著者
林 信太郎
出版者
日本地球惑星科学連合
雑誌
日本地球惑星科学連合2019年大会
巻号頁・発行日
2019-03-14

ブラタモリとはどういう番組か?「ブラタモリ」は NHK総合テレビで2008年から放送されているエンターテインメント・教養番組で,その視聴率は時として15%を超える。タレントのタモリ(以下タモリさん)がNHKの若手アナウンサーとともに各地を“ブラブラ”歩きながら謎解きをし,様々な発見をする。また,「案内人」という解説者の問いかけにより番組が進行する。謎解きの「お題」には,しばしば地質学や地理学に関連したものが登場し,地球科学のアウトリーチに大きな効果を発揮している。講演者は「#81 十和田湖・奥入瀬~十和田湖は なぜ“神秘の湖”に?~」メインの案内人として登場した。「ブラタモリ」:私の印象と案内人の責任 私の印象:番組中で見せるタモリさんの地球科学に関する広い知識は本物と強く感じた。また,タモリさんの発見能力,対象をじっくりと思考する真摯な態度は,たいへん印象に残った。また,案内人の私にコンタクトを取る以前に,担当ディレクター(地球科学の非専門家)は,文献から得られる情報はほとんど調べつくしていた。 案内人の責任:案内人には番組の科学的妥当性を担保するという社会的責任がある。「ブラタモリ」は地球科学者の視聴率も高く,常に誤りがチェックされている。実際,「ブラタモリ」と同時進行で,ツイッターで批判的意見をつぶやく地球科学関係者は多いし,自分でもたいへんそれを楽しんでいる。しかし,自分が案内人の場合はそのプレッシャーがことごとく自分にかかってくるのである。 番組の正確性の担保のため,案内人は調査に多大な時間をかける。講演者の場合,十和田湖や奥入瀬に関連した書籍や論文を100編以上参照した。また,案内人はこの他にロケハンやリハーサルの作業にも付き合い,番組の正確性を担保する。現場の確認(ロケハン)のために合計4日間,現地での(タモリさん抜きでの)リハーサルや最終確認のために3日を要した。実験とブラタモリブラタモリの番組内ではしばしば実験が解説の手段として用いられる。「#81 十和田湖・奥入瀬~十和田湖は なぜ“神秘の湖”に?~」では,カルデラ湖のでき方をココアとコンデンスミルクを用いて説明した。ココアの山の中にコンデンスミルクで見立てたマグマを置き,それを下から抜き取ることでカルデラ陥没を起こすという実験である。この実験は小中学生を対象に何度も試行したことがある。これまでの授業経験から,言葉での説明や図解でカルデラのでき方を理解させることが難しいことはわかっていた。そのため,番組にこの実験は必須だった。視聴者やタモリさんに,カルデラのでき方について納得させるだけではなく,ココアでできたカルデラの形状の観察も番組のその後の部分に繋がった。ブラタモリで実験が採用されるための必要条件? じつは提案はしてみたが,番組に採用されなかった実験も多い。その1例として「パリパリ溶岩実験」がある。先端を溶融したガラス棒を水につけ水冷破砕させるという実験である。ブラタモリの他の回の番組で2度提案したが,どちらも不採用だった。 「パリパリ溶岩実験」不採用の理由として考えられることは,「パリパリ溶岩実験」は1)ビジュアル的に地味である,2)ガラスと水という素材はあまり印象的ではない,の2点が挙げられる。もちろん,単に番組の編集作業の過程で提示する時間がないため削られただけという可能性もある。ブラタモリとアウトリーチ地球科学分野におけるアウトリーチ活動は, 1)研究資金の獲得;2:後継者の育成;3:一般社会に認知してもらうことの3点で重要である(鎌田,2004)。そのために地球科学で得られた成果を科学者の側からわかりやすく発信していく必要がある。ブラタモリのアウトリーチ効果は2つある。第1にブラタモリは多くの国民が視聴し,科学者の努力では到達し得ない多くの国民へのアウトリーチが可能である。第2に科学者に対する教育効果が大きいことがあげられる。ディレクターは番組をわかりやすくするために徹底的に努力し,科学者の側はそこに啓発される。また,担当ディレクターとのやり取りの中で,わかりやすさと正確さを両立させる方法を体験的に学ぶことができる。 ブラタモリの案内人になることは,多大なエネルギーと時間を使うことである。しかしながら,その大きなアウトリーチ効果を考えると(声がかかった)研究者は積極的に応じるべきであろう。
著者
小林 信一
出版者
研究・イノベーション学会
雑誌
研究 技術 計画 (ISSN:09147020)
巻号頁・発行日
vol.33, no.1, pp.39-59, 2018-03-31 (Released:2019-08-30)
参考文献数
31

