著者
小林 良彰 平野 浩 谷口 将紀 山田 真裕 名取 良太 飯田 健 尾野 嘉邦 マッケルウェイン ケネス 松林 哲也 築山 宏樹
出版者
慶應義塾大学
雑誌
特別推進研究
巻号頁・発行日
2012

本研究では、18回(全国調査14回、自治体調査3回、国際比較調査1 回)にわたって実施し、下記の新たな知見を得た。(1)投票行動研究から民主主義研究への進化(2)日米韓における代議制民主主義の分析を通した比較政治学 (3)日本の地方自治体レベルにおける代議制民主主義の分析 (4)政治意識の形成と変容の解明(5)マルチメソッド比較による新しい調査方法の確立 (6)政治関連データベースの構築。これらを通して、海外の研究機関から申し入れを受け、代議制民主主義に関する国際共同研究拠点を構築した。
著者
名取 良太
出版者
関西大学
雑誌
情報研究 : 関西大学総合情報学部紀要 (ISSN:1341156X)
巻号頁・発行日
vol.34, pp.53-68, 2011-01-21

2009年東京都議会議員選挙では,民主党が大幅に議席を増やす一方で,自民・公明の与党は過半数の議席を獲得できなかった.そして,多くのメディアが,この選挙結果を“歴史的”と評した.しかし,都議選では,過去にも社会党や日本新党などが大きな勝利を収めた経験がある.そこで本稿では,選挙区レベルのデータ分析を通じて,2009年選挙における民主党勝利の構造を再検討した.その結果,定数の大きな選挙区における得票率に,過去とは異なる特徴が見いだされた.また別の分析では,過去から現在に至るまで,定数の大きな選挙区では所謂「M+ 1 ルール」が適用できないことも明らかにした. When the Democratic Party of Japan (DPJ) won 54 seats in the 2009 Tokyo metropolitan assembly election and became the first party in the Tokyo metropolitan assembly, the previous ruling coalition of the Liberal Democratic Party (LDP) and the Clean Government Party (CGP) lost the majority. The major media said that these electoral results are "historic," but a few parties (e.g., Japan Socialist Party in 1989, Japan New Party in 1993) already had huge electoral wins in recent elections.In this study, analyzing district level data, we reviewed the structure of DPJ's vote share in the 2009 election. The result, comparing recent elections, demonstrated that the features of the DPJ's electoral win are in the large magnitude. Additional analysis reveals that the "M+1 rule" is difficult to apply to the large magnitude.
著者
名取 良太 福元 健太郎 岸本 一男 辻 陽 堤 英敬 堀内 勇作
出版者
日本選挙学会
雑誌
選挙研究 (ISSN:09123512)
巻号頁・発行日
vol.30, no.2, pp.105-115, 2014 (Released:2018-02-02)
参考文献数
11
被引用文献数
1

参議院選挙は,戦後日本政治の変動に,何度も重要な役割を果たしてきた。しかし,従来の日本政治研究,特に選挙過程の分析は,そのほとんどが衆議院を対象にしたものであり,日本政治の理解もこの範囲を出なかった。参議院選挙データはほとんど分析されず,参院選が日本政治に与えた影響は解明されてこなかったのである。その状況をもたらした原因の一つは,参院選データが十分に整備されていないことである。そこで我々は,参院選の市区町村別データを収集し,データベースを開発した。参院選研究を活性化させ,日本政治に対する参院選の意義や,二院制の意義そのものの再検討を促したり,選挙研究の理論モデルを発展させたりすることが狙いである。本論文は,その参院選データベースの内容と利用方法を説明するものである。
著者
小西 健太 村田 忠彦 名取 良太
出版者
Japan Society for Fuzzy Theory and Intelligent Informatics
雑誌
知能と情報 : 日本知能情報ファジィ学会誌 : journal of Japan Society for Fuzzy Theory and Intelligent Informatics (ISSN:13477986)
巻号頁・発行日
vol.22, no.2, pp.203-210, 2010-04-15
参考文献数
16
被引用文献数
3

