 浩二郎 市橋 則明
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement
巻号頁・発行日
vol.2015, 2016

【はじめに,目的】近年,低強度の筋力トレーニングであっても疲労困憊までの最大反復回数で行うと,高強度と同程度の筋力増強・筋肥大効果が得られることが報告されている。しかし,疲労困憊までさせずに最大下の反復回数で低強度トレーニングを実施した場合,高強度と同等の筋力増強・筋肥大効果が得られるかどうか,また筋の質的要因に対しても改善効果が得られるかどうかについては明らかではない。本研究の目的は,健常若年男性を対象に低強度・高反復および高強度・低反復の膝関節伸展筋力トレーニングを8週間実施し,1)低強度・高反復トレーニングは高強度と同程度の筋力増強や筋肥大・筋の質改善効果が得られるのか,2)各項目の経時変化に両トレーニングで違いはみられるのかについて明らかにすることである。【方法】対象は下肢に神経学的・整形外科的疾患の既往のない健常若年男性15名とした。対象者を無作為に低強度・高反復トレーニング群(低強度群)と高強度・低反復トレーニング群(高強度群)に分類した。膝関節伸展筋力トレーニングは筋機能運動評価装置(BIODEX社製System4)を用いて,低強度群では30%1RM,高強度群では80%1RMの強度で週3回,8週間実施した。8回の反復運動を1セットとし,低強度群では12セット,高強度群では3セット実施した。介入前および介入2週ごとに1RM・最大等尺性筋力,超音波測定を行った。1RM・最大等尺性筋力測定には筋機能運動評価装置を用い,膝伸展1RMおよび膝関節70°屈曲位での最大等尺性膝伸展筋力を測定した。超音波診断装置(GEメディカルシステム社製LOGIQ e)を用いて,大腿直筋の筋量の指標として筋厚,筋の質の指標として筋輝度を測定した。なお,筋輝度の増加は筋内の脂肪や結合組織といった非収縮組織の増加を反映している。トレーニングの介入効果を検討するために,各項目について分割プロット分散分析(群×時期)を行い,事後検定にはBonferroni法による多重比較を行った。【結果】分割プロット分散分析の結果,1RM・最大等尺性筋力,筋厚および筋輝度のいずれも時期にのみ主効果がみられ,交互作用はみられなかったことから,いずれの項目も2群間で効果の違いはないことが示された。事後検定の結果,両群ともに1RMおよび最大等尺性筋力はPREと比較して2週目以降で有意な増加がみられた。また両群ともに筋厚はPREと比較して4週目以降で有意に増加し,筋輝度は8週目のみ有意に減少した。【結論】本研究の結果,両トレーニング群ともに筋力増強,筋肥大,筋の質の改善がみられ,その変化の程度や経時変化に違いはみられなかったことから,低強度であっても12セットと反復回数を増やすことによって,高強度3セットのトレーニングと同様の筋力,筋量,筋の質の改善効果が得られることが明らかとなった。
著者
尾川 達也 合田 秀人 石垣 智也 齋藤 崇志 脇田 正徳 杉田 翔 牧迫 飛雄馬 池添 冬芽
出版者
一般社団法人 日本地域理学療法学会
雑誌
地域理学療法学 (ISSN:27580318)
巻号頁・発行日
vol.2, pp.39-51, 2023 (Released:2023-03-31)
参考文献数
37

【目的】地域理学療法の標準化されたアウトカム評価指標(Standardized Outcome Measures: SOM)の作成・普及に向け,アウトカム評価指標の使用状況と必要条件,および障壁を調査することを目的とした.【方法】日本地域理学療法学会会員の中で要介護認定者への通所,訪問,施設サービスに従事する者を対象にwebアンケートを実施した.【結果】回答数は188名.アウトカム評価指標の使用に対して83.5%は重要と認識している一方,日常的に使用している者は44.7%であった.必要条件としては,尺度特性で信頼性や変化の検出可能性,測定方法で評価に必要な準備物や金銭的負担,実施時間が各々上位2つであった.また,障壁としては,教育不足や仲間と話す機会の不足が上位2つであった.【結論】アウトカム評価指標への重要性に対する認識と実際の使用状況との間に乖離を認めた.アウトカム評価指標の日常的な使用に至るには,実用性を考慮したSOMの作成と地域理学療法に特徴的な障壁に対処していく必要があると考える.
著者
岩下 篤司 市橋 則明 池添 冬芽 大畑 光司
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement Vol.31 Suppl. No.2 (第39回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.A0129, 2004 (Released:2004-04-23)

