著者
荒井 宏
出版者
一般社団法人 日本総合病院精神医学会
雑誌
総合病院精神医学 (ISSN:09155872)
巻号頁・発行日
vol.24, no.4, pp.334-341, 2012-10-15 (Released:2016-06-18)
参考文献数
4

市中の総合病院では,児童精神科領域の治療だけに専念できる精神科医を確保できることは稀で,普段は大人の診療を行っている精神科医が子どもも診ていかなければならない。多忙ななかで子ども診療を行うためには,子どもの診療の特徴を理解し,それに応じた“工夫”をする必要がある。 受診経路の特徴としては,精神科治療の対象となる子どもの多くが小児科外来を受診しており,小児科医と上手に連携を取りながら診療にあたることが不可欠である。本稿では,始めに当院での児童精神科医療の現状について述べ,次に子どもの診療を行ううえで課題となるポイントをあげた。そして,それらの問題点を克服するための工夫として,当院で行っている①小児科外来スペースでの診療,②臨床心理士との業務連携,③質問紙や資料の有効な活用など,④外部施設の利用,について紹介した。
著者
荒井 宏雅 利野 靖 山中 澄隆 湯川 寛夫 和田 修幸 益田 宗孝
出版者
日本臨床外科学会
雑誌
日本臨床外科学会雑誌 (ISSN:13452843)
巻号頁・発行日
vol.69, no.9, pp.2189-2192, 2008 (Released:2009-03-05)
参考文献数
15
被引用文献数
1

症例は65歳,男性.胸腺腫を合併した重症筋無力症(MGFA分類IIIb期)の診断で当院神経内科に入院.抗コリンエステラーゼ薬内服,血漿交換療法,メチルプレドニゾロン1000mg/日×3日間のステロイドパルス療法を施行し,以後ステロイド50mg/日の内服となった.ステロイド導入後約1カ月の胸部CTでは指摘された腫瘤は画像上消失していた.拡大胸腺摘出術を施行し,術後病理診断は胸腺腫(Müller-Hermelink分類混合型,WHO分類Type B2)の退行性変化であった.術前にステロイド導入を行った胸腺腫合併重症筋無力症においては,胸腺腫の退縮の可能性もあることを念頭に置くことが肝要である.
著者
荒井 宏祐
出版者
文教大学
雑誌
文教大学国際学部紀要 (ISSN:09173072)
巻号頁・発行日
vol.15, no.1, pp.27-46, 2004-07

In this paper, I try to compare Newton with Rousseau on relationship between Nature and God, by pointing out four aspects as follows. 1 Who creates the Universe ? 2 What are the attributes of God ? 3 What is the relationship between studies of natural philosophy and moral science including political philosophy ? 4 Can we believe in the goodness of Nature ?Finally, after examining Newton's Mathematical principles of natural philosophy and Optics, and Rousseau's "Profession de foi du Vicaire Savoyard"in & Eacute;mile, I conclude that Rousseau studied Newton's natural philosophy, but from his own research of nature, Rousseau designed a new social plan without a king, in contrast with Newton whose natural philosophy contributed to supporting social and political change with a king after the English Revolution.
著者
荒井 宏祐
出版者
東京大学大学院教育学研究科
雑誌
東京大学大学院教育学研究科紀要 (ISSN:13421050)
巻号頁・発行日
no.56, pp.475-483, 2017-03-31

Dans cet article, Je voudrais proposer que Rousseau explique deux capacités éducatives du végétal, l'une, celle qu'on peut etudier sous la qustion « qu'est-ce que le végétal? », et l'autre, celle qu'on peut retrouver par la observation quelque chose, par exemple, la religion naturelle (le Dieu est le Créateur), excepté le végétal lui-même.
著者
田山 寛豪 荒井 宏和 膳法 亜沙子
出版者
流通経済大学スポーツ健康科学部
雑誌
流通経済大学スポーツ健康科学部紀要 (ISSN:18829759)
巻号頁・発行日
vol.13, pp.1-10, 2020-03

(背景)試合期のアスリートは,心身の疲労度が高い。近年,アスリートのコンディショニングには良質な睡眠が重要であることが示唆されており,注目されている。本研究は,多数ある競技の中でも1つのレース時間が長時間続くトライアスロン競技に着目した。特に連続する試合期間中のトライアスリートのコンディショニングのための最適な睡眠条件を明らかにした実践的研究に関する報告はほとんどなく実態は不明である。そこで本調査は,大学生トライアスリートにおける試合前および試合後1週間の睡眠状況を記録し,その変化の特徴を捉えることでトライアスリートのコンディショニング指標を確立することを目指した研究の予備的検討である。(方法)本調査では,エリート大学生トライアスリート6名(男性4名,女性2名)を対象とし,9月1日の競技会前後(8月20日~9月9日)における睡眠状況について機器を用いて記録するものとした。(結果)本調査により,6名中5名の大学生トライアスリートにおいてレース前に比べてレース終了5~7日後に熟眠度が10%以上大きく低下することが認められた。特に,レース前,レース当日,レース6日後の熟眠度の変化について統計的に解析するとレース後に熟眠度が低下する傾向であった。すなわち,睡眠質はレース後1週間程度すると低下する可能性がある。これと同時にレース後6,7日目に睡眠時間が短縮している者が6名中5名に認められた。本調査の対象者のトライアスロン競技レベルは高いため,個々の結果に意義があるが,対象者数は極めて少ないため,今後さらに対象者数を増やした研究で本研究の結果を追試する必要がある。(結論)本研究は,大学生トライアスリートにおいてレース前に比べてレース1週間後の睡眠質は低下する可能性を初めて見出した。この結果は,トライアスロン競技会後1週間のトレーニング内容(種類,量,強度,休養時間など)について十分配慮が必要であるとともに次のレースを実施するタイミングについて調整する必要性があることを示唆している可能性がある。特に本研究は,試合期のトライアスリートにおけるトレーニング指導のための一資料を提示したものと考える。
著者
池原 瑞樹 山田 耕三 斉藤 春洋 尾下 文浩 野田 和正 荒井 宏雅 伊藤 宏之 中山 治彦 密田 亜希 亀田 陽一
出版者
特定非営利活動法人 日本肺癌学会
雑誌
肺癌 (ISSN:03869628)
巻号頁・発行日
vol.41, no.3, pp.231-236, 2001-06-20 (Released:2011-08-10)
参考文献数
12
被引用文献数
2 2