本論文では,投票率上昇と投票所数削減のための投票シミュレーションを提案する.まず,有権者の投票と棄権の2つの効用関数を設定する.次に,区域ごとに,それらの効用関数を組み合わせる投票係数を調整する.実際の投票率を用いた調整プロセスにより,各区域の実投票率と予測投票率の差を最小化する.さらに推定された投票係数を用いて,2目的遺伝アルゴリズム(NSGA-II)による投票率最大化と投票所数最小化を行う.これにより,投票所数を維持したまま,投票率が上昇する投票区割りの最適化や,投票率を維持した投票所数の最小化を行うことが可能となる.
著者
名取 良太 岡本 哲和 石橋 章市朗 坂本 治也 山田 凱
出版者
関西大学
雑誌
情報研究 : 関西大学総合情報学部紀要 (ISSN:1341156X)
巻号頁・発行日
vol.44, pp.31-42, 2016-08-10

地方議会は,民主主義において重要な役割を担う存在である.しかしながら,日本の地方議会は,多くの市民から信頼されず,その役割を十分に果たしていないと考えられている.ところが,「地方議会が十分に役割を果たしていない」と主張するための定量的な根拠は,ほとんど示されていない.その原因の一つは,地方議会に関する膨大な資料から,適切なデータを取得するのが困難なことにある.そこで我々は,会議の開催状況や議案の審議過程,各議員の属性・発言内容・議案への賛否態度などを,定量データとして格納した地方議会データベースを開発した.本論文では,会議録や広報紙などから,どのようにデータテーブルを作成したかを説明するとともに,データベースを活用してどのような分析が可能になるかを紹介していく.
著者
名取 良太
出版者
関西大学総合情報学部
雑誌
情報研究 : 関西大学総合情報学部紀要 (ISSN:1341156X)
巻号頁・発行日
vol.41, pp.71-84, 2014-08-08

小選挙区比例代表並立制導入の目的の一つは,「候補者本位」の選挙から,「政党本位」「政策本位」の選挙へと転換することであった.政党間競争を促す小選挙区制の下では,政党支持に基づく投票が中心となるため,個人単位の選挙区活動の有効性は低下する.結果として,政党本位・政策本位の選挙競争が生じるようになると考えられたためである.しかしながら,2012 年総選挙における有権者の投票行動を分析した結果,政党投票よりも候補者投票を行う有権者の比率が高かった.また,民主党支持者や,自民党と民主党による選挙戦が行われた選挙区の有権者ほど,政党投票よりも候補者投票を行う傾向があることから,民主党に対する評価の低下が候補者投票の増加をもたらせたと考えられる.すなわち,有権者が政党投票をするかどうかは,政党に対する評価が影響を及ぼすのであり,選挙制度の効果は限定的であることが示唆される.One of the aims of the electoral system reform conducted in 1994 was to increase party voting. While under the old system, multi-member districts with a single nontransferable vote promoted intra-party competition, the new system encouraged party competition. Thereafter, reformers expected that Japanese electoral politics would become party oriented.However, this study observed that Japanese voters preferred personal voting to party voting in the 2012 Lower House Election. In addition, the results of a logistic regression analysis clarified that the supporters of the Democratic Party of Japan and the constituencies of districts in which there is twoparty competition tend to conduct personal voting. Moreover, the study suggests that whether constituencies engage in personal voting is determined not by the electoral system, but constituencies’estimation of the parties.
著者
堀内 勇作 名取 良太
出版者
東京大学
雑誌
社會科學研究 (ISSN:03873307)
巻号頁・発行日
vol.58, no.5, pp.21-32, 2007-03

1994年に衆議院議員選挙(以下,衆院選)制度改革が実施された当時,小選挙区制の導入によって二大政党制(少なくとも選挙区レベルでは2人の有力候補者が議席を争う状況)の実現が,将来的に期待された.しかし4回の選挙を経験した現在においても,小選挙区における有効候補者数は必ずしも2へと収束していない.先行研究においては,その要因を解明する上で,新しく導入された選挙制度が比例代表制を並立させた制度であることの戦略的帰結に焦点を当ててきた.これに対して本論文では,地方レベルにおける選挙制度の効果に焦点を当てる.都道府県議会議員選挙(以下,県議選)では,定数1〜18の単記非移譲型選挙制度が採用されている.このため,地域によっては衆院選の選挙区と県議選の選挙区の定数の間に不均一が生じることになる.衆議院議員と都道府県議会議員の戦略的相互関係を仮定する限り,この不均一は,衆院選の小選挙区における政党間(候補者間)競争に影響を及ぼすであろう.具体的には,県議選の選挙区定数が多いほど県議選の有効候補者数が多くなり,その結果,衆院選の有効候補者数も増加すると考えられる.本論文では,同仮説を演繹的に導出した上で,衆院選の選挙区別集計データを用いて同仮説の妥当性を検証する.
著者
名取 良太
出版者
Japanese Association of Electoral Studies
雑誌
選挙研究 (ISSN:09123512)
巻号頁・発行日
vol.17, pp.128-141,207, 2002

