著者
小美濃 幸司 白戸 宏明 遠藤 広晴 清野 寛
出版者
Japan Ergonomics Society
雑誌
人間工学 (ISSN:05494974)
巻号頁・発行日
vol.42, no.3, pp.164-171, 2006-06-15 (Released:2010-03-15)
参考文献数
11
被引用文献数
1 3

これからの列車ブレーキ制御技術が目指すべき最適なブレーキパターンの基礎データ獲得を目的とした実験を実施した. 営業列車のブレーキの特徴を考慮し, 実験では台形状の減速度をもつブレーキパターンを設定した. その台形の高さに当たる定常減速度と斜辺の傾きに当たるジャークの異なる組み合わせの28種類のブレーキパターンに対して, 許容できないとした人の割合求め, これを乗り心地の評価指標とした. 同時に乗り心地に関連が強いと考えられる二つの指標, ブレーキの体感強さの平均値と姿勢を保持できなかった人の割合に関しても評価を行った.許容できない割合, 体感強さおよび姿勢を保持できなかった割合いずれも, 定常減速度とジャークを説明変数とした推定式で表された. また, この実験結果をもとに理論的に最適なパターンについて考察した. その結果, 初速度と停止距離に応じた最適ブレーキパターンの定常減速度とジャークの推定式が示された.
著者
小美濃 幸司 遠藤 広晴 種本 勝二 白戸 宏明 澤 貢 武居 泰 斎藤 寛之
出版者
一般社団法人 日本人間工学会
雑誌
人間工学 (ISSN:05494974)
巻号頁・発行日
vol.45, no.2, pp.126-134, 2009-04-15 (Released:2010-10-28)
参考文献数
8
被引用文献数
1 1

定常風が立っている人へ及ぼす力学的影響について調べるため,大型低騒音風洞で被験者に風を当て,姿勢保持限界風速等を測定した.姿勢を保持できない被験者の割合は,特定の風速を超えると急激に増加し,その増加の程度は立つ向きに依存した.身体の抗力は風速の2乗に比例し,姿勢を傾けないと立っていられない風速は,風下向きで16 m/s,横向きで19 m/sであった.列車駅通過時の風であると想定した場合に「許容できない」とした被験者の割合も同様に風速に伴って増加した.簡易な剛体人体モデルを仮定し,定常風について姿勢保持限界風速を推定したところ,推定値は実測値より小さくなった.一方,既報の一過性変動風データについては推定値と実測値とがよく対応することがわかり,定常風よりも一過性変動風のほうが剛体に近い動きとなると考えられた.
著者
遠藤 広晴 菊地 史倫 斎藤 綾乃 辻村 壮平 林 伸明
出版者
一般社団法人 日本機械学会
雑誌
日本機械学会論文集 (ISSN:21879761)
巻号頁・発行日
vol.83, no.854, pp.17-00089-17-00089, 2017 (Released:2017-10-25)
参考文献数
21
被引用文献数
2

In this study, the relation between the thermal environment and the thermal comfort of occupants in a main line vehicle in the summer was investigated. At first, to understand the characteristics of the thermal environment in a main line vehicle, a field survey was conducted by measuring the temperature and humidity in regular passenger services from the morning to the night. The observation range of the temperature was from 23°C to 28°C, and that of the humidity was from 38%rh to 68%rh. Then, to obtain the fundamental data about the occupants’ thermal comfort, a subjective experiment in which 44 subjects in total participated was carried out. The subjects rode a main line vehicle stationed at a rolling stock center, and they experienced the temperature changing approximately in the range observed in the field survey and answered the questionnaires about their thermal comfort. Furthermore, the relationships between the thermal indices called PMV/PPD and the subjective evaluation values were analyzed. As a result, it was indicated that the error of the PPD in predicting the percentage of dissatisfied subjects became large in the range PMV>0, where the effect of the sweat sensation became significant. However, the PPD agreed well with the actual percentage of people who reported to have the feeling of ‘slightly cold’, ‘cold’ or ‘slightly hot’, ‘hot’. Our results suggest that the PPD can be used as an index of the variability of thermal sensation, but not as an index of thermal comfort in a main line vehicle in the summer; in order to use the PPD as an index of thermal comfort all the year around, it should be corrected taking into account the seasonal characteristics of the relation between the PMV and the actual percentage of dissatisfied occupants.
著者
遠藤 広晴 伊積 康彦 林 伸明
出版者
人間-生活環境系学会
雑誌
人間-生活環境系シンポジウム報告集
巻号頁・発行日
vol.37, pp.187-190, 2013-11-22

夏季の通勤列車内の温熱環境の実態を把握するため,営業運転中の通勤列車内の温湿度測定,および主観評価を行った。駅間走行中の車内には水平方向に平均で3℃,最大で6℃程度の温度差が生じており,車内位置により温熱快適性が異なる可能性が示唆された。車内各位置の上下温度差は4℃以下であり,温熱快適性に大きな影響を及ぼすほどではなかった。温湿度変化速度は±1.0℃/min, ±6.0%/min程度まで観測され,非定常性の高い温熱環境であることを確認した。駅停車中のドア開時の温度上昇幅は,ドア直近では平均2.7℃,その他の位置では平均1.5℃程度であった。主観評価結果と評価時の温湿度測定値を基に,PMV,PPDを算出し,本調査での不快申告率,不満足申告率との比較を行った。PPDがPMV=0で最小値となるのに対し,不快申告率,不満足申告率はPMV=-0.5付近で最小値をとり,季節性が温熱快適性に影響を及ぼしていることが示唆された。
著者
斎藤 綾乃 鈴木 浩明 白戸 宏明 藤浪 浩平 遠藤 広晴 松岡 茂樹 平井 俊江 斎藤 和彦
出版者
Japan Human Factors and Ergonomics Society
雑誌
人間工学 (ISSN:05494974)
巻号頁・発行日
vol.42, no.1, pp.9-21, 2006-02-15 (Released:2010-03-15)
参考文献数
19
被引用文献数
4 3

振動環境下で通勤近郊列車の支持具の使いやすさを検討した. 列車の走行振動を模擬できるシミュレータ内に, 車内設備を取り付け, 幅広い身長の利用者に, 様々な寸法のつり革や手すりを評価させた. つり革全体の長さは275mm, 375mm, 475mmの3水準, 床からのつり革高さは靴を履いた身長に対する比 (以降, 身長比) 80~120%まで5%間隔とした. つり革長さ275mmの場合, 身長比99%が最適であり, 90~105%が推奨範囲であった. つり革が長くなると推奨範囲が狭まった. 推奨範囲外となる人の割合を最少にする観点から, いくつかの推奨値の組合せを提案した. 手すりについては, 座面前縁から150mmの距離をとったものが, 現行 (座面前縁からの距離0mm) と比較して, 姿勢維持の有効性や立ち上がりやすさが向上することを確認した. 乗降性は悪化しなかった.