【目的】 我々はこれまで、ペダリング動作における負荷量や回転数の変化が膝・足関節筋の筋活動量に及ぼす影響を検討してきた。しかし、体幹および股関節周囲筋の筋活動については未解明であった。本研究の目的は、負荷量と回転数を変化させてペダリング動作を行ったときの体幹および股関節周囲筋の筋活動を検討することである。【対象と方法】 対象は健常成人9名(年齢25.0±2.7歳、身長164.8±6.7cm、体重56.0±7.9kg)とした。筋電図の測定筋は右側の脊柱起立筋、腹直筋、外腹斜筋、大殿筋、中殿筋、大腿筋膜張筋、大腿直筋、半膜様筋の8筋とした。表面筋電図を双極導出するため銀塩化銀電極(直径8mm)2個を電極中心間距離20mmで筋線維の走行に沿って貼付した。筋電図の測定にはフルサワ・ラボ社製筋電計を使用し、整流平滑化筋電図(Rectified Filtered electromyography:以下RFEMG)を求め、AD変換しパソコンに入力した。自転車エルゴメーターはコンビ社製のPOWER MAX Vを使用し、サドルの高さは、下死点にて膝屈曲30度に設定した。また、体幹の前方傾斜角度を60度とした。負荷量1.0kp、2.0kp、3.0kpと、回転数60rpm、120rpmの組み合わせにて、6設定とした。ペダリング動作を行ったときのRFEMGを測定し、5周期分の筋活動量をデータとして用いた。筋電図データは、各筋の最大等尺性収縮時の筋活動を100%として正規化した。統計処理には反復測定二元配置分散分析及び、Tukeyの多重比較を用いて、負荷量と回転数を変化させたときの影響を分析した。【結果及び考察】 負荷量と回転数の変化により、脊柱起立筋の%RFEMGは9.4~22.3%、腹直筋は21.4~80.7%、外腹斜筋は28.9~74.4%、大殿筋は12.1~46.2%、中殿筋は7.2~30.9%、大腿筋膜張筋は9.1~37.4%、大腿直筋は15.4~39.9%、半膜様筋は13.2~40.7%の筋活動量を示した。回転数を増加させることにより、全ての筋で有意に筋活動量は増加した。負荷量を増加することにより、外腹斜筋を除く全ての筋で有意に筋活動量は増加した。多重比較の結果、脊柱起立筋と腹直筋は1.0kpから2.0kpへ増加しても有意な影響を認めなかった。大殿筋は2.0kpから3.0kpへ増加しても有意な影響を認めなかった。中殿筋と大腿筋膜張筋、大腿直筋と半膜様筋は全ての負荷量増加で有意に筋活動量は増加した。今回の結果、負荷量2.0kpと回転数120rpmにおいて腹直筋と外腹斜筋は77.4~80.7%と高い筋活動量を示し、高負荷でのペダリング動作では体幹屈筋の高い筋活動が必要であることが示唆された。また外腹斜筋の筋活動量を高めるには負荷量よりも回転数を増加させるほうが有効であると考えられた。
著者
尾川 達也 合田 秀人 石垣 智也 齋藤 崇志 脇田 正徳 杉田 翔 牧迫 飛雄馬 池添 冬芽
出版者
一般社団法人 日本地域理学療法学会
雑誌
地域理学療法学 (ISSN:27580318)
巻号頁・発行日
pp.JJCCPT22004, (Released:2023-02-08)
参考文献数
37

【目的】地域理学療法の標準化されたアウトカム評価指標(Standardized Outcome Measures: SOM)の作成・普及に向け,アウトカム評価指標の使用状況と必要条件,および障壁を調査することを目的とした.【方法】日本地域理学療法学会会員の中で要介護認定者への通所,訪問,施設サービスに従事する者を対象にwebアンケートを実施した.【結果】回答数は188名.アウトカム評価指標の使用に対して83.5%は重要と認識している一方,日常的に使用している者は44.7%であった.必要条件としては,尺度特性で信頼性や変化の検出可能性,測定方法で評価に必要な準備物や金銭的負担,実施時間が各々上位2つであった.また,障壁としては,教育不足や仲間と話す機会の不足が上位2つであった.【結論】アウトカム評価指標への重要性に対する認識と実際の使用状況との間に乖離を認めた.アウトカム評価指標の日常的な使用に至るには,実用性を考慮したSOMの作成と地域理学療法に特徴的な障壁に対処していく必要があると考える.
著者
小林 拓也 中村 雅俊 梅垣 雄心 池添 冬芽
出版者
一般社団法人日本理学療法学会連合
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.41, no.5, pp.275-281, 2014-08-20 (Released:2017-06-27)
被引用文献数
2

【目的】本研究の目的は筋力増強運動における運動速度および収縮様式の違いが骨格筋の微細損傷に及ぼす影響をあきらかにすることである。【方法】健常若年男性40名を対象とした。肘関節屈筋の筋力増強運動について,無作為に求心相と遠心相の時間を5秒とするNS群,求心相を長くするCS群,遠心相を長くするES群,求心相と遠心相の時間を1秒とするN群の4群に分類した。なお,いずれの群も総運動時間は計300秒に統一した。運動前後,1日後,2日後の最大筋力,筋厚,筋輝度,筋硬度を測定した。【結果】運動中の総筋活動量積分値は4群間で有意差は認められなかった。すべての群において運動直後では筋力は有意に低下,筋厚,筋輝度は有意に増加し,その変化率は4群間で有意差は認められなかった。【結論】総運動時間や総筋活動量が同じであれば,運動速度や収縮様式による違いはなく,骨格筋が受ける微細損傷の程度は同等であることがあきらかになった。
著者
森 奈津子 池添 冬芽 市橋 則明
出版者
一般社団法人日本体力医学会
雑誌
体力科学 (ISSN:0039906X)
巻号頁・発行日
vol.60, no.3, pp.319-326, 2011 (Released:2011-07-12)
参考文献数
28
被引用文献数
2 2