中選挙区制度は,自民党の利益誘導政治の根源的な要因とされた。具体的な要因とは,第1に同士討ちが生じることによって,政策によって選挙競争が行われず個人の業績中心の選挙活動が行われることであり,第2に低い得票率で当選可能なため,一部の有権者に向けたサービスを行うという点であった。しかしながら,この2つの点には,いずれも誤りがあった。同士討ちと利益誘導の関係は,個人の業績によって「票を奪い合う」こととされたが,実際には「棲み分け」が行われることで,過剰な「奪い合い」が避けられていた。このことから,同士討ちによって利益誘導が活性化するとは必ずしも言えず,むしろ,同士討ちとは独立して,自己の政治力強化のために活性化していたことが想定される。つぎに,並立制下の小選挙区選挙においては,従来の支持基盤を抑えることにより十分当選が可能であったため,従来の選挙活動に比べ大きな変化を必要としなかった。<br>そこで,小選挙区制の適用により,同士討ちは解消されたものの,政治力強化という政治家の目的と,実際の選挙活動に変化がみられないことから,利益誘導政治は解消されないという仮説を立てた。そして,中選挙区制下と並立制下の移転財源配分の決定要因分析を行った結果,いずれの制度下においても,都市化や財政環境を考慮してもなお,自民党の政治力が影響を与えており,選挙制度改革が利益誘導政治を変化させなかったことを明らかにした。
著者
名取 良太
出版者
日本選挙学会
雑誌
選挙研究 (ISSN:09123512)
巻号頁・発行日
vol.23, pp.66-81,213, 2008

本稿では, 2007年4月に実施された44道府県議選に, 異なるレベル・異なる時期に実施された選挙結果が及ぼした影響について, 市区町村レベルで集計されたデータを用いて検討する。<BR>米国におけるmidterm lossの議論にみられるように, 有権者は, ある選挙において異なる選挙に反応した行動を選択することがある。日本の投票行動研究においても, そうした戦略的行動が観察されてきた。そこで, 本稿では, 2007年の道府県議選における自民党得票率の変動が, 2005年衆院選の結果と知事の党派性によって説明されるという予測を立てた。OLS分析の結果, 2005年衆院選における自民党の勝利が, 2007年選挙における得票率の低下に影響を及ぼすことが明らかになった。しかし知事の党派性については, 予測とは逆に, 自民党推薦知事がいる地域ほど, 自民党が得票率を上昇させたことが明らかになった。
著者
名取 良太
出版者
Japanese Association of Electoral Studies
雑誌
選挙研究 (ISSN:09123512)
巻号頁・発行日
vol.17, pp.128-141,207, 2002-02-28 (Released:2009-01-22)
参考文献数
23
被引用文献数
3

中選挙区制度は,自民党の利益誘導政治の根源的な要因とされた。具体的な要因とは,第1に同士討ちが生じることによって,政策によって選挙競争が行われず個人の業績中心の選挙活動が行われることであり,第2に低い得票率で当選可能なため,一部の有権者に向けたサービスを行うという点であった。しかしながら,この2つの点には,いずれも誤りがあった。同士討ちと利益誘導の関係は,個人の業績によって「票を奪い合う」こととされたが,実際には「棲み分け」が行われることで,過剰な「奪い合い」が避けられていた。このことから,同士討ちによって利益誘導が活性化するとは必ずしも言えず,むしろ,同士討ちとは独立して,自己の政治力強化のために活性化していたことが想定される。つぎに,並立制下の小選挙区選挙においては,従来の支持基盤を抑えることにより十分当選が可能であったため,従来の選挙活動に比べ大きな変化を必要としなかった。そこで,小選挙区制の適用により,同士討ちは解消されたものの,政治力強化という政治家の目的と,実際の選挙活動に変化がみられないことから,利益誘導政治は解消されないという仮説を立てた。そして,中選挙区制下と並立制下の移転財源配分の決定要因分析を行った結果,いずれの制度下においても,都市化や財政環境を考慮してもなお,自民党の政治力が影響を与えており,選挙制度改革が利益誘導政治を変化させなかったことを明らかにした。
著者
名取 良太 岡本 哲和 石橋 章市朗 坂本 治也 山田 凱 ISHIBASHI Shoichiro 坂本 治也 SAKAMOTO Haruya 山田 凱 YAMADA Gai
出版者
関西大学総合情報学部
雑誌
情報研究 = Journal of informatics : 関西大学総合情報学部紀要 (ISSN:1341156X)
巻号頁・発行日
no.44, pp.31-42, 2016-08