This paper describes science and politics in the era of post-truth. The post-truth politics looks as if it ignores the scientific evidence. However, anti-scientific U.S. Republican has intended to put emphasis on the scientific evidence. Once Republican's war on science insisted on anti-science. Now, Republican emphasizes ‘sound science' providing an evidence with higher probative value than science. The post-truth politics tends to make full use of the scientific-evidence-like rhetoric to compete the evidence-based policy making. The anti-scientific ideology attacks the irreproducibility issues and dysfunction of quality assurance of science, while it attacks science with an immitated rhetoric of the incertitude of science and the science for policy-making in order to remove science's influence on policies. Weak points are attacked. It is difficult for science to counterattack, because science community is a root cause of the ‘crisis of science.' Science community ought to secure social trust and to reconstruct the governance of science.
著者
小林 信一
出版者
研究・イノベーション学会
雑誌
研究技術計画 (ISSN:09147020)
巻号頁・発行日
vol.6, no.4, pp.247-260, 1992-10-15
被引用文献数
7

本論文は、若者の科学技術離れの問題の文化的、社会的背景を明らかにしようとするものである。オルテガは「科学技術文明が高度に発達すると、かえって科学技術を志向する若者が減る事態が発生する」と議論した。これが今日の我が国でも成立するか、成立するとすればそれはどのようなメカニズムによるのかを実証的に検討することが本論文の目的である。このために、まずオルテガの議論を、科学技術と文化・社会の連関モデルとして実証可能な形に定式化した。これを実証するために、世論調査や高校生を対象とする意識調査のデータをログリニア・モデルなどの統計的な連関分析手法で注意深く分析した。その結果、オルテガの仮説は今日の我が国でも概ね成立することが明らかになった。また、短期的な実証分析の結果を外挿的なシュミレーションによって超長期に展開する工夫を施し、その結果がオルテガの文明論的な議論と整合的であることを確認した。分析結果は、オルテガの指摘した逆説的事態は必然的に発生するものであることを示している。
著者
小林 信彦 Nobuhiko Kobayashi 桃山学院大学文学部
雑誌
桃山学院大学総合研究所紀要 = ST.ANDREW'S UNIVERSITY BULLETIN OF THE RESEARCH INSTITUTE (ISSN:1346048X)
巻号頁・発行日
vol.31, no.3, pp.199-215, 2006-03-15

According to the ancient Japanese, women can never be happy during their lives nor can theyget peace after death, because their minds are full of inborn defects such as jealousy, frivolity orcaprice. These defects are said to be sins, to which women themselves are solely responsible.The Japanese ascribed the authority of this view to Buddhist scriptures. However, descriptionsof such female defects are not found in Buddhist texts. Instead, female bodies are said there tobe disadvantageous to preparation for becaming Buddhas, because of physiological phenomenaconnected with generative function, such as menstruation, morning sickness and labour.Having read a Buddhist reference to disadvantages of female bodies, the Japanese of the ninthcentury mistook it for a reference to defects intrinsic to women's minds. And the well-knownJapanese proposition, "Women are naturally sinful and therefore quite hopeless," was thus establishedto justify the Japanese society in tormenting women for more than 1000 years.
著者
森岡 隆 手島 和典 吉嶺 絵利 中谷 正 高橋 佑太 倉持 宗起 橋本 貴朗 林 信賢 中村 裕美子 中溝 朋美 高橋 智紀 若松 志保 楠山 美智子 成田 真理子 油田 望花 川口 仁美 安生 成美
出版者
筑波大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

