著者
鹿野 和彦 大口 健志 林 信太郎 矢内 桂三 石塚 治 宮城 磯治 石山 大三
出版者
一般社団法人 日本地質学会
雑誌
地質学雑誌 (ISSN:00167630)
巻号頁・発行日
vol.126, no.5, pp.233-249, 2020-05-15 (Released:2020-09-17)
参考文献数
38
被引用文献数
2

田沢湖カルデラから2-1.8Maのある時期に噴出した火砕流密度流起源のテフラを記載した.下部は多面体~平板型ガラス片と岩片に富むテフラで,マグマ水蒸気爆発に伴ってカルデラ崩壊が始まったことを示唆する.上部は淘汰不良無層理の気泡型ガラス片に富むテフラで,岩屑なだれ堆積物と共存しており,カルデラ形成噴火最盛期に放出されたことを示唆する.これらは長期的にわたって侵食され田沢湖近傍でさえほとんど残っていない.カルデラ形成後の1.8-1.6Maには2つの溶岩ドームがカルデラ床に,2つの溶岩流が外輪山に噴出している.また,カルデラ形成前にはカルデラ南縁で少量の安山岩が噴出している.
著者
矢内 桂三
出版者
一般社団法人日本地球化学会
雑誌
地球化学 (ISSN:03864073)
巻号頁・発行日
vol.33, no.3, pp.177-189, 1999-08-25 (Released:2016-12-29)
被引用文献数
1

For the recent 30 years, about 20 thousand specimens of extraterrestrial material so called "Antarctic meteorites" recovered from the South Pole region as results of numerous meteorite search expeditions of the most US and Japan. Japan now keeps almost 10 thousand Antarctic meteorite specimens and it is the one of the biggest collection of meteorites in the world. The collection are distributing to researchers as unique and important research materials under the Japanese Antarctic meteorite distribution system during the last 30 years. The Antarctic meteorites have been giving a strong impact to the planetary sciences especially meteorite studies in Japan and world. However, Antarctic meteorites have been recovered under unpredicable hand condition such as very low temperature (under -30℃) with strong wind at a very dangerous places where are numerous deep hidden crevasses. Auther report here some interesting activities and histories of Antarctic meteorite expeditions including most of Japan and US-Japan team led by author in the early stage of Antarctic meteorite search.
著者
矢内 桂三 野田 賢 Byambaa C. Borchuluun D. Munkhbat T. Baljinnjam L.
出版者
日本鉱物科学会
雑誌
日本岩石鉱物鉱床学会 学術講演会 講演要旨集
巻号頁・発行日
vol.2003, pp.22, 2003

ジャルナシ(Jalanash,モンゴル名Nuzhgen)隕石はモンゴル国(モンゴル人民共和国,Mongolian Peopleユs Republic)に近年落下した隕石で,同国で回収された隕石6個のうちの1個である.ジャルナシ隕石は1990年8月15日14:00頃西モンゴルのウルゲイ(Olgiy, 49°N, 90°E)に落下したもので,落下直後同地の遊牧民により回収された.当時1個以上が落下したと言われているが回収した隕石の総重量は約1kgで,現在はその本体約700gが研究されることなく,West Mongolian Museumに保管されている.1994年11月にジャルナシ隕石の一部を入手できたので,本隕石の種類,鉱物組み合わせと組織,及び全化学組成等について概要を報告する.ジャルナシ隕石は粗粒,塊状で非常に脆いが落下直後に回収されたためきわめて新鮮である.構成鉱物は主に粗粒カンラン石とピジョン輝石からなり,鉱物粒子間を炭素質物質が埋める典型的なユレイライトである.Fe-Ni金属鉄も粒間に多量に生じている.金属鉄は珪酸塩鉱物のFe成分が炭素により還元され生じたものであろう.鉱物組成は非常に均質でカンラン石(平均Fo80.6, 最大値Fo79-80の間,組成巾 Fo91.8-78.6),ピジョン輝石(平均En75.1Fs17.2Wo7.7; 組成巾 En75.8-74.3Fs17.9-16.6Wo8.3-7.1).主化学組成はSiO2 39%,TiO2 0.08%,Al2O3 0.9%,FeO 16.2%,MnO 0.5%,MgO 38.3%,CaO 0.82%,Na2O 0.09%,Cr2O3 0.7%,FeS 0.8%, Fe 2.1%,Ni 0.1%,Co<30ppmである.南極産ユレイライト12個と比較検討したと結果,組織はいずれのものとも異なっているが,鉱物組成はALH-78019及びALH-78262ユレーライト隕石に類似していることが明らかになった.
著者
矢内 桂三
出版者
岩手大学
雑誌
萌芽的研究
巻号頁・発行日
1997