This study investigated the changes in muscle thickness of transversus abdominis (TrA) during trunk muscle training. The subjects comprised 30 young men (average age 20.1 SD1.6 years) without low back pain. The muscle thickness of the upper region of TrA, middle region of TrA and lower region of TrA were measured by B-mode ultrasound. Muscle thickness were measured at rest and during the following 5 exercises; abdominal drawing, curl up, trunk ipsilateral rotation, trunk contralateral rotation and both straight leg raise in supine. There were no significant differences in the muscle thickness of the upper region of TrA between resting condition and all exercises. Muscle thickness during drawing, curl up and ipsilateral rotation were significantly greater than that at rest in middle region of TrA, and the rate of change in muscle thickness was the largest for drawing. Muscle thickness during drawing, curl up and ipsilateral rotation were significantly greater than that at rest in the lower region of TrA, and the rate of change in muscle thickness was the largest for ipsilateral rotation. These results suggested that the changes in muscle thickness of TrA during trunk muscle training showed different patterns depending on the region of TrA.
著者
中村 雅俊 池添 冬芽 西下 智 梅原 潤 市橋 則明
出版者
日本理学療法士学会
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.44, no.2, pp.124-130, 2017 (Released:2017-04-20)
参考文献数
30

【目的】本研究の目的は,ストレッチング方法の違いが大腿二頭筋の伸長程度や伸長部位に及ぼす影響を検討することである。【方法】若年男性15 名を対象に,超音波診断装置に装備されているせん断波エラストグラフィー機能を用いて,大腿二頭筋の近位・中間・遠位部の弾性率を測定した。安静時は股関節・膝関節90°屈曲位(Rest),ストレッチングとして股関節屈曲位での膝関節伸展方向へのストレッチング(KE),膝関節伸展位での股関節屈曲方向へのストレッチング(SLR)の3 条件での弾性率を測定した。【結果】多重比較の結果,すべての部位でRest と比較してKE とSLR の弾性率は有意に高値を示したが,KE とSLR 間では有意な差はなかった。Rest からの変化比は,有意な交互作用を認めなかった。【結論】本研究結果より,2 種類のストレッチング方法は大腿二頭筋を伸長することは可能だが,伸長程度や伸長部位に差がないことが明らかになった。
著者
池添 冬芽 小林 拓也 中村 雅俊 西下 智 荒木 浩二郎 市橋 則明
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement Vol.43 Suppl. No.2 (第51回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.0376, 2016 (Released:2016-04-28)

【はじめに,目的】近年,低強度の筋力トレーニングであっても疲労困憊までの最大反復回数で行うと,高強度と同程度の筋力増強・筋肥大効果が得られることが報告されている。しかし,疲労困憊までさせずに最大下の反復回数で低強度トレーニングを実施した場合,高強度と同等の筋力増強・筋肥大効果が得られるかどうか,また筋の質的要因に対しても改善効果が得られるかどうかについては明らかではない。本研究の目的は,健常若年男性を対象に低強度・高反復および高強度・低反復の膝関節伸展筋力トレーニングを8週間実施し,1)低強度・高反復トレーニングは高強度と同程度の筋力増強や筋肥大・筋の質改善効果が得られるのか,2)各項目の経時変化に両トレーニングで違いはみられるのかについて明らかにすることである。【方法】対象は下肢に神経学的・整形外科的疾患の既往のない健常若年男性15名とした。対象者を無作為に低強度・高反復トレーニング群(低強度群)と高強度・低反復トレーニング群(高強度群)に分類した。膝関節伸展筋力トレーニングは筋機能運動評価装置(BIODEX社製System4)を用いて,低強度群では30%1RM,高強度群では80%1RMの強度で週3回,8週間実施した。8回の反復運動を1セットとし,低強度群では12セット,高強度群では3セット実施した。介入前および介入2週ごとに1RM・最大等尺性筋力,超音波測定を行った。1RM・最大等尺性筋力測定には筋機能運動評価装置を用い,膝伸展1RMおよび膝関節70°屈曲位での最大等尺性膝伸展筋力を測定した。超音波診断装置(GEメディカルシステム社製LOGIQ e)を用いて,大腿直筋の筋量の指標として筋厚,筋の質の指標として筋輝度を測定した。なお,筋輝度の増加は筋内の脂肪や結合組織といった非収縮組織の増加を反映している。トレーニングの介入効果を検討するために,各項目について分割プロット分散分析(群×時期)を行い,事後検定にはBonferroni法による多重比較を行った。【結果】分割プロット分散分析の結果,1RM・最大等尺性筋力,筋厚および筋輝度のいずれも時期にのみ主効果がみられ,交互作用はみられなかったことから,いずれの項目も2群間で効果の違いはないことが示された。事後検定の結果,両群ともに1RMおよび最大等尺性筋力はPREと比較して2週目以降で有意な増加がみられた。また両群ともに筋厚はPREと比較して4週目以降で有意に増加し,筋輝度は8週目のみ有意に減少した。【結論】本研究の結果,両トレーニング群ともに筋力増強,筋肥大,筋の質の改善がみられ,その変化の程度や経時変化に違いはみられなかったことから,低強度であっても12セットと反復回数を増やすことによって,高強度3セットのトレーニングと同様の筋力,筋量,筋の質の改善効果が得られることが明らかとなった。
著者
池添 冬芽 市橋 則明 森永 敏博
出版者
日本理学療法士学会
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.30, no.1, pp.8-13, 2003-02-20 (Released:2018-09-25)
参考文献数
19
被引用文献数
6