造影CT画像と単純GT画像におけるCT値の差によって, 肺野微小病変の質的診断を試みた報告はある. しかし造影thin-section CT (以下造影TS-CTと略す) 画像のみでのCT値の解析でその質的診断を試みた報告は少ない. 今回, CT画像上充実型を呈する肺野末梢微小病変を対象として, CT画像による質的診断を目的に造影TS-CT画像におけるCT値の解析を行った. 対象は, 最近3年間に当施設で切除された20mm以下の肺野微小病変47例である. 組織型は原発性肺癌が23例, 転移性肺腫瘍が6例であり, 非癌性病変は18例であった. CT画像は造影剤35mlを経静脈的に0.8ml/秒の速度で注入を開始し, その50秒後の画像である. CT値は病変内に真円に最も近い最小のROIを作成し, 病変の中心部と大動脈中心部の平均CT値を測定した. 結果は, 原発性肺癌では非癌性病変に比べて “病変部のmean CT値” および “病変部のmean CT値と大動脈のmean CT値の比” のいずれも高値を示し, 有意差を認めた. 以上より, 造影TS-CT画像でのCT値の計測は, 充実型を呈する肺野微小病変の質的診断に寄与する可能性が示唆された.
著者
荒井 宏祐
出版者
文教大学
雑誌
文教大学国際学部紀要 (ISSN:09173072)
巻号頁・発行日
vol.9, no.1, pp.1-18, 1998-10

This paper elucidates Rousseau's three-dimensional perception of nature. He first viewed nature with the compound vision of his mind. In this perceptual mode, for example, he not only celebrated the beautiful charm of vegetables,but also perceived their ecological function. Second, he recognized the general characteristics and structure of flowers, but also perceived "ľordre des choses" in the world, reflecting a perceptual insight into the natural environment. Third, he often drew out social implications from observed natural phenomena, thus perceiving "signs" in the natural world that indicated essential aspects of his thought on the relations between humans and society. Thus, Rousseau viewed nature through the refractive lens of his own soul. It is said that Rousseau used. the term "nature" in many diverse ways. In this paper, I introduce an alternative thesis. Rousseau's wide and deep vision of the natural environment opens the reader to the idea of virtue as a possible solution for social dilemmas we confront in contemporary environmental problems. The will of each individual must be reconciled to the general will which may exist in the global ecosystem, as Rousseau anticipated in the context of "Discours sur ľ Économie Politique", "Émile" and "Du Contrat Social". J.-J.ルソー(Jean-Jacques Rousseau,1712~1778)はその著作の中で、ある言辞をしばしば多義的に用いることがある。カッシーラーは「社会」や「sentiment」の「二重語義によくよく注意しなければならない。」と述べ、また恒藤武二は「一般意志という語はルソーにあってはきわめて多義的に使用されている。」と指摘している。とりわけ「難解な語」とされているのが「自然」であり、平岡昇はこの語が「本来彼に独得な両義的思考法の好対象」ではないかと言っている。舟橋豊は、この語義の分析を試み、ルソーの「自然」とは、「神であり、宇宙を統べる整然たる法であり、人間界の正にして善なる自然法であり、崇高美あふれるアルプスの山河であり、さらには生まれながらにして善なる人間の本性でもある。」と述べている。平岡はまた、ルソーの「自然」は彼自身の「多様で自由な使用法を通じて人々の心につよく訴えかけてくる魔力」を持つとしている。 たしかに「自然」の語は、「ルソー的ディアレクティック」とともに、あたかも『オデュッセイアー』にあらわれる魔女セイレーンの「甘く楽しい歌声」のように、我々を「前よりもっと物識りになりお帰り」願うがごとく、さまざまな声をもって語りかけてくるようである。 ともあれルソーの「自然」の中には、上記舟橋の分析にも「アルプスの山河」とある通り、自然環境が含まれていることは明きらかである。これまで筆者は、ルソーの自然環境としての「自然」認識のうちには、生態作用を持つ「環境」としての「自然」認識が含まれていることなどを指摘するとともに、これらとルソーの文明社会批判や「自然人=エミール」の「自然現象・事物の教育」=「環境教育」との関連などに考察を加えてきた。本稿では、これらをもとに、ルソーの自然環境としての「自然」の多義性の特徴についてさらに考察と整理を試みるとともに、新たに彼の「自然」あるいは「環境」認識と、その政治思想上の基本概念の一つである、「一般意志」・「徳」や、「万物の秩序」とのかかわりを探り、これらをふまえて現在環境問題に関連して注目されつつある「社会的ジレンマ」問題との関係を、他の諸言説とともに一瞥することで、ルソー思想の現代的意義の一端に触れてみた。 これらはいまだ試論的段階ではあるが、その目的は、これまでの検討にひきつづき、ルソーの社会・教育・政治・宗教・国際平和・文学などの諸思想・言説と、「自然」あるいは「環境」認識がいかなる関連を有するのかを探索することにある。