源兼行ら11世紀半ばの3人の能書が分担揮毫した『古今和歌集』現存最古の写本である「高野切本古今集」について、巻五・巻八・巻二十の完本3巻を除く17巻を復元した。このうち巻一・巻二・巻三・巻九・巻十八・巻十九の6巻は零本・断簡が伝存するものの、他の11巻は伝存皆無だが、各々の書風で長巻に仕上げて展示公開するとともに、それらを図版収載した研究成果報告書を刊行した。なお巻五についても、後に切除された重複歌2首の各々の当初の位置を特定し、復元し得た。
著者
小林 信一
出版者
特定非営利活動法人 組織学会
雑誌
組織科学 (ISSN:02869713)
巻号頁・発行日
vol.42, no.1, pp.26-36, 2008-09-20 (Released:2022-08-20)
参考文献数
13

イノベーションを促進するために大学に対する研究資金を「選択と集中」の原則に基づいて配分すべきだという議論がある.本稿は「選択と集中」によるイノベーションという考え方の妥当性を,アメリカにおける科学技術政策の歴史的検討,実態分析を通じて検討するものである.分析結果は,「選択と集中」は,すべての経済主体のための研究基盤の強化を指向するイノベーション政策と相容れないことを示唆している.
著者
小林 信彦 Nobuhiko KOBAYASHI 桃山学院大学文学部
雑誌
桃山学院大学総合研究所紀要 = ST.ANDREW'S UNIVERSITY BULLETIN OF THE RESEARCH INSTITUTE (ISSN:1346048X)
巻号頁・発行日
vol.26, no.2, pp.89-101, 2000-11-30

In eighth century Japan, a number of priests were summoned to recite the Yakusi-kyau. This was called "yakusi-kekwa" (confession of faults to[a image of]Yakusi). In this ritual, however, the Japanese did not confess faults and rather intended to stop misfortunes. As the legal system was established in the Nara Period, the primitive ritual called "harahe". (dusting off) ceased to function for atoning for sins and shifted its target from sins to misfortunes. This new system was called "oho-harahe" (dusting off on a larger scale). It was in the process of reform from harahe to oho-harahe that the Japanese yakusi-kekwa was established. Two kinds of rituals were performed in China before an image of Yao-shih: One is called "yao-shih-ch'ai", in which sinns were confessed so that they might be sunk and consequently future disasters might be prevented. The other is a life-prolonging ritual, in which the Yao-shih-ching was recited so that the supernatural power of Yao-shih might be exercised to cure a sick person. The Japanese yakusi-kekwa is a descendant of the yao-shih-ch'ai in that it is named "kekwa" (confession) and in that it is performed to avert misfortunes by wiping off sinns. And it is a descendant of the Chinese life-prolonging ritual in that sins are not confessed and in that the Yakusi-kyau is recited. However, it is unique and very Japanese in that Yakusi is no longer Bhaisajyaguru nor Yao-shih and functions now as a Japanese kami who has entered the image of Yakusi: Gratified at the recitation, he quells his anger and stops causing misfortunes just like any other kami.
著者
富山 眞吾 梅田 浩司 花室 孝広 高島 勲 林 信太郎 根岸 義光 増留 由起子
出版者
一般社団法人 日本鉱物科学会
雑誌
岩石鉱物科学 (ISSN:1345630X)
巻号頁・発行日
vol.36, no.4, pp.111-121, 2007 (Released:2007-11-29)
参考文献数
15
被引用文献数
1 2