本研究の目的は,スクワット肢位における前後方向の足圧中心位置の違いが下肢筋の筋活動量に及ぼす影響について明らかにすることである。対象は健常成人12名であった。筋電図の測定筋は大腿直筋,内側広筋,外側広筋,半膜様筋,大腿四頭筋,腓腹筋(内側頭),前脛骨筋の7筋とした。3種類の膝屈曲角度(漆屈曲30,60,90度位)での両脚スクワット肢位について,それぞれ足圧中心を前方位,中間位,後方位で3秒間保持させたときの筋活動を測定した。大腿直筋,内側広筋,外側広筋,および前脛骨筋の筋活動ではすべての角度で足圧中心位置の違いによる主効果が認められ,いずれも後方位で最も高い値を示した。半膜様筋と大腿四頭筋では膝屈曲30度位においてのみ,腓腹筋ではすべての角度で足圧中心位置の違いによる主効果が認められ,いずれも前方位で高くなる傾向を示したが,これらの筋の筋活動量は20%と低い値を示した。本研究の結果,大腿四頭筋や前脛骨筋においては,足圧中心位置を後方位にして大きい屈曲角度でスクワット肢位を保持することによって高い筋活動量が得られることが示唆された。
著者
中村 雅俊 池添 冬芽 西下 智 梅原 潤 市橋 則明
出版者
一般社団法人日本体力医学会
雑誌
体力科学 (ISSN:0039906X)
巻号頁・発行日
vol.66, no.2, pp.163-168, 2017-04-01 (Released:2017-03-19)
参考文献数
41
被引用文献数
1 3

Many previous studies have reported that static stretching (SS) may decrease muscle stiffness and compromise muscles’ ability to produce maximal strength. However, the effects of SS at different repetition durations and numbers within a constant total time remain unclear. Therefore, the purpose of this study was to examine whether SS for a constant total time (2 min) with different repetition durations and numbers (e.g., 60 s × 2 times, 30 s × 4 times, and 10 s × 12 times) produces different changes in muscle stiffness and strength. Fifteen healthy males (mean age: 23.3 ± 1.0 years) participated in this study. Muscle stiffness was measured during passive ankle dorsiflexion using dynamometer and ultrasonography. In addition, muscle strength of the plantar flexors was measured using a dynamometer at 0° of plantarflexion with the hip and knee joints fully extended. Muscle stiffness and strength were measured before and immediately after SS. Each experimental protocol was conducted in random order with at least a 1-week interval but no longer than a 2-week interval between testing sessions. The results showed that there were no significant interaction effects on muscle stiffness and strength. However, in all experimental protocols, muscle stiffness and strength immediately decreased after SS. In conclusion, SS for a constant total of 2 min decreases muscle stiffness and strength regardless of repetition durations and numbers of each individual SS.
著者
廣野 哲也 池添 冬芽 田中 浩基 梅原 潤 簗瀬 康 中村 雅俊
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement Vol.43 Suppl. No.2 (第51回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.0610, 2016 (Released:2016-04-28)

