著者
安浦 寛人 村上 和彰 黒木 幸令 櫻井 幸一 佐藤 寿倫 篠崎 彰彦 VASILY Moshnyaga 金谷 晴一 松永 裕介 井上 創造 中西 恒夫 井上 弘士 宮崎 明雄
出版者
九州大学
雑誌
学術創成研究費
巻号頁・発行日
2002

本研究では,システムLSI設計技術を今後の高度情報化社会を支える基盤情報技術ととらえ,システムLSIに十分な機能・性能・品質・安全性・信頼性を与えるための統合的な設計技術の確立を目指す.1.高機能・高性能なシステムLSIを短期間に設計する技術では,無線通信機能を有するシステムLSI設計技術の研究を行い,シリコンチップ上にコンパクトで安定なRFフロントエンドを実現するためにコプレナー線路を通常のCMOSプロセスで形成する技術を確立した.また,新しい可変構造アーキテクチャとしてSysteMorphやRedifisプロセッサを提案し,それに対する自動設計ツールとしてRedifisツール群を開発した.2.必要最小限のエネルギー消費を実現する技術としては,データのビット幅の制御,アーキテクチャの工夫,回路およびプロセスレベルでのエネルギー削減技術,通信システム全体の低消費エネルギー化設計手法などを構築した.3.社会基盤に求められる信頼性・安全性を実現する技術としては,安全性・信頼性を向上させるための技術として,ハッシュ関数や暗号用の回路の設計や評価を行った.また,電子投票システムや競売システムなどの社会システムの安全性を保証する新しい仕組みや,セキュリティと消費電力および性能のトレードオフに関する提案も行った.4.社会システムの実例として,個人ID管理の仕組みとしてMIID(Media Independent ID)を提案し,権利・権限の管理なども行えるシステムへと発展させた.九州大学の全学共通ICカードへの本格的な採用に向けて,伊都キャンパスの4000名の職員、学生にICカードを配布して実証実験を行った.本研究を通じて,社会情報基盤のあり方とそこで用いられるシステムLSIの研究課題を明示した.RFIDや電子マネーへの利用についても利用者や運用者の視点からの可能性と問題点をまとめることができた.
著者
神代剛典 佐藤寿倫
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌コンピューティングシステム(ACS) (ISSN:18827829)
巻号頁・発行日
vol.45, no.1, pp.43-53, 2004-01-15
参考文献数
35

コントレイルプロセッサは,エネルギー消費効率改善の目的でマルチスレッド技術を利用している.コントレイルプロセッサでは,アプリケーションプログラムは実行中に2 つの命令実行ストリームに分割される.1つは投機流(speculation stream)と呼ばれ,プログラムの主要部分を構成し,高速なパイプラインで実行される.投機流からは,トレースレベルの値予測を利用して,多くの命令実行列が削除されている.実行命令数が削減されているため,投機流でのエネルギー消費効率が改善されている.残りの命令実行ストリームは検証流(verification stream)と呼ばれ,投機流での値予測を検証してその実行をサポートしている.検証流は低速ではあるが電力消費の小さなパイプラインで実行される.したがって,エネルギー消費効率を改善できる.コントレイルプロセッサの鍵は,トレースレベルの値予測を利用することで元々はクリティカルであった命令列を非クリティカルに変え,それらを投機流から検証流に移動させることでエネルギー消費効率の改善を図っている点にある.本稿では,コントレイルプロセッサにおいて重要な役割を果すトレースレベルの値予測機構について検討する.Contrail processors utilize multithreading for improving energy efficiency. In Contrail, an execution of an application is divided into two streams. One is called the speculation stream. It consists of the main part of the execution and is dispatched into the fast functional units. However, several regions of the execution are skipped by utilizing trace-level value prediction. The other stream is called the verification stream. It supports the speculation stream by verifying each data prediction, and is dispatched into the slow units. The key idea is that the trace-level value prediction translates each critical path into non-critical one and moves it from the speculation stream into the verification stream, and then the non-critical instructions are executed on the slow units. In this paper, we investigate a trace-level value predictor for Contrail processors.
著者
佐藤 寿倫
出版者
福岡大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2011

