- 著者
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矢野 智司
- 出版者
- 教育哲学会
- 雑誌
- 教育哲学研究 (ISSN:03873153)
- 巻号頁・発行日
- vol.2004, no.90, pp.64-66, 2004-11-10 (Released:2009-09-04)
教育について考え語ろうとする者を、知らぬ間に呪縛し思想と語り方を制限してしまう戦後教育学の物語といったものがある。そのなかの最も強力な物語の一つは、戦後日本の教育史をとらえるときの「権力的に教育政策を聾断する反動的な政治勢力」と「戦後改革の理念を擁護する民主的な革新勢力」とのあいだでの「妥協の余地ない対立抗争」という二元的図式の物語であろう。このような二元的図式の物語にたいして、本書は、戦後教育の果たしてきた社会的機能を、「政策決定のレヴェルからミクロな教室実践にいたるまでの」さまざまな場において展開された「ヘゲモニーをめぐる争いの総和」としてとらえ、戦後教育史を読みなおそうとするものである。本書は以下の三部九章に分かれている。