著者
福永 篤志 大平 貴之 加藤 元一郎 鹿島 晴雄 河瀬 斌
出版者
一般社団法人 日本高次脳機能障害学会
雑誌
高次脳機能研究 (旧 失語症研究) (ISSN:13484818)
巻号頁・発行日
vol.25, no.3, pp.242-250, 2005 (Released:2007-03-01)
参考文献数
18
被引用文献数
3

後出し負けじゃんけんの「負けよう」とする認知的葛藤の脳基盤はいまだ明確ではない。今回われわれは, 右利き健常人9名に対し, 後出しじゃんけん (負けまたはあいこ) 負荷時に3テスラfMRIを撮像し, 安静時と比べて有意に検出されたBOLDシグナルの分布について検討した。結果は, 負け・あいこじゃんけんともに, 前頭葉, 後頭側頭野, 感覚運動野, 小脳半球, 補足運動野 (SMA) 等に有意なBOLDシグナルが検出された (corrected p<0.05)。また, 左手負けじゃんけんでは左SMAが, 左手あいこじゃんけんでは右SMAがそれぞれ強く賦活され, 右手負けじゃんけんでも左SMAの反応が強かった。以上の結果から, 左SMAがステレオタイプな動作を抑制する機能や葛藤条件の監視に関与していることが示唆された。
著者
高山 秀一 戸谷 重雄 河瀬 斌 飯坂 陽一 村上 秀樹
出版者
The Japan Neurosurgical Society
雑誌
Neurologia medico-chirurgica (ISSN:04708105)
巻号頁・発行日
vol.27, no.2, pp.78-82, 1987 (Released:2006-09-21)
参考文献数
19

The effect of stable xenon on the regional cerebral blood flow (rCBF) was studied in 12 adult cats. Xenon in concentrations 17%, 33%, 50%, and 60% was mixed with oxygen, and inhaled by a semi-closed rebreathing system. Cortical rCBF was continuously measured by a heat clearance probe which had been calibrated using the hydrogen clearance method. Cortical rCBF decreased to 96%, 92%, 88%, and 88% of the control after inhalation of 17%, 33%, 50%, and 60% xenon, respectively, and these decreases in rCBFs were statistically significant (p<0.01, Student's paired t-test) under the high concentrations of xenon of 33% or more. No significant changes were seen in arterial carbon dioxide tension and the mean arterial blood pressure during xenon inhalation, whereas diffuse electroencephalographic slowing was observed during 50% xenon inhalation. The mechanism of the decrease of rCBF by xenon gas remains to be solved. The direct effect of xenon on rCBF should be considered when high concentrations of xenon are used for stable xenon-enhanced computed tomography.
著者
河瀬 斌 山口 則之 清水 克悦 三谷 慎二 堀口 崇 荻野 雅宏
出版者
慶応義塾大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1993

【目的】低温による脳保護作用のメカニズムを検討し、脳のみの局所低体温法を確立する。【方法】(1)スナネズミ一過性前脳虚血モデルを用い海馬における遅発性神経細胞死を算出する一方で、オートラジオグラフィー法により蛋白合成能を、また免疫組織化学により各種蛋白の生成を、常体温と低体温とでそれぞれ比較した。(2)ラット一過性前脳虚血モデルを用い、線条体におけるdopamine・ adenosineとその代謝産物の生成を、虚血中低体温と虚血後低体温とで比較した。(3)成猫に低温人工髄液を脳室脳槽灌流し、脳冷却の程度と脳内温度較差を測定した。また、臨床使用目的にて脳温測定用センサーを組み込んだ脳室脳槽灌流用ドレナージチューブを作成した。【結果】(1)低体温により海馬CA1領域の遅発性神経細胞死は抑制されるが、これに先立ち(i)同部の蛋白合成能の回復が促進される。(ii)ストレス蛋白発現が抑制される一方で、即初期遺伝子c-Junが正常より強く発現する。c-Fosの発現は変化しない。以上より、低体温は虚血ストレスそれ自体を減弱する一方で、蛋白代謝を早期に回復させ、細胞の生存に影響を及ぼす即初期遺伝子の発現を促す。(2)(i)虚血中低体温はdopamineの放出を抑制する一方、adenosineの放出には影響しないが再灌流時のadenosineの減少は抑制する。(ii)虚血後低体温はadenosineの代謝を抑制して細胞外液中の濃度を高く保つが、dopamine代謝には影響しない。(3)低温人工髄液灌流により成猫において脳深部に2〜3℃の冷却効果が見られたが、皮質ではその冷却効果は少ない。脳血流量は一過性に減少するがその後回復し、血圧や血液ガスには影響はない。脳温測定用センサーを組み込み、かつ従来のものと材質・外径に差がない脳室脳槽灌流用ドレナージチューブが完成した。【総括】以上より(3)の脳虚血に対する局所低体温療法は(1)(2)の補助治療法を組み合わせることで臨床応用が更に期待できる。