著者
真柳 誠
出版者
社団法人 全日本鍼灸学会
雑誌
全日本鍼灸学会雑誌 (ISSN:02859955)
巻号頁・発行日
vol.56, no.4, pp.605-615, 2006-08-01 (Released:2011-03-18)

日本は中国で失われた多くの佚存古医籍や善本を保存し、現代に伝えている。それらに基づき江戸末期まで高度な古典研究がなされ、明治以降は近代医学を導入して鍼灸の研究と教育方法が体系化されてきた。一方、鍼灸療法は清朝後期に廃絶政策が実施され、中国の鍼灸は中華民国初期にほとんど壊滅状態にいたっていた。さらに民国政府は中国医学を廃止しようとした。しかし中国伝統医師達は日本の研究成果も援用した反対運動を行い、中国医学は存続された。また承淡安が日本から導入した鍼灸医学と教育方法は、新中国以降に中国鍼灸学が復興する礎となった。このような背景により形成された新たな中国医学が、いま日本に再び渡来している。過去の歴史は今後の歴史に連なるのである。
著者
矢数 道明 真柳 誠 室賀 昭三 小曽戸 洋 丁 宗鉄 大塚 恭男
出版者
The Japan Society for Oriental Medicine
雑誌
日本東洋医学雑誌 (ISSN:02874857)
巻号頁・発行日
vol.38, no.2, pp.103-112, 1987
被引用文献数
3

筆者らは日本の医科・歯科・薬科大学 (学部) における, 伝統医学教育についての調査を実施した。本報では当調査結果のうち, 以下の項目に関する統計分析を報告した。<br>1) 伝統医学教育における問題点<br>2) 教育の展望<br>3) 今後導入がなされるべき課程<br>この結果, 伝統医学教育を未実施校の過半数がその理由に教育時間不足と担当者の不在を挙げること。現在実施中と今後実施の可能性のある校を合わせると, 全体平均では37%に達っすること。医科・歯科大学では, 今後は臨床医学系教科と自由講座中にて教育が導入される傾向の高いこと。薬科大学では, 現況の独立教科以外に自由講座・卒後教育などにも導入が進む傾向のあることが知られた。
著者
真柳 誠
出版者
茨城大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2006

漢字文化圏4国の古医籍約28000種の書誌データを調査し、定量分析した。その結果、日韓越は明代の中国南方で著された医書をモデルとし、自国化した体系を形成していたことが知られた。これは今日まで未知だった歴史現象である。当歴史観は各国で共有が可能であり、今後の相互理解と交流を進展させるだろう。
著者
真柳 誠
出版者
茨城大学
雑誌
特定領域研究
巻号頁・発行日
2001

中国周縁国は過去から現在まで中国医学を受容・消化し、自国固有の伝統医学を形成してきた。これまで実施した現存古医籍の調査分析により、およその形成過程と特徴が明らかになってきた。日本・韓国とも初期は唐宋代医学全書の影響で、中国書から自国に適した部分を引用した臨床医学全書を編纂している。日本の『医心方』(984)、朝鮮の『医方類聚』(1477)などである。同時に固有の医薬も集成し、日本の『大同類聚方』(808)、朝鮮の『郷薬集成方』(1433)などが編纂された。中期は主に明代の臨床医書を引用しつつ、日本の『啓迪集』(1574)、朝鮮の『東医宝鑑』(1611)、ベトナムの『医宗心領』(1770)など自国化した医学全書が編纂される。かつ各国とも明代の各種医学全書を19世紀後半まで復刻し続けたが、そうした流行は中国にない。また漢字交じり自国語訳本も周縁国に共通する現象だった。一方、日本だけに特異的な現象が見出された。すなわち中国医学古典と、それらの中国における研究書が日本では100回以上復刻されたが、朝鮮では1点、ベトナム・モンゴルにはひとつもなかった。また中国医学古典の日本における研究書が江戸時代だけで760種ほど現存するが、朝鮮におけるそうした研究書は1点のみ、ベトナム・モンゴルにはひとつもなかった。なぜ日本だけかくも中国医学古典を研究したのだろうか。これは日本のみ島国という因子に由来しよう。つまり日本は中国との往来が極めて困難につき中国人から直接学べず、書物のみを師とし、難解な古典まで自ら研究した。かつ日本だけ中国との戦争や被支配の経験がなく、その強い影響を意識的に排して自国文化を強調する必要がなかった。それゆえ中国文化の深くまで親近感を持ち、古典を研究した。他方、朝鮮・ベトナムでは中国臨床医書は利用するが、臨床にあまり関係もない別国の古典研究などありえなかっただろう。他分野の漢籍でも類似現象が見出される可能性は高い。
著者
真柳 誠 中山 貞男 小口 勝司
出版者
公益社団法人 日本薬理学会
雑誌
日本薬理学雑誌 (ISSN:00155691)
巻号頁・発行日
vol.99, no.2, pp.115-121, 1992-02-01 (Released:2011-09-07)
参考文献数
19
被引用文献数
8 6

セリ科和漢薬より8種の熱水抽出エキス (HWE) と2種のタンニン除去画分 (DTF) を調製し, ラット肝の脂質過酸化物 (LPO) 形成, およびaminopyrine N-demethylase (APD) 活性とaniline hydroxylase (ANH) 活性に対するHWEとDTFの影響をin vitroで検討した.APD活性に対し, 白正のHWEとDTFおよび茴香・前胡・当帰・川〓・防風・柴胡のHWEは抑制を示したが, 茴香のDTFによる影響は見られなかった.ANH活性に対し, 白〓・茴香のHWEとDTF, および防風・前胡・北沙参・当帰のHWEが抑制を示した、LPO形成に対し, 前胡・白〓・川〓のHWEは抑制を示したが, 柴胡・茴香・防風・北沙参のHWEは促進を示した.茴香のDTFの結果より, APD活性とANH活性に対し作用を及ぼした茴香の成分は異なっていることが示唆された.白正はAPD活性とANH活性に対し著明な抑制作用を示したことから, invivoにおいても薬物代謝酵素活性に影響を与える可能性が考えられた.
著者
真柳 誠 小曽戸 洋
雑誌
漢方の臨床 (ISSN:0451307X)
巻号頁・発行日
vol.44, no.5, pp.562-564, 1997-05-25
被引用文献数
3
著者
長野 仁 高岡 裕 真柳 誠 武田 時昌 小曽戸 洋
出版者
神戸大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

中国を起源とする漢方だが、腹診と小児鍼は日本で発達した診断・治療法である。本研究の第一の目的は、日本における腹診の発達の歴史の解明である。加えて、もう一つの日本発の小児鍼法も解析対象である。本研究の成果は、腹診の起源と変遷と、小児鍼成立に至る過程、の二点を解明した事である。加えて、資料の電子化とオントロジー解析も実施し、更なる研究に資するようにした。