著者
牧野 真太郎 平井 千裕 板倉 敦夫 竹田 省 角倉 弘行
出版者
日本臨床麻酔学会
雑誌
日本臨床麻酔学会誌 (ISSN:02854945)
巻号頁・発行日
vol.37, no.2, pp.226-231, 2017-03-15 (Released:2017-04-21)

当院における産科麻酔チーム設立前後の周産期医療の変化は,予想以上に大きいものであり,医師のみならず助産師にも大きく影響したといえる.その変化は,症例数・産科医の技術・医療体制・カンファレンス・個々の意識という,施設の医療レベルを支える重要なものであった.何よりも,産科と麻酔科の両科の立場からの意見・情報を気軽に求めることが可能になった環境・意識の変化が,内科合併症も多い当院のハイリスク妊婦に対しても,安全な医療を提供できる一番の変化といえる.本稿では,その変化について具体的に述べさせていただく.
著者
黒牧 謙一 竹田 省 関 博之 木下 勝之 人見 祐子 前田 平生
出版者
社団法人日本産科婦人科学会
雑誌
日本産科婦人科學會雜誌 (ISSN:03009165)
巻号頁・発行日
vol.46, no.11, pp.1213-1220, 1994-11-01
被引用文献数
10

産科における輸血の必要性と他家血輸血の危険性を考慮すると自己血輸血法の確立は不可欠である. 今回産科症例に対して自己血輸血を行い, 採血及び輸血による妊婦の血液性状の変化につき検討し, 妊婦の自己血輸血の臨床効果とともにその有用性と問題点につき検討した. 分娩時に出血が多量になる可能性の高い, 前2回帝切例, 前置胎盤や稀な血液型の妊婦, 34例を対象とした. 採血1週間前より鉄剤の投与を行い, 自己血採血は1週間ごとに300mlずつ3回行うことを基本とした. 分娩後は出血量に応じて自己血輸血を行った. 採血後エリスロポエチン値は上昇し, 同時に網状赤血球数は増加し, 脱血後急速に赤血球を増産していることが判明した. ヘモグロビン(Hb)値は900mlの採血で平均0.6g/dlの低下であった. ヘマトクリット(Ht)値, 総血漿蛋白(TP)値もHb値とほぼ同様の動きを示した. またその他の血液検査には大きな変動を認めず, 母児に対しても採血による影響は認められなかった. 分娩時の出血が多量であっても, 自己血の返血を行うことにより同種血輸血は必要なく, 正常産褥経過症例とほぼ同様の血液所見を示した. 輸血後は倦怠感やふらつきなども軽減し, 乳汁分泌も良好であった. 産科領域においても妊婦の自己血輸血のための採血及び輸血の安全性と有用性が確認された.