著者
大山 璃久 佐藤 辰郎 一柳 英隆 林 博徳 皆川 朋子 中島 淳 島谷 幸宏
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集G(環境) (ISSN:21856648)
巻号頁・発行日
vol.75, no.6, pp.II_135-II_141, 2019 (Released:2020-03-16)
参考文献数
22

小水力発電は有望な分散型の再生可能エネルギーであり,日本各地への導入が期待されている。小水力発電は環境負荷が小さいと考えられているが,減水区間が生じるため,河川生態系の影響を正しく評価しておく必要がある.本研究では,小水力発電による減水が渓流生態系にどのような影響を与えるのかを定量的に明らかにするため,底生動物を指標として渓流のハビタット類型ごとに減水の影響度合いを評価した.研究の結果,加地川では,全ての渓流ハビタットにおいて減水による底生動物個体数,分類群数,及び生物の群集構造への影響は認められなかった.加茂川では,一部ハビタットにおいて減水区間の底生動物個体数及び分類群数が減少しており,生態系の変質が示唆された.原因として,砂防堰堤から取水されるため,土砂供給量減少が考えられた.
著者
皆川 朋子 中島 淳 秋吉 彩圭 権藤 健太郎 伊豫岡 宏樹 渡辺 亮ー
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
河川技術論文集 (ISSN:24366714)
巻号頁・発行日
vol.19, pp.495-500, 2013 (Released:2023-03-31)
参考文献数
9

The Nakashima nature restoration project, where are creeks, backwaters and wetlands, has been constructed by MLIT on 12km from the river mouth in the Onga River. We set 9 investigation spots and researched aquatic insects, physical environment and water quality in 2011 and 2012. It was cleared that the aquatic insects community structures of 3 types are different by cluster analysis. We make clear that the shoreline profiles are not diverse. Based on the results, we propose some shoreline profiles which keep an early stage of succession
著者
小山 彰彦 乾 隆帝 伊豫岡 宏樹 皆川 朋子 大槻 順朗 鬼倉 徳雄
出版者
応用生態工学会
雑誌
応用生態工学 (ISSN:13443755)
巻号頁・発行日
vol.24, no.2, pp.191-216, 2022-03-17 (Released:2022-04-20)
参考文献数
55

堤体高 15 m を越えるハイダム撤去に対する河口域の生態系の応答を調査した事例は世界的に限られている.本研究では荒瀬ダム撤去前に該当する 2011 年から撤去後の 2018 にかけて調査を行い,球磨川水系の河口域の底質と生物相の変化を評価した.調査期間の秋季と春季に調査を計 14 回実施し,球磨川と前川に設置した 178 定点が調査された.このうち,本研究では 138 定点を解析に使用した.底質変化の指標として,調査定点のシルトと粘土の割合を算出した.結果,2012 年の春と 2014 年の春にそれぞれ粗粒化が認められた.これらの粗粒化は主に 2010 年の荒瀬ダムゲートの開放と 2011 年の大規模出水と関連すると考えられる.底生生物群集の変動を解析した結果,定点ごとの生物相の変動は,特定の調査時期,あるいは季節性に基づかないことが示唆された.この結果から,ダム撤去が河口域の底生生物群集に与えた影響は決して大きくなかったと考えられる.一方,球磨川と前川の両河川では内在性種が 2012 年の秋季から 2013 年,あるいは 2014 年の秋季にかけて顕著に増加した.同時期に,内在性種のアナジャコとニホンスナモグリ,およびこれらの巣穴を利用する共生種の出現定点数の増加が認められた.アナジャコとニホンスナモグリは砂泥質,および砂質環境に生息するため,底質の粗粒化が本種らの生息地の拡大を促進した可能性が示唆される.しかしながら,本調査を開始する前には河口域で底質のかく乱が既に観測されている点,本調査域では河川改修や自然再生事業に伴い直接的な土砂の投入が行われている点などから,本研究で観察された底生生物の出現パターンの変化が荒瀬ダム撤去とどの程度直接的に関係しているのかは十分に検証できていない.この関係を明らかにするために,今後,荒瀬ダムの堆積土砂の動態を評価すべきであろう.
著者
佐川 志朗 萱場 祐一 皆川 朋子 河口 洋一
出版者
Ecology and Civil Engineering Society
雑誌
応用生態工学 = Ecology and civil engineering (ISSN:13443755)
巻号頁・発行日
vol.8, no.2, pp.193-199, 2006-01-30
参考文献数
21
被引用文献数
2 4