【はじめに,目的】近年,低強度・高反復トレーニングの筋力増強・筋肥大効果が着目されており,30%1RM程度の低強度トレーニングでも反復回数を12セット程度に増やすことにより,80%1RMの高強度と同等の効果が得られることが報告されている。一方,セット間の休息時間の影響について,高強度トレーニングではセット間の休息時間を長くすると介入効果が減少することが報告されているが,低強度トレーニングにおけるセット間の休息時間の影響を検討した研究はみられない。また,筋力トレーニング直後に生じる筋腫脹は骨格筋へのメカニカルストレスを反映しているとされており,トレーニング介入による筋肥大効果と関連があると考えられている。そこで本研究は低強度・高反復トレーニングにおける休息時間の違いがトレーニング直後の筋腫脹に及ぼす影響について,1)筋腫脹が生じる運動量(セット数)に違いはみられるのか,2)高反復トレーニング直後の筋腫脹の程度に違いはみられるのかに着目して検討した。【方法】対象は健常若年男性42名(年齢22.9±2.4歳)とし,トレーニングのセット間の休息時間を20秒,60秒,180秒とする3群にそれぞれランダムに振り分けた。30%1RMの低強度での膝伸展筋力トレーニングを膝関節屈曲90°から0°までの範囲で求心相3秒,保持1秒,遠心相3秒の運動速度で行った。なお,1RMは膝関節屈曲90°から0°まで膝伸展可能な最大挙上重量を筋機能評価装置(BIODEX社製)にて測定した。10回の反復運動を1セットとし,各セット間休息時間をはさんで計12セット行った。筋腫脹の評価として,超音波診断装置(GEメディカルシステム社製)を用いて外側広筋の筋厚を測定した。測定肢位は端座位・膝関節屈曲90°位とし,測定部位は上前腸骨棘と膝関節外側裂隙を結ぶ線の遠位1/3とした。筋厚の計測はトレーニング直前およびトレーニング3セットごとの計5回行った。統計解析は各群における筋厚の変化について反復測定分散分析および事後検定として多重比較を行った。さらに,多重比較検定を用いてトレーニング前に対する12セット終了時の筋厚変化率の群間比較を行った。【結果】反復測定分散分析の結果,全ての群で主効果を認め,多重比較の結果,休息20秒群と60秒群はトレーニング前と比較して3,6,9,12セット後のすべてにおいて有意な筋厚の増加がみられた。一方,180秒群においては12セット後のみ筋厚の有意な増加がみられた。また,12セット後の筋厚変化率に3群間で有意差はみられなかった(20秒群;5.1±6.0%,60秒群;6.8±1.7%,180秒群;4.4±3.1%)。【結論】低強度トレーニングにおいて,12セットの高反復トレーニング直後の筋腫脹にはセット間の休息時間による違いはみられないが,セット間の休息時間が長くなると筋腫脹を生じさせる運動量(セット数)はより多く必要となることが示唆された。
著者
市橋 則明 池添 冬芽 大畑 光司 才藤 栄一
出版者
理学療法科学学会
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.17, no.2, pp.101-106, 2002 (Released:2002-08-20)
参考文献数
34
被引用文献数
2

健常成人13名を対象に6週間の高負荷短時間での自転車エルゴメーターによるペダリングトレーニングを行った。その結果,角速度60と180 deg/secにおける等速性膝伸展筋力と60 deg/secの等速性膝屈曲筋力は有意に増加した。周径はすべての測定位置で有意に増加したが,超音波で測定した筋厚は増加する傾向にあったものの有意な変化を示さなかった。体脂肪率・脂肪厚・最大酸素摂取量は変化を示さなかった。最大無酸パワーは有意に増加し,3,5 kpでの最大回転数も有意に増加したが,7 kpでの回転数は有意な変化を示さなかった。本研究により,高負荷でのペダリングトレーニングは筋トレーニングとして有効であることが示唆された。
著者
太田 恵 池添 冬芽 金岡 恒治 佐久間 香 長谷川 洋介 藤田 千早 沼澤 拓也 舞弓 正吾 市橋 則明
出版者
日本理学療法士協会(現 一般社団法人日本理学療法学会連合)
雑誌
理学療法学Supplement Vol.38 Suppl. No.2 (第46回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.CcOF1065, 2011 (Released:2011-05-26)

