著者
田村 充子
出版者
日本生命倫理学会
雑誌
生命倫理 (ISSN:13434063)
巻号頁・発行日
vol.15, no.1, pp.194-201, 2005-09-19

自己決定とは、過去、医学が優生思想に発する非人道的行為に利用されてきた歴史に対して、わたしたちの存在を真にまもろうとするなかで獲得されてきた原理である。この医療倫理の原則としての原理は、重要であると同時に、それを過度に強調することで多くの問題を生むものともいえる。自己決定の原理は、排除の論理として用いられたり、医師の責任放棄のために利用されたり、病者の過度に個我的な自己決定を補強するために用いられてはならない。マルティン・ブーバーは、人間は関係性のなかに生きる存在である、と論じている。関係に生きる私たち病者の固有の生が、医療の現場において真に守られるために、この自己決定の原理はどのように捉えられてゆくべきか。この問いに対し、本稿では、病む者の視点から、自律性と関係性に着眼しながら、医療の場における自己決定についての考察を試みた。
著者
田村 充代
出版者
千葉商科大学
雑誌
千葉商大論叢 (ISSN:03854558)
巻号頁・発行日
vol.42, no.2, pp.53-70, 2004-09-30

2001年に日本において,いわゆる「クローン人間禁止法」が成立した。クローン羊ドリーの誕生や,その後のクローン人間産生への世界の動きに対して迅速な対応であったと評されるが,その立法過程や背景は明らかにされていないように思われる。脳死,安楽死などの生命倫理問題は,「その他の社会問題」として扱われ,議会においても優先順位の低い問題であり,社会科学の分野における研究が深まることはなかった。公共政策という観点からも,また政治学の観点からも見過ごされてきたこの生命倫理に関する問題群を研究対象として改めて発見し,功利主義や実用主義によっては根拠を与えることのできない問題をどのように決定することができるのか,という可能性を論じたい。この論文においては,まず日本でクローン人間を産生することを禁じる規制がどのような過程で形成されたのか,という事実関係を明らかにする。その上で,諸外国の規制の状況を俯瞰し,その立法課程,あるいは規制の成立過程を調査することによって,国際比較を行う。日本における生命倫理,特にクローン人間問題に関する決定のアクターは誰なのか,どのような構造的問題があるのか,文化的背景はクローン人間問題に影響するのか,諸外国における規制にはどれほどの差異があるのか,国家の枠組みを超えた決定は可能か,などといった問題に取り組み,できる限りの解答を出したいと考えている。この問題を対象に政治学的な考察を行うことによって,どのような決定を行うべきか,という行為を論じることはできないが,倫理問題に対してどのような決定方法があり得るか,という多様な選択肢の提示をすることができると考える。特殊な問題の取り上げ方ではあるが,その分析視覚や決定方法の多様性についてこの分野における議論を活性化させ,新しい問題群を政策過程研究の場に定着させたいと望んでいる。
著者
大島 義之 和田 沙依子 田村 充宏 後藤 健 金子 政弘 舟場 正幸 入来 常徳 波多野 義一 阿部 又信
出版者
日本ペット栄養学会
雑誌
ペット栄養学会誌 (ISSN:13443763)
巻号頁・発行日
vol.6, no.2, pp.64-73, 2003-04-10 (Released:2012-09-24)
参考文献数
34

ネコにおけるシスチンの尿酸性化効果と有害作用の有無について検討した。健康な成ネコ6頭(平均3.3kg)を2頭ずつ3群に分け,1期8日間の3×3ラテン方格法により,L-シスチンを0,2.4,4.8%添加した3種類の実験食を各群に割り当てた。実験期間を通して実験食と飲水は不断給与し,各期最終5日間に増体量,摂食量,飲水量,尿量,糞量を測定した。また,毎朝新鮮尿を採取し,直ちにpHとストルバイト結晶数を測定した.残りの尿はMg,P,尿素態N,アンモニア態N,クレアチニン,遊離アミノ酸濃度の測定に用い,[Mg2+]×[NH4+]×[PO43-]によりストルバイト活性積を求めた。一方,各期最終日には頚静脈より採血し,ヘマトクリットと血漿中の総蛋白質,尿素態N,アンモニア態N,クレアチニン,および遊離アミノ酸濃度を測定した。尿および血漿のクレアチニン濃度を指標として糸球体濾過量も求めた。その結果,L - シスチンには等S量のDL-Metに匹敵する尿酸性化効果がある一方,DL-Metのような強い毒性はないことが明らかとなった。しかし体重の有意な減少なしに摂食量が減少したことから,インバランスは生じ得ることが示唆された。L-シスチンの適正投与水準はドライフード当たり2.4%以下と考えられたが,この問題に関しては今後さらに検討の余地がある。L-シスチンの投与がシスチン尿症または同尿石症を増加させるとの証拠はなかったものの,二塩基性アミノ酸- 特にシスチン, リジン,アルギニンーの尿中排泄に関するネコの特異性が示唆された。
著者
今野 喜和人 田村 充正 南 富鎭 桑島 道夫 花方 寿行 山内 功一郎 トーマス エゲンベルク
出版者
静岡大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

異文化間に生じる「恋愛」「結婚」を扱った世界各国の近現代文学、および「恋愛」「結婚」を語る諸言語テクストの影響関係や翻訳において発生する文化衝突と誤解を多角的に分析し、現代におけるナショナリティ・文化・エスニックグループ、ジェンダー・世代・ミリュー等々の間の政治的・社会的支配/被支配の構造と歴史観を分析・検証することで、「異文化理解」にまつわる諸問題を明らかにした。