本研究は,水面幅約3mの直線河道を呈する実験河川において,24調査区における努力量を統一させた魚類捕獲調査を行い,エレクトリックショッカーの捕獲効率を算出し,各種に対するショッカーの効用および効果的な魚類捕獲の方法について考察することを目的とした.調査の結果,底生魚および遊泳魚ともに捕獲効率が高い種および低い種が存在し,前者としては,アユ,ドジョウおよびシマドジョウ属が,後者としては,オイカワ,タモロコおよびヨシノボリ属が該当した.オイカワおよびタモロコの捕獲効率が低かった原因としては,第1年級群である40mm以下の小型個体の発見率が小さかったことが示唆された.また,ヨシノボリ属については,微生息場所である河床間隙中で感電した個体が発見できなかったために,第1,第2年級群を含めた全サイズ区分にわたって捕獲効率が低かったことが考えられた.ヨシノボリ属やコイ科魚類の稚仔魚が分布する河川でショッカーを用いて捕獲を行う際には,たも網を用いて感電個体をすくい捕るのと併せて,あらかじめ通電する箇所の下流に目の細かいさで網を設置しておき,すくい捕りのすぐ後に,足で石を退かせながら水をさで網に押し入れるような捕獲方法を併用することが望ましい.今後は,本邦産魚類の各種に対して,様々な水質条件,ショッカー設定下での捕獲効率を明らかにするとともに,各魚類の成長段階ごとにショッカーの影響程度を把握し,効果的で魚類個体群への影響を最小限とする魚類捕獲手法の検討を行う必要がある.
著者
大槻 順朗 乾 隆帝 野田 洋二 皆川 朋子 一柳 英隆
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集 (ISSN:24366021)
巻号頁・発行日
vol.79, no.3, pp.22-00112, 2023 (Released:2023-03-20)
参考文献数
22
被引用文献数
2

海・河川域双方を生息場とする通し回遊魚3種(カマキリ,シマウキゴリ,スミウキゴリ)を対象に,海・河川水温を加味した気候変動による影響を評価した.1980年代~2010年代の水温の公共観測値を1級水系ごとに整理し,沿岸・河川河口域の月別の平均値と変動勾配を得た.水温を含む生息環境条件を説明変数とし,生息有無を評価するモデルを構築し,変数の重要度を比較した.また,構築したモデルで将来の想定水温での生息可能性を評価した.その結果,カマキリ,スミウキゴリでは2月海水温,シマウキゴリでは4月河川水温が生息確率へ最も強く影響する水温に抽出された.水温の変動勾配は海域(+1.29℃/100yrs)よりも河川河口域(+3.93℃/100yrs)で大きく,将来の想定水温では3種ともに河川水温上昇による制限がより強いことが示唆された.
著者
田浦 扶充子 島谷 幸宏 小笠原 洋平 山下 三平 福永 真弓 渡辺 亮一 皆川 朋子 森山 聡之 吉冨 友恭 伊豫岡 宏樹 浜田 晃規 竹林 知樹
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集D3(土木計画学) (ISSN:21856540)
巻号頁・発行日
vol.75, no.5, pp.I_153-I_168, 2019 (Released:2019-12-26)
参考文献数
26
被引用文献数
1 2

本研究は,都市の流域すべての場所で雨水の貯留・浸透を,良質な緑を増やしながら多世代が協力し,分散型水管理が実現される持続的な都市ビジョン「あまみず社会」を提案し,その有効性や実現可能性を検証するものである.そのため,都市の空間構成要素である個人住宅と中学校を取り上げ,安価で魅力的な貯留浸透の方法を考案,計画し,実装を試みた.「あまみず社会」の概念に基づいた魅力的な実装や要素技術は,治水・利水機能に加え,環境面,防災面,活動の広がりなど多面的な価値があることが明らかとなった.加えて,「あまみず社会」の実社会への普及に向け,多面的で重層的な働きかけを網羅的に試みることが有効であり,想定以上の広がりが得られることが確認された.
著者
竹林 征三 皆川 朋子
出版者
Japan Society of Civil Engineers
雑誌
土木史研究 (ISSN:09167293)
巻号頁・発行日
vol.15, pp.221-228, 1995-06-09 (Released:2010-06-15)
参考文献数
14

本研究では、ダム湖における景勝地指定及びその効果を明らかにすることを目的に、景勝地を評価する手法の一つとして古来より用いられている「八景」に着目してダム湖水における指定事例を収集し、分析したものである。その結果、以下の2点が明らかとなった。(1) 古くより人々が自然景勝地を八景として価値を与えたのと同様に人工湖水であるダム湖水も八景として指定されている事例をみることができ、ダム湖が周辺の自然と調和した優れた景勝地を創造してきたことが把握できる。これは日本の文化の中にダム湖水が定着したものと受けとめることができるだろう。(2) 景勝地指定は、一つ一つのダム湖水景観に価値を与える。そして重要な観光資源となりこれを題材とした版画や歌の製作、歌碑の建立等、八景巡りの遊覧船などが生まれ、観光地としての湖水名を大きくPRすることとなる。さらに、町名をはじめ各種施設にダム湖水名が名付けられる等、景勝地指定が地域へ与える影響は大変大きいことが把握できる。