著者
米澤 好史
出版者
和歌山大学
雑誌
和歌山大学教育学部教育実践研究指導センター紀要 (ISSN:09182683)
巻号頁・発行日
vol.4, pp.159-169, 1994-08-20

本論では,認知心理学の学習観を紹介し,学習指導に認知心理学の知見をどう生かしていくかについて,次の6点から,その意義をまとめた。すなわち,結果ではなく過程を重視すること,方法としてではなく意味を重視すること,対人相互作用の中に位置づけられた学習として捉えること,教師に必要な知識とは何か,状況設定と適切な視点の必要性,メタ認知の効用である。こうした考察と具体的な指摘を通じて,学習者間の「やりとり」や学習者と教材との「かかわり」の大切さを指摘し,「立ち止まり」「気づく」営みとしての知的教育の必要性を指摘した。
著者
村上 晴美 米澤 好史
出版者
日本認知科学会
雑誌
認知科学 (ISSN:13417924)
巻号頁・発行日
vol.9, no.2, pp.230-243, 2002-06-01 (Released:2008-10-03)
参考文献数
20
被引用文献数
1

We obtained fifty-two recall data when the titles of twenty well-known Japanese songs that most Japanese people learn in school were given. Song memory is based on the associative chaining of units of melody and lyrics. The parts found to be well memorized were the beginning of the songs, parts that share words with the titles, and the end of the songs. We found various kinds of errors in the recall of song lyrics, which we classified into four groups: song confusion, lyrics confusion, word construction, and misused characters. The primary constraints on word construction are the number of syllables, vowels, parts of speech, and syntactic contexts. Word construction is based on rationalization that transfers things reasonable and natural to information receivers. We found some interesting errors that change the image of the original song lyrics. Based on these findings, we present a model for recalling songs from a title and a model of error recall in Japanese songs.
著者
米澤 好史
出版者
和歌山大学
雑誌
和歌山大学教育学部教育実践研究指導センター紀要 (ISSN:09182683)
巻号頁・発行日
vol.10, pp.1-20, 2000

これまで別々に議論されていた,こどもの日常的活動と学習活動を統合的に認知心理学の立場から捉える視点を提供し,それらに関わり援助するあり方を問う。まず,こどもたちの「切れる」という現象を分析する。こどものすべてを受け入れるという受容論,だめなものはだめと教え込むという強制論の2つの対立する極論の難点を指摘し,こどもと向き合うとはどうすることかを考察する。また,「反復練習させればよい」「できればうれしい」「体験すれば学習」などの誤った学習観を批判し,それを支えてきた評価観を批判する。それらの考察を通して,自立を援助し,生きる力を育てる学習環境の構築とそのあり方について提言する。そして,育児・教育の本質とは何かという観点から考察する。
著者
米澤 好史
出版者
日本発達支援学会
雑誌
発達支援学研究 (ISSN:24357626)
巻号頁・発行日
vol.2, no.2, pp.59-69, 2022-03-31 (Released:2023-03-31)

本稿では、愛着障害への支援の専門家としての実践活動、実践研究から得られた経験から、発達支援において愛着の視点からの支援の重要性について提唱したい。保育、教育、福祉、医療の現場に直接、足を運びながら、発達支援にかかわり、また、発達支援者にかかわる中で、何も愛着障害の支援だけではなく、発達障害やその他の発達支援においても、発達の基盤としての愛着形成が様々な支援の土台になっていることを提唱する。そもそも愛着障害をどう捉えるべきなのか、愛着形成が発達においてどのような意味を持っているのかについて論じつつ、愛着障害についての誤解、無理解が発達支援において、より適切な支援の妨げになってすらいることについても、愛着障害と発達障害の関係を論じながら指摘する。併せて、さまざまな発達の問題、こころの問題への愛着の視点からの支援のポイント、支援のあり方について紹介する。
著者
米澤 好史
出版者
和歌山大学
雑誌
和歌山大学教育学部教育実践研究指導センター紀要 (ISSN:09182683)
巻号頁・発行日
vol.5, pp.51-60, 1995-08-20

本論では,米澤(1994)を受けて,学習過程,問題解決過程における「理解」の重要性を指摘することを目的とした。その際,問題解決者が理解の重要性を自覚すること,そして,問題解決者にとっての理解の意味を,学習指導者たる教師が単に枠組み的知識としてではなく,真に認識することの必要性を指摘した。まず,いくつかの具体的な問題解決場面を取り上げ,認知心理学実験の知見をもとに,学習者にとっての理解の意味を問い直す指摘をした。更に,筆者自身の大学における論文理解の授業からの報告も含めて,真の理解のために必要な指導観を指摘し,学習者の視点に立つことの意味を再吟味した。こうした具体的な指摘と考察を通じて,学習者と教材との「かかわり」を規定し,その後の問題解決そのものに多大な影響を与える理解過程の分析を行い,学習者が理解時に,その理解状況と意味,及び自らの理解の視点に「気づく」ことの重要性を指摘した。
著者
米澤 好史
出版者
和歌山大学
雑誌
和歌山大学教育学部教育実践総合センター紀要 (ISSN:13468421)
巻号頁・発行日
vol.12, pp.75-88, 2002

新学習指導要領の実施に伴い,盛んに指摘される学力低下論の本質的な問題点を浮き彫りにする。米澤(2001b)の議論を受けて,学力低下論者の学習過程への無理解,短絡的な反復学習支持や学習量への信仰的支持の問題点を実証的データを基に分析する。また,日常生活に役に立たない「閉じた学習」の弊害について,非科学的信念を克服できなかった今までの科学教育の失敗を調査データを基に分析する。そして学力低下は今日的な新しい課題ではなく,学力低下論者の学習観こそ,今までの学習の負の成果であることを指摘する。更に,学力とは活かせることであるとの観点から,生きる力につながる学力を育てる教育実践について報告する。