著者
鈴木 浩明 白戸 宏明 手塚 和彦
出版者
Japan Ergonomics Society
雑誌
人間工学 (ISSN:05494974)
巻号頁・発行日
vol.39, no.6, pp.267-274, 2003-12-15 (Released:2010-03-12)
参考文献数
21
被引用文献数
1 4

列車内における乗り物酔いの発生実態を明らかにし, 酔いに影響する振動特性を特定するために, 営業運転中の特急列車内で約4,000名の乗客を対象にアンケート調査を実施した. 様々な条件下でのデータを広く集めるために, 八つの線区, 14の車両形式を対象に, 計52本の列車で調査を実施し, あわせて当該車両の振動特性を計測した. うち, 8形式が振子式車両, 残り6形式が非振子車両であった. その結果,以下のことを明らかにした. 酔いを生じる乗客の割合は振子式車両の方が多い. 酔いの発現に最も影響するのは0.25~0.32Hzの低周波左右振動である. 列車振動に関して, 船酔いで問題とされる低周波上下振動の酔いへの影響は確認されない. 酔いの個人差は大きく, 女性や若年の乗客の方が酔いを生じやすい. 振動乗り心地を評価する従来の指標は, 酔いの評価に有効ではない. 以上の結果をふまえて, 列車酔いの評価を可能にする周波数補正曲線を提案した.
著者
小美濃 幸司 白戸 宏明 遠藤 広晴 清野 寛
出版者
Japan Ergonomics Society
雑誌
人間工学 (ISSN:05494974)
巻号頁・発行日
vol.42, no.3, pp.164-171, 2006-06-15 (Released:2010-03-15)
参考文献数
11
被引用文献数
1 3

これからの列車ブレーキ制御技術が目指すべき最適なブレーキパターンの基礎データ獲得を目的とした実験を実施した. 営業列車のブレーキの特徴を考慮し, 実験では台形状の減速度をもつブレーキパターンを設定した. その台形の高さに当たる定常減速度と斜辺の傾きに当たるジャークの異なる組み合わせの28種類のブレーキパターンに対して, 許容できないとした人の割合求め, これを乗り心地の評価指標とした. 同時に乗り心地に関連が強いと考えられる二つの指標, ブレーキの体感強さの平均値と姿勢を保持できなかった人の割合に関しても評価を行った.許容できない割合, 体感強さおよび姿勢を保持できなかった割合いずれも, 定常減速度とジャークを説明変数とした推定式で表された. また, この実験結果をもとに理論的に最適なパターンについて考察した. その結果, 初速度と停止距離に応じた最適ブレーキパターンの定常減速度とジャークの推定式が示された.
著者
島宗 亮平 中川 千鶴 大野 央人 白戸 宏明
出版者
一般社団法人 日本機械学会
雑誌
日本機械学会論文集C編 (ISSN:18848354)
巻号頁・発行日
vol.77, no.781, pp.3205-3210, 2011 (Released:2011-09-25)
参考文献数
13
被引用文献数
2 1

According to a speedup of the Shinkansen, it is increasing to feel the passage of the vertical curve. However, the actual situation is not clarified because it is hardly investigated the ride comfort about the vertical curve passage until now. Therefore, two kinds of subject experiments by the high-speed train were carried out to obtain the knowledge of the ride comfort in the vertical curve passage, and the following results were provided. It was suggested that not only the acceleration but also the jerk influenced the perception of the vertical curve. In the same condition as the passengers of the operating train, the perception ratios of the vertical curve were about 60 % at maximum speed 275 km/h, and about 70 % at that 320 km/h. In the vibration ride comfort of including the vertical curve, the railroad employees were strictly evaluated than general subjects, and young group subjects were strictly estimated than elder ones.
著者
小美濃 幸司 遠藤 広晴 種本 勝二 白戸 宏明 澤 貢 武居 泰 斎藤 寛之
出版者
一般社団法人 日本人間工学会
雑誌
人間工学 (ISSN:05494974)
巻号頁・発行日
vol.45, no.2, pp.126-134, 2009-04-15 (Released:2010-10-28)
参考文献数
8
被引用文献数
1 1