【目的】老化に伴う退行性変化として骨格筋の萎縮が起きることは周知の事実であり,リハビリテーションの分野では高齢者における筋の機能の維持および向上が重要な課題のひとつとなっている.この筋萎縮の評価法のひとつとして,近年,超音波画像診断装置による筋厚測定がよく用いられている.超音波画像診断装置は,MRIやCTと比較して,安価で簡便であり,信頼性と妥当性も高いことから,超音波画像診断装置を使用した研究が多くなされている.しかしながら,超音波法を用いて筋厚の加齢変化を調べた先行研究の多くは四肢の筋を対象としており,体幹筋,特に腹筋群について言及した研究は少ない.また,筋萎縮に関する横断研究の場合は,加齢による影響だけでなく,身長や体重,BMIといった体格の差異による影響も考慮する必要がある.しかしながら,腹筋群の筋厚にはどのような体格要因が関連するのかについては明らかではない。そこで本研究では,超音波画像診断装置を使用して腹筋群の筋厚を測定し,年齢や体格との関連について明らかにすることを目的とした.【方法】被験者は,健常成人120名(男性60名,女性60名)とした.男性被験者の年齢は33.1±18.1歳(20~84歳)であり,身長は170.5±6.8cm,体重は67.2±11.8kg,BMIは23.0±3.1であった.女性被験者の年齢は57.2±19.2歳(20~83歳)であり,身長は154.2±7.1m,体重は52.0±9.0kg,BMIは21.9±3.4であった.いずれも独歩または歩行補助具を使用し自立歩行が可能な者とした.筋厚の測定には超音波診断装置を使用した.対象筋は,腹直筋,外腹斜筋,内腹斜筋,腹横筋とした.測定肢位は安静背臥位で,いずれも安静呼気時に測定した.測定部位は腹直筋が臍から外側4cmの部位,外腹斜筋,内腹斜筋,腹横筋は臍高位の腋窩線から内側2.5cmの部位とし,いずれも右側を測定した.腹筋群の筋厚と年齢,身長,体重,BMIとの関係について,各筋厚を目的変数とし,年齢,身長,体重, BMIを説明変数として,男女別にそれぞれ重回帰分析を用いて検討した.いずれも有意水準は5%未満とした.【説明と同意】本研究の目的と方法について,すべての被験者に対し口頭および文書にして十分に説明し,同意を得た.【結果】腹直筋の筋厚の平均値は男性12.8±3.3mm,女性8.3±2.4mmであった.重回帰分析の結果,男女ともに年齢のみ筋厚に影響を与える有意な因子として抽出され(標準偏回帰係数:男性-0.58,女性-0.71),自由度調整済決定係数は男性0.59,女性0.59であった.外腹斜筋の筋厚の平均値は男性8.6±2.9mm,女性5.4±1.9mmであった.重回帰分析の結果,男女ともに年齢のみ有意な因子として抽出され(標準偏回帰係数:男性-0.56,女性-0.61),自由度調整済決定係数は男性0.48,女性0.43であった.内腹斜筋の筋厚の平均値は男性12.2±3.9mm,女性8.1±2.5mmであった.重回帰分析の結果,男女ともに年齢のみ有意な因子として抽出され(標準偏回帰係数:男性-0.66,女性-0.43),自由度調整済決定係数は男性0.44,女性0.23であった.腹横筋の筋厚は男性4.4±1.2mm,女性3.3±0.9mmであった.重回帰分析の結果,男女ともにいずれの説明変数も筋厚に影響を与える因子として抽出されなかった. 【考察】本研究では,腹筋群における筋厚と年齢,身長,体重,BMIとの関連を明確にするため,若年者から高齢者までの男女の筋厚を測定し,重回帰分析を用いて検討した.その結果,腹直筋,外腹斜筋,内腹斜筋の筋厚については,年齢が影響を及ぼす因子として抽出されたが,腹横筋の筋厚では年齢は抽出されなかった。このことから,腹筋群のなかでも腹横筋の筋厚は加齢変化が少ないことが示唆された.また,身長,体重, BMIといった体格はすべての腹筋群の筋厚において影響を及ぼす因子として抽出されなかった.骨格筋の筋萎縮の程度を横断的に比較検討する際,四肢筋の筋厚については体格の差異を考慮し,体格要因で補正した筋厚が用いられることがある.本研究の結果,腹筋群の筋厚については体格による違いを考慮する必要性は少ないと考えられた.【理学療法学研究としての意義】本研究により,腹直筋,外腹斜筋,内腹斜筋の筋厚は,加齢に伴って減少するが,腹横筋の筋厚は加齢変化が少ないことが示された.また,腹筋群の筋厚は体格要因による影響は少ないことが示唆された.本研究の結果は腹筋群の筋萎縮の程度を評価する上で考慮すべき重要な知見であると考える.
著者
季 翔 正木 光裕 梅垣 雄心 中村 雅俊 小林 拓也 山内 大士 建内 宏重 池添 冬芽 市橋 則明
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement Vol.41 Suppl. No.2 (第49回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.0486, 2014 (Released:2014-05-09)