Mutsu-Hiuchidake Volcano has an erosion caldera which shows a horseshoe-like geomorphological feature toward east. Tertiary strata as a basement are distributed in the caldera. Tertialy strata and a part of pyroclastic deposits of the Mutsu-Hiuchidake Volcano have altered strongly to moderately by hydrothermal activities related to the volcanism. This study is to clarify a progress history of the alteration by using a geological mapping, thermoluminescence (TL) dating, x-ray diffraction analysis, an infrared reflection absorption analysis and a fluid inclusion study.      Highly altered zone is recognized in the area of midstream to upstream along the Ohakagawa and the Koakagawa within erosion caldera. The argillic alteration zone surround a silicification zone in the highly altered area shows a circular distribution. The strongly altered areas are along NNW-SSE to NNE-SSW fractures. The alteration areas were divided into the smectite, kaolinite, alunite and pyrophyllite zones.      The kaolinite and alunite zones give the TL ages of quartz 67 ± 13 ka (KG-5), 88 ± 18 ka (OG-4) and 91 ± 23 ka (OG-1). The smectite zone within the argillic alteration zone of outside of collapse caldera, yield the ages 752 ± 215 ka (SO-2) and 615 ± 197 ka (KG-1). These TL ages suggest the hydrothermal activity end at 70 to 90 ka.      The existence of pyrophyllite suggests that hydrothermal temperatures were 200 to 250 °C in these area. This is supported from the homogenization temperatures of fluid inclusions in calcite, 242 °C in average.
著者
鹿野 和彦 大口 健志 林 信太郎 矢内 桂三 石塚 治 宮城 磯治 石山 大三
出版者
一般社団法人 日本地質学会
雑誌
地質学雑誌 (ISSN:00167630)
巻号頁・発行日
vol.126, no.5, pp.233-249, 2020-05-15 (Released:2020-09-17)
参考文献数
38
被引用文献数
2

田沢湖カルデラから2-1.8Maのある時期に噴出した火砕流密度流起源のテフラを記載した.下部は多面体~平板型ガラス片と岩片に富むテフラで,マグマ水蒸気爆発に伴ってカルデラ崩壊が始まったことを示唆する.上部は淘汰不良無層理の気泡型ガラス片に富むテフラで,岩屑なだれ堆積物と共存しており,カルデラ形成噴火最盛期に放出されたことを示唆する.これらは長期的にわたって侵食され田沢湖近傍でさえほとんど残っていない.カルデラ形成後の1.8-1.6Maには2つの溶岩ドームがカルデラ床に,2つの溶岩流が外輪山に噴出している.また,カルデラ形成前にはカルデラ南縁で少量の安山岩が噴出している.
著者
林 信太郎
出版者
日本地球惑星科学連合
雑誌
日本地球惑星科学連合2018年大会
巻号頁・発行日
2018-03-14