定常風が立っている人へ及ぼす力学的影響について調べるため,大型低騒音風洞で被験者に風を当て,姿勢保持限界風速等を測定した.姿勢を保持できない被験者の割合は,特定の風速を超えると急激に増加し,その増加の程度は立つ向きに依存した.身体の抗力は風速の2乗に比例し,姿勢を傾けないと立っていられない風速は,風下向きで16 m/s,横向きで19 m/sであった.列車駅通過時の風であると想定した場合に「許容できない」とした被験者の割合も同様に風速に伴って増加した.簡易な剛体人体モデルを仮定し,定常風について姿勢保持限界風速を推定したところ,推定値は実測値より小さくなった.一方,既報の一過性変動風データについては推定値と実測値とがよく対応することがわかり,定常風よりも一過性変動風のほうが剛体に近い動きとなると考えられた.
著者
鈴木 浩明 田中 綾乃 小美濃 幸司 白戸 宏明
出版者
一般社団法人 日本人間工学会
雑誌
人間工学 (ISSN:05494974)
巻号頁・発行日
vol.35, no.5, pp.323-332, 1999-10-15
参考文献数
16
被引用文献数
2 3

鉄道車両がカント (横断勾配) のついた曲線区間に停止した際に生じる床の傾斜角と乗客 (乗員) の不快感との関係を検討するための基礎実験を行った. モックアップ車両の床面の傾斜角度を0~12度まで2度刻みで変化させ, 被験者に傾斜の強さや不快感の評価を求めた. 乗客 (乗員) の一般的な姿勢や行動を考慮して, 着座姿勢, 停立姿勢, 通路歩行時, 車内販売用ワゴン操作時の各条件を検討対象とした. 歩行実験では履物の違いが評価に及ぼす影響も検討した. その結果, 着座・停立条件の不快感は歩行・車内販売条件より高いこと, 靴の違いは歩きにくさの評価には影響するが, 傾斜に起因する不快感の評価には影響しないこと, 車内販売作業では傾斜角が6度を超えると急速に不快感が高まること, などが明らかになった. 最後に, 傾斜角度を独立変数, 不快感を従属変数とする回帰式の作成を試みた.
著者
斎藤 綾乃 鈴木 浩明 白戸 宏明 藤浪 浩平 遠藤 広晴 松岡 茂樹 平井 俊江 斎藤 和彦
出版者
Japan Human Factors and Ergonomics Society
雑誌
人間工学 (ISSN:05494974)
巻号頁・発行日
vol.42, no.1, pp.9-21, 2006-02-15 (Released:2010-03-15)
参考文献数
19
被引用文献数
4 3

振動環境下で通勤近郊列車の支持具の使いやすさを検討した. 列車の走行振動を模擬できるシミュレータ内に, 車内設備を取り付け, 幅広い身長の利用者に, 様々な寸法のつり革や手すりを評価させた. つり革全体の長さは275mm, 375mm, 475mmの3水準, 床からのつり革高さは靴を履いた身長に対する比 (以降, 身長比) 80~120%まで5%間隔とした. つり革長さ275mmの場合, 身長比99%が最適であり, 90~105%が推奨範囲であった. つり革が長くなると推奨範囲が狭まった. 推奨範囲外となる人の割合を最少にする観点から, いくつかの推奨値の組合せを提案した. 手すりについては, 座面前縁から150mmの距離をとったものが, 現行 (座面前縁からの距離0mm) と比較して, 姿勢維持の有効性や立ち上がりやすさが向上することを確認した. 乗降性は悪化しなかった.
著者
斎藤 綾乃 鈴木 浩明 白戸 宏明 藤浪 浩平 村越 暁子 松岡 茂樹 平井 俊江 斉藤 和彦
出版者
Japan Ergonomics Society
雑誌
人間工学 (ISSN:05494974)
巻号頁・発行日
vol.43, no.2, pp.71-80, 2007-04-15 (Released:2010-03-15)
参考文献数
13
被引用文献数
3 3

ベビーカー利用者との共用を視野に入れた車いすスペースの手すり寸法を検討した. 列車の走行振動を模擬できるシミュレータ内に設備を設置し, 振動環境下で, ベビーカー利用者46名, 一般乗客67名の評価を得た. その結果, 高さ800mmの従来の手すりより, 950mmと700mmの2本を設置するほうが, 姿勢を支える, 軽く腰掛けるという観点から使いやすいことが明らかになった. ベビーカー利用者の76.1%がベビーカー用のスペースとして従来スペースよりよいと評価した.