著者
中村 明弘 飯盛 直樹 須藤 茂俊 三上 重明 伊藤 清 石川 雄章
出版者
公益財団法人 日本醸造協会
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.85, no.2, pp.114-119, 1990-02-15 (Released:2011-09-20)
参考文献数
13
被引用文献数
1 2

焼酎白麹菌Aspergillus kawachii IFO 4308を使用した清酒醸造を実施し, 次の知見を得た。1. 清酒醸造において乳酸の代わりに白麹に含まれるクエン酸の抗菌力を利用した清酒醸造の可能性が示唆された。2. 白麹のα-アミラーゼ力価は黄麹菌の1/16であったにもかかわらず, 発酵に支障を及ぼすことなくもろみの溶解は進行した。この理由としてAspergillus kawachii由来のα-アミラーゼはもろみ中で蒸米に無効吸着されにくい・ことが考えられた。3. 対照として実施した黄麹仕込が糖化優先型の並行複発酵であったのに対し, 白麹を使用した場合は全般的に糖化と発酵がパラレルに進行した。4. 白麹仕込で得られた清酒はクエン酸のさわやかな酸味を呈するとともに, 黄麹仕込で得られた清酒と比べて遊離アミノ酸がやや少なく, またペプチドを構成するアミノ酸数はやや多い傾向にあった。
著者
石川 雄章 吉沢 淑
出版者
公益社団法人 日本農芸化学会
雑誌
日本農芸化学会誌 (ISSN:00021407)
巻号頁・発行日
vol.48, no.6, pp.337-341, 1974 (Released:2008-11-21)
参考文献数
15
被引用文献数
1 5

清酒醸造における原料白米の洗米から蒸きょうに至る,いわゆる原料処理工程中の脂質の動きについて検討した. 脂質は洗米によって,SSに約1.1%含まれて流去されるが,これは白米中の粗脂肪の5.5%,結合脂質の0.4%に相当し,洗米用水によっても変動するが,ここでは無視できる量と考えた. 一方,蒸きょうすることにより,白米中の粗脂肪は45~75%に減少し,脂肪酸組成では,不飽和脂肪酸の比率が減少する.粗脂肪の減少は,加水分解により遊離した脂肪酸が一部揮発することによると推察される.
著者
稲橋 正明 戸塚 堅二郎 岡崎 直人 石川 雄章 佐藤 和夫
出版者
Brewing Society of Japan
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.108, no.4, pp.285-294, 2013 (Released:2018-01-11)
参考文献数
7
被引用文献数
1

活性度の低い酵母を使用した時の生酸菌の動向を調べた。酵母の増殖速度が正常の約1/2程度に低下した酵母,いわゆる活性度の低い酵母を仕込みに用いた場合,醪初期の酵母数が不足(1×108/ml以下)することにより,アルコール生成も遅れることから,生酸菌はもろみで旺盛に増殖を始め,その結果として酸度が高くなり,醪は酸敗する。しかし,二日踊りを採って酵母数を充分確保することができれば,活性度の低い酵母を用いても,もろみの酸敗をかなりの確率で防止できることを明らかにした。
著者
吉沢 淑 石川 雄章
出版者
公益財団法人 日本醸造協会
雑誌
日本釀造協會雜誌 (ISSN:0369416X)
巻号頁・発行日
vol.74, no.3, pp.148-152, 1979-03-15 (Released:2011-11-04)
参考文献数
19

原料米に粗白米を用いる際の欠点の1つとされている多量の脂質による清酒香味への悪影響を改善する方法として, 筆者らがリパーゼ浸漬法を開発, 全国的な試験醸造をはじめてから3年経た。本法を試みようとする酒造場は着実に増えつつあるが, 効果あるリパーゼ浸漬法を行っていただくために, その理論的背景と現場で実際に行うにあたっての留意点などについて解説していただいた。
著者
江村 隆幸 岡崎 直人 石川 雄章
出版者
公益財団法人 日本醸造協会
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.94, no.9, pp.726-732, 1999

243年前 (宝暦6年, 1756年) に仕込んだ古酒が新潟県関川村, 渡邉家で発見され, 官能評価及び成分分析を行った結果, 以下のことが明らかになった。<BR>1.官能評価の結果, 外観等の性状は濃暗褐色で濁りはなく粘度が高く, 強い酸味と甘味及び若干の苦みを有し, 香りは強い老香様を呈していた。<BR>2.現在の清酒に比較して, 酸度およびグルコース濃度は高く, pHは低く, また, 酸度の割にアミノ酸度は低かった。<BR>3.有機酸は, コハク酸及びクエン酸を除き測定した全ての成分において多かった。また, リン含量が多かったがその理由として, 当時の製法が玄米または低精白米を使用したことが推察された。<BR>4.アミノ酸含量は, 測定した20アミノ酸全てについて現在の清酒に比較して少なく, 特に塩基性アミノ酸及び含硫アミノ酸が少なかった。<BR>5.酢酸エチル, 酢酸イソアミル, イソアミルアルコール, イソブチルアルコール及びn-プロピルアルコールの香気成分が同定された。<BR>6.アルコール濃度は約2%と低く, 貯蔵開始時の容積の約35%が蒸発したためと考察した。<BR>7.以上の結果から, 当初詰められた酒は糖分と酸の多い現在の酒母に近い酒であったことが推察された。<BR>最後に, 243年古酒を提供していただいた渡邉家保存会理事長渡邉和彦氏に厚く御礼申し上げます。また, 本報告にあたりご協力賜りました大洋酒造 (株) 平田大六氏に深謝いたします。
著者
小笠原 博信 高橋 克文 飯塚 兼仁 伊藤 清 石川 雄章
出版者
公益財団法人 日本醸造協会
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.86, no.4, pp.304-307, 1991-04-15 (Released:2011-09-20)
参考文献数
10
被引用文献数
2 3

1. 大麦を原料として製麹した白麹は米を原料としたものに比べ多量のキシラナーゼを生産したが, これは大麦中のキシランが酵素生産の誘導源となった結果であることがわかった。2. 麦麹から調製した粗酵素液は米麹粗酵素液よりも大麦をよく溶解した。3. 精製キシラナーゼを添加することにより大麦の溶解速度, 溶解量が上昇し, 溶解補助効果が認められた。4. 麦麹を用いて大麦焼酎の小仕込みを行ったところ, キシラナーゼ等による溶解補助効果により発酵特性が改善され, 米麹区分に比較して発酵速度が大きく, またもろみの流動特性が著しく改善され, 発酵歩合も向上した。