日本のジオパークは高校教育での地球惑星科学教育を支援できるのだろうか?答えはイエスである。ジオパークの高校への支援はジオパークにとって大きな意味がある。また,ジオパークからの支援は高校にとって有用である。はじめに,「地学基礎」,「地理総合」のカリキュラムについて述べ,その後ジオパークヘのメリット,高校へのメリットについて述べる。なお,カリキュラムについては2018年2月14日に示された新学習指導要領(案)に基づいて述べる。また,「地学基礎」と「地理A」の現行の教科書も参考にした。<「地学基礎」,「地理総合」のカリキュラムとジオパークによる支援可能な要素>「地学基礎」:大きく「地球のすがた」「変動する地球」に区分されている。これらのうち「地球のすがた」のプレートの運動や火山活動と地震,「変動する地球」の古生物の変遷,「地球の環境」の日本の自然環境のもたらす恩恵や災害,それらと人間生活との関わりについて,ジオパークには良い教材があり,探究活動のテーマも豊富である。「地理総合」:「地理総合」の内容は大きく3つに分けられる。すなわち「地図や地理情報システムで捉える現代世界」「国際理解と国際協力」「持続可能な地域づくりと私たち」である。このうち,「持続可能な地域づくりと私たち」は,さらに「自然環境と防災」「生活圏の調査と地域の展望」に区分される。「自然環境と防災」は課題探究活動の中で,自然災害,それへの備えや対応について知識を身につけ,ハザードマップや新旧地形図を読み取りまとめる技能を身につける。日本のジオパークの中には自然災害を主要なテーマとするものが多く(洞爺湖有珠山ジオパーク,三陸ジオパークなど)「自然環境と防災」分野では多くの支援が可能である。また,「生活圏の調査と地域の展望」の課題探究では,地域の成り立ちや変容,持続可能な地域づくりについて多面的・多角的に考察することとなっている。ジオパークの活動は持続可能な地域づくりを目的としている。したがって,ジオパークそのものが,「生活圏の調査と地域の展望」の教材となり,多くの支援が可能である。「地学基礎」と「地理総合」の相補的関係:従来の「地理 A」と「地学基礎」は,地形分野に関して相補的である。「地学基礎」では,地球内部の力が扱われるが,地形への言及は少ない。一方地形については「地理 A」で学ぶことができた。しかし,「地理総合」でどのように地形が扱われるか,詳細はわからない。学習指導要領(案)では地形への言及は少ない。ただし,「地理 A」の教科書と対応する学習指導要領とを比較すると,学習指導要領にほとんど言及のない地形に関する内容が教科書には含まれている。もし同様に「地理総合」の教科書に地形に関する内容が含まれているとすれば,「地学基礎」と「地理総合」の両方を学ぶことで相補的な地形理解が可能であろう。また,「地理総合」の自然災害に関する探究活動では,地形を題材にする可能性が高い。したがって,ジオパークにによる地形についての学習支援が重要であろう。また,「地学基礎」では地震や火山について災害の要因は学ぶが,災害そのものの学習は十分ではない。例えば,土石流や豪雪については,現行「地学基礎」の教科書には記述が見られない。一方「地理総合」では,地域の自然災害が探究活動の大きなテーマとなる。災害を多面的・多角的に理解するためには,「地学基礎」と「地理総合」の両者の学習が必要である。両者の学習が困難な場合は,ジオパークによる支援が有効である。<「地学基礎」,「地理総合」への支援:ジオパークのメリット>高等学校の「地学基礎」,「地理総合」の授業を支援することは,そもそもジオパークの3つの活動(保全,教育,地域の持続可能な発達)の一つの「教育」そのものである。このほかに,「地学基礎」,「地理総合」の授業支援には,ジオパークにとって3つのメリットがある。第1にジオパークを支える人材を生み出す効果がある。「地学基礎」,「地理総合」の探究的学習が行われた場合,地域の課題やジオパークの活動に関心のある人材が生まれる可能性が高い。第2に「地理総合」の探究的活動は地域活性化に直接貢献する可能性があり,その成果をジオパークに活かせる可能性がある。第3に「地学基礎」,「地理総合」の授業支援は,防災・減災にも有用である。したがって,防災・減災に関わる人材を生み出す可能性がある。<「地学基礎」,「地理総合」への支援:高校側のメリット>「地学基礎」,「地理総合」への支援は高校にとって3つのメリットがある。第1にジオパークの専門員や大学の教員を授業に活用できることである。ジオパーク関係の学術関係者は,対話やグループ活動を通じた授業を行える人材が多い。日常的にガイド教育を行うとともに,対話的に進行するNHKの人気番組「ブラタモリ」の影響を受けているためである。第2に,地球惑星科学を総合的に学ぶことが可能になる。「地学基礎」,「地理総合」を単独で学んだ場合,地学的現象を総合的な地球惑星科学の視点から学ぶことはむずかしい。第3にジオパークそのものに探究的活動の素材を見つけることができることである。以上のように,「地学基礎」,「地理総合」への支援はジオパーク側にも高校側にもメリットがある。したがって,ジオパークからの「地理総合」と「地学基礎」への支援は可能である。支援を活発化させるためには,ジオパークから高校への働きかけが重要であろう。
著者
小林 信彦 Nobuhiko Kobayashi
出版者
桃山学院大学総合研究所
雑誌
桃山学院大学人間科学 (ISSN:09170227)
巻号頁・発行日
no.36, pp.81-196[含 英語文要旨], 2009-03