田沢湖は海抜249m、水深423m(湖底は海抜-174m)の巨大なサークル状凹地である。田沢湖の成因(起源)は今だ謎のままであるが、次の4つの可能性が考えられる。つまり(1)噴火口(火山噴火による火口湖)説、(2)構造的陥没湖説、(3)隕石衝突孔(メテオライト インパクト クレーター)説、(4)その他の説である。初年度と次年度は湖岸域から、多数の岩石資料を採取し顕微鏡により観察した。また、秋田大学工学資源学部に保管されている数個の湖底からドレッジされた貴重な岩石を含む大量の岩石サンプルについても検討してきた。しかし、隕石衝突による特異な岩石種(角礫岩やシャッターコーンなど)はまだ確認できていない。また、この間に国外の隕石衝突孔(米国のオデッサ・クレーター)などを現地調査し、田沢湖と比較検討を行ってきた。隕石衝突時の衝撃によって隕石孔から大量の物質を放出する例が国外には多く知られている。このため本研究の最終年は田沢湖の外側数キロ地点までの野外地質調査を実施し、多くの試料を採集し顕微鏡により観察した。しかし、この地域に於ても衝突によると思われる現象は今のところ確認できていなし、衝突起源の岩石サンプルも得られていない。田沢湖の成因については(1)の噴火口説は地質学的に否定されているし、(2)陥没湖説もサークル状に400m以上も陥没することが可能なのかどうか疑問である。(3)の巨大隕石衝突の可能性を一番に考えたいが、今だ確かな証拠は得られていない。もしかしたら、第4の説(いわゆる伝説)がこれからも続くのかもしれないが、一片のインパクタイト(衝撃石英や衝突球粒などの衝突起源物質)の発見が、田沢湖を日本初の隕石衝突孔にするはずである。今後も湖底からの岩石採集や周辺地域の詳細な野外地質調査等を続けなければならない。
著者
矢内 桂三
出版者
岩手大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2002

平成6年(1994)を予備調査とし,平成14年(2002)〜平成17年(2005)に4回の本格的な隕石探査をモンゴル国南部のゴビ砂漠一帯で実施した.砂漠での探査を中心に,都市部の博物館,地方の資料館及び各学校の岩石標本もくまなく調査した.更に原住民からも隕石の情報を入手し,探査に活用した.本研究までに知られていたモンゴル産隕石は次の5個である.Adzhi-Bogdo II(隕鉄,582kg),同I(コンドライト,910g).Manlai(隕鉄,166.8kg),Sarigiin Gabi(隕鉄,17.5kg)及びTugalin-Bulen(コンドライト,〜10kg)である,今回の探査で確認した隕石は,モンゴル唯一のエコンドライトJalanash(ユレーライト,〜700g)とNartiin had(コンドライト,1,946g)の2個である.原住民が隕鉄として所有していたOliziitを現地では隕鉄と判断したが,帰国後詳しい分析の結果"人工鉄"と判明した.現地の博物館等で隕石として展示してあるものや"隕石"と称されている資料を全部チェックしたが,隕石でなく,多くは人工鉄(銑鉄など)や地球の玄武岩-ハンレイ岩であった.ゴビ砂漠の広範囲を調査した結果,ゴビ砂漠では数10年〜数100年間隔で,大雨-洪水が起こっている可能性が高く,この洪水により地表面が更新され隕石の集積(蓄積)には適していないと判断される.数万年〜数10万年あるいはそれより長い期間地表面の変動がない場所こそ隕石は集積するとものと考えられる.