著者
上村 隆広 花村 周寛 尾家 建生 原 一樹
出版者
大阪府立大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2015-04-01

本研究は、開創 1200 年を迎えた高野山を訪れる外国人来訪者の観光動機・体験を実地調査し、高野山における外国人特有の観光体験の実態について、「観光と物語」「多感覚体験」「場所の聖性」等の視角から解明することを目的としたものである。各種調査の結果、以下のような知見を得た。即ち高野山の自然的環境、宗教的伝統、今日的実践が融合して得られる独特の観光体験が、精神性に価値を置く来訪者の高い満足度と評価につながっている一方で、インバウンド急増による「観光地化」的変化等の懸念も出始めており、高野山が観光体験の質を持続させるためには、内外の旅行者とホスト側との「対話」的関係性の増進が期待される。
著者
小林 仁 渥美 公秀 花村 周寛 本間 直樹
出版者
日本グループ・ダイナミックス学会
雑誌
実験社会心理学研究 (ISSN:03877973)
巻号頁・発行日
vol.49, no.2, pp.180-193, 2010 (Released:2010-02-20)
参考文献数
15
被引用文献数
1

本研究では,人々によってすでに馴致された生活環境を対象として,その環境を一瞬未知の状態へと変換し,新たな馴致を促すという一連の流れを発生させる手法について,実践プロジェクトによるアプローチを試みた。Moscovici(1984=八ッ塚,未公刊)による社会的表象の議論をもとに,社会的表象としての現実の馴致プロセスについて概観し,その後,原(2005)の「未知化」という概念を参考に,未知化の技法と未知化後に事象を再び馴致してゆく方法について検討した。「未知化」の方法として,プロジェクト型ツールの設計および実践を行った。実践のフィールドとして,筆者らが所属する大阪大学キャンパスを設定した。参加者が阪大(ハンダイ:大阪大学の略称)に関する情報を詳細に獲得し,各々が今まで知らなかった阪大を再発見してゆくDATA HANDAIプロジェクトは,2005年10月より始まり,2007年9月現在も継続して進行中である。活動は領域横断的に実施され,教員5名と学生20名あまりを中心として活動を行った。プロジェクトの成果として数十枚に及ぶ情報カードを作成した。結果として,参加者の言説の変化や活動に関するエスノグラフィーが得られた。本研究では,このプロジェクトを対象として,未知化を解説し,既知から未知へ,そして新たな既知として現前する社会的表象の分析を行った。
著者
白水 菜々重 松下 光範 花村 周寛
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
電子情報通信学会論文誌 D (ISSN:18804535)
巻号頁・発行日
vol.J97-D, no.1, pp.3-16, 2014-01-01

本研究の目的は,通い慣れた場所や見慣れた風景に対する認識を異化し,新たな気づきを促すことによって,その環境に対する認識の深化や新たな発見を促す仕掛けを確立することである.その実践として,大学生を対象にキャンパスを「楽園」に見立てたガイドマップを作成させるワークショップをデザインした.ガイドマップを作成する過程にはフィールドワークや情報の収集が含まれており,これらを通じて知識が得られるような仕掛けが施されている.本論文では,学生らのキャンパスに対する意識や理解の変化について考察するために,ワークショップの事前と事後にキャンパスに対する印象を尋ねるアンケートとキャンパスの認知地図を描画させるテストを実施した.その結果,学生らのキャンパスに対する印象は改善されたが,一方で認知地図に変化は見られなかった.
著者
花村 周寛
出版者
人工知能学会
雑誌
人工知能学会全国大会論文集 (ISSN:13479881)
巻号頁・発行日
vol.27, 2013

同じ環境であっても主体の想像力の持ち方によって、立ち現れる風景の様相や環境に対する人間の行動が変化すると考えられる。その想像力を異化し主体の内部で別の風景を生成する仕掛けとして「見立て」の可能性を考える。これまで唱えられて来た見立ての概念の整理とともにこれまでに筆者が取り組んで来たワークショップの分析を通じて、風景の補助線となる見立てについて考察する事を本研究の目的とする。
著者
白水 菜々重 花村 周寛 月川 香奈子 松下 光範
出版者
人工知能学会
雑誌
人工知能学会全国大会論文集 (ISSN:13479881)
巻号頁・発行日
vol.27, 2013

本研究の目的は、"これまでにないガイドブック”を作成するワークショップを通じて、参加者の場に対する理解を深めさせることである。これは、風景や場所に対する固定化された参加者らの観念をずらすために、普段とは異なる視点を引き出すキーワードを与えて対象を見つめ直させることで、新たな気づきを促す仕掛けである。本稿では、2つの異なる条件下でのワークショップの事例を報告し、それらの実践で得られた知見を報告する。
著者
花村 周寛
出版者
大阪大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2006

本研究で実施した海外調査事例を整理し、そこから都市の形成と個人の嗜好性についての関連を整理するとともに、大阪大学コミュニケーションデザイン・センターが、大阪の中心地中之島で実施した中之島コミュニケーションカフェについて、参与観察を行った。同時に調査で訪れた都市を比較考察している。ラスベガスのように、資本主義経済が発展していく段階で形成された都市が未だに都市景観の骨格がマクロな構造に支配されているのに比べて、サンタクルーズなどで見られるように物語復興として個人同士の対話をベースに町づくりが進められた事例や、ミュンスター、カッセル、ヴェネチアなどでもアートを媒介にした町づくりが見られるが、個人的な表現や個人同士の対話が都市を形成している事例が今後大阪で展開される事は追って調査する必要があることが明らかになった。アメリカや日本、欧州で多く見られるように既に都市の成熟期に入っている地域ではそうした個人の表現行為や対話が有効化し得るかもしれないことが明らかになってきたが、一方でアジアを中心にしたまだ開発途上の都市では国家レベルで行われる都市開発が多く見られ、その結果が都市景観の形成についてどのような影響を及ぼすのかということは、グローバルとローカルのスタンダードを探る本研究においては重要な視点であり、アジアの都市開発事例を現地調査し、その結果を研究成果に反映させるべく整理中である。