Paul Carus (1852-1919) wrote a short Buddhist narrative called "The Spider-web" in 1894 and Teitaro Suzuki (鈴木貞太郎 1870-1966) translated it into Japanese in 1898. Ryunosuke Akutagawa (芥川龍之介 1892-1927) adapted it for children in 1918. Entitled "Kumo-no-ito" (蜘蛛の糸 a spider's thread), this adaptation was evaluated highly among Japanese critics and adopted in many schoolbooks. In spite of its high reputation among critics, however, Akutagawa's Kumo-no-ito is not a success as an adapted story. Ignorant of the Buddhist tradition, Akutagawa missed Carus's points and failed to construct a coherent story. Modern philological study of Buddhist texts was established in Europe in the nineteenth century and excellent research results were produced there. Having taken advantage of them, Carus knew much about ancient Buddhist literature. His tale is faithful to the Buddhist tradition and coherent as a whole. Carus had diligently studied Buddhism, read almost all translations of Buddhist scriptures then available in Europe, and written many books on Buddhism. So he was following the Buddhist tradition when he wrote "The Spider-web," which runs as follows: A sinner called Kandata has been suffering tortures in Hell. Having appeared on earth, Buddha sheds rays. Spreading everywhere, they reach even Hell. And he sends a spider as his proxy to Kandata, who takes hold of the web and begins to climb up. Soon he feels the thread trembling, for many sinners are climbing after him. Kandata becomes frightened and shouts, "Let go the cobweb. It is mine." At that moment, the spiderweb breaks, and all fall back into Hell. (Here the rays are a symbol of Buddha's teaching.) The meaning of this story is that it is essential to follow Buddha's teaching, according to which there exists no such thing as atman (self). The Hindus believe that an entity called "atman" subists in every human or animal body. In contrast, the Buddhists deny the existence of atman. Kandata falls back into Hell, because he proves that the illusion of atman is still upon him, saying that the cob-web is his alone. In translating "the illusion of atman (self)," the ancient Chinese used the expression "wozhi-wangnian" 我執-妄念, which means "the mistaken idea approving the existence of atman," "wo" 我 (I) being equivalent to the Sanskrit "atman." The ancient Japanese borrowed the word "wo-zhi
著者
千葉 達朗 林 信太郎 小野田 敏 栗原 和弘 藤田 浩司 星野 実 浅井 健一
出版者
一般社団法人 日本地質学会
雑誌
地質学雑誌 (ISSN:00167630)
巻号頁・発行日
vol.103, no.6, pp.XXI-XXII, 1997 (Released:2010-12-14)
被引用文献数
1

5月11日午前8時, 秋田県鹿角市の澄川温泉で, 地すべりと石流が発生, 澄川温泉と赤川温泉の16棟が全壊, 国道341号も寸断された. 5月4日頃から水の濁りや道路の変状等が察知され, 適切な警戒避難が行われたため, この災害による死者・負傷者はなかった. なお, 地すべりの最中に末端付近で水蒸気爆発が発生した. ここでは, 5月12日にアジア航測(株)が撮影した空中写真, その後の現地の他, 秋田航空(株)が撮影した水蒸気爆発の瞬間の写真を紹介する.