【はじめに,目的】近年開発された超音波診断装置のせん断波エラストグラフィー機能で測定される弾性率は,筋の伸張性を反映することが報告されている(Maïsetti 2012, Koo 2013)。そのため,この弾性率を指標として個別の筋の伸張の程度を定量的に評価することが可能となった。臨床において筋・筋膜性腰痛や背部筋の過緊張に対する運動療法として,背部筋のストレッチングがよく用いられている。背部筋のなかで脊柱起立筋は脊柱の伸展,同側側屈,同側回旋,多裂筋は脊柱の伸展,同側側屈,反対側回旋の作用を有する。そのため,脊柱起立筋は脊柱の屈曲,反対側側屈,反対側回旋,多裂筋は脊柱の屈曲,反対側側屈,同側回旋で伸張される可能性が考えられる。しかし,どのような肢位で脊柱起立筋や多裂筋が最も効果的に伸張されるかについては明らかではない。本研究の目的は,せん断波エラストグラフィー機能で測定した弾性率を用いて,脊柱起立筋と多裂筋の効果的なストレッチング方法を明らかにすることである。【方法】対象は整形外科的および神経学的疾患を有さない健常若年男性10名(年齢22.9±2.3歳)とした。なお,腰痛を有する者は対象から除外した。筋の弾性率(kPa)の評価には,せん断波エラストグラフィー機能を有する超音波診断装置(SuperSonic Imagine社製)を用い,各筋の筋腹に設定した関心領域のせん断速度から弾性率を求めた。なお,弾性率の値が高いほど筋は硬く,伸張されていることを意味する。対象筋は左腰部の脊柱起立筋(腰腸肋筋)および右腰部の多裂筋とした。測定部位は脊柱起立筋が第3腰椎棘突起の7cm外側,多裂筋が第4腰椎棘突起の2cm外側とした。測定肢位は①安静腹臥位(以下,rest),②正座の姿勢から体幹を前傾し,胸腰推を40~45°屈曲した肢位(以下,屈曲),③ ②の胸腰推を40~45°屈曲した肢位からさらに胸腰推を30°右側屈した姿勢(以下,屈曲右側屈),④ ②の胸腰推を40~45°屈曲した肢位からさらに胸腰推を30°右回旋した姿勢(以下,屈曲右回旋)とした。なお,本研究においては多くのストレッチング肢位をとることで筋の柔軟性が増加し,弾性率に影響が生じる可能性を考慮し,ストレッチング肢位は上記②~④の3条件のみとし,測定の順序はランダムとした。また,②~④の肢位では,できるだけ安楽な姿勢をとらせるために腹部にストレッチポールを挟んだ。なお,胸腰推の角度は日本整形外科学会および日本リハビリテーション医学会による測定法に準じた。統計学的検定には,Bonferroni法による多重比較検定を用いて,測定肢位による弾性率の違いを分析した。なお,有意水準は5%未満とした。【倫理的配慮,説明と同意】対象者には研究内容について十分な説明を行い,同意を得たうえで実施した。【結果】左脊柱起立筋の弾性率については,屈曲右側屈(20.8kPa),屈曲(13.7kPa)がrest(5.0kPa)よりも有意に高かった。また,屈曲右側屈が屈曲,屈曲右回旋(9.2kPa)よりも有意に高い値を示し,屈曲と屈曲右回旋との間に有意な差はなかった。右多裂筋の弾性率については,屈曲(30.7kPa),屈曲右回旋(30.2kPa)屈曲右側屈(17.6kPa)がrest(5.7kPa)よりも有意に高かった。また,屈曲右側屈が屈曲,屈曲右回旋よりも有意に低い値を示し,屈曲と屈曲右回旋との間に有意な差はなかった。【考察】せん断波エラストグラフィー機能による弾性率を用いて背部筋の伸張の程度を調べた結果,脊柱起立筋においては,脊柱屈曲位で反対側側屈することが最も効果的なストレッチング方法であることが明らかとなった。脊柱起立筋は,脊柱屈曲位,脊柱屈曲位で反対側側屈することで筋を伸張することができ,また,脊柱屈曲位で反対側側屈することは,脊柱屈曲位や脊柱屈曲位で反対側回旋することよりもより効果的に伸張することができることが示唆された。脊柱屈曲位で反対側回旋させるよりも反対側側屈させるほうが,脊柱起立筋を伸張させるのに効果的である理由としては,脊柱起立筋の側屈モーメントアームは回旋モーメントアームよりも大きいことが影響していると考えられる。また,多裂筋は特に脊柱屈曲位および脊柱屈曲位で同側回旋において伸張されることが示唆された。この脊柱屈曲位と脊柱屈曲位で同側回旋との間には有意差がみられなかったことから,同側回旋を加えなくても脊柱を屈曲するだけで多裂筋は効果的に伸張することができると考えられた。脊柱屈曲位で同側回旋を加えても多裂筋に影響を与えなかった理由として,多裂筋は回旋作用を有するが,回旋モーメントアームは小さいことによるものと考えられる。【理学療法学研究としての意義】本研究によって,脊柱起立筋は脊柱屈曲位でさらに反対側側屈を加えることで,多裂筋は脊柱を屈曲することで,より効果的に伸張できることが示唆された。
著者
浅川 康吉 市橋 則明 羽崎 完 池添 冬芽 樋口 由美
出版者
日本理学療法士学会
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.27, no.3, pp.75-79, 2000
参考文献数
14
被引用文献数
5

踏み台昇降訓練における踏み台の位置や高さの設定が,立脚側の股関節周囲筋の筋活動量に与える影響について筋電図学的検討を行った。対象は健常男性13名(25.9 ± 3.8歳)で,股関節周囲筋として大殿筋,中殿筋,内転筋,大腿筋膜張筋,および大腿直筋を選択した。踏み台昇降動作は,前方,後方,側方の踏み台の位置と,10cm,20cm,30cmの高さを組み合わせた計9通りで行った。統計学的分析には二要因とも対応のある二元配置分散分析を用いた。その結果,踏み台の位置は中殿筋,大腿筋膜張筋の筋活動に影響し,踏み台の高さは大殿筋,中殿筋,大腿筋膜張筋の筋活動に影響していた。内転筋と大腿直筋には交互作用が認められた。股関節周囲筋では,踏み台昇降訓練における踏み台の位置や高さの影響が各筋ごとにそれぞれ異なると考えられた。
著者
中村 雅俊 池添 冬芽 梅垣 雄心 小林 拓也 武野 陽平 市橋 則明
出版者
日本理学療法士協会(現 一般社団法人日本理学療法学会連合)
雑誌
理学療法学Supplement Vol.40 Suppl. No.2 (第48回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.48101053, 2013 (Released:2013-06-20)

