- 著者
-
美濃 正
- 出版者
- 科学基礎論学会
- 雑誌
- 科学基礎論研究 (ISSN:00227668)
- 巻号頁・発行日
- vol.19, no.4, pp.161-166, 1990-03-25 (Released:2010-01-20)
- 参考文献数
- 12
私は, 確信のない実在論者であり, 科学的実在論者であるので, 本稿(1)では, 科学的実在論を擁護するためには, どのような方針に基づいて, どのような問題に答えねばならないか, という点についての自分なりの見通しを述べることにしたい。言うまでもないことであろうが, 一般に, 実在論-反実在論の対立について論じる場合には, つぎの二つの問題を区別することが肝要である。(1) 存在ないし真理の本性は何か, という問題と,(2) 何が存在し, 何が真理であるのか, また, われわれはある対象の存在主張ないしある言明の真理の主張に対しどのような認識論的根拠をもつか, という問題である。私の見るところでは, 科学的実在論は, 主として第二の問題のコンテキストで論じられるべき事柄である。しかしながら最近, 第一の問題のコンテキストにおいて, 有力な反実在論の論陣が張られているので, はじめにこの立場に対して簡単にコメントし, 第一の問題, つまり存在ないし真理の本性をめぐる問題にどのような答えが与えられるかに関わらず, 第二の問題が重要な哲学的問題として残ることを確認しておきたい。最近の有力な反実在論の立場と呼んだのは, 言うまでもなく, ダメット-パットナムによって展開されている立場の事である。