依然として上昇している要求性能に答えることが可能な,プロセッサ性能の向上が達成されている.しかしシステム全体を眺めると,十分な性能を提供できているとは言い難い.メモリが足枷となっている.加えて,メモリはエネルギー消費量が大きい点でも問題である.このような問題意識から,本課題を実施した.近い将来に磁気抵抗メモリ等の次世代メモリが利用可能になるという仮定の下で,アーキテクチャ上の工夫により高性能・低電力・高信頼なメモリシステムを実現するために,従来の記憶階層を解体して新たに構築することを目標とした.提案する記憶階層を用いると最良の場合で,エネルギー遅延積を49%改善できることが確認できた.
著者
佐藤 寿倫
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. CPSY, コンピュータシステム (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.104, no.537, pp.73-78, 2004-12-13
被引用文献数
2

性能ペナルティを被らないフォールトトレラントマイクロプロセッサを実現することを検討する。トランジスタの微細化、クロックの高速化、電源電圧の低下に伴い、マイクロプロセッサの信頼性に不安が持たれるようになってきた。加えて、E-コマースのような高い信頼性を必要とする応用も出現している。以上の背景を考慮すると、将来のマイクロプロセッサでは性能やコストだけでなく信頼性も評価対象となると予想できる。この要求を満足するために、命令再発行と時間冗長性を利用したフォールトトレランス機構をこれまで検討してきた。しかし残念ながら深刻な性能低下が確認されている。本稿では低下した性能を補うために、トリビアな演算とサブワード並列性を利用することを検討する。シミュレーションの結果、効果的な方式であることを確認している。
著者
佐藤 寿倫
出版者
九州工業大学
雑誌
奨励研究(A)
巻号頁・発行日
2000

近年値予測を用いたデータ依存の投機的実行が注目されているが,値予測のためのハードウェア量が問題となっている.本研究では,値予測機構のハードウエア量を削減することを検討した.具体的には,頻繁な値の局所性に着目し.予測値を0と1だけに限定している.SPECべンチマークではレジスタに書き込まれる値の平均で20%以上が0と1で占められているので,予測値を制限しても有意義なパフォーマンスが得られる.シミュレーションの結果,提案した予測器は2倍以上のハードウエア規模を必要とする従来の最終値型予測器よりも,性能が高いことが確認された.
著者
佐藤 寿倫 中村 佑介 有田 五次郎
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. FTS, フォールトトレラントシステム (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.100, no.475, pp.107-112, 2000-11-23

スーパースカラプロセッサは命令レベル並列性を得るために実行時に命令を並び替えており, 性能向上のためには命令ウインドウを大きくする必要がある.しかし, 命令ウインドウは連想メモリ(CAM)で構成されており, プロセッサの動作速度を決定する要因の一つであるため, 容易に容量を大きくは出来ない.そこで本稿では, CAMよりも高速動作可能なRAMを用いて命令ウインドウを構成することを提案する.シミュレーションの結果, 提案する機構は従来の命令ウインドウとほぼ同等のレイテンシを維持しつつ, 動作速度を改善できる可能性があることが確認できた.
著者
安浦 寛人 佐藤 寿倫 松永 裕介 井上 創造 池田 大輔 石田 浩二 馬場 謙介 吉村 正義 ウッディン モハマッド・メスバ 稲永 俊介
出版者
九州大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2007

社会に不可欠になっている「価値」や「信用」を搭載するLSIについて、ディペンダビリティの定義と評価尺度を提案し、その阻害要因の明確化と要因間の関係の解明を行った。また、LSIのディペンダビリティを向上させる対策を提案し、ディペンダブルLSIの設計フローを提示した。独自技術によるICカードを大学の学生証・職員証として発行し、設計から運用まで一貫してディペンダビリティの一万人規模の社会実験を行える環境を実現した。
著者
國武 勇次 佐藤 寿倫 山口 誠一朗 安浦 寛人
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. VLD, VLSI設計技術 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.108, no.298, pp.85-89, 2008-11-10

半導体製造技術の進展に伴い,プロセスばらつき,電源電圧のゆらぎや温度変化などが回路遅延に与える影響が増加している.我々はこれらの回路遅延の変化により発生するタイミングエラーを予報する機構としてカナリアFFを提案している.カナリアFFは通常のFFを二重化する構造をもつため,適用するにあたって面積の増加が問題となる.本論文では,面積増加を抑制するためにカナリアFFの挿入位置の限定方法を提案しその評価を行う.