地方議会は,民主主義において重要な役割を担う存在である.しかしながら,日本の地方議会は,多くの市民から信頼されず,その役割を十分に果たしていないと考えられている.ところが,「地方議会が十分に役割を果たしていない」と主張するための定量的な根拠は,ほとんど示されていない.その原因の一つは,地方議会に関する膨大な資料から,適切なデータを取得するのが困難なことにある.そこで我々は,会議の開催状況や議案の審議過程,各議員の属性・発言内容・議案への賛否態度などを,定量データとして格納した地方議会データベースを開発した.本論文では,会議録や広報紙などから,どのようにデータテーブルを作成したかを説明するとともに,データベースを活用してどのような分析が可能になるかを紹介していく.Although the local assembly is one of the key organizations supporting the democratic system, many Japanese recognize that the local assemblies do not perform their expected roles. However, there is no quantitative evidence for this inadequate performance due to the difficulties in collecting quantitative data about the local assemblies. In this study, we explain the database system that we developed regarding local assemblies and present the data files for use in quantitative analysis.
著者
小林 良彰 名取 良太 河村 和徳 金 宗郁 中谷 美穂 羅 一慶
出版者
慶應義塾大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2010-04-01

平成23年度、(1)選挙公約内容分析ユニットでは、日本の地方選挙における都道府県知事選拳・都道府県議会議員選挙・政令指定都市長選挙・政令指定都市議会議員選挙、韓国の地方選挙における道知事選挙・道議会議員選挙・広域市長選挙・広域市議会議員選挙の公約を収集して、16の政策領域について内容分析した。次に、(2)政治的選好/政策分析ユニットでは、平成22年度に行った日本の都道府県知事・全ての市長宛の意識調査と比較するために、日本の都道府県議会議長・全ての市議会議長、韓国の道知事・基礎自治体長・道議会議長・基礎自治体議会議長宛の意識調査を行った。また日本の都道府県・全ての市の企画部局、韓国の道・広域市を含む全ての基礎自治体の企画部局宛の意識調査を行った。さらに(3)データアーカイブユニットでは、日本の都道府県、政令市を含む全ての市町村、韓国の道・広域市を含む全ての基礎自治体の財政データを収集してデータアーカイブを構築した。上記の各ユニットで得られたデータを接合して分析した結果、地方分権の効果は、(ア)韓国においてより肯定的に評価されていること、(イ)韓国においてより地域活性化への意識が強いこと、(ウ)日本においてより財政再建志向が強いこと、(エ)韓国において、より「代理型」の代表スタイルが施行されていること、(オ)韓国では、政治的・財政的に中央との結びつきが強く意識されていること、(カ)日韓両国とも、首長と議会の間の認識ギャップが存在するが、そのギャップは日本において、より顕著に見られること、(キ)韓国の地方選挙において公約の地域差のみが表れるのに対して、日本の地方選挙においては公約の地域差と政党差をみることができ、有権者に政策上の選択肢が提示されていることが明らかになった。これらの分析を通して、日本と韓国における自治体が有する共通点と相違点が統計的に明らかにされた意義は大きいと考える。
著者
小西 健太 村田 忠彦 名取 良太
出版者
日本知能情報ファジィ学会
雑誌
知能と情報 (ISSN:13477986)
巻号頁・発行日
vol.22, no.2, pp.203-210, 2010-04-15 (Released:2010-07-02)
参考文献数
16
被引用文献数
2 3

本論文では,投票率上昇と投票所数削減のための投票シミュレーションを提案する.まず,有権者の投票と棄権の2つの効用関数を設定する.次に,区域ごとに,それらの効用関数を組み合わせる投票係数を調整する.実際の投票率を用いた調整プロセスにより,各区域の実投票率と予測投票率の差を最小化する.さらに推定された投票係数を用いて,2目的遺伝アルゴリズム(NSGA-II)による投票率最大化と投票所数最小化を行う.これにより,投票所数を維持したまま,投票率が上昇する投票区割りの最適化や,投票率を維持した投票所数の最小化を行うことが可能となる.