【はじめに、目的】ハムストリングスのストレッチング方法は主観的な伸張感により,近位部を伸張するには股関節屈曲位での膝関節伸展,遠位部を伸張するには膝関節伸展位での股関節屈曲が推奨されている.しかし,これら2種類のストレッチング方法の違いが近位部と遠位部の伸張性に及ぼす影響について客観的な指標を用いて比較した報告はなく,科学的根拠は乏しいのが現状である.そこで本研究は剪断波超音波診断装置を用いて,これら2種類の異なるストレッチング方法がハムストリングスの各部位における伸張の程度に及ぼす影響を検討し,ストレッチング方法の違いによって近位部と遠位部を選択的に伸張できるかを明らかにすることを目的とした.【方法】対象は整形外科的疾患を有さない健常男性15名(年齢23.8±3.2歳)とし,利き脚 (ボールを蹴る) 側の半腱様筋(ST)と大腿二頭筋長頭(BF)を対象筋とした.対象者をベッド上背臥位にし,骨盤後傾を防ぐために反対側下肢をベッドから下ろして骨盤を固定した状態で他動的に股関節90°屈曲位から痛みを訴えることなく最大限,伸張感を感じる角度まで膝関節伸展を行うストレッチング(KE),膝関節完全伸展位から痛みを訴えることなく最大限,伸張感を感じる角度まで股関節屈曲を行うストレッチング(SLR),股関節90°屈曲・膝関節90°屈曲位の安静時の3条件での筋の伸張の程度を評価した.筋硬度の測定には超音波診断装置(SuperSonic Imagine社製 Aixplorer)の剪断波エラストグラフィ機能を用いて,STとBFそれぞれ大腿長の近位1/3(近位),1/2(中間),遠位1/3(遠位) の筋硬度を無作為な順番で測定した.筋は伸張されると筋硬度が増すことが報告されているため,伸張量の指標として筋硬度を用いた. 統計学的処理は,STとBFにおける各部位の安静時とKE,SLRの条件間の違いをScheffe法における多重比較を用い検討した.また安静時に対するKEとSLRの変化率を求め,各部位におけるKEとSLRの変化率の違いと近位,中間,遠位の部位による違いについてScheffe法における多重比較を用い比較した.なお,有意水準は5%未満とした.【倫理的配慮、説明と同意】対象者には研究の内容を十分に説明し,研究に参加することの同意を得た.【結果】STの筋硬度について近位部は安静で39.6±31.8kPa,KEで398.4±125.8kPa,SLRで354.3±109.4kPa,中間部は安静で61.0±23.2kPa,KEで507.9±71.5kPa,SLRで472.6±81.5kPa,遠位部は安静で66.5±29.3kPa,KEで504.3±103.6kPa,SLRで478.4±151.2kPaであった.BFにおける近位部は安静で30.6±12.8kPa,KEで361.4±91.8kPa,SLRで343.3±92.6kPa,中間部は安静で45.4±32.3kPa,KEで386.4±147.6kPa,SLRで392.3±98.8kPa,遠位部は安静で54.1±22.4kPa,KEで490.5±112.3kPa,SLRで425.8±109.5kPaであった.多重比較の結果,STとBFともに近位,中間,遠位部の全ての部位において安静条件と比較してKEとSLRで有意に高値を示した.また安静時に対するKEとSLRの変化率を比較した結果,STとBFの全ての部位においてKEとSLR間で有意差は認められなかった.安静時からの変化率について近位,中間,遠位の部位間で比較した結果,STとBFのKEとSLRともに部位による有意差は認められなかった.【考察】本研究の結果,KEとSLRの2つのストレッチング法はともにSTとBF両筋の全ての部位を伸張することが可能であった.さらに,KEとSLR間では全ての部位で有意差が認められなかったことより,どの部位でも両ストレッチング方法による伸張の程度に違いはないことが明らかとなった.また,近位,中間,遠位部の比較においても有意差が認められなかったことより,部位による違いはないことも明らかとなった.これらの結果より,二関節筋であるSTとBFを伸張する場合にはKEとSLRの方法による違いはなく,両ストレッチングとも全ての部位において同じ程度のストレッチング効果が得られること,すなわちこれらストレッチング方法の違いによって近位部と遠位部を選択的に伸張することは困難であることが示唆された.【理学療法学研究としての意義】股関節を屈曲した状態から膝関節を伸展するストレッチングと膝関節完全伸展位から股関節を屈曲するストレッチングの両ストレッチング手技ともにハムストリングスの近位部,遠位部を一様に伸張する効果があることが明らかとなった.